Anywhere.FM by Criss スウェーデンの中堅トランペッター Peter Asplund (ピーター・アスプランド)の通算5作目となる新作です。前作『 Lochiel’s Warning 』( 前項あり )が2004年の発売でしたから実に4年ぶりとなります。彼の新作が出るのを首を長くして待っておられた方も多いのではないでしょうか。ご安心ください。この新作、期待を裏切らない出来のよさです。前作も素晴らしい作品でしたが、それを上回る高品位です。またまた惚れてしまいました。そう思うと昨年末に原宿クエストホールに「 Swedish Beauty Live 」のバック・メンバーとして来日していたのに観れなかったのが悔やまれます。ますは簡単に経歴を。69年にストックホルムの郊外の町、セデルティエに生まれた Peter は、両親が音楽教師であったこともあり、音楽的に恵まれた幼少期を過ごしました。そして何と4歳の時に聴いたルイ・アームストロングに衝撃を受け、将来ジャズ・ミュージシャンになろうと決心したそうです。10歳になる頃には地元のクラブ・バンドやジャズ・コンボに入り演奏するようになり、16歳で地元の音楽学校に入学。2年間のストックホルムでの学生生活を経て、名門である王立ストックホルム音楽院に入学しています。スウェーデン国内では非常に高い評価を得ており、ジャズに限らずポップスやソウル系などの各方面からオフャーが殺到しているようです。現在はスウェーデンの3大名門ビッグバンドのうちの2つ、 Tolvan Big Band と Stockholm Jazz Orchestra ( 以下SJO )に在籍し、一方で自己のバンドやJacob karlzon のバンドなど、数多くのプロジェクトに参加しているようです。 おそらく、僕らが彼の演奏を始めて耳にしたのは Jan Lundgen and Peter Asplundの共同名儀による『 California Connection 』( 1997 Four Leaf Clover )ではないでしょうか。( 1999 年に Jan Lundgren の単独名義で Fresh Sound からリイシューされています。)当時はまだPeter は10代でしたから仕方ないのですが、やはり米国のハード・バッパー(特にクリフォード・ブラウンが好きだったようです)を手本にしたような精悍闊達な折り目正しい正統派バッパーでした。しかしまあ、巧いけどそれほど印象には残らない作品だったのです。そのため個人的には当時の彼のリーダー作には全然興味がありませんでした。『 Open Mind 』( 1995 Dragon )、『 Melos 』( 1999 Sittle )、そして『 Satch as Such 』( 2000 Sittle )と、コンスタントに作品をリリースしていたものの、すべて見逃しています。やっと彼の作品を聴いたのが2004年の前作『 Lochiel’s Warning 』というわけで、以来、Peter 聴きたさに SJO の作品を買い漁っているのですが、ひとつの作品中、彼のソロはせいぜい1回、ないしは2回ですのでどうしても欲求不満になっちゃいます。 まあ、SJOのリーダーは≪北欧のアート・ブレイキー≫の異名を持つトランペットの Fredrik Noren ( フレデリック・ノーレン )ですからどうしても Peter のソロは控えめになるのは仕方ありません。そうそう、Atomic の Mangus Broo もいるし。それに SJO には看板ソリスト Karl-Martin Almqvist もいますしね。 閑話休題。今回の新作は前回同様、レギュラー・メンバーである Jacob Karlson ( p )、Hans Andersson ( b )、Johan Loferantz Ramsay ( ds ) の4tet 編成です。全8曲中彼のオリジナルは3曲と、前作に比べてやや少なめです。その他はスタンダードとなるわけですが、ありきたりの定型的スタンダード演奏ではなく、かなり刺激的なアレンジが施されています。そしてその要はやはり Jacob Karlson でしょうね。Karlson は 2002年に『 Today 』( Prophone ) という尖がったスタンダード集を出していますが、彼の手にかかるとスタンダードといえど、聴きごたえがあります。硬質で先鋭的、時にアヴァンギャルドでさえあるスタイルながらも、浮き立つような美しいメロディーが時折表出してくる、いわば攻撃的抒情派ピアニスト、Karlson。彼の存在なくしてこの名盤は生まれ得なかったと断言します。恐るべし Karlson ! 1曲目≪ In a Pensive Place ≫ はいかにも北欧的な静謐な空気感を漂わせるバラード。その空気感を受け継ぎ静かに始まる2曲目は≪ Days of Wine and Roses ≫。この手垢にまみれたスタンダードが鮮やかな色彩を放ちながら蘇ります。特に Karlson のソロが凄いです。≪ Days of Wine and Roses ≫ のピアノソロでは、Pat Martino の『 Exit 』におさめられた Gil Goldstein のそれがベストだと思っていましたが、この Karlson のソロはそれよりも美しい。Peter にしても、情感の音への溶け込ませ方が以前にも増してうまくなっています。北欧版詫び寂びの世界観。Peter Asplund、イイ感じに仕上がってきていますね~。至極当然のことですが、プロといえど技術的に巧くなっていくわけで、その意味では彼は非常に将来が楽しみなアーティストです。必聴・必携の大推薦盤です。Peter Asplund の Official Web Site はこちら。Jacob Karlzon 『 Big 5 』 2003 Prophone PCD069いつか紹介しようと思いつつも今まで機会がなかったので、この際、ここで紹介しておきます。Peter Asplund と Karl-Martin Almqvist ( ts ) の2管フロント。2人ともSJO のメンバーですね。全編 Karlzon のオリジナルで、激しく興奮する質の高い楽曲が並んでいます。めちゃくちゃカッコいいです。 Anywhere.FM by Criss
Anywhere.FM by Criss スウェーデンの中堅トランペッター Peter Asplund (ピーター・アスプランド)の通算5作目となる新作です。前作『 Lochiel’s Warning 』( 前項あり )が2004年の発売でしたから実に4年ぶりとなります。彼の新作が出るのを首を長くして待っておられた方も多いのではないでしょうか。ご安心ください。この新作、期待を裏切らない出来のよさです。前作も素晴らしい作品でしたが、それを上回る高品位です。またまた惚れてしまいました。そう思うと昨年末に原宿クエストホールに「 Swedish Beauty Live 」のバック・メンバーとして来日していたのに観れなかったのが悔やまれます。ますは簡単に経歴を。69年にストックホルムの郊外の町、セデルティエに生まれた Peter は、両親が音楽教師であったこともあり、音楽的に恵まれた幼少期を過ごしました。そして何と4歳の時に聴いたルイ・アームストロングに衝撃を受け、将来ジャズ・ミュージシャンになろうと決心したそうです。10歳になる頃には地元のクラブ・バンドやジャズ・コンボに入り演奏するようになり、16歳で地元の音楽学校に入学。2年間のストックホルムでの学生生活を経て、名門である王立ストックホルム音楽院に入学しています。スウェーデン国内では非常に高い評価を得ており、ジャズに限らずポップスやソウル系などの各方面からオフャーが殺到しているようです。現在はスウェーデンの3大名門ビッグバンドのうちの2つ、 Tolvan Big Band と Stockholm Jazz Orchestra ( 以下SJO )に在籍し、一方で自己のバンドやJacob karlzon のバンドなど、数多くのプロジェクトに参加しているようです。 おそらく、僕らが彼の演奏を始めて耳にしたのは Jan Lundgen and Peter Asplundの共同名儀による『 California Connection 』( 1997 Four Leaf Clover )ではないでしょうか。( 1999 年に Jan Lundgren の単独名義で Fresh Sound からリイシューされています。)当時はまだPeter は10代でしたから仕方ないのですが、やはり米国のハード・バッパー(特にクリフォード・ブラウンが好きだったようです)を手本にしたような精悍闊達な折り目正しい正統派バッパーでした。しかしまあ、巧いけどそれほど印象には残らない作品だったのです。そのため個人的には当時の彼のリーダー作には全然興味がありませんでした。『 Open Mind 』( 1995 Dragon )、『 Melos 』( 1999 Sittle )、そして『 Satch as Such 』( 2000 Sittle )と、コンスタントに作品をリリースしていたものの、すべて見逃しています。やっと彼の作品を聴いたのが2004年の前作『 Lochiel’s Warning 』というわけで、以来、Peter 聴きたさに SJO の作品を買い漁っているのですが、ひとつの作品中、彼のソロはせいぜい1回、ないしは2回ですのでどうしても欲求不満になっちゃいます。 まあ、SJOのリーダーは≪北欧のアート・ブレイキー≫の異名を持つトランペットの Fredrik Noren ( フレデリック・ノーレン )ですからどうしても Peter のソロは控えめになるのは仕方ありません。そうそう、Atomic の Mangus Broo もいるし。それに SJO には看板ソリスト Karl-Martin Almqvist もいますしね。 閑話休題。今回の新作は前回同様、レギュラー・メンバーである Jacob Karlson ( p )、Hans Andersson ( b )、Johan Loferantz Ramsay ( ds ) の4tet 編成です。全8曲中彼のオリジナルは3曲と、前作に比べてやや少なめです。その他はスタンダードとなるわけですが、ありきたりの定型的スタンダード演奏ではなく、かなり刺激的なアレンジが施されています。そしてその要はやはり Jacob Karlson でしょうね。Karlson は 2002年に『 Today 』( Prophone ) という尖がったスタンダード集を出していますが、彼の手にかかるとスタンダードといえど、聴きごたえがあります。硬質で先鋭的、時にアヴァンギャルドでさえあるスタイルながらも、浮き立つような美しいメロディーが時折表出してくる、いわば攻撃的抒情派ピアニスト、Karlson。彼の存在なくしてこの名盤は生まれ得なかったと断言します。恐るべし Karlson ! 1曲目≪ In a Pensive Place ≫ はいかにも北欧的な静謐な空気感を漂わせるバラード。その空気感を受け継ぎ静かに始まる2曲目は≪ Days of Wine and Roses ≫。この手垢にまみれたスタンダードが鮮やかな色彩を放ちながら蘇ります。特に Karlson のソロが凄いです。≪ Days of Wine and Roses ≫ のピアノソロでは、Pat Martino の『 Exit 』におさめられた Gil Goldstein のそれがベストだと思っていましたが、この Karlson のソロはそれよりも美しい。Peter にしても、情感の音への溶け込ませ方が以前にも増してうまくなっています。北欧版詫び寂びの世界観。Peter Asplund、イイ感じに仕上がってきていますね~。至極当然のことですが、プロといえど技術的に巧くなっていくわけで、その意味では彼は非常に将来が楽しみなアーティストです。必聴・必携の大推薦盤です。Peter Asplund の Official Web Site はこちら。Jacob Karlzon 『 Big 5 』 2003 Prophone PCD069いつか紹介しようと思いつつも今まで機会がなかったので、この際、ここで紹介しておきます。Peter Asplund と Karl-Martin Almqvist ( ts ) の2管フロント。2人ともSJO のメンバーですね。全編 Karlzon のオリジナルで、激しく興奮する質の高い楽曲が並んでいます。めちゃくちゃカッコいいです。 Anywhere.FM by Criss