雨の日にはJAZZを聴きながら

FC2 に引越しました。http://jazzlab.blog67.fc2.com/

Daniele Scannapieco 『 Never More 』

2005年11月30日 20時23分41秒 | JAZZ
High Fiveを聴いてファブリッツィオ・ボッソのファンになり,あらためてイタリアン・ジャズの凄さ,懐の深さを知ったJazz Fanは,ここ2,3年の間に急増したのではないでしょうか。何かといえばボッソ,ボッソと,だれもが口々に賞賛するボッソですが,High Fiveや他のボッソ参加アルバムを聴いていると,とっても気になる人がボッソの隣にいるんですね。彼の名はDaniele Scannapieco (ダニエル・スカナピエコ)。決して派手ではないけど,ボッソの隣に不可欠な存在。ボッソの女房役でしょうか。スピード感抜群で,キュートな,超絶技巧のボッソに対して,野太い滑らかなトーンで,優しく包み込むスカナピエコ。対照的なふたりの作り出すハーモニー,このカウンター・バランスは,Blue Note時代のリー・モーガン=ハンク・モブレーを彷彿させます。スカナピエコの音はモブレーよりは音域があり,エッジも立っていて,どちらかというとジョー・ヘンに近いかな。ロリンズ的にブローするところもあって,なんとも表現が難しい。でも凄く色気があって,饒舌すぎないところが愛着が湧くな~。単純に<好き>と言いたい音です。どんなに上手くてもエリアレには感じたことのない近距離感が感じられる吹き手だと思います。

そうなると,彼のリーダー・アルバムを聴いてみたくなるというもの。そこで,今日は彼のアルバムを引っ張り出して聴いております。彼は知るかぎり2枚アルバムを出しています。2004年のnight & dayから出た『 Daniele Scannapieco 』と,Via Veneto Jazz から出た『 Never More 』です。『 Daniele Scannapieco 』はウマチェカやバティスタさまが入ってます。で,今日聴いているのは『 Never More 』の方。

このアルバムではボッソが2曲参加して,その他の8曲はカルテットの演奏です。M-1からミディアム・テンポのビ・バップっぽいテーマをボッソとスカナピエコの2管で吹き,そのままスカナピエコ~ボッソ~モロニのソロ連携。ハード・バップの王道ともいえる構成,楽曲でぐっと聴き手の心を掴みます。M-2はスカナピエコのオリジナルでタイトル曲の<Never More>。美メロ・バラードです。バックでストリングスが優しく歌います。もう最近,歳のせいか,こういう美メロ・バラードに一番弱いです。酒だ,酒~。ちょっとウイスキー取ってきま~す。   で,次はM-3<God Will Provide>。これ,ボナフェーデの曲ですわ。この人,前にも言ったけど,ピアノ弾くより作曲,編曲に興味があるみたいです。この曲も凄くイイ。哀愁賛歌。僕の人生まんざら捨てたモンじゃない。と,思っちゃう楽曲。ボナフェーデ~。え~で~。M-4<After The Rain>。おー,コルトレーンの登場です。彼にもコルトレーンへのオマージュがあるんですね。意外です。研ぎ澄まされた緊張感。漆黒の闇。まさにコルトレーン・ワールド。M-5<Nose Off>で再びボッソ登場。ハーフ・バルブがカッコイイー。M-8<Fast mood>はHigh Fiveの『 Jazz For More 』でボッソとの2管で演ってましたね。なんか,スカナピエコ一人でテーマ吹くと寂しい感じです。ラストM-10<…is good …>は短尺な8 ビート・ブルースで明るく終わります。

これからも少しづつ,ボッソ関連CDを集めていきたいのですが,最近は<ボッソ参加アルバム>というのが,ひとつのブランドになってしまって,なかなか安く手に入らないのが残念です。

Daniele Scannapieco 『 Never More 』 2004 Via Veneto Jazz VVJ054
Daniele Scannapieco(ts)
Fabrizio Bosso(tp)
Dado Moroni(p)
Ira Coleman(b)
Gregory Hutchinson(ds)

Joey Calderazzo 『 Our Standards 』

2005年11月29日 21時25分28秒 | JAZZ
巷では,歌の手帳別冊の「幻のCD 廃盤/レア盤 掘り起こしコレクション」が人気で,これに掲載されてCDは軒並み高額商品に格上げされているようです。先日もオークションを見ていたら,アラン・ブロートベントの『 Another Time 』が15500円の値をつけてました。ホントびっくり。以前は2000円台で中古コーナーに置いてあったのに。買っておけばよかったと後悔してます。

まあ,あまり僕もレア盤などといった如何わしいブツには興味がないのですが,それでもこの本を見ていると,数枚欲しくてしかたないレア盤が掲載されています。スティーブ・キューンの『 The Vanguard Date 』(Owl),テテ・モントリューの『 En La Trompetilla 』(SRP discos),マルコ・デ・マルコの『 Suite Parisienne 』(Fonit Cetra)などは,多少高額でも欲しいCDではあります。

最近はNORMAが,この本に掲載されているCDを十数枚,再発していますが,個人的にはあまり触手がのびない作品ばかりです。安ければ買ってもいいかなという作品もありますが,なにしろ2880円という,輸入盤にしてはかなり高い値段設定にも,ちょっと閉口してしまいます。再発とはいっても,どこかの倉庫に眠っていたデッドストック品みたいですし。そんな中,1枚だけ,以前から欲しかったアルバムがこのNORMAの再発品の中にあったんですね。それがジョーイ・カルデラッツォの『 Our Standards 』なんです。

カルデラッツォのReader Albumは現在までに6枚あり,全部所有していたのですが,本作だけ持ってませんでした。厳密には3人の共同名義なので,カルデラッツォのCo-reader albumということになるわけですが。さて,このアルバムですが,ベースがダニエルソン,ドラムがヤツック・コハンですから,メンバーからも想像がつくように,叙情性豊かなEuropean Piano Trio に仕上がっています。カルデラッツォは米国東海岸を代表する凄腕のメインストリーム系の若手(とはいっても40歳になるんですね)ですが,ハンコックやマッコイを彷彿させる,モード・ラインを多用するタイプです。ドラムのジェフ・ワッツやディジョネットに煽られながら,超音速で鍵盤を昇降するパッセージは,かなり刺激的で攻撃的です。

彼のReader作で見てみると,91年の『 In The Door 』(Blue Note)から92年『 To Know One 』(Blue Note),93年『 The Traveler 』(Blue Note)がNY メインストリーム系のストレート・アヘッド な演奏ですが,95年の『 Secrets 』では,ボブ・ベルデンのアレンジがちょっとカルデラッツォらしいスピード感のある奔放なプレイに合わず,欲求不満の残るアルバムでした。本作『 Our Standards 』(1996 Gowi)はそんな時期に録音されたアルバムで,『 Secrets 』同様,それまでのカルデラッツォのBlue Noteの諸作品から比べると異色作であったわけです。内容はというと,M1からFree Styleの曲で,面食らいますが,M2のダニエルソンの短いベース・ソロからM3の<Footprints>の流れはカッコイイし,なにしろダニエルソンの木の香り漂う,暖かい音色がすばらしい。M5の<There Is No Greater Love>,M7の<My Shinning Hour>,M9の<Stella By Starlight>などは,まさに欧州叙情派のスタイルなんです。ブラインド・ホールド・テストやったら,絶対当たらないじゃないかな。やはりイタリア人の熱い血がカルデラッツォには流れているということでしょうか。マイ・ベストは美しいメロディーの<My Shinning Hour>で,この1曲で“買い”です。このアルバムはカルデラッツォ・ファンにはウケが悪いかもしれませんが,そのかわり,ユーロ・ジャズ好きには結構ウケるかもしれません。

この作品を発表後,しばらくReader作はなく,2000年にブランフォード・マルサリスのプロデュースによる傑作『 Joey Calderazzo 』(columbia)をリリース。昨年にはピアノ・ソロ・アルバム『 Haiku 』(marsalis)を出したりと,更に幅広い活躍を行っているカルデラッツォです。

ベランダの電飾付け

2005年11月27日 19時53分20秒 | 日常

夕方の5時から,うちのマンションでは,エントランスの電飾の点灯式が行われました。
子供に見せたかったので参加したのですが,ついでに我が家でもベランダに電飾をつけようと思いつき,近くのホームセンターで,とりあえず200個の電球を買ってきて取り付けをしてました。
200個は多いかなと思ったらとんでもない。全然足りなかった。
今日はこのくらいにして,来週,追加電球を買いに行かねば。

今日聴いたアルバム

2005年11月27日 10時43分33秒 | JAZZ

さっきも書きましたが,今日は一日中家の掃除になりそうなので,ちょと変わったブログ書こうかな。それは,BGMで聴いたアルバムを,リアルタイムでジャケット画像をアップしいていくというもの。ではテルジクの『 Coming Up 』に続いて,2枚目はポール・ボーレンバックの『 Original Visions 』.。

234

7

2)Paul Bollenback 「Original Visions」 デフランチェスコ・バンドのギタリスト。マルティーノの進化型。新鮮。
3)Steve Kuhn 「 1960 」 ラファロ参加の発掘盤。まあまあ。エバンスの真似がちょっとつらい。
4)John Mclaughlin Trio 「 Que Aligria 」 ピアッツアのベースが凄い。カッコイイ~。
5)Eden Atwood 「 Waves 」ボサノバ・アルバム。バックの演奏もいい。彼女のベスト3。
6)Dave Peck 「 3 and 1」これ,絶対いい。新作「Good Road」よりもこっちの方が楽しくて優雅。名盤。
7)Gene Dinovi 「 So In Love 」ジャケット見ると聴きたくなる。でも内容は平均的。印象やや薄。

8 9 10

111213

8)Elvis Costello Burt Bacharach 「 Painted From Memory 」 冬の定番。これを聴かなきゃ冬が来ない。
9)Gill Goldstein 「 Time Remembered 」 エバンス・トリビュート。久しぶりに聴いた。ぐっときた。
10)High Five 「 Jazz For More 」米のOne For All。伊のHigh Five。ボッソはやっぱり凄い。
11)Tina Brooks 「 Minor Move 」レコード持ってても,もったいなくて針落とせない。今日はCDで聴く。
12)Lou Donaldson 「 Hot Dog 」メルビン・スパークス,チャールス・アーランドって,なんてかっこいいんだ。
13)Jeff Gardner 「 Continuum 」なんか,体がだるくなって寒気がしてきた。咳きもでるし,風邪引いちゃったかな。今日はもう寝よう。これ持って寝室に移動します。

結局,今日は13枚も聴いた。掃除をしながら,ぼーっと一日中Jazzを聴けるのは幸せ。久しぶりにのんびりできたな~。うれし。


Dejan Terzic 『 Coming Up 』

2005年11月27日 10時22分41秒 | JAZZ
しばらく父の病気のとこでバタバタしていて,家の中はすっかり荒れ果て,ごみ屋敷化していたので,今日,日曜日は早起きして妻と一緒に大掃除をしています。よーしやるぞ~と,たまった雑誌の整理なんぞしています。BGMは気合を入れるためにもスピード感のあるハード・バップで,できれば欧州物でと考えて,棚からこんなの取り出してセットしたところです。

Dejan Terzic 『 Coming Up 』2001 Double Moon DMCHR 71034
アントニオ・ファラオ (p) 
デジャン・テルジク (ds) 
イェンス・ウィンター (tp) 
トニー・ラカトス (ts,ss) 
マーティン・ G・ヤコノフスキー(b)

デジャン・テルジクは,6~7年前にUgetsuという変な名前のバンドで叩いていたのですが,その頃はあまり目立った演奏ではなかった(バンド自体がおとなしいハード・バップだった)ので,印象に残らなかったな。それから以前にも紹介したNAXOS JAZZの1000円シリーズで彼のリーダーアルバム『 Four For One 』が良い演奏だったので,その頃から気になっていたら,2000年頃だと思うんだけど,アントニオ・ファラオと競演するようになり,enjaやsketchからアルバムを出し始め,いっきに有名になったんですよね。アントニオ・ファラオと互角に戦えるドラマーですから,凄くないわけがないのです。僕の中では米国のジョーイ・カルデラッツォ=ジェフ・ワッツに対して,欧州のアントニオ・ファラオ=デジャン・デルジクといった図式です。凄く熱く興奮するJazzを聴かせてくれます。

このアルバムに参加しているトニー・ラカトスというts,ssの管奏者はブレッカー系というか,これまたそっくりさんで,カッコイイですよ。ドイツの地方放送局であるヘッセン放送局専属のビッグバンド,HR-Big Band のメンバーでもあります。

そういえばまだブレッカーのドナー見つからないようですね。焦ってきます。トランペットはイェンス・ウィンターですが,彼の最新作『 Concord 』(2005 stunt)でもファラオ=テルジクが聴けます。まだ持ってないのですが,近日中に購入予定作品です。きっといいに違いない。

あまり長くブログ書いていたら,妻に睨まれてしまいました。そろそろ掃除に戻ります。

Curtis Fuller 『 Blues ette 』 (2)

2005年11月26日 19時11分02秒 | JAZZ
   

Blues ette 』の続きですが,このアルバムには僕の知っているかぎり2つのバリエーションが存在します。ひとつは『 Blues ette Vol.2 』で,もうひとつは『 Blues ette Part 』です。まったくまぎらわしタイトルを付けたものです。『 Blues ette Vol.2 』は『 Blues ette 』の別テイク集です。『 Blues ette Part 』は1993年のほぼオリジナルメンバーで新たに吹き込んだサボイの企画物です。

別テイク集の『 Blues ette Vol.2 』は,オリジナルと全く曲目,曲順が同じです。そして面白いことにオリジナルとテンポ,構成,アレンジがほとんど同じ。しかもソロまでオリジナルと酷似しているのです。こんな別テイク集ははじめてみました。普通,ボツテイクはソロがつまらなかったり,途中でミスったり,ミストーンがあったりと,何かしらボツになる理由があるものですが,この別テイク集の演奏はオリジナルと同質なんです。中にはオリジナルより出来の良いソロもあって驚きです。

Blues ette Part 』の方は10曲収められているのですが,『 Blues ette 』からの<Five Spot After Dark>,<Blues-ette>,<Love Your Spell Is Everywhere >を再演奏していて,その他は,カーティス・フラーとベニー・ゴルソンの新曲,それからゴルソンのJMでの演奏で有名な<Along Came Betty>,スタンダードの<Autumn In New York>などです。<Along Came Betty>は,『 Blues ette 』の空気感にマッチしますが,フラーのオリジナル<Capt’ Kid>はラテン調で,彼の美意識に疑問が残ります。はっきり言ってアルバムのイメージを台無しにしています。

フラーの最近の演奏はリズム感も悪くなり,かなり老いを感じます。悲しいかぎりです。


Curtis Fuller 『 Blues ette 』 (1)

2005年11月26日 18時50分50秒 | JAZZ
一昨日,ブログ「Jazzを聴きながら」のバブさんが,ベニー・ゴルソンの『 Gone With Golson 』を紹介されていて,<ゴルソン・ハーモニー>という懐かしい言葉が出てきたものだから,急にカーティス・フラーの『 Blues ette 』が聴きたくなり,レコード棚から取り出してきたところです。この寒い季節には聴きたくなるアルバムなんですよね~。冬限定名盤ですかね。

このカーティス・フラーとベニー・ゴルソンのハーモニーはご存知<クロースズ・ハーモニー:密集和音>といって,音階の近い音を重ねるハーモニーですが,長3度や短3度の和音に比べて,正確なピッチを要求され,聴いているとわかりませんが,結構難しいんでしょうね。このクローズド・ハーモニーのおかげでこのアルバムは,とってもJazzyでFunkyな香りを放っているんですね。1958年から59年にかけて,二人はNYのJazz Spot「 Five Spot 」に1年契約でハウス・バンドとしての出演していた際,試行錯誤の結果,このクローズド・ハーモニーを手に入れたと,のちにゴルソンが語っていました。はじめは普通のオープン・ハーモニーで演奏していたようです。 今更,本作の素晴らしさを書いても仕方ないですが,世間的に有名なA1の<Five Spot After Dark>や,A3の<Blues-ette>よりも,個人的にはB2の物悲しいスタンダード<Love Your Spell Is Everywhere >の方が好きです。10人Jazz fanがいたら1人ぐらいそう思っている人いるんじゃないでしょうか。だいたい<Five Spot After Dark>なんてブルースですし。

<Five Spot After Dark>といえば平成元年頃,武田製薬のアリナミンVドリンクのCFで使用されていましたね。夕暮れか明け方にオフィスで働く白人のCFです。それから村上春樹の「アフターダーク」もこの曲からとったタイトルですね。主人公の男の子がJazz Bandでトロンボーンを吹いているのですが,彼がトロンボーンを持つようになった理由というのが,何気なしに中古レコード店で『 Blues ette 』を買っったら,その中の<Five Spot After Dark>が気に入って,よしトロンボーンをやろうと決めたという話です。ストーリー的には別にトロンボーンである必然性はないし,テレキャスターをしょったロック少年でもよいのですが,いちJazz Fanとしてはやっぱりトロンボーンの方が感情移入できます。

 

Giovanni Mirabassi 『 Prima O Poi 』

2005年11月25日 21時51分04秒 | JAZZ

今年のアトリエ澤野コンサート2005がまもなく開かれますね。僕は123日の東京すみだトリフォニー・ホール(錦糸町)に観に行く予定でいます。昨年のアトリエ澤野コンサート2004には何だかんだと忙しくて,観にいけなかったので,今年こそはと今からすごく楽しみにしてるんです。出演は昨年も出演したジョバンニ・ミラバッシ・トリオと,北川潔トリオ(ピアノ:ケニー・バロン)です。

というわけで,今からミラバッシのアルバムを聴いて気分を高めようと,以前から所有していたアルバム『 Architectures (1999),『 Dal Vivo! (2001)と最近買った最新作の『 Prima O Poi (2005)を取り出してきて,聴いています。

  
Dal Vivo! 』はライブ盤ですが,観客も静かで,演奏もあまりライブ感がないため,ちょっと物足りないアルバムです。しかもベースとドラムの音がすごく小さい。3者のバランスが悪いため聴いてて気持ち悪いんですよね。楽曲もあまりにも叙情的,感傷的すぎるように感じました。

それに対して『 Architectures 』はベースの音も,もの凄く大きく,輪郭の立った極太硬質な素晴らしい音で記録されています。こういうベースの音が僕は大好きです。そして三位一体のドライブ感も爽快で愛聴していました。むしろこちらのアルバムの方がライブのようです。 

さて,最新作『 Prima O Poi 』を聴いてみましょう。1曲目から嫌な予感です。ミラバッシのアルペジオをバックにベースのアルコでテーマが奏でられます。こーいうの苦手なんです。テーマが終わるとすぐベースソロ。だれもベースソロなんか聴きたくないんだよと言いたくなります。2曲目は比較的オーソドックスな叙情的な曲でほっとします。この人はあまり左手でたくさんの音を出さない方がJazzyに聴こえます。あまりにも上手すぎてクラシック的な盛り上げ方をすればするほど,醒めてしまいます。3曲目にフラヴィオ・ボルトロが激しくブローして雰囲気が一変します。なかなか良い選曲です。リリカル一辺倒では飽きてしまいますから。フラヴィオ・ボルトロの後のミラバッシのソロも冴えています。で,ここで気がついたのですが,ベースの音がもこもこして聴こえません。ベース音のレベルを上げてくれー。5曲目は美しいテーマを持ったミディアム・テンポの曲です。おー,良いじゃないですか。ソロもシングル・トーン主体で,特にハイ・トーンでのソロはキラキラしていて美しさこの上ない。なんて曲? <Theme From Howl’s Moving Castle>ですって。ふーん。え?<ハウルの動く城のテーマ>? あの宮崎駿のアニメの曲なの~。ホント? びっくりしました。何でこんな曲が入っているの。ミラバッシのアルバムは日本では澤野工房が輸入発売していますが,原盤はフランスのSketchのはずです。澤野さんがSketchサイドのプロデュースに注文つけているんですね。びっくりしました。Sketchもそれだけ日本市場を重要視しているということなんですね。6曲目はエグベルト・ジスモンティの名曲<loro>です。ペトっぽい雰囲気のソロを聴かせてくれます。以下,ブログの字数制限のため書けず省略。

ミラバッシのアトリエ澤野コンサート2004DVDが出るようです。これは買わなきゃ。


Anthony Wilson 『 Adult Themes 』

2005年11月24日 21時20分24秒 | JAZZ
今週初めにデヴィッド・ヘイゼルタインの記事を書いた際,『 Alice In Wonderland 』が僕の最愛聴盤であることを言いましたが,それは<Danny Boy>が聴けるからなんです。悲しいスロー・バラードがちょっとヘイゼルタインのスタイルには意外ですが,とっても情感豊かで思わず引き込まれる名演です。もともと<Danny Boy>はアイルランドの民謡で,<ロンドンデリーの歌>といいます。ロンドンデリーとは北アイルランド州の地名だそうです。地元では教会の賛美歌として歌われているようです。中学生の時に音楽の授業で聴いたような記憶があり,今でもこの曲を聴くとその頃を思い出します。あまりJazzでは取り上げられないのですが,ビル・エバンスの『 Empathy 』(Verve)や,最近ではエディー・ヒギンズの『 Portrait In Black & White 』(Verus)で聴けます。

そして僕の最も好きなバージョンがこのアンソニー・ウイルソンの『 Adult Themes 』での<Danny Boy>なんです。スモール・コンボ編成で,テーマをジャック・ニミッツというバリトン・サックス奏者が緩やかに奏でます。この曲,戦争に行く息子を見送る母親の胸の内を綴った歌なんですよ。僕は村上春樹の「もし僕らのことばがウィスキーであったなら」を読んでから,アイリッシュ・ウイスキーが大好きになり,タラモア・デューは切らしたことが無いのですが,今晩はそれでも飲みながら『 Adult Themes 』でも聴くとしましょう。

P.S. <Danny Boy>のことばかり書きましたが,このアルバムでは<Danny Boy>が7曲目で,その前の6曲目がビートルズの<Because>なんです。この流れが最高に美しくて,やっぱり曲順で大切だよな~と感じる選曲でした。

Lars Jansson 『 Hope 』

2005年11月23日 21時03分20秒 | JAZZ
一昨日,父の直腸癌の手術が無事終わり,昨日は仕事を早々切り上げ,午後から高速を飛ばして宇都宮の病院まで見舞いに行ってきました。一番の心配事であった「開腹したら腹膜転移があって切除不能」という事態だけは免れたようで,まずはひと安心です。

病理組織の結果は1週間後には出ますが,それ次第で癌の進行度,ステージが決定され,さらには予後(生存率)がおおよそ分かるわけです。病理結果がでれば正確にわかりますが,おそらく再発せず完治する確率は40%から70%の間でしょう。希望の光がやっと見えてきました。頑固で,僕の言うことを全然聞き入れない親父ですが,まだ67歳。死ぬにはちょっと早すぎます。出来る限りサポートしていきたいと思います。

ラーシュ・ヤンソン『 Hope 』。

以前にも書いたのですが,現在の欧州ピアニストは乱暴に言い切ってしまうと,みんな<キース・ジャレット系>ではないかと思っています。キースの遺伝子を引き継ぎながらも,自らが育んだ遺伝子も継承し,彼らの国々の風土,習慣などからの環境因子も取り込み,確実に進化したキース系ジャズが欧州には増殖しています。そして,そんなキース系の超進化型ミュージシャンの最右翼がラーシュ・ヤンソンではないかと思います。昔「スウィングしなけりゃ意味が無い」なんて言葉がありましたが,今はそんなものはJazzには必要ないのです。スウィングはJazzの必要条件ではなくなったのです。ひたすら美しい旋律を奏でること,そのことこそがJazz Pianoに求められているのです。

『 Hope 』。今更紹介しなくても,みんながよく知っているアルバムですが,今の僕の痛んだ心に優しく沁み入る素敵な作品です。これ以上の美旋律はこの世に存在しないのではないかと思うほど,美麗フレーズが続きます。

このブログは,僕の個人的な好みでJazzのアルバムを紹介しているので,アルバムを訪問してくださった方々にお薦めすることは極力しないよう心掛けています。だから「お薦め盤」ではなく,いつも「愛聴盤」であります。でも,本作だけは強く「お薦め」したいと思いました。かなり有名で,ラーシュ・ヤンソンの代表作ですので,薦めるまでもなくご存知かとは思いますが,まだ聴いていない方はぜひ聴いてみて下さい。絶対,心が暖かくなり,癒されますよ。

Full House 『 Champagne Taste 』

2005年11月23日 19時05分52秒 | JAZZ
一昨日のデヴィッド・ヘイゼルタインの話のついでに,もう一枚,最近の彼の愛聴盤を紹介したいと思います。ヘイゼルタインの活動は,Sharp Nine, Criss Cross, Go Jazz, そしてVenusへの自己名義のアルバム製作,One For Allでの活動,サイドメンとしての活動(これが結構多い)などがありますが,最近,Full Houseというジム・ロトンディとヘイゼルタインの双頭バンドでの活動も行っているようです。今のところnagel heyer labelから『 Champagne Taste 』というアルバム1枚しか発売になっていません。これは2002年,NYCにあるJazz Club <Smoke>でのGigを収録したものです。毎週木曜日に数週間にわたりGigが行われたようですが,その後のFull Houseとしての活動は不明です。一回きりのGigだったのか,今後もOne For Allのように定期的に集まって演るのか分かりません。

本作はヘイゼルタインがローズやB3を弾いているのが話題になったのですが,実際にはB3はスパイス的に使用されているだけで,ソロもほとんどローズを使用して弾いています。これならわざわざ本物のB3を運び込まなくてもB3シュミレーターで十分のような気もしますが。それにしてもヘイゼルタインのローズでのソロは上手くて,ジョー・サンプル顔負けです。全体に70年代のクロスオーバーを彷彿させるアレンジで,僕としては非常に気に入っていますが,好き嫌いがはっきり分かれるかもしれません。ロトンディが吹いているせいで,何となくCTIのフレディー・ハバード風の雰囲気があり,タイム・トリップしているかのような錯覚に陥ります。

楽曲は半分がメンバーらのオリジナルで,その他には,シダー・ウォルトンの<Afreaka>,ジョー・ヘンの<Mamacity>,EW&Fの<Reasons>,ハロルド・アレンの<Out Of This World>などで,選曲も結構おもしろいですね。個人的にはリー・モーガンの『 The Sixth Sense 』に収録されていた<Afreaka>が好き楽曲だったので,これ1曲で買いでした。

最近のNYのオルガンジャズ人気に便乗して即席で結成されたプロジェクトの感は否めませんが,70年代,80年代をクロスオーバー,フュージョンで過ごした人には,結構楽しめるアルバムではないでしょうか。

Full House 『 Champagne Taste 』2005 nagel heyer 2058
Greg Skaff (g)
Jim Rotondi (tp)
David Hazeltine (Fender Rhodes, Hammond B3)
Barak Mori (b)
Joe Strasser (ds)

David Hazeltine 『Cleopatra’s Dream 』

2005年11月21日 21時59分04秒 | JAZZ

デヴィッド・ヘイゼルタインのビーナス通算5枚目の新作はバド・パウエル集で,そのタイトルも『Cleopatra’s Dream 』です。<クレオパトラの夢>を入れれば日本人が飛びつくと思ったら大きな間違いですよ,原さん。そろそろバド・パウエル=クレオパトラの夢という発想はおしまいにして欲しいものです。1998年の1作目がビル・エバンス集で,2000年の2作目がホレス・シルバー集で,さて3作目はバド・パウエル集でも持ってくるのかなと思いきや『 Pearls 』では<マスカレード・イズ・オーバー>や<ダーン・ザット・ドリーム>などのスタンダードを中心にオリジナルの楽曲を3曲挟み込み,がっちり絞めた硬質な仕上がりのアルバムで,ほっとしていたのに,とうとう今回バド・パウエル集を作ってしまいました。しかもまたもや裸ジャケで中年親父を餌食にしようとしていて,原さん,やることがちょっと下品です。有名ジャズ雑誌には決して書かれないけど,みんなこの路線には食傷ぎみですよ。そろそろ気づいてくださいね。

ということで,分かっていながら本作も買ってしまいました。個人的にはバド・パウエルはあまり好きではない部類のピアニストなので,まずはバド集というだけで,一歩引いてしまうところですが,まあ,出来はそれなりに合格点なのではないでしょうか。というか,ヘイゼルタインのアルバムには<はずれ>が皆無なんですよね。そのかわり<大当たり>も無いのですが。いつも82点ぐらいとって試験をすり抜ける優等生的ミュージシャン。技術はすごいが,保守的な演奏スタイル。冒険は決してしない。原さんに「バド演ってよ~。」と言われれば,素直に1枚アルバム作ってあげちゃう人の良さ。僕の中ではそんな印象があります。

でも<はずれ>がないということは素晴らしいことではあります。忙しい時間の中で,Jazzを聴く時間は限られています。家に帰れば子供をお風呂に入れなくてはなりません。ベランダの植物には水もやらなければなりません。妻のくだらない世間話の相手もしなければならないのです。そんな多忙な生活の中でJazzを聴けるのはせいぜい1時間から2時間でしょう。<はずれ>は極力避けたいのです。名前も知らない,しかも読み方も分からない欧州ジャズメンのアルバムで貴重な時間を無駄にはしたくないのです。そんな時に,ヘイゼルタインは良質なJazzを保証してくれる頼もしいピアニストなのです。という安心感からか,僕のCD棚には,彼のアルバムが13枚もあります。ここで,全部は紹介できないので,ビーナスの5枚を好きな順に載せておきます。

★★★★★
2004 『 Alice In Wonderland 』George Mraz(b), Billy Drummond(ds)
選曲がとにかく好み。<Beautiful Love>,<Alice In Wonderland>,そして大好きな<Danny Boy>が入っているので,つい手が伸びてしまう。ここでのムラーツとドラモンドは凄く良い。ちなみにジャケットの少女の後ろ姿が昔(あくまで昔)の妻の後ろ姿に似ていて,何故か愛着があるアルバムです。

★★★★
2001 『 Pearls 』Peter Washington(b), Joe Farnsworth(ds)
「原さん,たまには好きな曲を演らしてよ。」とだだをこねて(?)作ったビーナス3作目。ヘイゼルタインの堅実なハード・バピッシュなソロが爽快です。こういうアルバムをヘイゼルタインに期待しちゃいます。GO JAZZに吹き込んだ『 After Hours 』に通じる最も硬派なヘイゼンタインが聴けます。

★★★★/2
2000 『 Senor Blues 』Peter Washington(b), Louis Hayes(ds)
ホレス・シルバー集です。ホレス好きの僕としては<The Back Beat>,<Song For My Father>など,よだれが出そうな曲がいっぱい詰まっていて,楽しいアルバムです。ピーター・ワシントンとルイス・ヘイズの,いわゆる「The Classic Trio」のメンバーを起用したことも成功してます。こういう楽曲にはムラーツは絶対合いません。今回の『Cleopatra’s Dream 』もピーター・ワシントンとルイス・ヘイズで聴きたかった。

★★★
1999 『 Waltz For Debby 』George Mraz(b), Billy Drummond(ds)
ビル・エバンス集ではあるけれど,何故か聴き終えた後,エバンスを聴いた感じが希薄。当たり前で,ヘイゼルタインはエバンスの楽曲を素材として使用したに過ぎず,ソロになればお得意のバピッシュ・フレーズの連発。全然エバンス風には聴こえません。本作を聴くなら,エバンスのアルバムを聴いた方がずーといい。当たり前か。でもジャケット・センスはピカイチ。結構売れたんじゃないでしょうか。


Eddie Higgins 『 You Don’t Know What Love Is 』

2005年11月20日 20時17分13秒 | JAZZ
今月8日に父の直腸癌が発見されてから慌しい日々が続いていましたが,ついに明日は手術の日になってしまいました。僕もだいぶ精神的に落ち着いてきて, Jazzを聴く余裕もでてきたので,昨日は久しぶりにDisk Unionに行って,新譜3枚と旧譜の中古を10枚程買って来ました。でもやはり明日の手術のことを考えると焦心苦慮し,なかなか集中してJazzを聴く気分にはなれません。結局,今日も家で子供と遊んだり,家族で隅田川土手を散歩したりして,何となくぼーと過ごしてしまいました。先ほどから自室に籠ってJazzを聴いていますが,こういう時に聴けるJazzって,なかなか無いものです。あまり心に突き刺さる音は聴きたくないし,ノリのいいJazzも気分に合わないし,ということでEddie Higgins の『 You Don’t Know What Love Is 』を繰り返し聴いています。まあ,どうでもいいアルバムですが,今の精神状態にはちょうどいいかも。でもこのアルバムはオーディオマニアには結構評判が良いみたいです。ハイブリッド版も発売されていて,ピアノもベーゼルドルファー・インペリアルを使用していたりと,音にこだわったVenusらしい作りです。

妻は今晩0時から始まる酉の市に出かけてくるそうです。父のためにお守りを買うためです。明日は早朝に宇都宮に新幹線で行き,病院で待機してくれるようです。本当に助かります。火曜日には僕も仕事を早々に切り上げ,お見舞いに行く予定です。

それにしても今年は子供の誕生,父の癌と,悲喜交々の一年でした。

Eddie Higgins 『 You Don’t Know What Love Is 』2004 Venus TKCV35175
Eddie Higgins (p)


父の話。

2005年11月18日 13時23分13秒 | 日常
11月7日にたまたま栃木の実家に電話したところ,67歳になる父の体調がこのところ悪くて,仕事も辛いという話を母から聞かされました。どうも3ヶ月程前から疲れやすくなり,10月下旬からはほとんど食事がとれず,頻回に便意をもよおしているとの事でした。すぐにこれは直腸癌だと感じました。8日に仕事を休み帰省し,そのまま僕の病院に父を連れてきて,大腸内視鏡検査やCTなどを自分の手で行いました。案の定,進行した直腸癌で,肝臓にも5cm大の腫瘍が2個ありました。直腸癌は肝臓や肺に転移しやすいので,肝臓の腫瘍をCTで最初に見た時は,転移性肝癌だと思い込み,血の気が引きましたが,冷静に見直すと肝臓にできた膿の溜まり(肝膿瘍)でした。肝膿瘍は悪性腫瘍に合併することがまれにあるのです。また,糖尿病にも合併することもあるため,その検査もしたところ,やっぱり糖尿病も認めました。


 うちの父は自営業で,検診や病院通いなどほとんどした事なく,いつも『おれは39℃熱があっても仕事をしてきたんだ。』と自慢げに話す人でした。いつも帰省するたびに検診やドックを受けるよう強く勧めてきました。特に大腸内視鏡検査は,大腸癌の早期治療の点からも有意義な検査なので,幾度となく説得を試みましたが,全く僕の言う事を聞かず,『俺は風邪も引いた事ないから大丈夫だ。』と言いはり,今まで一度も内視鏡検査を受けていませんでした。今回のことで,母から聞いたのですが,17年前に生命保険に入るための審査で血糖値の異常があると指摘されても,数回通院しただけで自己判断で治ったと思い込み,通院を中止したようです。さらに2年前にも便潜血反応が陽性であったのにもかかわらず,精査を受けなかったようです。そのような事があったことすら僕は知りませんでした。頑固で身勝手な父が父なら,それを放置していた母も母です。今回の病気は無知な夫婦で作り上げた病気であると僕は思いました。

手術に関しては,このまま僕の所属する大学で行うか,地元の宇都宮の病院に転院して行うか迷いましたが,母の看病や地元の親戚の事,実家で飼っている犬の事など,いろいろ考慮した上で,宇都宮の病院に転院して手術を受けることに決めました。11月10日には転院させ,同日,肝膿瘍の膿みを抜く処置(膿瘍ドレナージ:PTAD)をしてもらいました。現在,11月21日の手術に向けて,手術前検査や血糖値のコントロールを行っているところです。

こんな事があって,11月7日以降,頻繁に東京と宇都宮間を行ったり来たりしていましたので,ブログを更新する時間がありませんでした。というよりも,意気消沈しジャズを聴く気にもなれませんでした。落ち込んでいるときにJazzを聴いて癒されることはよくありますが,本当に落ち込むとJazzすら聴きたくなくなるものです。

この10日間,このブログでは書ききれない程いろいろな事があり,悩み,考えて,かなり疲れてしまいました。あらためて家族の健康が一番大切であると,実感しました。健康でないと全てが崩れてしまうものです。当たり前のことですが,健康な時にはあまり意識しないんですよね。

今日も妻は子供を抱っこして新幹線で宇都宮に行って,父の看病をしています。本当に僕の父の事を心配し,いろいろな事をしてくれてます。感謝してます。

今週末は少し落ち着いて,家でゆっくりできそうです。またJazzの話でも再開したいと思っています。

        昼休みの医局で,Lars Jansson 「 Invisible Friends 」を聴きながら。