雨の日にはJAZZを聴きながら

FC2 に引越しました。http://jazzlab.blog67.fc2.com/

「管理人の輪を広げよう!バトン」

2006年09月30日 16時35分21秒 | JAZZ
相互リンクさせていただいているブログ「 My Secret Room 」の管理人,Suzuckさんから「管理人の輪を広げよう!バトン」が回ってきましたので,謹んでお受けしたいと思います。

Suzuckさんは僕がブログをはじめて間もなく,イタリアン・ジャズについて検索していた際,偶然たどり着いたジャズ・ブログの管理人さんです。音楽という音媒体を非常にエモーショナルな散文定式で文字に置き換えられる才能をお持ちの方です。僕のようなデータの羅列に終始する駄文ではなく,深くミュージシャンの心象にまで入り込み,独特の言い回し,切り口でジャズを語ってくれます。一見,怪しげなアダルト・サイトと思われがちなタイトルですが,れっきとしたジャズ・ブログです。どうぞ訪ねてみてくださね。ちなみにSuzuckさんは新潟市在住の女性です。


では、「管理人の輪を広げよう!バトン」を始めますね。
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バトンを受け取った方は下記にHNの記載をお願い致します。

┗新空ちはら→佐和コウイチ→藤ちょこ→日原玲→虎津
→狸狗子→絢→ 佐佑→ルク→三笠麻都→愛水麻彩
→Kou→miyuki→マロン→みなみ→美波→そのみ
→バイアリー・ターク→jasumin→新歌→はらぺーにょ→ruca
→まつかぜ→jester→くっちゃ寝→アーティチョーク→Suzuck
→criss

1.貴方のHNを教えて下さい
本当はcrissmorganだったのですが,長ったらしく重々しいので,いつも「criss」(クリス)って名乗っています。crissはアルト・サックス奏者のソニー・クリスからとってます。モーガンは言わずと知れたリー・モーガンからとっています。昔,大学のころ,この2人が好きで,その後,ニフティーでのHNをクリスにしたのが,そもそもの始まりでした。

2.貴方のサイト名を教えてください
「雨の日にはJAZZを聴きながら」と言います。作家,山田詠美さんの「雨の日はセロニアス・モンク」といフレーズをパクりました。でも僕は雨の日のジャズが大好きで,深夜,しとしとと降る雨をバックにレッド・ガーランドの<sonny boy>を聴くのが昔からの楽しみです。う,暗!

3.いつからこのサイトを始めましたか?
2005年7月19日にスタートしました。
最初のエントリーは「Blogはじめました」で,図書館で借りてきたアントニオ・ファラオの「Far Out」について書いてましたね~。懐かしいですね~。まだ文章が硬いです。あの時はこんなに続くとは正直思ってませんでした。ホント,軽い気持ちで始めたのですが,ジャズネタに関してはネタ切れしないんですよね。あとはいかにブログのために時間を作るか,ですね。

4.管理人歴はどれくらいですか?
ですから,管理人として1年2ヶ月程です。あまりこれから当ブログをどうしようとか考えていませんが,細く長くをモットーに無理をせず続けられたらと思っています。読者を増やそうとも考えていませんし,同じジャズに対する熱い思いをお持ちの方々,数名と共通のミュージシャン,アルバムについて,あーだ,こーだと井戸端的な議論が出来たら,それで満足です。

5.サイトのジャンルや属性について割と詳しく説明してください
jazz全般について,思いつきで書いています。ただしfree jazzは聴きません。Fusionは大好きです。実は蘊蓄を述べる程の知識がないのでエントリーはしませんが,progreも大好きです。「YES」の大ファンです。そもそも,中学<四人囃子>→高校<YES, king crimson>→浪人<クルセーダーズ,WR>→大学<エリック・ドルフィー,etc>ときて,仕事を始めてから,ストレス解消にと,大量一括CD購入癖が始まり,三度の飯よりCD漁りが好きで,ボロ着て,キャバクラにも風俗にも行かず,妻からもらったお小遣いのほぼ全てをCD購入に当てる毎日。

って,何の話でしたっけ。そうそう,ジャンルのお話。ブログ開設当初をジャズ・ジャイアントの話もしていましたが,最近はもっぱら新譜とちょっと前に買ったアルバム,特に欧州系の話題が多いです。基本的に記事を書きためはせず,帰宅後,思いつきで今聴いているアルバムについて,聴きながら,徒然なるまま書いております。

ピアノより管が好きで,哀愁ハード・バップの名盤探索を生涯のテーマとして,疲れると抒情派ピアノで感傷的になり,「まんざら俺の人生,捨てたもんじゃないよな~。」なんて自己陶酔する日々。

criss crossを番号順に集めるとか,エンリコのコンプリート・コレクションを目指すとかといった,コレクター的趣味はなく,できれば<ジャズの美味しいところだけを効率よくつまみ食い>したいという願望があります。そのために,信頼のおけるブログ仲間さん達からの情報が大切なんですね。そしてそんなブログ仲間さん達に,逆に僕の情報を出来るだけ正確に伝えることが,当ブログの指名なのでは,と考えております。要は,<素晴らしいジャズをみんなで効率よく共有>することがジャズ・ブログの楽しみ方,ではと。

そうそう,ほとんど話題はジャズの話なのですが,時々,1歳5ヶ月になる息子の画像などをアップしたりしております。他人の子供の事など興味がないとは思いますが,成長の記録のつもりで,いずれこのブログを製本して保存しようと考えていますので,おつきあいの程,よろしくお願い致します。
では,また。
今日はこれからライブを観に行ってきます。近くのお店に。


Jesper Bodilsen Trio 『 Mi ritorni in mente 』

2006年09月29日 21時20分41秒 | JAZZ
僕ら医師,特に大学に籍を置いているものにとっては,これから年末にかけては学会シーズンで忙しくなってくるのですが,僕も来月20日の「癌治療学会」を皮切りにいくつかの学会,および専門医試験などか重なり,超多忙になること必至なのです。先程まで発表のためのスライド制作などをしていて,今,ちょっと一息ついたところです。ふ~,疲れる。この季節は毎年,憂鬱になるんですよ。しばらく禁欲生活を強いられそうです。学会発表とうるさい上司さえいなければ,勤務医生活もまんざら悪くないんだけどね。必然的にブログ更新も減っちゃうかな。まあ,仕事第一ですから仕方ないですね。

で,今聴いているのがStefano Bollani (ステファノ・ボラーニ)の『 Mi ritorni in mente 』。一応,名義はJesper Bodilsen(イエスパー・ボディルセン)になっています。2003年のstunt(原盤はsundance)から発売になった作品ですが,この組み合わせ,ちょっと意外でしょ。ライナーノーツによると,2002年のJazzper賞を受賞したエンリコ・ラヴァがコペンハーゲンで開かれた受賞式典にボラーニを同行させ,そこで地元のバックミュージシャンであるボディルセンとルンドと競演したのがきっかけで交友が生まれたそうです。<それまでボディルセンはボラーニのレコードを聴いたことが無かったので,そのすばらしい才能に驚いた>と書いてありますが,プロのミュージシャンって,結構そんなものなんでしょうかね。他人のレコードは聴かないんでしょうかね。

この『 Mi ritorni in mente 』は,僕の中ではボラーニ・ベスト3に入る愛聴盤です。同メンバーで2005年にやはりstuntから『 Gleda 』というアルバムを出してますが,それよりも遥かに本作の方が好きです。本作は《 Nature Boy 》,《 How Deep is The Ocean 》,《 Someday My Prince Will Come 》,《 The Summer Knows 》などのスタンダード曲を中心に,《 Se non avessi piu te 》やタイトル曲《 Mi ritorni in mente 》などのカンツォーネ,イタリアン・ポップスや,《 Liten Karin 》のようなスウィーデン民謡なども取り上げていて,まずはその選曲眼の素晴らしさに脱帽です。

《 Se non avessi piu te 》(君なしでは生きていけない)はvenusの『 Ma L’Amore No 』でも彼自身のヴォーカル入りで演奏していました。あれはあれで良かったですけどね。M-1《 Nature Boy 》の4分33秒からの熱情的に激しく始まるボラーニのソロ。M-5《 Mi ritorni in mente 》の儚くメランコリックなテーマから徐々に激しく鍵盤をかきむしるソロ。M-8《 The Summer Knows 》のボディルセンのマイナスイオンをたっぷり含んだ音色にうっとりしている間もなく,4分37秒からの16分連続フレージングで昂揚していくボラーニの瞬間激情型の美旋律にもハッとさせられ,M-9《 Liten Karin 》で優しくボディルセンの奏でる民謡旋律に優しく包まれ,<やっぱり,ボラーニ最高,おまえは他の誰とも違う熱い血を持ってるぜ!>なんて,深夜,1人で興奮したりして,ちょっと恥ずかしいかな。

P.S. つい最近ECMから発売になった『 PianoSolo 』。はまってます。特にM-13《 On the street where you live 》。僕の大好きなこの曲を録音してくれただけでまずは感謝。こんなイマジネーション豊かな素敵なアレンジで《 On the street ~》を聴けるなんて,シアワセ。『 PianoSolo 』を聴きながら,益々ボラーニを好きになっていく自分に気づきました。

Fausto Ferraiuolo 『 Guajon 』

2006年09月27日 22時44分27秒 | JAZZ
Fausto Ferraiuolo(ファウスト・フェライウオロ)。1965年ナポリ生まれのピアニストです。まだ3枚しかリーダー作を発表していませんが,結構人気あるようですよ。バイオグラフィーを見ますと,2つの奨学金をもらってイタリアの名門音楽学校であるC.P.M. (Centro Professione Musica)に入学し,そこでエンリコ・ピエラヌンツィーに師事したとのこと。トニー・スコット,マッシモ・ウルバニ,パオロ・フレズ,どれに昨日取り上げピエトロ・コンドレッリらとの競演経歴を持っているようです。

で,今日,聴いているのは彼の2作目『 Guajon 』(2000 DDQ)です。3作目の最新作『 Blue and Green 』(2003 ABEAT)もとっても叙情的,耽美的で,ちょっぴり熱情的なトリオ編成の典型的イタリアン・ジャズでしたが,管好きの僕としては『 Guajon 』の方が愛聴度高いです。なにしろダニエル・スカナピエコが吹いてますからね。

全10曲中,ピアノ・トリオで3曲,管入りカルテットで3曲,クインテットで2曲,ピアノ・ソロで1曲,クラリネットとヴォイス入りのカルテットで1曲と,多彩な編成,構成で,まるで一遍のイタリアン・ムービーを観ているようなロマンチックなアルバムです。エンリコに師事した割には,それほど癖がなく,エンリコ・ジャズをより大衆化したような親しみやすいフレーズに溢れ,聴いていて疲れない痛快娯楽型の快作です(なんだか森さん風)。

まあ,でも,「欧州抒情派路線はちょっと最近食傷ぎみなのよね~」とおっしゃる方にはお薦めできません。それほど押し出しが強い個性があるわけでもなく,特に『 Blue and Green 』の方は,<ながら聴き>していると知らないうちに終わっていたりして……。

実は,今日,フェライウオロ(ホント,発音し難い名前だな~)を取り上げたのは,先程,ブログ「 my secret room 」の管理人suzuckさんから「フェライウオロのThe Secret of The Moon持ってません? 聴いてみたいんだけど~」と訊ねられたもので,棚から引っ張り出してきたという訳。で,例の『The Secret of The Moon』は僕も持ってないのですが,もう10年近くも前の輸入盤ですから,どこにも在庫ないのでしょうね。ヤフオクあたりで地道に探すしかないかな。僕も欲しいです~。

Salvatore Tranchini 『 Faces 』

2006年09月26日 21時52分22秒 | JAZZ
Fabrizio Bosso(ファブリツィオ・ボッソ)を知ってからもう2,3年経ちますかね。High Fiveの『 Jazz For More 』,『 Jazz Desire 』(ともにV.V.J.)を聴いて彼の魅力にはまり,ボッソ参加作品を買い集めてきました。でも,収集しながら分かったことがあります。それは,ボッソ参加作品もピンキリだということです。どうしてもHigh Fiveのようなスピード感のあるハード・バップを彼に求めてしまいがちですが,意外にそんなジャズを演奏している作品は少なかったりします。何とかHigh Fiveに匹敵する名盤を探し出したいと切望しながらCD漁りをしているのですが,そう簡単には見つかるはずも無く,ハズすことも多々。そんな中,僕は「大当たり」の方程式を見つけたのでした。それは…,

<ファブリツィオ・ボッソ>+<ダニエル・スカナピエコ>+<フランチェスコ・ナスロト>=《 名盤 》

そんな大した事でないのですが(笑)。この3人が参加しているアルバムは今の所,全勝です。とは言っても2枚しかありませんけどね。

一枚はPietro Condorelli(ピエトロ・コンドレッリ)の『 easy 』。コンドレッリはギターリストなんですが,ギタリストとしてのコンドレッリを評価するならおそらく10点満点中5点ぐらいじゃないでしょうか。でも彼の素晴らしい所はその作曲能力とアレンジ能力になるように思われます。総合的にみるとかなりイイ線いくギタリストだと思いますよ。4曲目の《 M.L.SAMBA 》というラテン・ジャズなどカッコイイです。ボッソのソロも彼のベスト・プレイ5に入るくらいの出来のよさです。この『 easy 』に関しては,ブログ仲間のnaryさんsuzuckさん がずっと前にレビュー済みですのでそちらを参照してみてください。

で,僕が一番に気に入っているのがこれですよこれ。イタリアン・ドラマーのSalvatore Tranchini (サルヴァトーレ・トランキーニ)のリーダー・アルバム『 Faces 』(2004 RED)。兎に角,エキサイティングで,アグレッシブで,それでもって滅茶苦茶,速い。これ以上熱いイタリアン・ハード・バップは聴いたことがありません。ボッソも本気汁を撒き散らしてブリブリ吹き鳴らしています。ナストロも馬鹿テクなんですね。ホント凄いです。僕はスカナピエコのアルバムで聴いたことしかないと思うのですが,もっと彼の演奏を聴いてみたいですね。リーダー作も『 Trio Dialogues 』(nadir),『 heavy Feeling 』(yvp)など出ているみたいだし,近いうちに絶対入手しよっと。

おそらく聴いた人は1曲目の超高速ハード・バップで倒れそうになりますよ。このHigh Tensionさは,High Fiveにも無かったことです。ある意味,このアルバムはHigh Fiveを超えていると思えなくも無い素晴らしい出来です。いや~,この興奮,タマリマセン。

Phil Woods & Space Jazz Trio 『 Phil's Mood 』

2006年09月23日 20時37分27秒 | JAZZ
西山瞳さんがエンリコに似ているというもんだから,ちょっと,Space Jazz Trioの古いアルバムを引っ張り出してきました。90年録音のPhilology盤で,フィル・ウッズとの競演を捉えた貴重なアルバムです。この頃はSJTとしての絶頂期でしたから,その演奏に込められた情念,気迫たるや凄いものがあります。こんなアルバム聴いちゃうと,西山瞳さんとエンリコって全然違うじゃん! なんて思っちゃいます。瞳さんが聴いて感銘を受けたエンリコ盤ってどんなんだったのでしょうね。瞳さんの雰囲気に一番近似しているのは,マーク・ジョンソン,ジョーイ・バロンらとのトリオで,CAM JAZZあたりのアルバムではないでしょうかね。エンリコも昔と今じゃ,だいぶ変ってきましたからね。

西山 瞳 『 Cubium 』

2006年09月23日 18時20分43秒 | JAZZ
僕が以前からEnrico Pieranunzi(エンリコ・ピエラヌンツィ)の事が好きだと書いていたら,情報通のmartyさんから,「日本人エンリコ」と噂の西山瞳さんというピアニストが凄いよ,と教えていただいていたので,今回のデビューアルバムをずっと楽しみにしていました。僕は今まで彼女を聴いたことがなかったのですが,関西(martyさんも関西の方です)ではかなり有名のようです。6歳でクラシックをはじめ,18歳でジャズ・ピアノに興味を持ち,音大卒業後にエンリコを聴いて傾倒していったそうです。現在26歳ですからジャズ・ピアノを始めてから8年,エンリコを知ってからまだ5,6年ですよ。それでもう欧州系のアルバム作っちゃうんですから,それだけで大したものです。才能豊かなんでしょうね。

レーベルはSpice of Lifeで,メンバーは当然Spice of Lifeお得意のスウェーデンの名手を手配しました。ベースがHans Backenroth(ハンス・バッケンロス)で,ドラムスがAnders KjellBerg(アンダーシュ・シェリベリ)。ハンスはSweet Jazz trio のベーシストです。と言ってもピンときませんね。僕も以前に1枚買ったことがありますが,先程探したけど何処にもない。行方不明です。あまり印象に残らなかったトリオでした。トリオと言ってもベース,ギター,クラリネット(だったかな)のトリオでした。僕がハンスを意識したのは,先日発売されたばかりのUlf Wakenius(ウルフ・ワケニウス)を中心としたユニット,In The Spirit of Oscarのアルバム『 Cakewalk 』でした。オスカー・ピアーターソンの曲を結構忠実に再現したアルバムでしたが,そこでまさにペデルセンそっくりに弾きまくっていたのがハンスでした。音色,ノリ,ソロでの音使いやラインまで,ペデルセンと瓜二つのベーシストです。もしかするとハンスってペデルセンニに師事していたのかもしれません。

ますはM-1 《 Cubium 》のイントロの2, 3秒を聴いて,「お~,エンリコに似てる~」なんて感心。でもまあ,聴き進むうちにそれほどエンリコには似ていないような気になってきました。エンリコの派生型であることには間違いないし,エンリコ・ジャズの香りは十分漂っています。でもまあ,エンリコに比べればタッチが弱いし,テンションも希薄。エンリコって,叙情的な方向に突き進むと思うと突然フリーフォームに突入したり,思索的なフレーズを弾き出したと,聴き手に緊張感を強いる感がありますし,なによりも熱きイタリアーノの血が感じられるんですよね。“パッショネート”。エンリコにはそれがある。それに対して,瞳さんには感情の高ぶりみたいなものがあまり感じられないんですね。でも,誤解しないでくださいね。瞳さんのタッチは確かにエンリコに比べたら弱いけど,音は正確で曖昧さの微塵も感じられないので,弱いというより優しいタッチと言った方が適切だと思うし,たとえ弱いとして,そんなマイナス点を差し引いても十分余りある彼女の魅力がこのアルバムには詰まっています。

兎に角,曲が美しい。作曲能力にすごく長けています。欧州ジャズ・ファンというのは例外なく美旋律愛好家であると思うのですが,そんなうるさいファンを満足させるだけの美旋律をふんだんに用意してくれています。ややハーモニー過剰気味に感じる部分や,旋律がホリゾンタールで,メロディーが立っていない感じもありますが,でも,やっぱり綺麗な音色と旋律で,メロメロです。大好きですよ,こういう曲。M-4《 you are not alone 》なんか,もうたまりません。こういう哀愁美曲があの華奢な指先から紡ぎ出されていると思うと,もう,それだけで,,,,。ハンスのソロも泣けるな~。ペデルセンの蘇りみたいだな~。

ということで,瞳さん,横濱ジャズプロムナードに出演するのですが,ライブは10月7日の土曜日だけなんですね。残念。僕,仕事の都合で8日の日曜日しか観に行けないんです。仕方ないのでロブ・ヴァン・バヴェルやフェイ・クラーセンでも観に行ってきます。

Vit Svec 『 Keporkak 』

2006年09月19日 18時42分18秒 | JAZZ
昨日放送していたTBSテレビの特番,『 地球創世ミステリー~プラネット・ブルー海と大地の鼓動を聴け』が面白かった。俳優の伊藤英明が“地球が凝縮した島”ハワイを訪ね,ハワイを通じて海と地球の神秘を探るといった内容なのですが,特に僕が興味を引かれたのがマッコウクジラの生態について。マッコウクジラって,3000mの深海まで素潜りするんですって。知ってました。どうやってそんな深くまで潜れるかというと,あの突き出た巨大な頭の中に脳油というオイルが貯蔵されていて,海水で冷やして固体化して比重を高めると沈み,血液を流し込み温めて脳油を液化させると比重が低下し浮力を生むといった仕掛けらしいです。なるほどとは思うけど,どうしてそんな深海の水圧に哺乳類の体が耐えられるのかは謎ですね。最先端の潜水艦(おそらくボディーはチタン合金かな)でさえ,1000m程までしか潜水できないんですよ。よく映像で見る海面に浮上して潮吹きしているクジラしか知らないけど,生涯の大部分を深海で過すマッコウクジラって,ホント,神秘的です。じゃあ,どうしてそんな深海にわざわざ潜水するかというと,深海イカを捕食するためだそうです。で,ここからが凄いのですが,深海には小さなイカ類だけではなくて,ダイオウイカという20m近くもある巨大イカが生息していて,それをも食べちゃうんです。この捕食の様子を番組ではCGで見せてくれるのですが,これはもうSFムービーの世界。まさにマッコウクジラ対ダイオウイカ。大映の怪獣映画みたいです。このダイオウイカってまだ生きたままの捕獲がされていないらしく,打上げられたマッコウクジラの胃からダイオウイカの体の一部がみつかったり,またマッコウクジラの体に巨大な吸盤の跡や爪の残骸が残っていてることから“マッコウクジラ対ダイオウイカ”が深海で繰り広げられているのだろうと考えられているようです。

宇宙も神秘だらけですが,深海の世界もそれに負けず劣らず神秘的なんですね。

ということで,今日はVit Svec Trio (ヴィト・スヴェック・トリオ)の『 Keporkak 』(2004 ARTA)を引っぱり出して聴いております。これ,例のジャズ批評No.133『 ピアノ・トリオ Vol.3 』に掲載されてしまいました。密かに(とは言っても結構既に売れちゃたみたいですけど),楽しんでいた隠れた名盤だったので,ちょっと残念。で,ヴィット・スヴェックはピアニストではなく,ベーシストです。 ピアニストはMatej Benko(マチェイ・ベンコ)という人です。このトリオは既にチェコでは有名らしいのですが,僕が聴くのはこれが初めてです。ミロスラフ・ヴィトウスを生んだチェコですからヴィットもメチャクチャ巧い。でもやっぱり,何処までも透き通るクリアな音を紡ぎ出すピアノのマチェイに魅かれてしまいます。陰鬱で陰影感漂う楽曲とラテン・タッチの楽曲,時にクラシックの手法を織り交ぜ,東欧らしい格調高いアルバムに仕上がっています。

ラテン調の清々しい旋律美を持ったM-3《 Dreamer 》。これ,何処かで聴いたことのあるようななつかし思いを沸き立たせる名曲です。続くM-4 《 Smilla 》も哀愁旋律てんこ盛りの美曲。ペトルチアーニ風でもあります。

で,前おきが長くなりましたが,ここからが本題。

このアルバム,一通り聴くと誰しもM-1 《 Follow The Whales 》が印象に残ると思うんですね。《 クジラを追いかけて 》というくらいで,イントロからクジラの鳴き声(ベースのアルコ)が聴こえてきて,ピアノが低音部でFを執拗に重々しく鳴らすテーマ。途中でバロック調に曲調が変わったかと思うと,次いでベースソロからドラムソロ。ピアノとベースのDのコンディミ(Combination of diminished scale )らしい不安げなユニゾン・リフをバックに,ドラムが炸裂ソロをとり,最後に不気味にクジラの鳴き声。以前からどうも曲名と曲調が合わない気がしていたんです。《 クジラを追いかけて 》ならもっと雄大なテーマを持って優しく弾いて欲しいとね。でもね,昨日の『 地球創世ミステリー~』を見て,ハッとしました。この曲は“マッコウクジラ対ダイオウイカ”の曲なんだと。そういうつもりでもう一度目を閉じて聴いてみると,ほら,激しい戦いの情景が眼前に広がってくるでしょ。というわけで,ちょっと嬉しい発見でした。失礼しました。


Eli Degibri 『 Emotionally Available 』

2006年09月18日 19時15分32秒 | JAZZ
エリ・ディジブリの新作『 Emotionally Available 』(FSNT)がなんと3年ぶりに発売になりました。前作『 In The Beginning 』については以前に書いていますのでそちらを参照してください。簡単なバイオグラフィーも記しておきました。エリはイスラエル人で,現在はNYを中心に活動しているテナーマンです。ハービー・ハンコックのバンドに在籍していたことをセールスポイントにしているようですが,調べたところハンコックの『 Gershwin’s World 』(1998 verve)発売時のフォロー・ツアーに参加しただけのようです。

音色は雄々しく豪快ですが,その技法はかなり現代的。マーク・ターナーやジョシュア・レッドマンらと同じ言語でジャズを語る最先端メインストリーム系の吹き手です。ただ,彼が他のテナーマンと決定的に異なるのは,その比類稀なるメロディー・センスだと思っています。耽美的で哀愁漂う彼のオリジナル曲に前作同様,すっかり心酔してしまいました。同じテナーサックス奏者であるブランフォードなどの対極に位置すると思われます。

思うに,ジャズってあまり饒舌,流暢に語られるとたとえそれが凄く技術的に優れていても聴き手に伝わりにくいように思うんですね。少々舌足らずながらも一音一音に魂を乗せながら丁寧に吹かれると感じてしまうというか,伝わるんじゃないでしょうかね。彼は決して口数多いわけではありませんが,全てのフレーズに歌,心,情念が込められているんですよ。そこがたまらなくイイ。

バック・ミュージシャンはアーロン・ゴールドバーグ,ベン・ストリート,ジェフ・バラードで,前作からカート・ローゼンウィンケルが抜けただけです。これまた最高のメンバーですね。特にアーロンが素晴らしい出来で,必ずソロの何処かに目の覚めるような美フレーズを用意していて,「これって,前もって考え抜かれたストック・フレーズなんだろうな~。」なんて疑っちゃう程,出来すぎたソロです。

今,僕が一番聴きたいテナーの音って,多分,彼のような音なんだろうな。今年のテナーの新譜の中,これが一番です。

Branford Marsalis 『 Braggtown 』

2006年09月17日 20時58分55秒 | JAZZ
もともと僕はブランフォード・マルサリスが駄目で,巧いのは分かるんだけど,どうも好きになれないんです。世間が“現代サックス界最高峰”とか“なになに賞受賞”とか褒め称えるからついつい新譜が出ると買ってしまうけど,ほとんど当たりの経験がありません。だからColumbia時代など『Royal Garden Blues 』以外は既に手元にありません。同じタイプであろうケニー・ギャレットは大好きなのに自分でも不思議です。どうしてでしょうかね。モード・スケール・エクササイズ的なメカニカルなフレーズ,歌心の無いバラード,それにあのソプラノの音色など,気になりだすと無性に嫌になる。

結局,彼の音楽って真面目一辺倒でエンターテインメントの要素があまり感じられないんですね。ジャズに対する真摯な姿勢は生まれ育った拭い去れない音楽家庭環境によるものなのでしょうけど,媚びる必要はありませんが,もう少し聴き手へのサービスを忘れないで欲しいと思ったりもします。

廣瀬大輔さんがRittor Music出版の『 Spiritual Jazz 』 (小川充 監修)の中で次のように述べています。

《 作品で“何を表現したいか”,“それを表現できる技術があるか”,それが伝わっているか“といったことはいかなる音楽でも聴き手にとって重要なファクターであると考える。 》

そう,3番目が彼の音楽には無いんです。ブランフォードの目指すジャズは分かるけれど,それが僕の心の響いてこない。そんな気がします。

ということで,ブランフォードの新作『 Braggtown 』が発売になったのですが,やっぱりメディアでの評判ほど良いとは思いません。M-1 《 Jack Baker 》は一発モードのコルトレーン路線で,凄まじい破壊力のジェフ・ワッツのドラムに乗せてブランフォードが吹きまくる曲。これは良かった。Marsalis Music第一弾の『 Footsteps of Our Fathers 』(2002)や『 A Love Supreme Live in Amsterdam 』(2004 DVD&CD)の流れが今回も見られるのは嬉しかったですね。

でもその後はあまりパッとしない曲ばかり。バラードも多いし,中にはM-5《 O Solitude 》のようにEGEA風のチェンバー・ジャズもあったりと,良く言えば多彩。悪く言えば統一感のない聴いていて妙に疲れるアルバムです。ちょうど前作の『 Eternal 』と『 A Love Supreme Live in Amsterdam 』を1枚にまとめちゃった感じかな。

ジェフ・ワッツやジョーイ君など,ギャラの馬鹿高いメンバーを集めているのだから,もう少し出来が良くても良いような気もしますが,昔のColumbia時代に比べたら段々面白くなってきたので,次作に期待することにしましょう。

Kenny Garrett 『 Beyond The Wall 』

2006年09月15日 18時09分03秒 | JAZZ
2003年の『 Standard of Language 』以来,3年ぶりになるケニー・ギャレットの新作『 Beyond The Wall 』がNonesuchから発売になりました。なんて,冷静に言っている場合ではありません。これ,ほんと最高です。このところ一日一回は聴かないと眠れない程,心酔しています。

前作『 Standard of Language 』も凄いと思っていましたが,今回は激しさという点では前作に一歩譲るとしても,アルバムとしての完成度からしたら文句なしに彼のベストの出来ではないでしょうか。

前作は兎に角,ケニーのワン・ホーンで吹きまくる作品で,激情型の彼の個性が最大限に発揮できた傑作だと思います。これに対し新作は万里の長城をジャケットに使用しているようにテーマは中国。とは言っても一部の楽曲では二胡や声明曲からのサンプリングなどを取り得れて東洋風サウンドを演出してますが,全体のカラーはむしろ中期コルトレーンの世界です。どうも2005年暮れの中国訪問がきっかけになったようで,コルトレーンがインド音楽なら,俺は中国民族音楽だと閃いたのでしょう。

僕はクラブ系ジャズには全くの無知ですが,こういうのを“スピリチュアル・ジャズ”と呼ぶのでしょうか。でも内省的な暗いサウンドではありません。コルトレーンを今風にポップにアレンジした感じす。もともとケニーはアルティストとしては大変珍しいコルトレーンのフォロアーで,“アルトでコルトレーンを”をテーマに1996年に『 Pursuance 』というコルトレーンの楽曲に挑戦したアルバムを制作しています。これが僕の一番の愛聴盤なんですが,世間的には『 Triology 』『 Songbook 』の方が評価が高いのでしょうかね。

いずれにしてもケニーは95年の『 Triology 』を転機として『 Pursuance 』,『 Songbook 』と充実した内容の作品を連発していくのですが,今回の新作は『 Pursuance 』以来の久しぶりのコルトレーン路線で,僕の最も好きなベクトル上の作品となりました。そうそう,ブライアン・ブレイドも『 Pursuance 』以来の競演ですね。

メンバーはマルグリュー・ミラー,ロバート・ハースト,ブライアン・ブレイドの最強リズム隊に,フロントがボビー・ハッチャーソンと,なんとファラオ・サンダース。昔,ファラオ大好きだったんですよ,僕。今でも好きですが,コルトレーン路線のコンセプト作品にファラオを起用するのもちょっとベタな感じもしますけどね。

コルトレーン,ファラオと聞くと,どうしてもImpulse末期のエルビンもマッコイも逃げ出した宗教色の強いコスミック・サウンドを連想してしまいますが,その点は大丈夫です。ご心配なく。フリーは演ってませんから。ファラオもいたってノーマルです。昔から僕は何故かファラオを見るとスズメバチを連想してしまうのですが,最近のファラオは歳のせいか往年の破天荒さはなくなり,ちょうと毒針を抜かれたスズメバチのようです。ファラオ嫌いのジャズ・ファンはおそらくコルトレーンとの競演盤や彼の死後のImpulse作品しか聴いていないじゃないでしょうかね。80年代のTheresaの作品群,たとえば『 Journey to The One 』『 Live 』など,とっても聴きやすいですよ。僕の所有するアルバムの中で最新のものは92年の『 Crescent with Love 』 (邦題:愛のクレッセント)(Venus)ですが,これなんかコルトレーンの呪縛からすっかり解き放たれた精神性の薄いあっさりしたスタイルで《 lannie's lament 》,《 Crescent 》,《 after the rain 》などを演奏しています。聴きやすい半面,ちょっと寂しい感じもします。Love is Everywhere~と叫んでいた頃が懐かしいです。

話がわき道に逸れてしまいましたが,本作は全9曲で全てケニーの作曲です。東洋色が色濃く表現された楽曲はM-4 《 realization 》とM-5 《 tsunami song 》の2曲のみ。《 realization 》はチベット仏教の声明曲(お経に音階を付けた音楽?)のコンピレーション・アルバム『 The Heart of Dharma 』からの1曲,《 ngontog gyan 》をサンプリングしていて,お経が永遠とループされる中,ケニーが静かに瞑想的なフレーズを奏でる不思議な曲です。《 tsunami song 》は二胡がテーマを奏でる静かな曲で,ここでケニーはピアノを弾いています。89年の『 Prisoner of Love 』でもピアノを弾いてましたし,ライブでも時々弾くらしいです。

最後にNonesuch Recordsについて少し説明を付け加えておきます。

最近特にこのレーベルの作品を目にしますが,元々は64年に発足したElektra Recordsのsub-labelとして立ち上げられたヨーロッパ・クラシックのディストリビューターでした。しかし,2004年のWarner Music Group(WMG)の再編リストラ策の一環として,WMGの中核であったWarner Bros. Recordsのジャズ部門は閉鎖され,同時にWMGの子会社であったElektra RecordsもWarner Bros. Recordsに吸収合併されました。この再編リストラ策によって両レコード会社所属の沢山のスタッフ,ミュージシャンが解雇されてしまったわけですが,業績が良かったミュージシャンはWMGの一部として存続を許されたNonesuch records(もともとはElektra Recordsのsub-label)に再雇用されたのです。このNonesuchに名を連ねるのは,ブラッド・メルドー,ジョシュア・レッドマン,パット・メセニーなど,いずれも会社に利益をもたらすビック・ネームばかりですね。Nonesuch印は,今や最も安心して購入できる音楽業界のJISマークみたいなのもです。

Mike Stern 『 Who Let The Cats Out ? 』

2006年09月09日 23時02分39秒 | JAZZ
Mike Stern(マイク・スターン)の通算13作目になる新作『 Who Let The Cats Out ? 』です。彼の大ファンの僕はほとんどの作品を買ってきましたが,2001年の『 Voices 』が個人的には今ひとつだったせいもあり,2003年のESC移籍第一弾『 These Times 』は見送ったので,今回は6年ぶりのマイク・スターン聴きになるわけです。『 Voices 』はリチャード・ボナ色が強く,オーガニックな自然回帰路線でした。個人的にはボナが苦手なので(巧いのは認めますが),今回もボナ参加に少々不安はありましたが,一聴してそんな不安はぶっ飛びました。これは良い出来です。

アルバムとして統一色調感は薄いのですが,その分バラエティーに富んだ愉しいアルバムです。何しろ参加ミュージシャンが多彩です。ベーシストだけでも,リチャード・ボナ,クリス・ミン・ドーキー,アンソニー・ジャクソン,ミッシェル・ンデゲオチェロ,ビクター・ウッテンと5人も使い分けているし,ドラマーもキム・トンプソン,デイブ・ウェックルが参加。ベース・フリークにもドラマー・フリークにも受けが良いでしょうね。ミッシェル・ンデゲオチェロ(女性)はちょいマイナーですが,以前に当ブログでも取り上げていますのでこちらを参照してください。有名どころではジョシュアの新作『 Momentum 』に参加しています。グルーブ感を出すのがとっても巧いベーシストです。

M-1《 tumble home 》は90年代にマイクが参加していたステップス・アヘッドやボブ・バーグ=マイク・スターン・バンドあたりのファンク路線に近い楽曲ですが,ベースがクリス・ミン・ドーキーのアコ・ベを弾いているあたりが昔と違うのね。

M-3 《 good question 》はラテン調の4ビート。ボナのベース・ソロに合わせての完全ユニゾンのスキャットは流石。彼にしかできない芸当です。脱帽。

M-4 《 language 》はまさにパット・メセニー風,アメリカ大陸を想起させる雄大で爽やかな曲です。師匠へのオマージュ的サウンドですね。『 Voices 』路線の継承がうかがわれます。

M-5 《 we’re with you 》はアコギで奏でる美しいバラード。あまりマイクのリーダー作を聴かずに,ステップス・アヘッドやマイルス・バンドでの彼の演奏しか耳にしたことのないファンは,彼がこんな美しいバラードを作曲,演奏できることに驚くことでしょう。ハーモニカ奏者のグレゴリー・マレット(グレゴワール・マレー?)がテーマだけユニゾンで参加しています。グレゴリーはパット・メセニーの『 The Way Up 』でfeatureされていたし,以前当ブログでもちょっとだけ書いたカサンドラ・ウイルソンの最新作『 Thunderbird 』にも1曲だけ参加していました。スパイス的に使われることの多いミュージシャンですね。トゥーツ・シールマンズの唯一のフォロワーですかね。

M-6 《 Leni goes shopping 》はスタンダード《 beautiful love 》のコード進行をパックて作った曲かな。ソロになると,もろ《 beautiful love 》。それにしても今回のアルバムは4ビート系の曲が多いです。よく言えば成熟した芳醇なマイク・スターン。ようは彼も年老いたということか。

M-7 《 roll with it 》は素直なファンク・ナンバー。やんちゃなウッテン君のスラッピングがかっこいいー。でもちょっと抑え気味。それでも軽~くマーカス・ミラーを飛び越えています。それからマイクが以前に競演してきたデヴィッド・サンボーン,マイケル・ブレッカー,ボブ・バーグらに比べるとちょっと個性に欠けますが,ここでソロとってるボブ・マラック(ts)なかなか熱い吹き手です。好感。

M-8 《 Texas 》はスライド・ギターにマレのハーモニカで奏でるブルージーな楽曲。マイクお得意の常套句が炸裂です。コーラス,ディレイをかけたクリーン・トーンで緩やかに始まり,途中からディストーションのつまみを一捻り。クウィーンとチョーキングからハーモニックス。両足揃えておしっこ我慢のポーズでリズムをとるマイクの姿が目に浮かびますね~。でもここでも抑え気味のソロ。

M-9 《 who let the cats out? 》はブレッカー・ブラーザーズ・ライクな乗りの良い16ビート。こういう曲が今回は少ないな~。ちょっと寂しいです。怒涛のクラマチック・ライン。正確な16分のフル・ピッキングのフレーズには開いた口が塞がりません。

M-11 《 blue runway 》で初めてアンソニー・ジャクソン登場。でもあまり目立つラインは刻んでいません。曲としても今ひとつ。でもマイクのソロはギンギンのロック。ピック・スクラッチまで飛び出し,派手な幕引き。

ところで,マイクの傑作ってどれでしょうかね? 『 Odds or evens 』なんか良く出来ていたと思いますし,『 Give and Take 』や『 Time in Place 』も愛聴盤です。でも超私的愛聴盤は何と言っても86年の『 Upside Downside 』です。マイク・スターンと言えば《 Upside Downside 》。あの曲がマイクそのものです。1990年に復活CTIレーベルのクリード・テイラー・プロデュースによるユニット,Chromaが来日した際のアルバムで『 Music on The Edge 』というアルバムがあります。これはレーザー・ディスクにもなっていますが,このLDが素晴らしく,マイク・スターン,デニ・チェン,ジム・ベアード,マーク・イーガン,ランディー・ブレッカー,そしてボブ・バーグと,当時のNYのコンテンポラリー・ジャズの名手達を揃えた豪華ユニットでした。そのLDの1曲目がこの《 Upside Downside 》なんですね。何度聴いても鳥肌物の名演です。この『 Upside Downside 』は捨て曲なしの名曲ぞろいなんですが, M-4 《 mood swings 》なども複雑高速なビバップ系のテーマをボブ・バーグとユニゾンで弾くのですが,これは凄い。こいつは見た目はロッカーだけど,本当はやっぱりバッパーなんだと再認識させられる素晴らしい楽曲です。ちなみにベースはジャコ,ドラムはスティーブ・ジョーダンです。

最後にマイクの唯一の駄作を一枚。多分,買った人は誰しも感じると思うのですが,2004年に再発されて誰でも聴けるようになった幻のファースト,『 Fat Time 』(1981)は,ぜんぜん面白くありません。マイクの個性がまだ開花していない,どんなジャズをやりたいかの方向性が曖昧な時期の作品で,ほとんどデビッド・サンボーンのリーダー作のようです。

Diana Krall 『 From This Moment On 』

2006年09月07日 21時37分19秒 | JAZZ
先程,2泊3日の山中湖での休暇から帰ってきました。出発当日の朝,CDショップに寄って,Diana Krall(ダイアナ・クラール)の新譜,『 From This Moment On 』を買って,行き帰りの車の中で聴いてきたのですが,率直な感想として,前の作品の方が好みであります。ヒンシュクを買いそうですが,ボーカル物こそ人それぞれの好みの問題なので仕方ありません。

<前の作品>というのは具体的には『 When I Look In Your Eyes 』や『 The Look Of Love 』あたりなんですが,歌の出来不出来を言っているんじゃなくて,アレンジの好き嫌いの話なんですけどね。『 When I Look In Your Eyes 』のジョニー・マンデル,『 The Look Of Love 』のクラウス・オガーマンなどのアレンジがこの上なく優雅で上品で好きなんです。今回は半数の曲が彼女自身,残りがジョン・クレイトンで,ビックバンド・アレンジが主体で,ちょっと面白くない。繰り返しますが,あくまで好みの問題ですが。今回はスタンダード集というのが売りのようですが,今までだってほとんどがスタンダード中心の選曲だったので,別段目新しい訳でもなし,むしろ全曲スタンダードって,個人的には面白みに欠ける選曲なんですけどね。

それにしても最近はほとんどピアノ弾かなくなっちゃいました。彼女,メチャクチャ巧いピアニストなのにもったいない。彼女のピアノが聴きたきゃ,『 Stepping Out 』や『 Only Trust Your Heart 』を引っ張り出してこなくてはならないのはとっても寂しい限りです。トミー・リピューマという人は,凄腕のプロデューサーなのでしょうが,ジョージ・ベンソンからギターを取り上げて,代わりに歌わせることでビック・アーティストにのしあがらせたように,ダイアナからもピアノを取り上げてしまったとしたら,トミー・リピューマという人は,単なる音楽商業主義に毒された低俗プロデューサーと言われても仕方ありません。ダイアナをここまでビックにしたのだから,そろそろピアニスト,ダイアナ・クラールに焦点をあてたアルバム作りをして欲しいものです。

そもそも,ダイアナって,カナダの田舎娘だったんですよね。『 Only Trust Your Heart 』のブックレットのポートレイトなどを見ると,垢抜けない田舎娘であることがよく分かります。そんな彼女にトミー・リピューマが惚れこみ,有能なマネージャーやスタイリスト,それに巨額の制作費を投じて,彼女を超一流のジャズ・アーティストに創り上げていったのですね。

という事で,あまり今回の新作に沢山星はつけられませんが,トミー・リピューマ=アル・シュミットで作ったアルバムですがら,エンターテインメント作品としては超一流,音もすこぶる良くて,誰もが酔いしれる一級品であることは間違いありません。

Thierry Lang 『 Guide Me Home 』

2006年09月04日 23時12分45秒 | JAZZ
僕の永遠のアイドル,QueenのFreddie Mercury(フレディー・マーキュリー)が今年,没後15年,生誕60周年にあたり,それを記念して『 The Very Best Of Freddie Mercury Solo 』が本日,9月4日に発売になりました。ファンの僕としては手が出てしまいそうなのですが,既に2000年に発売された『 Best of Freddie Mercury Solo 』 (3枚組み)は持っているし,それに,今度の『 The Very Best Of~』の内容を見てみたら何だかRemix物ばかり。正直僕,あんまりRemixって好きじゃないんですよね。当然ミュージシャンの承諾は得てRemix制作しているんでしょうけど,人が作った曲に何だか知らないけど余計な音かぶせて売り物に仕上げちゃう商売って,胡散臭い気もするし。Remixの出来不出来にかかわらず,はっきり言って嫌いです。大体,フレディーの作った素晴らし音を弄くり回しても仕方ないでしょ。やっぱりオリジナルアルバム単位でフレディーを聴くのが一番。という事で,今回はパスしようと考えていますが,収録曲を眺めていてびっくり。アルバム最後の曲が何とThierry Lang(ティエリー・ラング)の《 Guide Me Home 》ではありませんか。

このティエリー・ラングの《 Guide Me Home 》(フレディー作)は,2000年にBlue Noteから発売されたラングのソロ・ピアノ作品『 Guide Me Home 』(2枚組)のタイトル曲ですが,このアルバムには《 Guide Me Home 》以外にもDisc2(Bonus CD)に《 Love of My Life 》や《 Bohemian Rhapsody 》など,フレディーの曲が4曲収められています。

どういう経緯だったかは分かりませんが,2000年頃にラングがフレディーのドキュメンタリー番組の音楽を担当したことがあり,おそらくその時用意した曲のうち数曲をこの『 Guide Me Home 』に収めたと思われます。このドキュメンタリーは『 Untold Story 』という番組で,その映像は10枚組みCDプラス2枚組みDVDのBox Set, 『 Freddie Mercury Solo 』として発売されていますが,流石に僕は持ってません。

僕はジャズのピアノ・ソロが苦手で,キース・ジャレットやペトルチアーニなど,ごく一部のソロ・アルバムしか持っていませんが,このティエリー・ラングのソロは前2者にも劣らない素晴らしい出来です。基本的に静穏系のピアノ・ソロで-あまり好きな聴き方ではありませんが-BGMにも最適です。

ラングは1996年にも『 Echoes Of Silence 』(Plainis Phare)というソロ・ピアノ作品を出してますが,こちらの方がタイトルが示すようにエコーを強くかけた録音です。両作品ともおなじみの“ at Rainbow Studio. Oslo by Jan Erik Kongshaug ”です。どちらか1枚,買うとするなら,『 Guide Me Home 』の方が良いかと思いますが。

「あんた~,子供が起きちゃうから,もう少し音小さくしてよぉ~。」なんて家族に怒鳴られた時には,こんなピアノがいいかもよ。

Sean Higgins 『 Sean Higgins 』

2006年09月03日 12時22分30秒 | JAZZ
窓を開けると涼しい風が部屋の中を吹きぬけ,すっかり気分は秋モード。
これから少しずつ,ジャズが美味しさを増す季節。
今日は久しぶりに仕事の入らない日曜日。ちょとビールでも。ふ~。
今,妻と息子はお昼寝中。
起きたら秋葉のヨドバシカメラに買い物に連れていく約束です。
何を買わされるのやら。
お気に入りのピアノ・トリオでも聴きながら,目が覚めるのを待つことにしましょう。

Sean Higgins(ショーン・ヒギンズ)という米国ピアニストです。聞いたことの無い名前です。ノース・カロライナ州,ウィルミントン出身で,最近ニューヨークに進出し,活動範囲を広げている,現在売り出し中の若手ピアニストのようです。本作がデビューアルバムです。とは言っても自主制作盤ですが。でも凄く出来は良いです。マッコイ・アイナー,ハービー・ハンコック,ケニー・カークランドらを尊敬しているように,モード系のフレーズ,オリジナル楽曲を得意とする人ですが,頭でっかちで無機質なモード・ラインを垂れ流すようなことはせず,モード手法を用いながらもその中で歌うことのできる技巧派です。テクニックに危うげな所は皆無で,音に自信があり明確。タッチも力強く,粒立ちが良い。10曲のうち9曲はオリジナルですが,どれも個性的なメロディでキャッチー。高速モードから哀愁バラードまで危なげなくしっかりこなす驚きの新人です。

実はこのアルバム,先日発売されたジャズ批評No.133『 ピアノ・トリオ Vol.3 』の78ページで,VENTO AZUL RECORDSの早川さんが紹介されていたのです。僕のディスクは数ヶ月前に秋葉の石丸電気の輸入盤フロアーで買ったものなのですが,早川さんの目にかなったアルバムということで,愛着も一段と増したアルバムです。

必ず愛聴盤になると思いますよ。僕は3000円も出して買っちゃいましたが,VENTO AZUL RECORDSさんからなら1750円で手に入ります。

お~と,息子が起きだした。
では,ヨドバシカメラ行ってきま~す。

Phil Woods 『 Play Henry Mancini 』

2006年09月03日 02時05分10秒 | JAZZ
最近のウッズでもう一枚,お気に入りのアルバムをご紹介。ウッズと仲の良さそうに写っている長身のおじさんはCarl Saunders(カール・サンダース)。トランペッターです。一見,ジャズ界の巨匠,フィル・ウッズ様の肩に腕を乗せて寄りかかるなど,なんて生意気で無礼なやつだ,と思っちゃいますが,アメリカ流のスキン・シップというやつでしょうかね。

この 『 Play Henry Mancini 』(2004 Jazzed Media)を買った時点(2004年)では,僕は全くカール・サンダースを知りませんでしたが,つい最近,クリスチャン・ジェイコブ参加のリーダー・アルバムをリリースしましたので,速購入しましたが,これもなかなか愉しいバップ・アルバムでした。

カール・サンダースは1942年生まれということですから,ウッズより11歳若く,今年で64歳。今まで名前すら聞いた事がありませんでしたが,ビックバンド出身のトランペッターのようで,スタン・ケントンやフランク・キャップ・ビック・バンドでのソリストとして活躍しているようです。テクニックは抜群なのですが,根っからのバッパーなので,これまたバッパーのウッズと相性は抜群で,昔懐かしい予定調和型のハード・バップ・アルバムですが,たまにはこんなスウィンギーな愉しいジャズも良いもんだと,ほっと一息。

ヘンリー・マンシーニの作品集ですが,《酒ばら》も《Moon River》もありません。僕の知らない曲がずらり。でも1曲目は《The Pink Panther》ですけどね。スッキリ爽やかな西海岸ハード・バップの好盤です。