雨の日にはJAZZを聴きながら

FC2 に引越しました。http://jazzlab.blog67.fc2.com/

Phil Woods 『 Alive And Well In Paris 』

2006年08月29日 23時12分27秒 | JAZZ
平成元年のSwing Journal に『 新説 ジャズ名盤・ウラ名盤 』という臨時増刊号があります。この増刊号を僕はいたく気に入っていて,発売後18年経ってもなお書棚に居座っている愛読書なんですが,ミュージシャンの《名盤》を1枚紹介する一方で,40人ほどの評論家達がおのおの個人的な贔屓盤《ウラ名盤》を2枚づつ紹介していくといった構成です。

当時のSwing Journal編集長は中山康樹氏で,冒頭で名盤,ウラ名盤を次のように定義しているんですね。

《名盤》とは,風雪に耐え,今なお歴史的音楽的視点から,文字通り決定的名盤としてゆるぎない地位に君臨している作品。それに対して《ウラ名盤》は決定的評価や認知度は低いものの,そのミュージシャンをこよなく愛する筆者が極私的立場から,独断と偏見で選んだもうひとつの名盤。

たとえばホレス・シルバーの《名盤》は『 Doin’ The Thing 』であるのに対し,《ウラ名盤》は『 In Pursuit of The 27th Man 』 。ルー・ドナルドソンの《名盤》が『 Blues Walk 』なら《ウラ名盤》は『 Fried Buzzard 』とかね。フムフムといった感じで,ありきたりの型に嵌まった名盤紹介本とは違って,各筆者の愛情やこだわりが伝わる,とっても愉しいジャズ本なんです。

で,先日,ちょいと興奮気味で紹介したフィル・ウッズの『 Live From The Showboat 』は極私的に《ウラ名盤》ということになるわけですが,それではウッズの《名盤》というと,おそらく全員一致で『 Alive And Well In Paris 』ということになるのでしょうか。

『 Alive And Well In Paris 』は今さら説明不要の大名盤で,ウッズの名盤であるどころか,50年のアルト・サックス界の頂点に君臨する名盤といっても言い過ぎではない作品だと僕も思うのですが,意外に今までターンテーブルに乗る機会は少なかった名盤なんですね。おそらく10年以上ぶりに今,聴いているのですが,1968年という当時の時代背景,ジャズ界の置かれている苦境的立場などを反映したウッズの鬼気迫る狂気に満ちたプレイは,確かに胸を打たれるものがありますが,やっぱり,今となっては時代にそぐわないというか,重たいんですよね。

昔はLPだったから,大概,《Freedom Jazz Dance》から始まるB面の3曲を聴いていたから,それほど疲れることはなかったのですが,今,CDでM-1の《And When We Are Young》から最後まで通して聴くと,何だかとっても疲れちゃうんですね。こんなこと言うと,真摯なジャズ・ファンから罵声を浴びそうすが,本当なんだからしょうがない。

話は変わりますが,僕は一度だけウッズのライブを観たことがあります。それは20年ほど前,ロサンゼルスの某レストランでのライブだったのですが,憧れのウッズが生で見られると興奮して店に入ると,お客はパラパラ。しかも談笑しながらウッズのライブを観ている方もいるではないですか。演奏の内容など上の空で,そのなんとも言えない寂しさに涙が出そうだったのをこらえながらライブを観た事だけを覚えています。

彼のディスコグラフィーを見ると,当時1980年代後半は,作品数も少なく,サイドメンとしての仕事が多かったようですね。決して幸せな音楽生活ではなかった時期なのでしょう。2000年頃からは録音も多くなり,先日も来日していましたし,同年代のミュージシャンが相次いでこの世を去っていく中,年老いて更に艶っぽい音を奏で,精力的に活動しているウッズにホント頭が下がります。

さて,明日も早いので『 Warm Woods 』でも聴きながら寝るとしましょう。

Phil Woods のOfficial HPはこちら。Discographyがなんとジャケット写真入りで掲載されています。見ているだけで楽しいDiscoです。

ジャズ批評 『 ピアノ・トリオ Vol.3 』

2006年08月27日 20時48分35秒 | JAZZ
昨日,仕事帰りにいつものように御茶ノ水のDUに立ち寄り,ジャズ批評No.133『 ピアノ・トリオ Vol.3 』を買って帰りました。ジャズ批評を買うのは昔からの習慣であり,別段ワクワクする買い物でもないのですが,今回は違います。なにしろ「VENTO AZUL RECORDS」の早川さんが執筆されているのですから。早川さんはブログ「週末ジャズのページ」の管理人としても,大手レコード会社が絶対取り扱わないような超マイナーな輸入盤を日々紹介してくださっています。おそらく,そのdeepさから言えば,日本一ではないでしょうか。

さて,この『 ピアノ・トリオ Vol.3 』はその題名からも分かるように『 ピアノ・トリオ最前線 』(2001年),『 続ピアノ・トリオ最前線 』(2002年)に続く第三弾であるわけですが,ざっと目を通した所,だいぶ前の2作品とは趣を異にしているように感じられます。

まず大きく違うのは,1人のミュージシャンに割くページ数です。今までは1人に1ページで,関連アルバムを小さく左下に1枚紹介するといったページ・レイアウトでしたが,今回は1ページを上下に分けて,2人のアルバムを紹介するといった具合です。当然,アルバム紹介の字数制限は厳しくなり,言いたいことが十分読み手に伝わらないといった不安が生じます。個人的には,そのミュージシャンのバイオグラフィー的な話や旧作品との比較,ミュージシャンのサイド・ストーリー,執筆者の個人的な体験やエピソードなど,そういった話をもっと加えていただきたかったと,少々残念に思いました。結果的に300字程で伝えられる情報では,個々のアルバムの際立った個性が見えにくく,読み終えた後にどうもミュージシャン像がイメージできないんですね。まあ,僕の国語力のなさ,想像力の欠落なども大きく関係してはいますけどね(笑)。

また,紹介されているミュージシャンも『ピアノ トリオ最前線』は200人。『 続ピアノ・トリオ最前線 』は156人。そして今回は134人と,徐々に少なくなっているのもちょっと気になります。

そして何と言っても,以前に比べ今回取り上げられているピアニストは,いずれもかなりのマイナー揃い。ちなみに1頁目から順に見てみると,
Christian Henze, Stefano Battaglia, Age Garcia, Alain Mion, Aldo Romano, Alex Levin, ~と,恥ずかしながら僕はStefano BattagliaとAldo Romano以外は名前すら聞いたことがありません。

大体,見開き1ページに僕が持っているアルバムは1枚程度です。全体の3/4は知らない未知のアルバムということになります。以前の『ピアノ・トリオ最前線』などではほとんどが既知のミュージシャンで,全部揃えてやろうと思えば可能なアルバム群で,実際に5年経過した今では,掲載アルバムのほとんどを所有するに至っておりますが,今回のアルバム群はかなり手ごわい。コンプリート収集ははじめから無理とあきらめざるを得ない感じです。

とは言っても,VENTO AZULさんが紹介している気になるアルバムを,先程4枚ほど注文したところですけどね。まあ,時間はたっぷりあります。少しづつ手に入れていこうかと,森氏の紹介していたMassimo Parenteの『 Interlude 』を聴きながら幸せな気分に浸っています。

Phil Woods 『 Live From The Showboat 』

2006年08月27日 00時01分46秒 | JAZZ
やっとCD化された~,これは心底嬉しい。以前にも取り上げたアルバムだけど,20年以上聴いてきても,全く飽きることのない,ウッズの大,大,大傑作。

お前はジャズが分かっちゃいないと言われるかもしれない。笑うやつは笑えばいい。でも,これが絶対一番。今日,CDで聴き直してやっぱり確信したよ。

「よーろぴあん・りずむ・ましーん」がなんだ。あんなんじゃ乗れるかい。
「うぉーむ・うっず」はとうの昔に飽きてしまったわ。
「ふぃる・とーくず・ういっず・くいる」なんか,どっちが《うっず》で,どっちが《くいる》か分からんじゃないかい。

《Brazilian Affair》を聴いてくれ。これぞウッズ。メチャクチャ巧い。軟硬緩急を自由自在に使い分け,壮大なドラマを創造していく様は圧巻だ。

天才ウッズに,神が舞い降りた瞬間の奇跡のライブを捉えた名盤の復活だ~っ。

Fay Claassen 『 Sings Two Portraits of Chet Baker 』

2006年08月26日 22時31分22秒 | JAZZ
Ivan Paduart(イヴァン・パドゥア)の大好きなアルバムに『 A Night at The Music Village 』という2枚組みがあります。1983年のライブ盤で,2枚のうち1枚はトランペットのBert Joris(バート・ヨリス)とテナーのToon Roos(トゥーン・ルース)の2管フロント・ハード・バップのセットで,もう1枚はヴォーカルのFay Claassen(フェイ・クラーセン)にスポットライトをあてたセットを収録しています。バート・ヨリスとトゥーン・ルースは以前に当ブログでも紹介したオランダのAmsterdam Jazz Quintetのメンバーで,本国では結構有名なミュージシャンです。このアルバムはイヴァン・パドゥアの追っかけで購入し,しかもAJQのメンバーが参加しているということで期待して聴き始めたのですが,なんと,一番素晴らしかったのはそれまで全く知らなかったフェイ・クラーセンだったのです。これが思わぬ収穫で,うれしくて当時は毎晩,寝際にこのクラーセンのディスクばかりを聴いていたものです。歌唱力の素晴らしさは当然として,この人の個性はスキャットにあります。こんな美しいスキャット,滅多に聴けるもんじゃありません。そしてハスキー系にして瑞々しく透明感のある声質。低くザラッとした感触で歌い始め,最後に爽やかに高域に抜ける歌声は,清楚であるのにセクシーさも同居する不思議な印象を受けます。まあ,こういうジャズ・ヴォーカル物は理屈じゃありませんので,好きか嫌いか,最初の第一印象で決まっちゃいますからね。

で,彼女がチェット・ベイカーの生誕75周年記念企画として制作したアルバムが2枚発売になりました。輸入盤は今年の2月に発売になっていますが,国内盤はvol.1が6月に,そしてvol.2が今月に発売になりました。Vol.1はチェット・ベイカーの愛唱歌をクラーセンが歌うといった趣の企画で,丁度,チェット・ベイカーの『 Chet Baker Sings 』 (Pacific)の雰囲気です。トランペットにはヤン・ヴェッセルズが参加し,これまた哀愁のある儚い音色でチェットの世界に迫っています。バックは晩年のチェット・ベイカーとツアーを共にしたHein Van de Geyn(ハイン・ヴァン・デ・ゲイン)とJohn Engles(ジョン・エンゲルス),それに美メロの名手Karel Boehlee(カレル・ボエリー)とくれば,食指が伸びないはずがありません。

Vol.2は,ジェリー・マリガン=チェット・ベイカーのピアノレス・カルテットのレパートリーを演奏しているのですが,ここでクラーセンは,チェット・ベイカーのトランペットの演奏をヴォーカリーズで全編歌い上げています。当然,スキャットですが。ですからVol.1に比べてちょっとアーティスティックな作品に仕上がっているわけで,クラーセンを初めて聴く方はVol.1を買われたほうがよろしいかと思います。

というわけで,このクラーセン,10月には横濱JAZZプロムナードで来日します。あ~,観に行きたいな~。行けるかな~。


夏休み

2006年08月19日 09時16分44秒 | 日常
やっと夏休みがとれたので,今日から4日間,軽井沢に行ってきます。
「ちょっと軽井沢の別荘へ~」なんて言ってみたいけど,
ごく普通のペット同伴OKのペンションです。
しかも北軽井沢だし。
でも,北軽井沢の方がこんなに暑い日には良いかもね。
車の10連CDチェンジャーにこんなの積んで,では,行ってきま~す。

左上段から右下段へ

1)南佳孝 「 South of The Border 」(隠れ佳孝ファンです。名曲ずらり)
2)Eydie Gorme 「 Blame It On The Bossa Nova 」(涼しい~)
3)George Benson 「 Weekend in L.A. 」(夏だな~,やっぱり)
4)Casiopea 「 Mint Jams 」(カシオペアはこれが1番)
5)Larsen Feiten Band 「 Full Moon 」(ジャケに惹かれて...)
6)Workshy 「 Clear 」(久しぶりに聴いてみよ!)
7)渡辺貞夫 「 Wheel of Life 」(森林浴だね)
8)Pat Metheny 「 We Live Here 」(とりあえず,1枚入れとこ)
9)Original Love 「 Eleven Graffiti 」(ドライブにはこれ)
10) My Little Lover 「 Singles 」(妻の趣味です。1枚ぐらい入れとこ)

Donald Byrd/Gigi Gryce 『 Complete Jazz Lab 』

2006年08月18日 21時34分14秒 | JAZZ

バルセロナの再発レーベルLone Hill Jazzは,最近ウェスやエバンスなどの未発表音源などの気になるアルバムをリリースしていて,僕も時々お世話になっている有難いレーベルです(ちょっと怪しい匂いもしないでもないレーベルですが)。マーチ・ペイチの『踊り子』も再発されたので,ご存知の方も多いのではないでしょうか。先日はLennie Niehaus(レニー・ニーハウス)の50年代にContemporaryに残した音源の完全盤が3枚シリーズで発売され,早速購入し愛聴していますが,今度はついにDonald ByrdGigi GryceJazz Labの完全収録盤が3枚シリーズで再発されました。

ご存知Jazz Labがレコーディング活動した時期は1957年の1月から9月のたった9ヶ月のみでしたが,57年というまだハード・バップが産声をあげたばかりの時代にしては,かなり洗練されたアレンジが施された都会的でクールなユニットでした。僕が彼らを知ったのは大学2年生の時で,新潟市のDUで『 New Formulas From Jazz Lab 』を当時の中古盤としては高額な2500円で購入したのが始まりです。このアルバムは最高にかっこよく,生涯の友,棺桶盤と言ってもよいハード・バップだったわけです。A面の《Exhibit A》~《Capri》の流れは今聴いてもゾクゾクします。そして,彼らのアルバムがその9ヶ月の間に6枚制作されていると知った僕は,一枚一枚買い揃え,今では全部所有するに至っています。まあ,そんな大げさな事ではないですけどね。『 New Formulas ~』にあっては,4枚も買ってしまいました。ただし,Jazz Labとして1曲だけ収録されているColumbia制作の『 Jazz Omnibus
』だけは全く出会いが無く,未だに持っていませんが。

で,今回発売された Complete Jazz Lab Studio Sessions #1#3 』は,Newport Jazz Festivalでのライブ盤『 At Newport を除く5枚のアルバムを完全収録し,更に上記の『 Jazz Omnibus 』収録の音源や未発表曲を加えた完全盤です。当然3枚とも買っちゃいましたが,個人的にはCD化が初めての最愛聴盤『 New Formulas ~』を収めたVolume 2
が涙が出るくらい嬉しいです。

一日千秋の思いで待ち焦がれたと言っちゃ大げさですが,これだけ往年の名盤が低価格で再発されている昨今,いつかは『 New Formulas ~ 』も再発してくれるであろうと期待していましたが,なんとスペインの怪しい会社が望みを叶えてくれるとは….。今月(8月)23日には,こちらも待ちに待ったフィル・ウッズのRCAに残した名盤 Live From The Showboat が初CD化で再発されるし,また昔の熱いハード・バップを肴に旨いビールが飲めそうです。

  


Enrico Pieranunzi 『 Moon Pie 』

2006年08月16日 23時39分15秒 | JAZZ
さっき話しに出た,ピエラヌンツィの最大の汚点,彼の履歴書から消し去りたい超駄作,『 Moon Pie 』です。僕の大好きな『 Space Jazz Trio Vol.1 』と『 Space Jazz Trio Vol.2 』の間に制作された1987年のアルバムですが,DX7を使ったフュージョンを演奏しています。でも,これが信じられないほどダサくて幼稚なんですね。よくもまあ,ピエラヌンツィとのあろうお方が,こんなアルバムを制作してしまったかと,大ファンの僕としては悲しくて仕方ありません。丁度,デビュー前の(T-)Squareみたいにつまらないアルバムです。絶対,買っちゃいけません。

Enrico Pieranunzi & Horns 『 Evans Remembered 』

2006年08月16日 22時14分56秒 | JAZZ
今,Enrico Pieranunzi(エンリコ・ピエラヌンツィ)の新作,『 Live Conversations 』を聴きながら書いているのですが,Dado Moroni(ダド・モロニ)との連弾という,僕としてはちょっと嫌いな部類のフォーマットではありますが,なかなか愉しいアルバムです。ダド・モロニって人,初めて聴いたのですがかなり巧いですね。ちょっとブルージーな感じがピエラヌンツィのクラシカルな技巧と対比され,先が読めないこれぞインプロビゼーションの醍醐味が味わえる秀作ではないでしょうか。でもちょっと二人とも弾き過ぎではあるけどね。それと,モロニって,時々うなるし,足踏みしてリズムを取っったりもするし,ちょっと煩いかな。

で,今日は同じピエラヌンツィの2001年,VVJからリリースされたアルバム『 Evans Remembered 』について触れてみたいと思います。 “ & Horn ”とあるとちょっと敬遠されがちですが,このhornっていうのが,何を隠そうFabrizio Bosso(ファブリツィオ・ボッソ)とRosario Giuliani(ロザリオ・ジュリアーニ)なんですね。表ジャケットにも全く二人の名前がクレジットされていないので,見過ごされやすいアルバムですが,なかなか内容の良いアルバムです。近年のピエラヌンツィの作品の中では一番のお気に入りです。

ボッソ,ジュリアーニ,そしてクラリネットのGabriele Mirabassi(ガブリエル・ミラバッシ)の3管フロントというsextet編成で,このクラリネットを入れちゃうあたりがピエラヌンツィらしいわけで,品格のあるハード・バップ&チェンバー・ジャズ・アルバムに仕上がっています。

ガブリエル・ミラバッシはご存知ピアノのジョバンニ・ミラバッシの実兄ですが,EGEAに数多くの吹き込みのある実力派です。ミラバッシが参加しているあたりからして,単なるハード・バップではないことは察し付くと思いますが,ミラバッシとピエラヌンツィのデュオやピエラヌンツィのソロなど,EGEAの匂いが漂うノーブルな楽曲も楽しめます。一方でピエラヌンツィの洒落たアレンジが冴える3管ハード・バップもあったりと,とっても色彩豊かなアルバムで,イタリアン・ハード・バップ好きにも,EGEAファンにも楽しめるオススメ盤です。

タイトル通り,エバンス縁の楽曲が5曲,ピエラヌンツィのオリジナルが6曲の構成です。エバンスの『 You Must Believe in Spring 』の中から《Song from M.A.S.H.》,『 I Will Say Goodbye 』から《Seascape》,『 Exploration 』から《Elsa》,そして《Blue in Green》などが取り上げられています。

ピエラヌンツィの作品の中には気難しいアルバムや『 Moon Pie 』のような超駄作もあり,食いどころによっては腹を下しかねませんが,本作は比較的穏やかで快調なピエラヌンツィが楽しめる好盤ではないでしょうか。それからボッソのソロもメチャクチャカッコイイし,ピエラヌンツィの作品群の中では異色ですが,誰にでも親しまれる隠れた名盤だと思って書いてみました。

Joe Sample 『 Rainbow Seeker 』

2006年08月14日 22時59分35秒 | JAZZ
ある人は学生運動の最中に聴いたアルバート・アイラーに夢中になりジャズの世界に踏み入ったかもしれない。またある人は,彼氏から貰ったビル・エヴァンスの『 Waltz For Debby 』を聴いて彼氏以上にジャズに夢中になったかもしれない。それが菊池成孔でもいいし,アール・クルーでもいい。ジャズ・ワンダーランドは無数のエントランスを用意しているのだ。そして,ジャズは何処からの訪問者にも寛大なものだ。

1981年,僕は大学受験のため御茶ノ水の駿河台予備校に通う予備校生で,寝る時間以外は勉強するしかない非人間的な生活をしていた。ある日僕は中野にある中古電気店で,黒人が肩に乗せて歩いているような大きなラジカセを3万円で買った。中央線で千駄木の下宿まで持ち帰るとすぐさま,カセットテープをセットしFM東京の番組をエアー・チェックし始めた。

そしてそこで僕は,その後の人生を大きく変えてしまうことになるジャズとの運命的出会いを経験することになった。

「ジャズ・キーボーディスト特集」。それが番組のタイトル。夜7時の番組だった。キーボーディストは,ジョー・サンプル,リチャード・ティー,ラムゼイ・ルイス,そしてジョー・ザビヌルの4人。当然,ジャズというよりフュージョンだったが,当時の僕にはそんなことを知る由もなかった。僕は彼らの洗練されたピアノやローズ,シンセの音に心底一目ぼれしてしまったのだった。

ジョー・サンプルはアルバム『 Rainbow Seeker 』から《 Melodies of Love 》。
ラムゼイ・ルイスは『 The In Crowd から《 The In Crowd 》。
ジョー・ザビヌルはWRの『 Night Passage 』から《 Rockin’ In Rhythm 》。
リチャード・ティーは『 Strokin’ 』から《 Strokin’ 》。

毎日,テープが伸び切るまで聴いた。浪人生活からくる得体の知れない焦燥,不安。挫折感。そんな心を彼らの音楽は柔らかく包み込み,癒してくれた。

今,こうして高価な装置で聴く彼らのジャズは確かに緻密でクリアで美しく響く。しかし,1981年の夏,じりじり肌を突き刺す西日の差し込む4畳一間の安アパートで聴いたジョー・サンプルは,今より何倍も美しく,そして何倍も悲しかった。

Trio Toykeat 『 Jazzlantis 』

2006年08月13日 19時30分08秒 | JAZZ
今日は涼しげなジャケットで選盤してみました。海水魚を配したジャケット・デザインは,フィンランドのユニット,Trio Toykeat(トリオ・トイキ,or トリオ・トウケアット?)の1995年のセカンド,『 Jazzlantis 』(sonnet)です。ジャズ批評no.113『続ピアノ・トリオ最前線』巻頭カラーグラビアにも掲載されていた彼らのヒット・アルバムです。日本では知る人ぞ知るマイナーなグループですが,聴けばびっくり仰天。物凄い超絶技巧のグループなんですよ。ピアノのIiro Rantara(イーロ・ランタラ)は見た目はゆうに130kgはあるであろう巨漢で強面。なんだか映画 『薔薇の名前』に出てくる奇妙な修道院のような風貌ですが,その太い指から繰り出されるストロークの長いコード,遊び心豊かな旋律,そして鍵盤を縦横無尽に昇降する早弾きには驚き桃の木山椒の木。開いた口が塞がりません。

イーロ・ランタラはフィンランドの名門音楽学校,シベリウス・アカデミーを卒業した由緒正しいピアニストです。90年から93年まで渡米し,マンハッタン音楽院に留学しますが,アメリカのジャズに失望し帰国。以後,ヘルシンキを中心に音楽活動を行っています。彼らのジャズは今まで聴いたことの無いほどインパクトがあり,なかなか言葉に表現できないのですが,誤解を恐れず言ってしまうと,Micheal Camilo(ミッシェル・カミロ)とJacques Loussier(ジャック・ルーシエ)を混和し,そこにRick Wakeman(リック・ウェイクマン)のスパイスを振りかけたようなサウンドですかね。

何だかよく分からんでしょ。HMVのこちらで他のアルバムではありますが試聴できますので聴いてみてはいかがでしょう。ドナ・リーなんか凄いですよ。

ジャズ・フュージョンやプログレの要素も強く,本気でフュージョン・アルバムを制作しても,かなりイイ線行くと思われる技術を持ち合わせています。今までにsonet~emarvy~blue noteと,計6枚のアルバムを制作しています。全部は聴いていませんが,本作が一番遊び心があって気に入っています。

エヴァンス系,キース系,あるいはピーターソン系など,どれを聴いても上手いけど型に嵌まったピアノ・トリオばかりと少々食傷ぎみの方。こんなピアノもたまにはイイもんですよ。

Christian Jacob 『 Contradictions 』

2006年08月12日 22時11分31秒 | JAZZ
今日は,Christian Jacob(クリスチャン・ジェイコブ)の4作目にあたるリーダー・アルバム『 Contradictions 』を聴きながら,土曜の夜を過ごしています。前作,『 Styne & Mine 』は文字通りジュール・スタインの曲を9曲とジェイコブ自身のオリジナルを4曲取り上げた,いわばジュール・スタイン・トリビュートでした。さて今回はと言うと,Michel Petrucciani(ミッシェル・ペトルチアーニ)のオリジナル曲だけで構成されたアルバムを作ってきました。大好きなジェイコブが,これまた大,大,大好きなぺトちゃんの曲をとりあげているのですから,聴く前から出来がいいのは分かっていましたが,期待に反せず,完全に哀愁美のぺト・ワールドを再現しています。ジェイコブの持つ硬質で強靭なドライブ感は今回は幾分薄れていますが,あくまで敬愛するぺトちゃんへのオマージュというコンセプトですから仕方ありません。

収録曲は全部で11曲で,傑作『 Music 』(1989 Blue Note)の冒頭を飾っていたペトの代表曲<looking up>で始まり,<Brazilian Suite>,<Rachid>,<Memories of Paris>などのペトの名曲が並びますが,意外に地味で知られていない曲,たとえば<Even Mice Dance>,<Dumb Breaks>,<13th>なども取り上げており,単なるヒット・パレードに終わらない構成に仕上がっています。タイトルにもなっている<Contradiction>(矛盾)は,全曲よりも壮大なスケールで緻密に編曲されており,従来のジェイコブらしいアレンジの妙を十分楽しめる素晴らしい楽曲に仕上げています。このあたりはジェイコブ流石といった感じです。

このトリオ,Trey Henry(b),Ray Brinker(ds)との活動は,トリオでのツアーはもちろん,Tierney Sutton(ティアニー・サットン)のバック・バンドとしても長年活動を共にしているため,その阿吽の呼吸は素晴らしく,一寸の隙もない三位一体のプレイで,その当たりにも凄さを感じます。

それにしてもペトちゃんはピアニストとしての腕は言うまでもありませんが,その作曲能力たるや素晴らしものがあります。ちょっと調べてみたのですが,ペトちゃんのオリジナル曲って大体80曲ほどあるんですね。もの凄く多作だったんですね。

まだ買ってきたばかりで聴き込んでいませんが,今回もジェイコブの魅力が満載の五つ星傑作アルバムではないかと感じています。では,また。

当ブログ内のクリスチャン・ジェイコブの記事はこちら
当ブログ内のティアニー・サットンの記事はこちら

以前に当ブログでペトちゃんの記事を書いています。まだ,ブログを始めたばかりの気合の入っていた頃の記事で,我ながらよく書いたと思う記事です。暇なら覗いてくださいね。
ペトルチアーニは何故肺炎で死ななければならなかったのか(1)
ペトルチアーニは何故肺炎で死ななければならなかったのか(2)

Ignasi Terraza 『 In A Sentimental Groove 』

2006年08月10日 22時15分18秒 | JAZZ
昨年7月に始めた小生のブログも早1年が過ぎ,気がついてみたら<jazz>のカテゴリーが296エントリーに達していました。よくまあこんなに1年で書いたものだと,自分で感心しています。途中で父親が癌に罹って精神的に余裕がなかった時以外は,ほぼコンスタントにアップできていたように思います。昨日から, 『ブログを続ける力』 (GEODESIC編著)という本を読んでいるのですが,その中に「ブログが続かない理由」として,次の7項目を挙げているのですね。

1) ブログのために時間を割くことができない
2) 精神的にも考える余裕がなくなる
3) 一通り経験したから飽きてきた
4) 思っていたよりも難しい
5) エントリーを書くことがみつからない
6) コメントをもらえない
7) 葛藤が多く億劫になる

1)と2)に関しては僕自身も経験があるのでよくわかります。今年の4月から忙しい病院に転勤になり,いつも帰宅するのが10時を回るような生活になったため,どうしてもネタがあっても書く時間がないというのは,最近頻繁に経験しています。3)4)5)は今の所ないですね。エントリーする記事,ネタに困ることはありませんから。というより思いつきで書いているので,全く脈連のない支離滅裂な話を適当にアップしているので,記事に困ることはありません。むしろ読み手の方々が困っていらっしゃるのではないかと危惧しております。6)のコメントに関しては,確かにもらえない時は寂しい感じはしますが,基本的に小生のブログは備忘録が目的であるので,コメントが全くなくても,それが理由でブログを閉鎖することは今後もないと思っています。

でもやっぱりコメントが全然ないのにブログを運営していくのは苦しい作業だと思います。僕は頻繁に新設のジャズ関連のブログを検索し,ブックマークなりRSS登録をして訪問しているのですが,個人のジャズブログがかなりの数,新設されているにもかかわらず,その多くが開設後まもなくして閉鎖,あるいは放置されてしまっていることに驚いています。

それら短期間の内に閉鎖,放置されているブログにほぼ共通している事は<コメントが皆無>であるという事です。中には100近いジャズのエントリーがあるにもかかわらず,一件もコメントがないブログもあります。この人は今日現在もブログを運営されていますが,かなりの忍耐,葛藤があるに違いないと想像します。やっぱり,ブログ継続には共通の話題で盛り上がれる仲間の存在が一番大切であると実感しております。これからもスロー・ブロガーながら長く続けていく所存ですので,どうかよろしくm(._.)m 。

さて,今日聴いているのはスペインはバルセロナのピアニスト,Ignasi Terraza(イグナシ・テラザ)の新譜,『 In A Sentimental Groove 』です。今年の春に店頭に並んでいたものですが,どうも今回は自主制作盤のようです。

僕の手元には本盤意外にピアノ・トリオが2枚(『 It’s Coming』, 『 Let Me Tell You Something 』)と,トニー・ゾラー(ts)を加えたカルテット編成の『 Night Sound 』があります。トニー・ゾラーって,ビブラートを多用して,コールマン・ホーキンスやちょっとテキサステナーっぽいところもあって,僕はあまり好きではないのですが,他の2枚のピアノトリオはどちらも素晴らしい出来だと思います。ピアノトリオ・ファンならいまさら言われなくてもご存知だと思いますが。

彼のピアノは,カタロニアのトラディショナル・ナンバーを演奏する時は哀愁と詩情性豊かな美しいメロディーを奏で,一方で,スタンダード・ナンバーでは,躍動感のあるスウィング・ビートでピーターソン・ライクな滑脱さを演出するといった2面性があるように思われます。タッチも自信に満ち溢れていて清清しく,オンマイク気味の押し出しの強い好録音も手伝って,素晴らしいアルバムに仕上がっています。Swing Journal の「輸入盤ワールド」で山本隆氏が推薦していたこともあります。

今日は,ジャケットのパステル調の穏やかな雰囲気が今の季節にとってもマッチしていたので,久しぶりにて聴いてみました。

Eden Atwood 『 Waves 』

2006年08月09日 20時30分06秒 | JAZZ

今頃,ボサノバ聴いている人,多いんだろうな~。
やっぱり真夏の暑い時に,シリアスな管入りなど聴く気がしないもんな。
僕も結構,ボサノバのアルバム持っているけど,
結局,夏に聴くアルバムって決まっちゃう。
他のインスト・ジャズと違って,ヴォーカル(当然白人女性)はいろいろ手を伸ばすというより,
好きになった人をとことん聴きこむ方が好きなんですよぉ。

ということで,大好きなアトウッドのボサノバを聴いています。
もろボッサ歌手のアルバムより,こういったジャズ歌手のボッサ作品の方がくつろげます。
<彼女はカリオカ>から始まり,
<イパネマの娘>,<Once Upon A Summertime>,
<Don't You Know I Care>,<Waves>などと続き,
ビートルズの<Fool On The Hill>などもボサノバで演ってます。

ご存知とは思いますが,この人,メチャクチャ綺麗です。
おそらくローズマリー・クルーニーの若かりし頃にも負けない,
ジャズ界きっての美人。
もしよろしければ,彼女のOfficial HPを覗いてみて。

Ulf Wakenius  『 First Step 』

2006年08月09日 15時36分06秒 | JAZZ
ちょっと時間ができたので,今日は朝からブログのレイアウトの変更などをして時間を潰してました。なんか最近よく分かったけど,このGoo blogって,あんまりセンスの良いテンプレートないんですよね。今更,他社に乗り換えるのも大変なので我慢して使っているけど,今後のGooさんの頑張りに期待するとしましょう。

ということで,「即実践!ブログ・カスタマイズ術」という本を買ってきて,さあやるぞと意気込んでみたものの,この本,<Movable Type>のHow To本であったようで,あんまり役に立たなかった。自力でなんとか変更はしたものの,結局ダサいレイアウトになってしまって,不満です。まあ,そのうち勉強しながらブラッシュ・アップできればと考えいています。

で,今聴いているのはワケニウス『 First Step 』。今更ですが,実はブログのカスタマイズにあたって,このアルバム・ジャケをイメージして,パステル調に変更してみたというわけです。ただそれだけ。


ワケニウス好きにもいろいろあると思うけど,僕はこの『 First Step 』が一番好きですね。1993年のデビュー盤?かな。ディストーションかけてジョン・スコやジョン・マクラフリンをよりポップにしたような楽曲を演奏しています。ブルース・ギターもそんじゃそこらのブルース・ギタリストよりブルージーですわ。ウェスに捧げたM-2<Blame It On My Youth>なんか涙もんです。ラーシュ・ヤンソンのシンセ,オルガンもカッコイイのですが,あの顔からはちょっと想像できません。ラーシュ・ダニエルソンもウッド・ベースでフュージョンやってるし,よーがんばるな~と言った感じ。

Jerry Bergonzi Joey Calderazzo 『 Fast Company 』

2006年08月08日 21時46分09秒 | JAZZ
なにがイイって,まずジャケットからして素敵でしょ。みんな少年のようにニコニコしちゃって。バーガンジだけ嬉しそうじゃないけど,まあ,この人,気難しそうだし仕方ないか。4人の頭の上には矢印だ出ていて,<この人がダニエルソンです!>みたいなクレジットが入っているでしょ。とっても洒落ています。ジョーイ,かつ,バーガンジの大ファンの僕としては,マスト・アイテムだったはずが,今まで縁がなくて持ってなかったんです。当ブログ6月にバーガンジの新作『 Tenor of the Times 』の記事をエントリーした際,blog「 my secret room 」の管理人のすずっくさんが,これを持っていらっしゃると知り,<欲しぃ~>と叫んでいたら,なんと数日前に都内の某中古店で遭遇,<強く願えば夢はかなう>もんだと,ちょっと感激していました。

内容はもちろん最高。バーガンジ吹きまくり,ジョーイも弾きまくり,でダニエルソンはマイペース。意外にJukkis Uotila(ユッキス・ウォティーラ)がエルビンっぽくって,これまた素敵。時にPrestigeのコルトレーンのようにエモーショナルに,時にImpulseのコルトレーンのように鬼気迫る激しさでバーガンジが吼え,ジョーイが呼応する。でダニエルソンは冷静にリズムキープって感じ。

本作が録音された1996年と言えば,先日アップしたジョージ・ガゾーンの『 Four’s and Two’s 』も同年で,そこでもジョーイが参加していました。それから,ジョーイは当時マイケル・ブレッカーのバンドに在籍していて,傑作『 Tales from the Hudson 』を発表した年でもあります。まさに飛ぶ鳥も落とす勢いのジョーイが本作でも大爆発して,激走昇降モード・ラインを決めまくり。モード・スケールを使って,ここまで歌えるピアニストは他にいません。

アルバム最初の曲<The Lag>はジョーイのおそらく本作のために書き下ろしたオリジナルで,いきなりのfull throttle 。やはりジョーイのオリジナルM-3<echoes>は1995年のジョーイのアルバム『 Secrets 』が初演だと思いますが,『 Secrets 』はボブ・ベルデンがアレンジしたスモール・コンボだったため,個々のアドリブには重点が置かれていなかったため,とっても大人しい,優雅な<echoes>でした。この『 Fast Company 』では別曲のように,コルトレーンImpulse後期のあのカルテットにようなウネりで迫ります。M-2<Loud-zee>はバーガンジのオリジナルですが,どこかで聴いたことがあると思っていたら,何てことはない,彼の1994年の『 Vertical Reality 』でマイク・スターン,アンディ・ラバーンらと演ってました。ラテン・リズムにアレンジされていてとってもポップでしたが。ダニエルソンのオリジナルも2曲収められていて,すすっくさんによると,ダニエルソンのリーダー作に入っているそうです。

マイケル・ブレッカーの大傑作『 Tales from the Hudson 』の裏で,ジョーイがひっそりとこんなアルバムに参加していたことは,ちょっと面白いですね。そう言えば,ブレッカーとバーガンジって,仲悪かったでしたっけ?。あれ,仲悪いのはブレッカーとジョージ・ガゾーンでしたっけ? …忘れた。