雨の日にはJAZZを聴きながら

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Stewy Von Wattenwyl 『 Cookin' Live 』

2005年12月30日 20時10分17秒 | JAZZ
今日は当直です。たまに当直するのもいいもので,急患さえ来なければ結構自由時間がとれます。病院というのは年末から年明け元旦は暇なのですが,1月2日,3日あたりから忙しくなるんですよ。だから今年は年末に当直を入れて,年明けは少しゆっくりしようかと考えています。

製薬会社の人(俗にいうMRさん)が,正月休み中の当直医用にと,数本のDVDを医局に置いて行ってくれたので,その中から今日は『 CANDYMAN 』でも観ようかと思ってます。

<鏡に向かってその名を5回唱えると,かぎの手でズタズタに引き裂かれるというキャンディマン伝説。>

だそうです。まあ,暇つぶしにはいいかな。

これとは別に当直用にJazzのCDも何枚か持ち込んでおります。ブルース・バースの『 Live at the Village Vanguard 』や,先日買ってまだ聴いていなかったピーター・ビーツの『 Live at the Concertgebouw 』などなど。ピーター・ビーツの新譜はかなりノリノリで爽快です。まあ,いつもと変わらず,ちょっとマンネリではありますが。ピアノの音が硬すぎて,僕は一連のCriss Cross盤の方が好きかな。

で,今聴いているのは,ちょっと古い(2001年)ですが,スイスのピアニスト,ステューイ・フォン・ワッテンウィルの『 Cookin' Live 』です。期せずしてみんなライブ盤ですね。この人はめちゃくちゃ巧いとか,叙情的で素敵というわけではないのですが,選曲がいいので時々聴きたくなるアルバムです。M-1がモーダルな雰囲気の<テイク・ファイブ>で,その他には<エスターテ>,<ステイプルメイツ>,<ボディ・アンド・ソウル>,<枯葉>,<ステラ~>などを演奏していて単純に楽しいアルバムです。Brambusというスイスのレーベルから発売になってますが,日本にはおなじみ杉田宏樹氏監修のP.J.L.が出ています。

話は変わりますが,今日はお茶の水DUの年末廃盤セールの日だったんですよね。明日,当直明けにDUに寄ってから帰ろうかな。でもその頃にはお宝は掘り起こされているだろうな~。

2005極私的JAZZ PIANO BEST 10

2005年12月29日 21時48分32秒 | JAZZ




2005年も残すところあと3日。妻に年賀状の印刷を頼まれていて,こんなブログを書いている暇など本当はないのですが,彼女が風呂に入っている隙に駆け足で1年を振り返ってみましょう。とは言っても時間がないのでまずはピアノ・トリオのベスト10を自分なりに選んでみました。ここに挙げた10枚より遥かに音楽的に優れた作品もあるのは承知しているのですが,極私的に頻繁にトレーに乗せた,愛聴したCDを見栄をはらずに正直に選んでみました。

1) Dave Peck 「Good Road 」 Let's Play Stella Records
12月7日に紹介しました。シアトルの田舎に住んで地道に活動しているローカル・ミュージシャンです。前作「 3 and 1 」も愛聴盤です。なが~く付き合えるアルバムになりそうです。

2) David Hazeltine 「 Modern Standards 」 Sharp Nine Records
今年はVenusから「クレオパトラの夢」もリリースしているヘイゼルタインですが,愛着度からいったらこのシャープ・ナイン盤の方が彼の自然体な感じがして好きです。

3) Andrea Pozza 「 Sweet Lorraine 」 Verus
イタリアの新星,ポッツァの国内デビュー盤です。なかなか趣味の良いピアノです。ドラムのステファノ・バニョーリはフランチェスコ・カフィーゾのバックで来日した際,実際に観れました。そんなこともあってこの盤には愛着があります。

4) Enrico Pieranunzi 「 Live In Paris 」 Challenge
泣く子も黙るピエラヌンツィーの最新ライブ2枚組です。12月11日に紹介しました。最近は此ればっかり聴いています。すばらしい。誰にもモンクは言わせない迫力があります。メンバーもヘイン・ヴァン・ダヘインとチェカレリで言うことなし。今年のベスト1かな。

5) Giovanni Mirabassi 「 Mokkiri-Ya Live 」Atelier Sawano
ミラバッシは澤野からフラビオ・ボルトロとのカルテット「 Prima O Poi 」(11月25日紹介)をリリースしていますが,コンサート会場限定で発売されたこの金沢市の<もっきりや>でのライブがすばらしかったです。ミラバッシ聴きたくなるとついこの盤に手が伸びでしまいます。

6) Guido Manusardi 「 The Nearness Of You 」 Sound Hills
僕はマヌサルディーが昔から好きで,ずーっと聴いてきたので,もうアルバムの出来不出来に関係なく愛着があります。長い間かけて熟成させた赤ワインのように,独特のコクのあるスウィンギーなフレーズ。そんじゃそこらの若造には真似ができません。益々色気のある親父になってきました。

7) Baby Lopez Furst 「 Jazz Argentino 」 discos melopea, Distributed by NORMA
厳密には1966年の作品で,新譜ではありませんが,今回NORMAが初めて復刻したので,一応新譜扱いにしました。ロペル・フルストはアルゼンチンの人気ピアニストです。<南米のエバンス>と呼ばれるように,ホントにエバンスそっくりさんです。これほど似てるエバンス派のピアニストも珍しいです。演奏の出来もすばらしく,選曲も抜群で,今年はかなり親しくさせてもらいました。鶏のジャケで親しまれたもう一枚の「 Jazz En La Universidad 」も同等の出来です。

8) Jacob Christoffersen 「 Facing The Sun 」 Stunt
当ブログで10月19日に紹介させていただきました。本作はクリストファーセンのデビューアルバムです。M-4<Rememering>がノスタルジックな気分にさせる美麗曲です。これからがますます楽しみです。ホントstuntはいいアルバムを出してますね~。

9) Ernst Glerum 「 Omnibus One 」 Favorite Records
DUの<JAZZ ULTIMATE COLLECTION 2005>で山本隆氏が2005年のベスト1に選んでいたアルバムです。山本氏の推薦するアルバムに駄作なしと信じている僕としては真っ先に購入。ひたすら聴きまくったアルバムです。ちょっと癖のあるピアニストですが,上手いだけで没個性的なピアニストが氾濫する今日においては,とっても新鮮で爽やかであります。決してウケをねらったトリッキーなピアニストではありませんから,安心して購入して大丈夫です。山本氏はこのアルバムを<もうニャグニャグですよ,ニャグニャグ>と言ってました。意味不明です。

10) Christoph Spendel 「 Shanghai City Lights 」 Blue Flame
スペンデルはフュージョンにも手を出すので,いまひとつ,かたぎのジャズ・ファンには好かれませんが,僕は結構BGMで聴いています。本作はでもちゃんとしたアコピをひいてるピアノ・トリオですが。昔,<pieces of a dream>とかいったフュージョン・バンドがいたのですが,僕はこのアルバムを聴くと彼らを思い出します。似たテイストを持っています。それからデビッド・ベノワあたりにも通じるかも知れません。聴きやすいジャズではあります。紹介するほどのアルバムではないかもしれません。

ざーっと,こんなことろですが,ブラッド・メルドーの「 Day Is Gone 」,カールステン・ダールの「 Blue Train 」,ケニー・バロンの「 Live At Bradley's Ⅱ 」,ステファノ・ボラーニの「 Gleda 」 などなど,他にも沢山愛聴盤がありました。折を見て随時紹介させていただきます。

明日は当直で,おそらくブログ更新ができないと思います。
では,また。おやすみなさい。


Stefano Di Battista  『 Volare 』

2005年12月28日 21時38分11秒 | JAZZ
昨日は以前ドイツの学会で一緒だったメンバーで結成した「ドイツの会」の忘年会でした。六本木のドイツ料理のお店で毎年開いているのですが,こういっちゃなんですが,ドイツ料理はあまり美味しくないですね。でもワインは美味しいんですよね~。これでひとまず忘年会は全部終了です。あ~,よく飲んだものだ。

というわけで,今日は何の話をしようかと迷っていたのですが,昨日,ピエール・ドゥ・ベトゥマン(Pierre De Bethman)の話が出ましたので,その流れでステファノ・ディ・バティスタ(Stefano Di Battista)の話でもと思っています。「キャ~ッ,バティスタ様~」と,何処からか黄色い歓声が聞こえてきそうですが,それはちょっと置いといて。

「ドゥ・ベトゥマンとディ・バティスタの何処に関連があるんじゃ」とおっしゃるかもしれませんが,実は二人は競演したことあるんですよ。ジャズ批評のNo.109 「ピアノ・トリオ最前線」のp133にPrysmの3rd album 『 Time 』が紹介されているのですが,それによると,ベトゥマンは1998年,ディ・バティスタ・クインテットのメンバーとして,エリック・レニーニの代役で来日しているんですね(「巴里 ジャズ物語」というLABEL BLUEのアーティスト達によるコンサート)。バンジャマン・エノクも当時のディ・バティスタ・クインテットのレギュラーでしたから当然一緒でした。で,当時のディ・バティスタ・クインテットのアルバムが上の『 Volare 』(1997 LABEL BLUE)というわけです。このデビュー・アルバムの出来の良さに仏Blue Noteのニコラス・フルール(Nicolas Pflug)が目をつけ,1998年に同レーベルから『 A Prima Vista 』でメジャー・デビューしています。その後,『Stefano Di Battista 』(2000),『 Round About Roma 』(2002),『 Parker’s Mood 』(2004)と,リリースしていますが,僕としては第一作の『 Volare 』が目下最高傑作であると思っています。僕の中での順位は,1位『 Volare 』,2位『 Parker’s Mood 』で,あとの作品はみんな一緒かな。

『 Volare 』は12曲中5曲がバティスタのオリジナルで,その他が<Stars Fell On Alabama>,<My Foolish Heart>などのスタンダードや,メンバーのボルトロ,ボナコルゾのオリジナル,それからハンコックの<One Finger Snap>やマーギッツァの<Windows Walk>なんかも入っています。マーギッツァの<Windows Walk>はオリジナルよりスロー・テンポでボルトロのテーマにバティスタが軽くオブリガードをつけて,静かにしかし情熱的に歌い上げます。もしかするとオリジナルより名演かも。この曲はちょっと古いけど名曲ですよね。ぐ~っと心に沁みます。M-4<Funky Porcini>などは,70年代マイルスを彷彿させるロック・ビートで,バティスタ,ボルトロともキレまっくています。M-5<Stars Fell On Alabama>など,僕はキャノンボールのバージョンなど嫌いなほうですが,ここでのバティスタの歌い方はイイです。やっぱりバンジャマン・エノクのドラミングが冴えていて,全体を引き締めています。このアルバムを聴くとロザリオ・ジュリアーニよりバティスタの評価が高いというのも納得しちゃうんですよね。とにかくすばらしいアルバムですわ。

最近は,High FiveのようなEuropean Hard Bop Jazzが人気ですが,バティスタ=ボルトロの哀愁バップも,これがなかなかどうして,イイもんですよ~。
【愛聴度★★★★★】

Stefano Di Battista  『 Volare 』(1997 LABEL BLUE)
Stefano Di Battista (as)
Flavio Boltro (tp)
Eric Legnini (p)
Rosario Bonaccorso (b)
Benjamin Henocq (ds)

David El-Malek 『 Organza 』

2005年12月27日 16時22分13秒 | JAZZ

トロティニョン~エルマレックのお話の流れで,今日はエルマレックのお話をしましょう。デヴィッド・エルマレックは1970年生まれのフランス人です。10代を兵役で費やしたため,サックス奏者としての経歴は意外に浅く,1995年頃よりいくつかの賞を獲得し本国で注目されるようになったようです。現在までに,トロティニョンとのCo-leader albumを含め,4枚のアルバムをリリースしています。僕が所有しているのは,デビューアルバム以外の3枚です。彼のHPを見るとデビューは1999年にAgency Comoediaというレーベルからの『 Live au Café des Arts 』というアルバムらしいのですが,Discographyを見ると“marketing: not distributed”とあります。かなり手に入れるのは困難ではないでしょうか。ちなみにこのアルバムにもトロティニョンが参加しているようです。デビュー盤以外は容易に入手可能です。

Live au Café des Art (1999 Agency Comoedia)
Organza (2001 Crystal)
Talking Cure (2003 Crystal)
trotignon el-malek hall pallemaerts (2005 Naive)

 

Organza 』,『 Talking Cure 』は共にPrysmピエール ドゥ ベトゥマン(p)が参加しています。 Organza 』のM-1<Tora tsiva lanou moche>はまるでコルトレーンの<Crescent>のような曲です。音色も結構似てます。ふっくらとした暖色系の音で朗々と歌い上げます。全体にややスローからミディアムテンポの曲が多いのですが,M-9<Gentlman>はDrum'N Bassのリズムに乗せて,長尺なハード・ブローイングを披露します。これが意外にはまり,よく車を飛ばしながらリピートして聴いていました。彼のHPを開くとバックで流れています。ちょっと聴いてみて。どちらかと言うと Talking Cure 』の方が吹きまくっています。ありきたりの表現ですがブレッカー似です。フラジオ音域での歪ませ方など,泣きのフレーズがクゥ~ッ,たまらん。ちなみに両アルバムとも最後に隠しトラックがあります。でもこの隠しトラックでどういう意味があるのでしょうか。よくわかりません。
今,“Prysmのピエール ドゥ ベトゥマン”と言いましたが,現在彼はエルマレック,ミシェル・フェルバーバウム(g)らとIlium というユニットを結成し,既に2枚のアルバムをリリースしています。

Ilium ( 2003 Naïve )
Complexe ( 2005 Les Disques Deluxe )

 

 僕は第一作の『 Ilium 』しか持ってませんが,Prysm の音を期待するとちょっとがっかりするかもしれません。やっぱりPrysmはベトゥマン,クリストフ・ウォーレム,ベンジャミン・エノックの3人のユニットでしか出来ないジャズだったのでしょうか。とにかくPrysmのような鋭い鋭角的インター・プレイ,ガチンコ勝負があまりありません。たぶん全曲ベトゥマンの作曲だと思うのですが,キメ,アンサンブル指向のカッコイイ楽曲ではあるのですが,いまひとつかなと感じます。まあ,全曲フェンダーローズを弾いているからキレがないように感じるのかもしれませんが。そんな印象なので第二作目は買っていません。
上の写真右はPrysmの第二弾です。彼らは仏Blue Noteと契約し,計4枚のアルバムをリリースしましたが,本作が一番カッコイイかな。とは
いっても第一作は持ってないんですが。第一弾の『 Prysm 』は当然廃盤で,現在入手困難なんです。都内の廃盤セールで先日も出てましたが,廃盤セールに並ぶほど暇じゃないので,入手できませんでした。でもいつかは欲しいな~。


Baptiste Trotignon 『 trotignon el-malek ~ 』(3)

2005年12月25日 19時38分34秒 | JAZZ

バティスト・トロティニョンがサイドメンとして参加しているアルバムは,

Moutin Reunion Quartet 『 Power Tree 』(2001 Dreyfus)
Moutin Reunion Quartet 『 Red Moon 』(2003 Nocturne)
Pierrick Pedron 『 Cherokee 』(2000 Elabeth)
Christian Brun 『 French Songs 』(2001 Elabeth)
Claudia Solal 『 My Own Philosophy 』
Jerome Barde 『 Bifurg 』(yourbuz.com)
OLH orchestra 『 G meets K 』(Yolk records)
Doudou Gouirand 『 Les racines du ciel 』(RDC records)
Jean-Luc Chevalier quartet 『 Hommage a jaco 』(seventh records)

などがあるようですが,僕の持っているのは,Moutin Reunion Quartet 『 Power Tree 』とPierrick Pedron 『 Cherokee 』だけです。Moutin Reunion Quartet の『 Red Moon 』も欲しいのですが,まだ巡り合えてません。

                   
Pierrick Pedron 『 Cherokee 』(2000 Elabeth)
まず,このジャケット・センスは何なんでしょうね。これじゃ食指が伸びませんね。でも内容はかなりイイです。僕はピエリック・ペドロン(as)をこのアルバムでしか知りませんが,やや不安定に聴こえる(リップ・コントロールに難あり?)箇所も散見されますが,全体に激しくブローし,勢いがあり,そんなネガティブな要素など忘れてしまうほど魅力的な音です。ジュリアーニに結構似ているかも。系譜的にはパーカー系です。今回,検索していてたまたま面白い彼のライブ映像を見つけました。かなり貴重ですよ。ぜひ見てくださいね。おっと,トロティニョンのことを忘れてました。もちろん素晴らしいですよ。【愛聴度★★★☆☆】

                   
Moutin Reunion Quartet 『 Power Tree 』(2001 Dreyfus)
優れた才能同士が引き合うように集結したムタン・リユニオン・カルテット。ご存知ムタン兄弟にトロティニョンとこれまた卓抜したテナー・マンのシルヴァン・ビュフ(正しい呼び方知りません)が参加しています。ほとんどがムタン兄弟のオリジナルで,フュージョン的な楽曲も多く,かなりカッコイイです。M-1の出だしからフランソワ・ムタンの強烈グルーブ・ベース・ソロです。このフランソワ・ムタンって人はエレキベースのフレーズを事も無げにアップライトでやってのける技術があるんです。凄いの一言です。おっと,トロティニョンのことを忘れてました。もちろん素晴らしいですよ。以前にマイ・ブログでムタン・リユニオン・カルテットの最新作『 Something Like Now 』を紹介してます。こちらも見てくださいね。【愛聴度★★★★☆】


<番外編>
トロティニョンとは関係ありませんが,シルヴァン・ビュフの『 Soul Notes 』(2001 naive)はマニュエル・ロシュマン(p),プリズムのクリストフ・ウォーレム(b)が参加していて,噛めば噛むほど味の出るスルメ的名盤です。時々ムショウに聴きたくなり,密かに楽しんでいます。【愛聴度★★★★☆】
                   




Baptiste Trotignon 『 trotignon el-malek ~ 』(2)

2005年12月25日 18時41分23秒 | JAZZ

今日は妻とショッピングに出かけたついでに,101日に秋葉原にできた石丸電気のハイオーディオ・ショップ「レフィーノ&アネーロ」に行ってきました。GOLDMUNDJEFF ROWLANDなどの僕には一生縁の無いであろう高級品が並び,ため息しか出ませんでした。「宝くじが当たったら買ってあげるね。」と言う妻の言葉に,なんだか一層悲しくなってきたので,早々店を退散して帰ってきました。それにしてもあれだけ広き敷地をとっていながらお客は僕らを含め3組ほど。これじゃ採算取れないんじゃないのと心配すると同時に,ちょっと安心したりして。あんな高級品を買うお客が沢山いたんじゃ困ります。

ということで,一昨日のバティスト・トロティニョンのお話の続きです。新作の『
trotignon el-malek hall pallemaerts 』(ただメンバーの名前並べただけじゃねーの)の記事にしようと思ったのですが,この際,僕の所有する彼の参加作品を全部挙げてみようかと思います。

                   
Fluide 』。2000年のデビュー作。スタンダード4曲,オリジナル4曲の好ましい選曲です。オリジナル曲はいずれも凝ったテーマとモードを基盤とした欧州抒情派の旋律で,ストロークが大きくハーモニーに深みがあり,高音での高速パッセージも淀みなく,粒立ちが綺麗で,誰が聴いても上手いと感じられる曲。  ただ多少理屈っぽい感じがあり,無機質なフレーズが鼻につきます。よって僕としてはリラックスして弾いているスタンダード4曲が愛聴曲です。特に<My Shining Hour>は右手がよく歌い好演です。なお彼は本作が評価され,2001年度「ジャンゴ・ドール」の最優秀フレンチ・ミュージシャンに選ばれています。【愛聴度★★★★/2☆】

                   
Sightseeing 』。2001年の第二弾。メンバーは第一作と同じく,クロヴィス・ニコラス(b)とトニー・ラベソン(ds)のトリオ。オリジナルが7曲とやや多めです。M-1Anyway>の美しい旋律に魅かれます。3者のインタープレイも見事で,トニー・ラベソンのブラシュも臨場感のあるクリアな音で録音されていています。タイトル曲の<Sightseeing>はもちろんウェザー・リポート時代のショーターの曲です。M-2Fluide>は第一作のタイトルですね。何故かこのアルバムに収められてしまいました。全体に第一作よりスケール感が大きい演奏が多く,本領発揮といったところでしょうか。僕は第一作より本作の方が好きです。【愛聴度★★★★☆】

                    
Solo 』。2003年の第三弾。タイトルが示すようにソロ・ピアノ集です。ブラッド・メルドーの『 Elegiac cycle 』同様,超絶技巧のスーパー・ピアニストは,ソロといえどスタンダードなどは1曲も演奏しません。全曲オリジナルの完全自己陶酔型のアルバムです。悪い意味じゃないんですよ。なんか彼の部屋をそーっと覗き見したら,一人でこんなピアノを弾いているんだろうな~と空想してしまう,彼の隠れた素顔が見えてくるアルバムです。クラシック現代音楽とジャズの融合。『 Elegiac cycle 』同様,はまるとめちゃくちゃはまります。【愛聴度★★★☆☆】

                    
trotignon el-malek hall pallemaerts 』。2005年の第四弾。デヴィッド・エルマレックを入れたカルテットです。トロティニョンとエルマレックが5曲つづ持ち寄った選曲で,エルマレックの曲はやはりエルマレック節の冴えるハード・バピッシュなテーマを持っていて,トロティニョンの曲はトロティニョンらしいモーダルでちょっとよじれたテーマの曲で,それぞれの持ち味がうまく絡み合い,最後まで飽きない内容です。個人的にはもう少しエルマレックにブローしてもらいたかった気もしますが,一応トロティニョンとの共同名義なので,バランスを考えた上での配慮だったのでしょうか。ちょっとエルマレックが控えめです。【愛聴度★★★★☆】

次いで彼のサイドとしての参加アルバムを2枚ほど。


To be continued....


Baptiste Trotignon 『 trotignon el-malek ~ 』(1)

2005年12月23日 23時33分17秒 | JAZZ
バティスト・トロティニョンの最新作。とは言っても今年の春頃にはDUの店頭に並んでいたと思ったけど,購入したのはつい最近の事。バティスト・トロティニョンは2000年の1st アルバム『 Fluide 』を聴いてその超絶技巧ぶりに驚愕し,以来追っかけているフランスの若手ナンバー・ワン・ピアニストです。『 Fluide 』は内容もさることながら,緑を大胆に配したトロティニョン分身の術ジャケで,かなり売れたアルバムですから,ご存知の方も多いと思います。予断ですが,山本隆氏によると緑のジャケは売れるそうです。この1st アルバムは2003年に澤野工房から再発になっています。下の写真は僕の所有するオリジナルですが,澤野からの再発はジャケ下の鍵盤部分が除かれていてデザイン的にはより洗練されています。2001年の2nd アルバム『 Sightseeing 』も2005年に先日お話したP.J.Lの「European Jazz Piano Collection」で再発されています。3rd アルバム『 Solo 』は一転してソロ・ピアノでした。ヨーロピアン技巧派にありがちな現代音楽のジャズ・アレンジ的な楽曲(おそらく全曲彼のオリジナル)で,やや好き嫌いがあるかもしれません。それにしてもNaïveの一連のジャケットはインパクトがありますね~。『 Fluide 』の分身トロティニョン。『 Sightseeing 』のまっ黄色ジャケ。そして『 Solo 』はちょっとオカルトチックなモノクロの手首ジャケ。これにはタイトルや彼の名前すら記されていません。これは結構目立ちますね。そういえばマイルスの『 Get Up With It 』もLPでは顔写真のみで,タイトル,マイルスの名前が一切記されてなかったのが印象的でした。(CDにはちゃんと記されています。)黄色いジャケも脳裏にしっかり焼きつく色で,すぐに思い浮かぶ黄色ジャケといえば,マッド・ヴィンディングの『 The Kingdom 』(stunt)やサルバドーレ・ボナフェデの『 Journey To Donnafugata 』(CamJazz)あたりかな。話がわき道に逸れてしまいましたが,この新作はトロティニョンとデヴィッド・エルマレックの共同名義になっています。曲も半分つづ持ち寄って全曲オリジナルです。デヴィッド・エルマレックもまだ知名度はいまいちですが,僕の大好きなテナー・マンで,下の写真の2作品『 Organza 』(2001 Cristal),『 Talking Cure 』(2003 Cristal)なんかは愛聴盤です。エルマレックはずっとピエール・ドゥ・ベスマンと競演していたので,いずれはトロティニョンにお鉢が回ってくるのかなと思ってたところに本作がリリースされたわけです。でもちょっと調べてみたら二人は1998年には一緒にツアーしていたようですし,2004年にはチェカレリのバンドで一緒だったこともあり,今回の共同名義のアルバム制作に至ったというわけです。

To be continued....

   

吉田美奈子 <12月のILLUMINATION>

2005年12月22日 00時13分00秒 | Around JAZZ

仲間とのクリスマス・パーティーの帰り道
夜空の煌く星を見上げ,家族を思い
今まで生きてこれたことに感謝する
どこからか吉田美奈子の声が聞こえくる
R&Bとハモンド・オルガン
静かなクリスマス・ソング
酔いが心地よく,一人小声で歌いながら
イルミネーションの点る雑踏の中を歩く
家路を急ぐ僕の頬に
冷たい風が吹きつける

Merry Christmas Happy New Year
今の僕に必要なクリスマス・ソングは
この一曲だけでいい



12月のILLUMINATION

静かな呼吸でこの世界を見つめている
時間が移り変わる瞬間の狭間でも

未来へ向いている扉が開く時は一層
誰かと肩を寄せてともにいたいと思う

夜空を飾る星達の数ほどはないけれど
明かりを灯すから
Merry Christmas & Happy New Year

もみの木に揺れる幾千もの電飾の中に
心を分かち合える人が照らされている

傍らにいるから、すぐ側にいるから
あなたを愛する人はいつも近くにいる

12月の
Illuminationこのまま夜空とひとつになれ

心が触れ合う都度あなたにこの歌で伝えよう
Merry Christmas & Happy New Year

夜空を飾る星達の数ほどはないけれど
明かりを灯すから
Merry Christmas & Happy New Year

吉田美奈子 『 KEY 』 1996 MCA MVCD41

 


今度はCD棚の整理だな

2005年12月21日 22時29分57秒 | JAZZ

今週の日曜日は,一日かかって書棚の整理が終わったばかりだけど,今週はCD棚の整理もしなけりゃならないな~。LP棚の方はミュージシャン別に整理されているのだけれど,CD棚の方はかろうじて楽器別に分類されているだけなので,聴きたい時にすぐに出てこないんですよね。特にピアノなんかは膨大な数あるので,探すのが大変です。こんな調子ですから,CDリストなどもなく,「ジェフ・ハミルトンのドラムが入ったアルバムは」なんて言われても検索不能です。かといってこれからリスト,データベースを作成するのは気が遠くなる作業なので,初めからやる気はありませんが。せめてLPのようにミュージシャン別に整理して,更にダンボールに溢れている分も新たなラックを購入して整理することを,冬休みの課題にしました。

てな事考えながら,棚にはさむミュージシャンの見出しカードをテプラで作っています。それだけでもなんか気が遠くなってきたけど。ラズウェル細木の「ときめきJAZZタイム」の第8話『廃盤狂想曲』または『エサ箱の前の懲りない面々』または『おめーの頭の中はレコードのことしか無いのか~』を思い出しますな~。

今聴いているのは,マイルス・デイビスの『 At Fillmore 』。 C面の<I Fall In Love Too Easily>~<Sanctuary>~<Biches Brew>が,クー,たまらん。
『 Agharta 』,『 Pangaea 』,『 Dark Magaus 』,『 At Fillmore 』の中では,断然 『 At Fillmore 』がカッコイイ。やっぱりアル・フォスターよりディジョネットの方が僕は興奮するな~。『 At Fillmore 』が他と雰囲気が違うのは,ギターが入っていないからなんだろうな。そのことでよりJazzっぽく感じるんだろうね。

                


Eddie Higgins 『 Zoot’s Hymns 』

2005年12月20日 11時43分38秒 | JAZZ
昨日は明け方4時に救急で叩き起こされ,凍え死にそうな夜道を車を飛ばして病院に行き,そのまま夜8時頃までへとへとになるまで働いたので,今日は午前中ゆっくり寝て,午後から出勤することにしました。(もともと火曜日の午前中は休みなのですが,何だかんだといつも仕事させられているんですよ。)妻はお友達とクリスマス会で先ほど子供と一緒に出かけてしまいました。仕方ないので,自分でコーヒーをいれ,さてと何から聴こうかと相変わらずCD棚の前で腕組しながら思案中であります。う~ん,頭がぼーとして,思考回路停止状態のためか,いい考えが浮かびません。寺島氏が,「何を聴いたらいいか迷う時はオムニバスを聴けばいいんじゃ。その中にきっと気に入る曲が入っているから,そしたらそのアルバムを引っ張りだして聴けばいいんじゃよ。」(あれ,こんな口調でしたっけ?)とか言ってたな~。でも僕オムニバス持ってないしな~。(実は沢山持ってるんですが,実家送りの刑にしてあります。)いっそ,所ジョージの「ダーツの旅」みたく,目をつぶって一枚適当に取り出してみようか,よし。ということで,一枚取り出したのが,これです。エディー・ヒギンズの『 Zoot’s Hymns 』(1995 Sunnyside)。ナイス・チョイスですね。晴れた冬の朝にはぴったりではないでしょうか。

<Hymn>とは,<賛歌>という意味ですから,『 ズートに捧ぐ 』ですかね。ズートによく似たテナーのジョン・ドーテンという人が参加したカルテットです。M-1にお約束でズートの曲<The Red Door>を持ってきて,トリビュート・アルバムらしい始まりです。M-4<Gabriela>とM-10<The Red Blouse>はジョビンのボサノバで,この2曲がアルバム全体を軽やかでフワフワしたおしゃれな雰囲気に仕立てています。<Come Rain Or Come Shine>や<Whe Your Lover Has Gone>などのスタンダードも配しています。ヘンリー・ネモのM-9<’Tis Autumn>もドーテンの豊かな暖色系の音色で優雅に吹いています。M-6<Waltz For Allison>はヒギンズの美しいオリジナル・ワルツで,これもなかなか心に沁み入る名曲です。

全体にせこせこした曲がなく,優雅で落ち着いた選曲で,いつまでも飽きのこない大人のジャズ。久しぶりに聴いたけど実にいいアルバムです。写真のジャケットは輸入盤で,おそらく入手困難(あるいは入手できてもやや高価)ですが,幸い2005年8月にVenus Recordsから,タイトルが『 Whe Your Lover Has Gone 』(いかにもVerusらしいタイトル変更だこと)に変更されて,Reissueされました。試聴はこちらでできますよ。Venusのヒギンズ・トリオもいいですが,たまにはカルテットでのヒギンズもいかがでしょうか。
【愛聴度★★★★☆】

Eddie Higgins 『 Zoot’s Hymns 』1995 Sunnyside SSC1064D
Eddie Higgins (p)
Danny Burger (ds)
John Doughten (ts)
Phil Flannigan (b)

P.S. そうだ,土曜日に買って来てまだ未開封のCDが4,5枚あるじゃないか。
それを聴けばよかったんだ。と思いだし,今,バプティス・トロティニョンとデヴィッド・エルマレクの『 Hall Pallemaerts 』(2005 naive)を聴いてます。疾走感が気持ちイイです。これも近日中に紹介します。


Miles Davis 『 1958 Miles 』

2005年12月19日 20時56分14秒 | JAZZ
昨日,僕の書棚のジャズ本を恥ずかしながらお見せしましたが,実は意外にマイルスの本を僕は持っているんです。写真に写っていない後列にもマイルスの名のつく本が結構あります。僕はマイルスが大好きなんです。なんて,ちょっと恥ずかしいのであまり今まで書いてはいませんが,普段はよく聴いているんです。でもマイ・ブログのジャズ記事も150話を超えてきたのに,一度もマイルスの愛聴盤を紹介していないんですね。なかなかこういうジャズ・ジャイアントを紹介するのは勇気の入ることなのですが,今日は気楽な気持ちで1枚紹介してみようかと思います。

おそらく我が家でよく針が落とされるマイルスのレコードは,『 Four & More 』『Nefertiti 』『In A Silent Way 』『 On The Corner 』あたりだと思います。<おいおい,『 Kind Of Blue 』は聴かないのかい,おまえは。>という声が聞こえてきそうですが,もちろん『 Kind Of Blue 』は大好きです。もうこれは好きとか嫌いとかの判断を超越した, 20世紀のジャズと呼ばれる音楽が到達し得た芸術的最高地点の記録でありますから,僕が好きだなんて軽々しく言ってはいけない領域の音楽であります。まさにジャズの聖典であります。ですから聴くときには朝から<今日は『 Kind Of Blue 』を帰って聴くぞ~。>と気合をいれて仕事をして,帰宅したらCDは持っていてもちゃんとレコードを取り出し,よく埃をふき取り,針を静かに落とし,正座して聴かなければならないのです。そして頻繁に聴いていたら,『 Kind Of Blue 』のありがたみも薄れてしまいますから,聴くのは年に2~3回にしておかなければなりません。ということで,我が家ではめったに『 Kind Of Blue 』がかかりません。で,その代わりと言っちゃ申しわけないのですが,我が家では『1958 Miles 』がよくトレーに乗ります。ご存知のように本作は『 Kind Of Blue 』のちょうど1年前の1958年に,同メンバーで録音されたアルバムです。つまり,メンバーはマイルス,キャノンボール,コルトレーン,エバンス,チェンバース,そしてコブの6人で,この日が初顔合わせだったんですね。なんかお互い様子を伺いながらのリラックスした雰囲気でのレコーディングだったのでしょう。それぞれのソロはいずれも素晴らしいのですが,『 Kind Of Blue 』のような研ぎ澄まされたお互いの緊張関係は見えてきません。なんとなくアット・ホームな感じです。

そして,『 Kind Of Blue 』や『1958 Miles 』を高尚なポジションに高めている最大の理由は,やっぱりエバンスが加入していることなんだと,聴くたびに感心します。<Stella By Starlight>など,60年代にハンコックらとたびたび演奏していた曲ですが,本作での<Stella By Starlight>は,完全にエバンスが曲調をコントロールし,品格のある楽曲に昇華させています。短いコルトレーンのソロも吹き過ぎず,とっても上品です。

ということで,今日はトレーに『1958 Miles 』を乗せて聴きながら書いています。やっぱりマイルスはイイわ~。と酔いしれながら,そろそろ最後の<Fran-Dance, alternate take>なので,次は『 E.S.P. 』でも聴くとするべ。

今日は本棚の整理

2005年12月18日 21時08分26秒 | JAZZ

今日は午前中は仕事をして,午後からいつものように部屋の掃除をしていました。最近,日曜日になると掃除ばかりしています。今日の目標は本の整理です。買うだけ買って読まない本が棚から溢れています。一冊一冊吟味し,捨てる本,実家に送る本,残す本に分類しました。Jazzの本も同様に3分類しました。本棚の容量には当然制限があるので,Jazzの本は本棚の4区画のみと決めています。その範囲に入りきらないものは捨てると決めているんです。まずは約1年分のスイングジャーナルとジャズライフを一通り目を通し,必要な部分のみ,PDFファイルにして保存しました。これでこれらの雑誌は全部捨てられます。スイングジャーナルなんかほとんど保存する内容などないんですよね。その点ジャズライフは,譜面類は貴重な資料なので保存する価値があります。「はじめようジャズ・ギター」や「スタンダード・ベース講座」などは保存しています。なかなか本を減らすのは難しいものですが,何とか下の写真の4区画分にJazz本を減らし,他は捨てることにしました。(どうせジャズ本なんかブックオフに持ち込んでも大してお金にならないので,売りません。)


中山康樹の「マイルスを聴け!」は現在までにVersion5までありますが,全部買ってきました。
しかもVersion1は2冊も買ってしまいました。右端近くに写っている彼の著書
「ジャズを聴くバカ,聴かぬバカ」は業界の裏話が描かれていて,非常におもしろいです。
右端の大きな画集のような2冊はウィリアム・クラクストンのウエストコーストのジャケット画集です。
後ろの方に植草甚一の「スクラップブック」シリーズがありますが,結構暇なときに読んでます。


ジャズ批評は全部揃えているわけではありません。「私の好きな1枚のジャズ・レコード」,
「ジャズとエロティシズム」,「コルトレーン・全セッション」,「ブレイキー&ジャズメッセンジャーズ」,
「リー・モーガン大全集」などは,今となっては貴重だと思うのですが。「リー・モーガン大全集」は2冊買っちゃいました。バカです。


後ろの列は,主に教則本や譜面などです。中山康樹の「スイングジャーナル青春録」は,
ジャズに関するエッセイの中で,一番面白い本です。中山康樹,行方均,小川隆夫の3人の
出会い,友情,ジャズへの熱き情熱がおもしろ,おかしく綴られています。中央にわずかに見える
薄い本が,今話題の「幻のCD廃盤・レア盤掘り起こしコレクション」です。
まあ,日本でこの本を必要とするジャズ・ファンは50人ぐらいでしょうね。
僕は無視していますが。


左端の方は,プログレ(イエス,キングクリムゾン),AOR関連の本です。その右に見えるのが,
敬愛する杉田宏樹氏の「ヨーロッパのJAZZレーベル」です。これは2002年の出版ですが,
現在はこの本に載っていないレーベルも多数出現していますので,早く第2版を出版して欲しいです。
その右の本が,欧州ジャズ・ファンのバイブル「ヨーロッパのジャズ・ディスク1800」です。
その右に野口久光氏の1953年から1992年までのジャズ・レコードの大全集,3部作が見えます。
何かとお世話になっている名著です。


Eric Teruel 『 Dreams From The Real World 』

2005年12月17日 21時16分48秒 | JAZZ
先ほど紹介したチャールズ・ルースの『 Lust For Jazz 』や『 Franch Kisses 』はいずれもガッツ・プロダクションの作品だとお話しましたが,実はこれらは「Piano Trio 万歳」というシリーズの中の作品です。詳しくはこちらを見てください。HPには全21タイトル載っています。チャールズ・ルース以外には,ハンガリーのソルト・カルトネツカー,トリオ・アコースティック,ポーランドのマイケル・トカイ,アメリカのダン・クレイなど,もー,お金が幾らあっても足りね~,という声が聞こえてきそうなラインナップです。で,僕もこれまた全部というわけにもいきませんので,長年の感と,ジャッケットから漂う匂いを頼りに,「これはいいかも」と思う作品を少しづつ買っています。その中で結構気に入っているのがフランスの俊英エリック・テリュエルの『 Dreams From The Real World 』なんですね。

帯のCaptionには,「前作同様,室内楽的な要素とメランコリックな雰囲気に加え,さらにエネルギッシュに自らの世界を表現している好盤です。」とあります。僕はどうも「室内楽的」という言葉に拒否反応を示すようで,たとえばイタリアのレーベル「EGEA」などのように「室内楽的ジャズ」を売りにしている音楽にはちょっと近寄れません。(このレーベルのアルバムは,みんなドラムが入っていないんです。信じられませ~ん。)ということで,ちょっと“はずれ”の心配もあったのですが,ジャケに惹かれて買ってしまいました。でも,内容はイイ線いってると思います。それ程「室内楽的」でも「メランコリック」でもなかったし。逆にM-2<Outsider>やM-5<Straight and Winding>などはスピード感のあるモーダルな演奏で,スカッとカッコイイよくて,小粒なハンコック・トリオみたいです。そしてなんといっても一番素敵な曲がM-7<Self On Sea>(邦題:僕と海)です。一回聴いただけでは頭にメロディーが再現できない,でも,どうしても気になるちょっとアウターなメロディー・ラインを持った美旋律。うーん,この曲はいいです。

P.S. この「Piano Trio 万歳」シリーズでルイジ・マルティナーレの『 Simple Memory 』が発売になっているのですが,これがちょっと期待はずれでしたね~。まあ,期待しすぎていたせいもあるのですが。

Eric Teruel 『 Dreams From The Real World 』2004 Gats Production GPTS019
Eric Teruel (p)
Patrick Maradan (b)
Cedric Perrot (ds)
愛聴度【★★★★☆】

Charles Loos 『 En Public, Au Travers 』

2005年12月17日 19時29分59秒 | JAZZ
 

師走になると忘年会やなんやらで忙しくなってくるのですが,毎年何故か仕事の方も忙しくなってくるものです。昨日は大学医局の忘年会だったのですが,重症患者の管理でバタバタしていて,結局忘年会には行けず,夜遅くまで患者さんのそばで呼吸器管理をしていました。今日も先ほどまでその患者さんに付きっ切りだったのですが,少し容態が落ち着いたので,夕食をとりにいったん帰宅し,夜間の呼び出しに備えようと考えています。


さて,一昨日はP.J.L(Polystar Jazz Library )のEuro Jazz Piano Collection というシリーズから,愛聴盤のジャンニ・カッピエロの『 Paseada Con Bruno 』を紹介しましたが,ついでにこのシリーズの作品の愛聴盤として,エリック・レニーニの『 Antraigues 』やナタリー・ロリエの『 Walking Through Walls Walking Among Walls 』などもちょっと触れてみました。で,今日はその流れでもう一枚,期せずして同じベルギーのピアニスト,チャールズ・ルースの『 En Public, Au Travers 』を紹介したいと思います。本作はcollection-1, 第5期,Vol.9 として発売になっています。原盤はIglooですので,輸入盤でも手に入るかと思いますが,僕はこのP.J.L.のシリーズで手に入れました。チャールズ・ルースは,1997年のガッツ・プロダクションが輸入販売した『 Lust For Jazz 』(Lyrae )を聴いていて,クラシックを基盤とした欧州ピアニストではあるけど,そのアルバム全体から受ける印象は非常にアメリカ的というか,ビ・バップへの憧憬が伺える快作だったので,好印象をもっていたピアニストでした。ですから,本作『 En Public, Au Travers 』は欧州ピアノ・ファンの間ではかなり有名な作品だったこともあり,結構期待して購入したわけです。はたして,内容は素晴らしいものでした。ライブ録音なんですが,これ以上の臨場感はないのでは,と思うほど迫力のある録音で,小さめなライブ・ハウスの最前席でかぶりつきで観ている感じです。


アルバムはまずM-1<Tintamarre>の 8ビート・ゴスペル調のキース・ライクな曲でゆったり始まり,3人のコンビネーションが素晴らしい叙情的旋律のM-2<Nocturne>で,ぐーっと聴き手の心と掴んでいきます。M-3<Histoire de Temps>は陰鬱な影を落とすスロー・バラード(ちょっと退屈)。M-4<Beau Ca!>はメロディアスで軽快な曲で,現在のユーロ・ジャズ・ピアノにもっとも近いニュアンスを持つ美麗曲です。 M-5<Suite>は文字通り22分に及ぶ美しい4ビート~ワルツ組曲。最後のM-6<Morbido>は再び8ビートの激しく躍動する曲で,ルースのパーカッシブでファンキーなピアノが爽快です。ドラムのフィリップ・シムタンのソロもカッコイイです。この髭ずらのシムタンは,ミッチェル・ハーのアルバムで聴いたことがありますが,なかなか手数の多い,ヤンチャなドラマーです。


チャールズ・ルースは,1951年ベルギーのブリュッセル生まれです。ですから,エリック・レニーニ,ナタリー・ロリエよりは一世代古いピアニストになるのでしょうか。1972年にはバークリー音楽院にも進学しています。卒業後は欧州で,トゥーツ・シールマンス,チェット・ベイカー,フィリップ・キャサリーンらと活動しているようです。昨年までにリーダー作として21作品発表しており,ほとんどが国内未発売のため入手困難な作品が多いですが,2003年にガッツ・プロダクションが企画,制作した『 French Kisses 』は現在でも容易に入手可能です。この『 French Kisses 』は,全曲フランス・ポップスのカヴァーです。僕としては全曲カヴァーというのはちょっと引いてしまうところで,いまだ買っていません。なんか“はずれ”の匂いがします。



Charles Loos 『 En Public, Au Travers 』1987 Igloo (2004 Reissure PJL)

Charles Loos (p)

Felix Simtaine (ds)

Phlippe Aerts (b)

【愛聴度★★★★★】

 

 


Gianni Cappiello 『 Paseada Con Bruno 』

2005年12月15日 21時14分40秒 | JAZZ

名盤のリイシューに力を入れている国内レーベル,P.J.LPolystar Jazz Library )で,Europian Jazz Piano Collection というシリーズがあります。200310月から隔月2枚づつ,1年間の予定で始まったシリーズですが,好評だったのかCollection-2として現在も続いています。Collection-1の第1期は,エリック・レニーニの『 Antraigues 』とナタリー・ロリエの『 Wlking Through Walls Walking Among Walls 』でした。(この2枚の出来は良く,今でも僕の愛聴盤です。ただし,僕の所有しているのはオリジナルの輸入盤ですが。)その後,ティエリー・ラングの名盤『 Private Garden 』,以前紹介した Between A Smile And Tears デジャン・テルジクの『 Coming Up ,それからあまり日本では馴染みのないイヴァン・バドゥアの諸作品などもリイシューされています。どれも欧州ジャズ・ファンにはうれしい作品ばかりです。レーベルを超えてこんなに誰が集めてきたのかと思いきや,やはり杉田宏樹氏が監修を務めていました。まあ,こんな趣味の良い選択は日本では彼にしか出来ないのでしょうね。ほんとうは全部片っ端から買いたいのですが,そうもいきませんので,これはと思う作品を少しづつ買い揃えております。


ということで,今日紹介するのは,このシリーズの中から,
Collection-1 第4期Vol.7で発売されたジャンニ・カッピエロの『 Paseada Con Bruno
』にしてみました。

帯のCaptionには「イタリア,ピアノ界の最前線。ビル・エバンス,キース・ジャレット的ピアニズムを超現代的に消化し~」とありますが,なんかぴんときません。どう好意的に解釈してもエバンスやキースに似ているとは思えませんが。確かに消化したのだから似る必要はないのですけどね。では誰似,誰的かと聞かれると難しいですが,同じイタリアのピアニストで近い人を挙げるとすれば,歌心を大切に,技巧に走らず,シングルトーン・フレーズで軽やかに歌うという点で,ルイジ・マルティナーレ似でしょうか。タッチは決して強くなく,線の細い印象ですが,指は結構速く動き,フレーズに破綻はありません。本作はイタリアの作曲家,ブルーノ・マルチーノ(有名な「エスターテ」の作者)へのトリビュート・アルバムで,9曲中6曲がマルチーノの楽曲を演奏してます。そのせいか,非常に歌心のある美しい旋律が目白押しです。M-1の<Forse>のテーマを聴いただけで名盤の予感を感じ取れるはずです。僕はブルーノ・マルチーノの事をよく知りませんでしたが,やはり全曲,<エスターテ>に通じる美旋律の楽曲ばかりです。本作はあまり聴き手を選ばない,誰でも美しいと感じられる作品ではないでしょうか。

本作は2001年にSplasc(h)から発売になった彼の第二作目ですが,デビューは1999年『 Incendi Marini 』というセクステットによる作品のようです。まだまだ日本では無名ですが,早く国内盤デビューして欲しい若手ピアニストです。