雨の日にはJAZZを聴きながら

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HR Big Band 『 Do It Again 』

2007年09月27日 21時49分47秒 | Large Jazz Ensemble
SWR ビッグバンド,WDR ビッグバンド,NDR ビッグバンドと,ドイツの公共放送局専属のビッグバンドの作品を聴いてきましたので,最後はフランクフルトに本部を置く HR ( Hessischer Rundfunk : ヘッセン放送協会)ビッグバンドの作品を聴いてみましょう。本楽団は他の楽団同様,最初はダンスのバックバンドとして1946年に結成されましたが,ここ30年の間にジャズのビッグバンドとしての活動を専業とするようになったようです。

残念ながらOfficial Web Site を見てもきちんとしたdiscography が明示されていませんので,現在までにどのくらいのカタログを有するのかわかりませんが,Wikipediaには2001年以降の作品が掲載されていますので,興味のある方はこちらをどうぞ。

本楽団が他の公共放送局専属楽団と違うところは,そのカヴァーする守備範囲の広さです。スウィング・ジャズ,モダン・ジャズ,ライト・ミュージック,アヴァンギャルド・ジャズからヒップ・ホップまで,様々な音楽をそのレパートリーに持ち,数多くのフェスティバル,定期コンサートなどにももちろん参加する,おそらく地元フランクフルトでは子供からお年寄りまで,あらゆる年齢層の方々に愛されるビッグバンドなのでしょう。技術的にもSWR, WDR, NDR ビッグバンド らと全く同格と言ってよいでしょう。

「五線譜に書かれてある音楽なら何でもやりますよ。だって私たち,ヘッセン放送協会に勤めるサラリーマン・ミュージシャンだも~ん。」みたいな意識があるのでしょうか。ある意味,節操無い活動ですが,あくまで public band ですから仕方ありません。

で,僕が所有する作品は,『 Swinging Christmas 』( 2002 ),『 Two Suites / Tribal Dances 』( 2003 ),『 Do It Again / Plays Three Decades of Steely Dan 』( 2004 ),『 Once in A Lifetime 』( 2006 ),の計4枚です。

『 Swinging Christmas 』は,マージョリー・バーンズという米国生まれの黒人歌手と,昨年の横濱ジャズプロムナードでもルイス・ヴァン・ダイクのバンドで来日したオランダ人ヴァイブラフォン奏者,フリッツ・ランデスバーゲンをフューチャーしたクリスマス・ソング集です。まあまあ,楽しい作品です。

『 Two Suites / Tribal Dances 』はドイツ人の作曲家兼アレンジャー兼指揮者のラルフ・シュミッドと,オランダ人の作曲家兼アレンジャー兼指揮者であるマーティン・フォンデの二人がそれそれ組曲を披露した2部構成の作品。ミュージカル~現代音楽~アヴァンギャルド・ジャズの刺激的な楽曲。

『 Once in A Lifetime 』は,ジョーイ・デフランチェスコとジェフ・ハミルトンが客演した作品。スタンダードも演奏しており聴きやすい作品。

そんな訳で, HR ビッグバンドの作品は一作ごとに作風が全く異なるので,新作が出るのが楽しみなバンドである反面,作品ごとの好き嫌いがはっきりしてしまいやすい傾向にあります。その中でも僕が最も気に入っているのがこのスティーリー・ダン集である『 Do It Again / Plays Three Decades of Steely Dan 』です。“ Three Decades of Steely Dan ”と聞いてピンときた方はけっこうなSD マニアですね。SD のベスト盤に『 A Decade of Steely Dan 』からを捩ったタイトルなのでしょうね。

それにしても SD のカヴァーするのってかなり自信がないとできないことです。SDの曲って,超一流のミュージシャンを沢山起用し,極めて繊細なスタジオ・ワークで時間をかけて作り込まれた完全なる楽曲ですからね。下手にアレンジできない,弄りようがないわけです。さらに限りなくデジタルに近い,いわば人間的なブレ,揺らぎみたいなものを一切排した楽曲なので,人間的,有機的なサウンドが醍醐味であるビッグバンドとは対極にあるのですから,これに挑戦するのは大変です。ですが,これがかなり出来がよい仕上がりになっているので感心しちゃいました。アレンジャーはフレッド・スタム( Fred Sturm )というアメリカ人です。

変に原曲のイメージを崩さないようにアレンジするのではなく,時には大胆な解体,再構築を施し,原曲に新たな命を吹きこむことに成功しています。ゲスト・ギターリストのライアン・フェレイラ( Ryan Ferreira )もスティーブ・カーンやラリー・カールトンらを模倣するのではなく,フランク・ギャンバレ風に馬鹿テク炸裂の暴れようで,開いた口が塞がりません。この人,本当にSD聴いたことあるのかしら。

副題『 スティーリー・ダンの30年 』とあるように,72年のデビュー作『 Can't Buy A Thrill 』から2000年の『 Two Against Nature 』までの作品の中から万遍なく選曲されています。細かい事言うと,M-9 《 The Goodbye Look 》は SD の楽曲ではなく,ドナルド・フェイゲンがソロ・アルバム『 The Nightfly 』の中に納めた楽曲です。兎に角,前述したボヒュスレーン・ビッグバンのフランク・ザッパ集といい,WDR ビッグバンドのウェザー・リポート集といい,カヴァー集と言えど欧州の超一流エリート集団が目指す山はエベレスト級です。自慢げに超難曲をサラっと演っちゃいますから欧州のビッグバンドのレベル高いです。

こんな凄腕集団なのですが,メンバーをみるとほとんど日本では無名なミュージシャンばかりです。唯一有名な方はマルチ・リード奏者のトニ・ラカトスぐらいでしょうか。

もし,SD には興味が無いというなら,ジョーイ・デフランチェスコがフューチャーされた『 Once in A Lifetime 』が万人受けするかもしれません。

最新作は,映画音楽界でも有名なコリン・タウンズ( Colin Towns )がアレンジ&指揮し,ビリー・コブハムが客演したマハビシュヌ・オーケストラ集『 Meeting of The Spirits 』ですが,ブログ“ Jazz & Drummer”のnary さんがレビューしていますのでぜひご覧下さい。

最後に,ヘッセン放送局専属のジャズ・ユニットには,このHR ビッグバンド以外にも HR ジャズアンサンブル( HR Jazzensemble , Jazzensemble Des Hessischen Rundfunks )という組織があります。58年にアルバート・マンゲルスドルフが旗揚げした large ensemble unit ですが,最大でも9人編成,つまりナイン・ピースなのですが,トランペットなしの変則的なナイン・ピースで活動しているバンドです。メンバーは流動的ですが,核になるメンバーはマンゲルスドルフ兄弟,澤野商会からの『 YOGI JAZZ』の復刻で話題になったヨキ・フロイト,Globe Unity Orchestra にも参加していたハインツ・ザウアー,それに馬鹿テク若手サックス奏者のクリストフ・ラウアーらと凄いバンドです。HR ビッグバンドが一般大衆受けする活動に主眼を置いているのに対してHR ジャズアンサンブルは、かなりアーティスティックな活動に力を入れています。これに関してはまた近いうちに取り上げますね。では、また。

東京JAZZ フェスティバル 2007 三日目

2007年09月24日 22時29分21秒 | ライブ
9月22日、東京JAZZフェスティバルの3日目、夜の部を観てきました。

1. Benny Gorson Quartet
三日目の夜の部のオープニングを飾ったのはベニー・ゴルソンのカルテットです。ゴルソン以外のメンバーは、事前の告知がありませんでしたが、予想通りにレギュラー・メンバーであるマイク・ルドン、バスター・ウイリアムス、カール・アレンの3人を連れてきました。ゴルソンはもちろん楽しみではあったのですが、個人的にはむしろマイク・ルドンが生で聴けるのがなによりも嬉しかった。90年代のcriss cross 盤や最近ではエリック・アレクサンダーのバックで聴いていて、好きになったピアニストです。とってもよく歌い、よくスイングするハードバビッシュな弾き手、といった印象を持ってましたが、実際には古いスタイルのなかにも時折チック・コリアやキース・ジャレット風のフレーズが散りばめられた、意外に新しいスタイルも持ち合わせた人でした。もちろん技術的にも相当上手いです。ますます好きになってしまいました。ゴルソンは初めて生で聴いたのですが、もはや円熟を通り越して完熟の極みに達した感のある音で、流石、ジャズの生き証人!ってな感じでした。一曲ごとに簡単な曲紹介をするのですが、「昔、素晴らしいトランペッターがいましたが、若くして亡くなってしまいました。彼の名はクリフォード・ブラウン。そんな彼のために書いた曲です。 I Remember Clifford 。」なんて言われるとすごくリアリティーがあって、ゾクゾクってしちゃうんですよね。演奏した曲は≪ Whisper Not ≫、≪ Mr. PC ≫、≪ Along Came Betty ≫、≪ I Remember Clifford ≫、そしてアンコールは≪ Blues March ≫ と、日本人受けする名曲ばかりで、やや新鮮みに欠けますが、やっぱりせっかくだから聴きたい曲であるのも確か。たっぷり楽しませていただきました。

2. Mike Stern Band featuring Makoto Ozone, Dave Weckle and Chris Minh Doky
続く第二ステージはマイク・スターン・バンドです。小曽根真、デイヴ・ウェックル、クリス・ミン・ドーキーを引き連れての登場です。マイク・スターンは何度かライブで観ていますが、いつもにこやかに愛嬌を振りまき、サービス精神が旺盛な人です。それにしてもマイク・スターンの音って、一音奏でただけでその場の空気をがらりと変えてしまう、あくの強さ、個性の強さを持ってますね。そして偉大なるマンネリズムというか、いつものように盛り上がってくるとクリア・トーンから歪み系の音色に変えて山場を作る。わかっちゃいるけどまた聴きたくなるギターです。小曽根もスケール感のある素晴らしいサポートで盛り上げ、クリス・ミン・ドーキーも前日の“ Soul Bop Band ”の時とは打って変わってノリノリでヤマハのサイレント・ベースを弾きまくるし、デイヴ・ウェックルも世界最高峰の手数の多さで5000人の観客の度肝を抜いていました。分り切ってはいますが、あらためて目の当たりにするとデイヴ・ウェックルのドラムってとんでもなく凄いです。“ Chick Corea Electric Band ”のデビューから何度か観ていますので、昔ほど驚かなくなりましたが、やはりいつも心拍数がアップしていくのが分かるほど興奮しますね。演奏曲はどれも聴いたことがある曲でしたが、最新作『 Who Let The Cats Out ? 』から≪ KT ≫、≪ Who Let The Cats Out ? ≫、≪ Tumble Home ≫ あたりを演っていたと思います。

3. Tokyo Jazz 2007 Special Session
最後のステージは“ Tokyo Jazz 2007 Special Session ”と題した、ランディ・ブレッカーをはじめ、ボブ・ミュンツァー、マイク・スターン、ウィル・ブールウェア、アンソニー・ジャクソン、デニス・チェンバースなど、マイケル・ブレッカーにゆかりのあるミュージシャン達による豪華なセッションです。演奏曲はもちろんブレッカー・ブラザーズ時代の名曲ばかりで、≪ Shanghigh ≫、≪ Straphangin’ ≫、≪ Rocks ≫ ほか数曲を演奏してくれました。ボブ・ミュンツァーのソロは、眼を閉じるとまるでマイケル・ブレッカーがそこで吹いているかのような錯覚を起こさせるほど、似ていました。ランディが≪ Straphangin’ ≫の紹介の際、マイケル・ブレッカーの名前を出したとたん、僕の前方に座っていた30代ぐらいの男性が「うぉ~」と雄たけびをあげていましたが、僕の隣の席の若い女性二人組は冷やかに笑いながら「よほど好きなのね。」と言ってました。となりの席の女性らは、マイケル・ブレッカーが1月に亡くなられたことも、もしかするとマイケルの名前すら知らないのかもしれませんね。あらためてブレッカー・ブラザーズの楽曲の良さを再確認できたステージでしたが、そう思えば思うほど、マイケルが亡くなられたのが残念で仕方ありません。アンコール曲 ≪ Jean Pierre ≫ が終わりホールから出て、≪ Straphangin’ ≫のイントロを口ずさみながら、日比谷線の駅に向かう頃には11時を過ぎていました。休憩を挟みながらとはいえ4時間30分の長丁場のライブでした。前日の21日よりも数段楽しかったし、観客のノリも良かったと思いました。今年は全体にフュージョン・バンド中心のフェスティバルでしたが、来年はもう少しアコースティックなバンドをよんでほしいな。

東京JAZZ フェスティバル 2007 二日目

2007年09月22日 12時06分34秒 | ライブ
昨夜、東京丸の内の東京国際フォーラムで現在開催中の“ 東京JAZZ フェスティバル 2007 ”に行ってきました。

「東京発の音楽文化事業」と銘打って2002年に旗揚げされた本イヴェントも今年で6回目を迎えます。はじめは東京スタジアム(現 味の素スタジアム)で開催されていた東京JAZZも、アテネ五輪やサッカー試合などの諸事情により2004年からは会場を東京ビッグサイトに移し、さらに昨年からは東京国際フォーラムに会場を移して開催しています。

そんな訳で嬉しいことに個人的には非常にアクセスしやすくなり、出不精な私としてもやっと重い腰があがり≪東京JAZZ初鑑賞≫となった次第です。とは言っても仕事柄、その日の予定はその日にならないと分らないという事情もあり、いつものごとく仕事を早めに切り上げ、当日券を買うべく当直明けの眠い目を擦りながら日比谷線に乗り20分。日比谷で下車しさらに歩くこと5分で東京国際フォーラムに到着。急いで当日券売り場に走り購入しましたが、席はS席にも関わらず1階の41列目。まあ仕方ない。観れるだけでも幸せと、自分を慰めながら席につきました。

それにしても今年はイヴェント日程が例年とはかなり異なります。例年ですと8月から9月初旬の土、日曜日の2日間の日程で開催されていましたが、今年は9月下旬ですからね。もうちょっとあとにずれ込んでいたら、10月6日、7日の“ 横濱プロムナード2007 ”にくっついちゃうところでした。しかも今年は木、金曜日の夜のステージ、土曜日の昼&夜のステージ、そして日曜日は夕方のステージとかなり変則的なスケジュール。正直、平日7時からのステージなんて地方の方は観られませんよね。いろいろと事情があるのでしょうけど、来年はもうちょっと再検討、改善してほしいものです。


1. SOIL & " PIMP "SESSIONS
さて、東京JAZZ 2007 の二日目、幕開けを飾ったのは日本人若手で結成されたジャズ・バンド “ Soil & PIMP Sessions ”。恥ずかしながら私は全く聴いたことのない(聞いたこともない)バンドでした。サックス、トランペット、キーボード、ウッドベース、ドラム、そしての葉加瀬太郎似のMC (?)から構成された6人組みで、ロック・ビートに乗せて轟音アンサンブルを聴かせてくれるのですが、なにしろ音が途切れなく放出され、演奏が上手いのかへたなのか判断できないくらいデカイ音で、最後は耳を覆いたくなりました。「ほら、みんな立って~」「もっと踊れ~」「黄色い声だしていいんだぜ~」などと観客を乗せようと必死なのですが、それが裏目に出ているようで。当直明けの疲れきった40過ぎのオッサンに向かって、もっと踊れ~、なんて言われてもね~。こっちは良質のジャズを聴きに来ているわけだし。今年のイヴェントのテーマは「 JAZZ POWER 」。音楽が作り出す力に満ち溢れたイヴェントにしたいという意気込みは確かに感じられますが、私にはちょとこのバンド、肌に合いませんわ。私の後ろの席に座っている若い女性2人組みは、彼らがステージに上がるや否や、「いやぁ~ん、ふぁあ~」などと、溜息混じりの色っぽい歓声をあげていらっしゃったので、それなりにこのバンドにはファンがついているのでしょう。まあ、こういうバンドのライブは、こんなごった煮ジャズ・フェスでもない限り一生聴く機会がないと思うので、それはそれで収穫ではありました。それにしても若者の聴くジャズと私ら中年の聴くジャズとの間には、以前にも増して深い溝が横たわっているのかもしれません。

15分間の休憩。ロビーで一人、ビールを飲む。

2. Soul Bop Band featuring ランディ・ブレッカー、ビル・エヴァンス、ハイラム・ブロック、クリス・ミン・ドーキー、ロドニー・ホームズ
さて、続く第二ステージはランディ・ブレッカー率いる“ ソウル・バップ・バンド ” です。マイケル・ブレッカーが生きていたなら、おそらくランディーとの双頭コンビで来日したのかもしれませんが、今回、マイケルの代わりに参加したのは、“ ステップス・アヘッド ”でもマイケルのトラを務めたことのあるビル・エヴァンスと、マイケルやボブ・バーグ亡き後、彼らの意思継承の期待がかかるボブ・ミュンツァーの二人。このステージではビル・エヴァンスが参加し、一方のボブ・ミュンツァーは今晩の“ スペシャル・セッッション ” に参加予定です。演奏曲は、ハイラム・ブロックやビル・エヴァンスのオリジナル曲、それにブレッカー・ブラザーズの ≪ Above & Below ≫ など4、5曲。ランディ・ブレッカーのR&B、ブルース調のオリジナル曲(題名不知)ではヴォーカルも披露してくれました。ランディのヴォーカルは今までにも時たま聴くことができますが、なんだか昔よりも枯れ声になったような気がします。マイクのせいかもしれませんが、まるでドクター・ジョンみたいでした。それから、ドラム・ソロと言えば≪ Above & Below ≫、というくらいライブでの定番となった感のある同曲ですが、もちろん今回もロドニー・ホームズが物凄いソロを披露してくれました。

Naryさん が仰るように、まさに≪小デニチェン≫。デニス・チェンバースの4/5スケール・ミニチュア版みたいな感じです。もちろんデニチェン同様、ツインペダルで怒涛のバスドラ連打+両手X交差の乱れ打ちで観客は大興奮。ソロの組み立て方のアイディアも豊富で楽しいソロ・パフォーマスンでした。そしてこの人、とっても小柄なんですね。あの小さな体からよくそあんな音が出るもんだと、感心いたしました。

15分間の休憩。バー・カウンターでビール(500円)とレクエア(400円)を食べる。近くの若いカップルの女の子が彼の腕を振りながら、「生キャンディー、早く見た~~い。」と大声で騒いでいる。誤解を受けそうな内容だけに、ちょっとドキドキしてしまった。

3. Candy Dulfer and Band
さた、第三ステージは(私以外の大多数の観客にとっては)お待ちかねのキャンディー・ダルファーです。ツイン・キーボードを含む6人編成での登場です。お~、やっぱり可愛い。ステージは遥か彼方で表情までは見られないので、ひたすらステージ両脇に設置された大型スクリーンでその美貌を確認。美しいブロンドヘアーに黒のタイトミニスカート。笑うとまたこれが可愛いのです。と、お前は何を観に行ったのだと言われそうですが、音楽には何の興味もないので仕方ありません。で、僕はほとんど彼女の音楽を聴いたことがなかったのですが、確かにデヴィッド・サンボーンそっくりですね。と、思っていたら最後にサンボーンの≪ Love & Happiness ≫をやってくれました。そうそう、サンボーンのDVD 『 Straight to The Heart 』の中で≪ Love & Happiness ≫のギターを弾いていたのがハイラム・ブロック。飛び入りでハイラムがステージに上がらないかな~と期待していましたが結局それはなし。で、大体は予想していましたが、最後はスタンディング・オベーションで大盛況。どうして? 拍手のなか、一人落ち込む。音楽商業的に成功しなければならないというプレッシャーはあるだろうが、ここはライブなんだぞ。一曲ぐらい自分の信念に基づき、4ビートでも演奏してくれればオジサンは満足して帰路につけるのに。

再び15分間の休憩。またビールを飲む。昨夜は救急当直でほとんど眠っていないので流石に眠い。すでに10時。隣の若いカップルがワインを飲みながらキャンディー・ダルファー談義に花を咲かせている。へー、プリンスとも交流あるんだ。

4. Joe Sample & Randy Crawford
さて最後のステージはジョー・サンプルとランディ・クロフォードのステージです。てっきりエレクトリックな編成かと思いきや、シンプルなアコースティック・ピアノ・トリオで登場です。ベーシストはなんとジョー・サンプルの息子、ニック・サンプルでした。親父68歳と息子36歳の共演です。顔もよく似ています。正直、それほど腕の立つベーシストではありませんが、歌心は親父さん譲りで素晴らしく、好感が持てるプレーヤーでした。トリオで2曲を終えたところでランディの登場。その透き通った柔らかい歌声にみんなうっとり。会場のいたるところから溜め息が聞こえてきそうです。さっきまでの仕事上の憂鬱な思いを優しく中和してくれるような、そんな歌声です。と、その時、突然の睡魔が襲ってきました。あまりの気持ちよさにいつの間にか寝入ってしまったのです。そのあとは何曲演奏したのか覚えていません。最後は名曲 ≪ Street Life ≫で締めくくりステージを下りていきました。しかし鳴りやまないアンコールの拍手。アンコールに応えて一曲披露。すべて僕にとっては夢の中の出来事のように心地よく、程よい酩酊感を楽しみながら会場を後にしました。

さて、今日も行くぞ~。ボブ・ミュンツァー、アンソニ・ジャクソン、デニス・チェンバース、デイヴ・ウェックル…..。昨日よりもずっと楽しみにしています。では。

The NDR Bigband 『 Bravissiomo 』

2007年09月17日 22時10分47秒 | Large Jazz Ensemble
ドイツの地方放送局専属ビッグバンドの中では前述のSWR(南西ドイツ放送協会)ビッグバンド、WDR(西ドイツ放送協会)ビッグバンドなどと並び、最も古い歴史を有するNDR(北ドイツ放送協会、本部はハンブルグ)ビッグバンドの、結成50周年を記念して制作された未発表音源集です。

NDRビッグバンドは1945年5月に結成されました。はじめはダンス・バンドとしての仕事がほとんどでしたが、60年代末には定期的にジャズの演奏も行うようになり、71年にウォルフガング・クナートがプロデューサーに就任してからはより一層ジャズに重心を置くようになりました。しかし当時はビッグバンドのメンバーの中に本当のジャズ・ミュージシャンと呼べる人材はハーブ・ゲラーを含め2,3人しかおらず、結果的に数多くの客演ソリストを迎えて経験を積むことで、その実力を高めていったビッグバンドであったようです。

更には80年にオーストリア人ピアニスト、ディーター・グラヴィシュニックを指揮に迎えたことで、ドイツが世界的に誇る名ビッグバンドに成長していったのでした。80年代後半にはバンド運営が窮地に追い込まれた時期もありましたが、最近は国民のジャズに対する理解度も高まり、財政的は安定しているようです。

それにしても放送局が運営するビッグバンドが存在するなんて羨ましい限りです。欧州にはドイツのこれらのビッグバンド以外にも、有名なDanish Radio Jazz Orchestra ( or Bigband ) やThe Norwegian Radio Orchestra(これはノン・ジャンルのビッグバンドですが)などがありますが、アメリカには全く存在しませんよね。

で、本作はディーター・グラヴィシュニックが指揮した80年から本作発売の96年までの約15年間に開催された百を超えるコンサートの中から選ばれた珠玉の12曲が収められています。その中には20人のソリスト、9人のアレンジャー、そしてディーター・グラヴィシュニックを含む4人の指揮者が名を連ねています。また、12曲中11曲が未発表曲です。

客演者はジャケットにも記載があるように、チェット・ベイカーをはじめ、ゲイリー・バートン、ハーブ・ゲラー、ジョニー・グリフィン、ハワード・ジョンソン、アルバート・マンゲルスドルフ、スタン・トレイシー、そしてジョー・パスなどと豪華。

ホレス・シルバー作 ≪ Sister Sadie ≫ での爽快感極まりないジョー・パスのソロ。妖艶な響きを発すマルチフォニック奏法を駆使し ≪ Mood Indigo ≫ を奏でるマンゲルスドルフ。有機的なアンサンブルをバックに ≪ Diango ≫ の甘酸っぱいメロディーを紡ぐチェット・ベイカーなどなど。聴きどころ満載の素晴らしいコンピレーションです。

Joe Zawinul 『 Brown Street 』

2007年09月15日 22時23分40秒 | Large Jazz Ensemble
ジョー・ザヴィヌル氏が今月11日、ウイーンの病院で皮膚癌のため亡くなりました。享年75歳でした。86年にWeather Report を解散後も The Zawinul Syndicate 名義で精力的に活動し、今年もヨーロッパ・ツアーを挙行するなど、70歳を過ぎて益々元気な姿を見せていたザヴィヌルだけに、非常に残念な思いでいっぱいです。

とは言うものの、現在のオーストリア男性の平均寿命が日本とほぼ同じ77歳ということですから、そういう意味では天寿を全うしたと言って良いのかもしれません。むしろ亡くなる直前まで現役ミュージシャンとして第一線で活躍されていたわけですから、本当に幸せな人生であったと言ってよいでしょう。

ザヴィヌルは今年の夏も6週間に及ぶヨーロッパ・ツアーを挙行しています。しかし,そのツアー中,車椅子でステージにあがり,メンバー紹介の際も決して立ち上がることはなかったといいます。コンサートの最後の頃にはかなり疲れきった様子で,痩せ衰えていることがはっきり見てとれる程であったようです。そんなザヴィヌルは,7月のパリのジャズ・フェスティバル( Jazz a la Villette )で,自己のバンドを率いて同フェスに出演していたウェイン・ショーターをゲストに迎えて競演を果たしています。Weather Report解散後,ほとんど競演することが無かった二人が,どうしてこのフェスティバルで競演したのか。今思うとジョーのショーターに対するお別れの挨拶だったのかもしれませんね。

そんな彼に追悼の意を込めて,今晩は遺作となった『 Brown Street 』を大音量で聴いております。期せずして本作はこのところ拙ブログで集中的に取り上げているビッグバンド作品で,しかも前回取り上げたドイツの地方放送局専属のSWR( 南西ドイツ放送協会 )ビッグバンドと並び同国のエリート集団であるWDR( 西ドイツ放送局 )ビッグバンドとの競演盤です。


ザヴィヌルとWDR ビッグバンド。意表を突く組み合わせですが、事の始めは2001年のことでした。カリフォルニア州ロングビーチで開催された国際ジャズ教育協会( International Association of Jazz Educators )主催のカンファレンスで、ザヴィヌルが欧州ジャズ・フェスティバル協会( European Jazz Festivals Organizaiton : EJFO )から国際ジャズ賞を授与された際、授賞特別コンサートとしてWDR ビッグバンドとWeather Report 卒業生 (ピーター・アースキン、ビクター・ベイリー、アレックス・アクーニャ)が、往年のWR名曲をヴィンス・メンドゥーサによるアレンジで披露したことが発端でした。ちなみにこの時はザヴィヌルは演奏には参加せず、あのTribal Tech のスコット・キンゼイがキーボードで参加しています。

更に2002年には、Leverkusener Jazz Festival の中で、ザヴィヌルの古希(70歳)のお祝いとしても、WDR ビッグバンドとWeather Report 卒業生による同様のライブが披露されたことが伏線となり、2005年暮れについにザヴィヌルとWDR ビッグバンドの共演が実現されたのでした。

このWDR ビッグバンドとの共演は“ Joe Zawinul Projects ”と銘打って、2005年11月にスペインやドイツでのフェスティバルに参加していますが、本作はそれらに先立つ10月に一週間行われたライブ音源が使われています。ライブ会場となったのは、ザヴィヌルが2004年にウイーンに出店した“ Joe Zawinul’s Birdland ”です。

このビッグバンド作品の仕上がりに気を良くした彼は、2006年にはニューヨークに渡り、 Kristjan Jarvi’s Absolute Ensemble と共演したり、更には2007年に、National Orchestra of France とも共演したりと、かなり Large ensemble に傾倒していったようです。

Zawinul Online にヴィンス・メンドゥーサのインタビュー記事が掲載されていますが、その中に、
≪ Vince tells me he will be working with Joe and the Metropole Orchestra of the Netherlands in January 2008. It’s possible we may see a CD out of this project as well.

とあります。もう少し長生きしてくれたなら、僕らはもう一枚のビッグバンド作品を聴くことができたのに。本当に残念でしかたありません。







SWR Big Band feat. Phil Woods 『 Jazz Matinee 』

2007年09月10日 23時14分34秒 | Large Jazz Ensemble
前回に引き続きフィル・ウッズのビッグバンド作品のお話をいたします。
本作はフィル・ウッズがドイツの名門、SWR ビッグバンドと共演した96年の作品です。ドイツ人集団らしい重厚で硬質なアンサンブルをバックに、ウッズが自からがアレンジしたオリジナル曲を中心に吹きまくる快作です。

ところでドイツにはARDと呼ばれるドイツ公共放送連盟という公共放送局の組織があり、地方の放送局とネットワークを形成しています。つまり、南西ドイツ放送協会(SWR)、北ドイツ放送協会(NDR)、西ドイツ放送協会(WDR)、ナイエルン放送協会(BR)、ヘッセン放送協会(HR)、中部ドイツ放送協会(MDR)、ベルリン・ブランデンブルグ放送協会(RBB)、ザールランド放送協会(SR)、ブレーメン放送(RB)の計9つの地方放送局と連合を組んでいるのです。そしてその中の多くが放送局独自の交響楽団やビッグバンドを所有しているですね。

交響楽団はブレーメン放送(RB)以外の8つの地方放送局に存在しますが、ビッグバンドはそれほど多くはありません。南西ドイツ放送協会(SWR)、北ドイツ放送協会(NDR)、西ドイツ放送協会(WDR)、それにヘッセン放送協会(HR)ぐらいどと思います。(誤っていたらお教え下さい)

最も国際的に有名なのは WDR Big Band でしょうか。最近ではジョー・ザビヌルの『 Brown Street 』やランディー・ブレッカーの『 Some Skunk Funk 』でも共演したりと、その知名度を上げてきています。WDRは9つの地方放送局中、最大規模の放送局でもあります。

ちなみにDR Big Band というのがありますが、これはドイツ放送局専属のビッグバンド、というわけではなく、Danish Radio Big Band の略称です。また、BR Big Band というのは、ブレーメン放送局ビッグ・バンドではなく、Buddy Rich Big Band のことですので、お間違えなく。

閑話休題。僕の手元にあるSWR Big Band の作品は本作以外にJens Winther をフィーチャーした『 Jazz in Concert 』(1995 hanssler )しかありませんので、SWRのサウンドをここで語るには情報量不足ですが、 『 Jazz Matinee 』でのスタイルは、ウッズの楽曲だけにコンテンポラリー度は低めで、オーソドックスなモダン・スタイルですので、万人受けする作品かと思いますが。

SWR Big Band のメンバーで有名なミュージシャンでは、ピアノのクラウス・ワーゲンライターとアルトのクラウス・グラーフ、それにテナーのピーター・ウェニガーぐらいでしょう。クラウス・ワーゲンライターは“ Trio Concepts ”のピアニストとして有名ですよね。ピーター・ウェニガーは教則本なんかも出している教育者(どこかの教授だったような気がします)で、私はサックス・トリオの『 Legal Paradizer 』( 2003 Skip )しか所有していませんが、何処となくジョシュア・レッドマンみたいなつかみどころのない、切れそうで切れない、不思議なフレーズを朗々と吹く人です。

Niels Pedersen 『 The Eternal Traveller 』

2007年09月05日 05時04分32秒 | JAZZ


Niels-Henning Orsted Pedersen  『 The Eternal Traveller 』 1985 PABLO

ブログ“ JAZZ最中 ”のmonakaさんからバトンが回ってきましたので,「フィル・ウッズ参加ビッグバンド作品」のお話は一休みして,早速お題にお答えしていきましょう。

Monakaさんからのお題は“ ジャズ・ベース ”ということで、

1.まわってきた人以外やっちゃいけない。
2.もらったお題を 「 」の中に入れて答える。   
  1、好きな「 」 2、嫌いな「 」 3、最近思う 「 」
3.次にまわす人を三人決めなければいけない。

という決まりごとがあります。では,

1. 好きなジャズ・ベース
ジャズにこだわらずに,好きなベースということであればすぐに思い浮かぶのが,イエスのクリス・スクワイア,パワー・オブ・タワーのフランシス・ロコ・プレスティア,キング・クリムゾンのトニー・レビン,ジャパンのミック・カーン,ブランドXのパーシー・ジョーンズ,そしてジェフ・バーリンなどなど,いくらでも思い浮かぶのですが,ジャズベースとなるとそれほど多くはいません。

ジャズ・フュージョン系のエレキベースでは、あまり露出度は高くありませんがジミー・ジョンソンが好きです。アラン・ホールスワーズのバンドやGRP系、特にリー・リトナーの作品で聴くことができますが,非常に運指が奇麗で,ラインも独創的なベーシストです。新しいところでは Oz Noy の新譜もで数曲弾いています。今でこそ5弦ベースは当たり前になりましたが、彼は70年代からアレンビッグのlow-Bの5弦を使っていました。決してスラップをやらないところも職人っぽくて好きです。

それ以外ではチャック・レイニーやアルフォンス・ジョンソンもいいですね。もちろんジャコも好きですが、以前ほどは夢中ではありません。

アップライトではなんだかんだ言って,ニールス・ペデルセンが好きです。人間業とも思えない超早弾きなのは周知のことですが,意外に出す音は理論的には理解しやすい音で,曖昧さやアウトな音がないのでコピーしやす人です。スピードはべつとして(笑)。その点,ポール・チェンバースやレイ・ブラウンなどは彼ら独自の歌を内包したラインを刻むため,コピーはできてもなかなか実践で応用できないことが多いです。ペデルセンの演奏はオスカー・ピーターソンやケニー・ドリューのバンドで聴けますが,本当のペデルセンの良さは彼のリダー作で発揮されます。その中でも最も彼のオリジナリティーが表出している傑作が,84年にパブロに残された作品『 Eternal Journey 』(前項あり)です。デンマークの民謡,フォークに根ざした彼の楽曲は唯一無二の素晴らし輝きを放っています。Aの開放弦をつかったベースソロ作品 M-7< sig manen langsomt haever >が白眉です。世の中にある数多の音楽作品の中で、本作は私にとっては希有の重要な作品であり、本作によりその後のわが人生が狂ってしまったと言っても過言ではありません。

ペデルセン以外では,エディー・ゴメス、レジー・ワークマン、それからハイン・ファン・デ・ゲインなどに愛着があります。3人の名演,ソロが聴ける作品を挙げておきます。


Paquito D'Rivera  『 Mariel 』 1982 Sonny
< claudia >でのゴメスのソロは名演。哀愁感漂う甘酸っぱいメロディーに心惹かれます。(前項あり)

The Super Jazz Trio  『 The Standard 』 1980 Baystate
この作品、トミー・フラナガンのピアノも素晴らしのですが、それにもまして凄いのがレジー・ワークマンのプレイ。≪ 枯葉 ≫でのソロは圧巻です。どうしてこのコード進行からこのフレーズが出てくるのか、理解不能です。しかしよく歌っているんですよね。ベーシストにしか歌えない歌、みたいなものを彼は知っているんですよね。


Base Line 『 Why Really 』 1994 Challenge
Base Line (前項あり) はハイン・ファン・デ・ゲインのバンドです。ほとんどの作品にジョン・アバが参加しています。デ・ゲインのベースは超絶技巧ではないのですが、古色蒼然とした味わい深い音色が最大の魅力となっています。

2. 嫌いなジャズ・ベース
基本的に嫌いなベーシストって少ないのですが,まあ,最近は嫌いと言ってもあまり反感は買わないと思いますので言っちゃいますが,やはり,ロン・カーター翁が嫌いですかね。嫌いというよりも,あの不安定なピッチはどうみても不快感を与えますよね。嫌いというより不快,って言った方が適切かな。

あとはロン・カーターのミニチュア版的存在のバスター・ウイリアムスも嫌いですね。あのやる気のない表情も駄目です。適当にやって早く帰ろ~みたいな感じがしちゃってね。エレキで嫌いと言えば,そうそう,今沢カゲロウが嫌いです。そもそもベースは裏方なわけで,きちんとリズムをキープし,ノリを作り、コード感をバンド全体に提示するのが本業なのに,ベース一本で音世界を構築しようなんていう発想自体が好きになれません。そんなに一人で音楽したけりゃピアノかせめてギターでも弾きゃいいのに,って思っちゃいますが。で,その音楽が面白いならまだしも,はっきり言ってつまらないんじゃ,どうしようもない。

3.最近思うジャズ・ベース
そう言えば,あまり最近はベースのこと,考えたことなかったな。 でも、アヴィシャイ・コーエン、オマー・アヴィタル、クリスチャン・マクブライトなど、最近の若手~中堅も好きです。

さて、このバトンを3人の方々に繋いでいかなければならないのです、迷った末、“ 晴れ時々ジャズ ” のアーティチョークさん、“ Jazz & Drummer ” のnaryさん、そして Kenyama's blog の kenyama さん にお願いしようかと思います。お題は『 ギター 』 でお願いいたします。別にジャズでなくても結構です。僕も含めて皆さんもジャズだけに拘泥して音楽鑑賞されているわけではないと思いますので。


Jazz Class Orch. Meets Phil Woods 『Porgy and Bess』

2007年09月03日 01時51分06秒 | Large Jazz Ensemble
本作も『 Embraceable You 』同様 Philology の94年の作品です。イタリアの“ Jazz Class Orchestra ” というビッグバンドとの共演で、お馴染みの『 Porgy and Bess 』集です。個人的にはジャズ・アレンジとしては、あまりにも手垢に塗れた感のある楽曲に、やや食傷気味ですが、なかなかアレンジはポップで聴きやすいです。ビッグバンドとしてのレベルは並ですが、洒落たアレンジ力で聴かせるタイプのバンドですね。特にM-2 ≪ Here Come de Honey Man ≫ などはラテン・タッチの爽やかなアレンジが元曲のメロディーにうまく溶け込み、何とも言えない優しい空気感を演出しています。大音量の多重和声で圧倒するわけでもなく、力まず、スマートに語りかける、なかなかお洒落なビッグバンドです。ライナーノーツによると85年に結成されたようですが、なにしろイタリア語なのでそれ以上は読む気になれず、またネット検索をかけてもほとんどヒットしないため、彼らの情報は皆無です。かろうじてヒットした記事はすべて90年代中ごろまでのものですので、おそらく現在は解散してしまっているのでしょうね。

Phil Woods meets Big Bang Orch 『 Embraceable you 』

2007年09月02日 00時09分48秒 | Large Jazz Ensemble
無類のフィル・ウッズ好きを自負する私ですが、彼の作品を収集しているとけっこうビッグバンド物が引っ掛かってきます。確かにウッズのあの艶やかな音には華があり、その他大勢のビッグバンドの音に決して埋もれない強烈な個性と技量がありますから、ビッグバンドのソリストとしては非常に魅力的なわけです。思えは昔は数多くの有名ビッグバンドから誘いがかかり、客演ソリストとして数多くの作品に参加していました。50年代のディジー・ガレスピー・オーケストラを起点として、クインシー・ジョーンズ、オリヴァー・ネルソン、ミッシェル・ルグラン、ギル・エヴァンス、ボブ・ブルックマイヤーなど、数多くのビッグバンドを験しその編曲能力を磨き、近年は自らリーダーをとりビッグバンド作品を制作しています。今日はそんな彼のビッグバンド作品の中から比較的最近のものをCD棚からひと掴みしてきました。まずは88年にPhilology に吹き込んだ『 Embraceable You 』を聴いてみましょう。

ジャズ評論家,杉田宏樹氏の名著『ヨーロッパのJAZZ レーベル』(河出書房新社)の中で《 ウッズのPhilology第一作が, 『 Embraceable You 』で~ 》とありますが、実はPhilology にはこの『 Embraceable You 』以前に、80年録音87年発売の『 The Macerata Concert 』というLP3枚組Box Set が存在します(前項あり)。

まあ、それはさておき、パオロ・ピアンジャレッリ氏によって召集させられたメンバーがなかなか良いのです。ダニーロ・レア(p)、エンゾ・ピエトロパオリ(b)、ロベルト・ガトー(ds)というリズム隊。そう、つまりは “ Trio Di Roma”ということですね。それにトランペットの3人が、なんとマルコ・タンブリーニ、フラビオ・ボルトロ、そしてパオロ・フレズですからね。凄いです。今じゃ絶対実現しないであろう豪華な布陣。ちゃんとみんなソリストとしても活躍しています。しかしなんだかんだ言ってもウッズのソロのスペースが広く、ビッグバンドがウッズのソロを際立たせる役割に徹しているパートも多分に見られ、また録音もウッズが引き立つように録られており、ウッズ・ファンにはヨダレもんです。タイトル曲《 Embraceable You 》での天空を飛翔していくかのような壮快でエレガントなウッズのソロが白眉です。

Phil Woods meets Big Bang Orchestra 『 Embraceable you 』
1988年 Philology 214W25-2
Phil Woods (as)
Giancario Maurino (ss,as)
Mario Raja (ss,ts)
Maurizio Giammarco (ts)
Roberto Ottini (bs)
Marco Tamburini (tp,flu)
Flavio Boltro (tp,flu)
Paolo Fresu (tp,flu)
Danilo Terenzi (tb)
Roberto Rossi (tb)
Marco Rinalduzzi (g)
Danilo Rea (p)
Enzo Pietropaoli (b)
Roberto Gatto (ds)
All Arrangements by Mario Rja


Bobby Watson with Tokyo Leaders BB 『 Live at ~ 』

2007年09月01日 20時13分38秒 | Large Jazz Ensemble
“ 東京リーダーズ・ビッグ・バンド ”は新橋のライブハウス“ SOMEDAY ”のハウスバンドで、オーナーの森茂信氏が選りすぐりの国内トップ・ミュージシャンを集め、96年に立ち上げたビッグバンドです。現在も不定期にライブを行っていると思われますが、僕も以前、“ SOMEDAY ”がまだ新大久保にあった頃、数回ライブを観たことがあります。中路英明さんや多田誠司さん、それに納 浩一さんらの素晴らしいプレーを目の当たりにして、正直、「日本人ってこんなに上手くなったのかぁ~」と衝撃を受けた記憶があります。本作は森氏が15年来の旧友であるボビー・ワトソンを“ 東京リーダーズ・ビッグ・バンド ”のゲスト・ソリストに迎えて“ SOMEDAY ”で録音された99年の作品です。

ボビー・ワトソンは米国では“ Tailor-Made Big Band ”というグラミー賞にノミネートされたこともあるビッグバンドを率いて活動しているのですが、このライブ録音にあたっては、その2か月前に森氏自らが渡米し、 “ Tailor-Made Big Band ”用のスコアから12曲を選び持ち帰り、事前に“ 東京リーダーズ・ビッグ・バンド ”だけで数回のリハーサルを行ったとのこと。全曲ワトソンのオリジナルで、ジャズ・メッセンジャーズ在籍の頃に作曲し、JMのレパートリーとしても有名な ≪ In Case You Missed It ≫から、最近作曲した作品まで、新旧交えての選曲で、どれもポップで喉ごしの良い楽曲ばかりで感心します。そして、この作品の凄いところは、何と言ってもその迫力と熱気。小さなハコの中で繰り広げられる轟音絵巻が見事にパッケージされているんですね。決してHi-Fi な音ではないのですが、生々しい臨場感がかなりダイレクトに伝わる凄い音なのです。

レーベルは Red Records ですから、当然、Executive Producer としてはセルジオ・ヴェスキ爺がクレジットされていますが、実質的には森氏が作りたい音が具現化された作品なのでしょう。いや~、これは最初に聴いた時は倒れそうになりました。ひとつ残念なのは、各曲ごとのソリストの名前がクレジットされていないことです。ビッグバンド・ファンならずとも必須の作品だと思います。大推薦盤です。

Bobby Watson with Tokyo Leaders Big Band
『 Live at Someday an Tokyo 』 1999年 Red Records 123290-2
佐々木史郎(tp)
小幡光邦(tp)
松島啓之(tp)
岡崎好朗(tp)
中路英明(tb)
佐藤春樹(tb)
北原雅彦(tb)
堂本雅樹(tb)
多田誠司(as)
池田篤(as)
佐藤達哉(ts)
菊地康正(ts)
黒葛野淳司(bs)
今泉正明(p)
納浩一(b)
岩瀬立飛(ds)
稲垣貴庸(ds)