雨の日にはJAZZを聴きながら

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リアル・ジャズ・ファンからみたクラブ・ジャズ(3)

2008年05月31日 22時52分41秒 | JAZZ
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 クラブ・ジャズとは、従来のジャズ・フォーマットに起源を発するジャンルを指し示す言葉ではなく、クラブのDJ達が提示した “ 解釈 ”なのです。しかし、この 「 楽曲の中に、ジャズを感じ、踊ることが可能であれば、すなわちそれがクラブ・ジャズである 」 とする解釈は、あまりにも抽象的で誤解を招きやすいと言えます。

  ≪ジャズを感じる≫とか、≪踊れる≫の主語はいったい誰なのでしょうか。やはりそれは小川充氏や沖野修也氏のようなクラブ・ジャズ界のオーソリティーであるはずです。彼らがジャズを感じ、踊れると判断した音楽だけがクラブ・ジャズの称号を与えられるのです。クラブというアングラ閉鎖空間を舞台に繰り広げられるクラブ・ジャズ界が、ごく少人数のこのようなオーソリティーの言動により動いていることは仕方ないことではあります。しかし、いつまでも曖昧なフレームしか持たずに、容易に他ジャンル(たとえは、ハウス、テクノ、ヒップホップ、ドラムンベースなどなど)の参入を許していると、ますます実体が不明瞭となり崩壊しかねません。早急にクラブ・ジャズのしっかりとした枠組みを、僕らのような従来のジャズ愛好家にもわかるように示す必要があるのではないでしょうか。

  ところで、クラブ・ジャズ界はこれからオーディエンスを増やしていくことができるでしょうか。

  踊れるジャズというのは、踊る人々がいて初めて成立します。では、踊る人とは誰でしょうか。当然僕ら中年のおやじではありません。やはり10代から20代のエネルギーを持て余した若者達でしょう。彼らは踊ることを楽しみ、時に男女の社交場としてクラブを利用します。けっして一曲一曲に集中して聴き入ったり、演奏者に興味を持ったり、というジャズ・リスナーとしての視点は持ち合わせていないでしょう。そもそもクラブには、ジャズ喫茶のような「ただいま演奏中のレコード」などという親切な紹介もありません(むしろDJは、プレイする音源を秘密にしたがります)。そして、クラブで汗を流し青春を謳歌した彼らもやがて歳をとり、家庭を持ち、子供が生まれると、自然とクラブ通いから遠ざかっていきます。

  では彼らはその後、クラブ・ジャズのリスナーとして定着してくれるでしょうか。日々の仕事に疲弊し帰宅したとき、激しく体を揺さぶりながらクラブ・ジャズを聴くことができるのでしょうか。そのようなクラブ・ジャズ愛好家は皆無だと僕は推測します。

  踊るためのジャズは、踊らなくなったら聴かれることはないのです。クラブという箱の中で消費され続けるクラブ・ジャズ。リアル・ジャズとはこの点において決定的に別モノなのです。次々とより若い世代が成長しクラブに足を運ぶため、クラブ・ジャズが消滅することはないでしょう。アシッド・ジャズがフューチャー・ジャズにとって代わり、そして現在、クラブ・ジャズと呼ばれているように、今後も呼び名は変化していくかもしれませんが、踊るための音楽素材としてのジャズは生き続けるのでしょう。

Robert Glasper  『 In My element 』  2007  Blue Note
Robert Glasper  ( p )
Vincente Archer  ( b )
Damion Reid  ( ds )

2 songs upload by criss
1) f.t.b.
2) g&b

クラブ・ジャズについては、個人的に納得がいかない点がいくつかありますが、その一つに、「生粋のジャズ・ミュージシャンを、無理やりクラブ・ジャズの人のように扱う」ことです。たとえば、このロバート・グラスパーは、僕らからすると腕利きのコンテンポラリーなジャズ・ピアニストと理解していますが、沖野氏は彼について次のように言っています。
「彼のエレガントなプレーは、モダン・ジャズ・ファンをも魅了するであろう。」
何気ない言葉ですが、この言葉の意味は、「ロバート・グラスパーは、クラブ・ジャズ側のミュージシャンであるが、その抒情的でアコースティックなサウンドは、ジャズ・ファンにもウケるだろう。」ということです。クラブ・ジャズが主であり、ジャズが従。彼の文章の中には、そういうニュアンスの言葉が随所に散りばめられているのです。
1曲目の≪ f.t.b. ≫ に対しては、「ヒップ・ホップなジャズ」、2曲目の≪ g&b ≫ に対しては「ドラムン・ベースを完全に消化した高速ジャズ」と評価しています。そう聴こえますか? 僕には全然わかりません。

リアル・ジャズ・ファンからみたクラブ・ジャズ(2)

2008年05月30日 22時08分49秒 | JAZZ
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  クラブ・ジャズとは、「クラブで踊れるジャズ」と「ジャズに影響を受けたダンス・ミュージック」の総称であると、沖野氏は定義しています。そして、それぞれをレア・グルーブ以前の音源である「旧譜」と、それ以降の音源である「新譜」とに分類しています。つまり、クラブ・ジャズとは4つのフィールドから構成された音楽であるわけです。詳しくは実際に彼の著書 『 クラブ・ジャズ入門 』を読まれることをお勧めしますが、ごく簡単にそれぞれのフィールドに属する代表的アーティストを列挙しておきます。

1) 踊れるジャズ(旧譜)
アート・ブレイキーホレス・シルバーディジー・ガレスピーカール・ジェイダーマッコイ・タイナーファラオ・サンダースジミー・スミスロニー・スミスマルコ・ディ・マルコサヒブ・シハブマイルス・デイビスウェイン・ショータードナルド・バードハービー・ハンコックウェザー・リポート

2) 踊れるジャズ(新譜)
ノスタルジア‘77、ザ・ヘリテージ・オーケストラ、ニコラ・コンテ、ジェラルド・フリジーナ、ザ・ファイブ・コーナーズ・クインテトティモ・ラッシー、クープ、ドラムレッスン、ロバート・グラスパーカート・ローゼンウェックル、ファータイル・グラウンド、スリープ・ウォーカーソイル・アンド・ピンプ・セッション

3) ジャズの影響を受けたダンス・ミュージック(旧譜)
マヌ・ディバンゴ、フェラ・クティ、サンタナ、レイ・バレット、セルジオ・メンデスアイアートウォーロイ・エアーズ、ギル・スコット・ヘロン、ダニー・ハザウェイサード・ワールド、フレディー・マクレガー、ワーキング・ウイーク、シャーデーボブ・ジェームズヒューバート・ローズソフト・マシーンブラッド・スウェット・アンド・ティアーズ

4) ジャズの影響を受けたダンス・ミュージック(新譜)
ガリアーノ、ヤング・ディサイプルズ、アーム、ジンプスター、カーク・クレイグ、リクルース、レストレス・ソウル、マスターズ・アット・ワーク、4 ヒーロー、DJ スピナ、マッドリブ、ジャザノヴァ、トゥルービー・トリオ、キョート・ジャズ・マッシブ、リール・ピープル。

     は、聴いたことがあるか、すでに十分知っているアーティスト。

  たくさん書き連ねてしまいましたが、ざっと目を通してみてください。1 )に分類される「踊れるジャズ(旧譜)」は、従来のジャズ・ファンならほとんどの方が聴いたことのある音源だと思います。これらのジャズ( あちら側の人たちはリアル・ジャズと呼んでいます )は、本当は“ クラブ ”という修飾語は使って欲しくないのですが、百歩譲ってよしとしましょう。

  3 )の「ジャズの影響を受けたダンス・ミュージック(旧譜)」もジャズ周辺をも守備範囲にしてきた音楽ファンなら聴いたことのあるミュージシャンが多いのではないでしょうか。これらをジャズの範疇に入れてしまうところがクラブジャズの理解しがたい所以ですが、サンタナ、セルジオ・メンデス、シャーデー、ソフト・マシーン、ブラッド・スウェット・アンド・ティアーズなどは、ジャズの耳からしても十分楽しめる音ですので、200歩譲ってよしとしまいしょう。( それにしても、ボブ・ジェームズやヒューバート・ローズがこのフィールドに分類されているのは気の毒です )

  2 )の「踊れるジャズ(新譜)」のなかには、僕は聴いたことのないものも含まれますが、概ね、ジャズと呼んでも差し支えないアーティスト達で構成されています。ロバート・クラスパーやカート・ローゼンウェックルなど、もろジャズの方々もしらっしゃいます。個人的にはニコラ・コンテ、ザ・ファイブ・コーナーズ・クインテト、それから国産ではスリープ・ウォーカーなどは、結構好きです。

  さて問題は、4 )に分類された「ジャズの影響を受けたダンス・ミュージック(新譜)」です。ここは名前すら聞いたことのないアーティストが生息するフィールドです。彼らを本当にジャズと呼んでよいのか。その妥当性は本当にあるのか。以前に興味本位で、ガリアーノやジャザノヴァのCDを買ったことがありますが、全く、何処にもジャズの要素を見出すことができませんでした。ジャザノヴァはフューチャー・ジャズに分類されています。いかにも未知の可能性を秘めた魅力的なジャズのようなネーミングですが、正直、騙された感じでした。薄っぺらなダンス・ミュージックでした。乱暴に言ってしまうと、これはジャズという言葉で多くのリスナーを取り込もうとする詐欺商法です。

  クラブ・ジャズとはひとつの音楽ジャンルを示す言葉ではないことはこれで理解できたのではないでしょうか。踊れるかどうかという唯一のものさしで、あらゆるジャンルの音楽をジャッジし、クラブ・ジャズか否かを決める。その音楽がたとえハウスであっても、そのリズムの上でジャズ的コード進行があれば、<ジャズから影響をうけた>という理由でクラブ・ジャズにカテゴライズされてしまうのです。こういったジャズの拡大解釈は混乱を招きかねません。特にこれからジャズを本気で聴いていこうとする若者にとっては。

  そして、このジャズの拡大解釈によって形成された音楽総体のフレームが、僕らからみると非常に曖昧に映るその最大の原因は、テクノ、ハウス、ブロークンビート、アシッド・ジャズ、フューチャー・ジャズなど、到底ジャズとは無縁と思われるジャンルの音源をもクラブ・ジャズと認めてしまったことではないでしょうか。DJの中には、ハウスしかかけないクラブ・ジャズDJもいます。さらにはそういったDJが「俺はやっぱ、コルトレーンをリスペクトしてるし~」などと公言するので、困ったものです。

さらに、つづく。

今日の歩数 :  8850歩 体重 : 69.5kg
昨日の歩数 : 11228歩 体重 : 69.6kg 仕事帰りに、秋葉原→神保町→お茶の水→秋葉原と歩いた。

リアル・ジャズ・ファンからみたクラブ・ジャズ(1)

2008年05月28日 22時32分17秒 | JAZZ
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昨日、ミケル・ボルストラップの新作を“ クラブ・ジャズ ”だと書いたら、サマンサさんから、「クラブ・ジャズって、いったいどういうジャズなのか?」というご質問をいただきました。正直、僕も全然クラブ・ジャズについて分かっておりません。系統立ててそういった類の音楽を聴いたこともありませんし、第一、クラブに行ったことすらありません。

でも、最近、Rittor Music から『 クラブ・ジャズ入門 』、『 Jazz Next Standard 』,『 ハード・バップ&モード 』といった、クラブ・ジャズ関連の書籍が立て続けに出版され、それらから何となく漠然としたクラブ・ジャズの概要がわかってきたような気がしています。そこでこの機会に少しクラブ・ジャズについて記しておきたいと思いエントリーしてみました。あくまで従来の古いタイプの中年ジャズ親父から見た、クラブ・ジャズ考察とお考えください。多分に偏見や憶測があると思われますが、ご勘弁ください。

正確にいつ頃だったかは忘れましたが、たぶん6、7年前だったように思います。ヤフー・オークションでLPを少しづつ処分していたときのことです。出品したネイザン・デイヴィスのLP 『 If 』に、2万円ほどの値段がついたのです。もう、これにはビックリしました。あわててLPをwavファイルに保存してから、速やかに取引を終了。買っていただいた方に最後にメールで尋ねてみました。「確かに出来はイイ作品だと思いますが、どうして、こんな無名なミュージシャンのLPが2万もの価値があるのでしょうか」と。そしたらその方は「このLPはクラブでは入手困難な名盤ですよ」とのご返事。僕らの聴いているこのジャズとは明らかに価値基準を異にする<あちら側のジャズ>があることを、そのとき初めて知ったのでした。

それ以前にもアシッド・ジャズという、僕ら古いタイプのジャズ・ファンからすると得体の知れないジャズがありました。ハービー・ハンコックやドナルド・バードの楽曲の一部がサンプリングされ、ヒットしました。US3というバンドがハンコックの≪ cantaloupe island ≫ をサンプリングしたのは有名ですね。今でもジャズ畑で活躍しているロニー・ジョーダン(g)もその頃にデビューしたアーティストの一人です。当時これらを何枚か買った記憶もありますが、すぐに飽きてしまいました。

インパクの大きいキャッチーなフレーズをサンプリングし、それをモチーフにデジタライズして遊ぶという行為は、純粋に楽しいものであると思いますが、でも所詮ジャズでありません。そんな似非ジャズはすぐに飽きるものです。

そして、最近になり今度は“ クラブ・ジャズ ”という言葉を耳にするようになりました。若者のプロフィール欄に「好きな音楽:クラブ・ジャズ」なんていうのをよく見かけます。クラブ・ジャズというくらいだから、ダンス・フロアで踊るためにかけるジャズなんだろう、とは想像できます。では具体的にどんなアーティストがフロアでかかっているのか、皆目見当がつきません。

まずはクラブ・ジャズの定義とは何なのか。そのことをはっきりさせないといけません。 クラブ・ジャズの命名者でもある沖野修也氏の著書『 クラブ・ジャズ入門 』の中で、彼はクラブ・ジャズを次のように定義しています。

クラブ・ジャズとは、「踊れるジャズ」と「ジャズの影響を受けたダンス・ミュージック」の両方を含めた総称。

クラブ・ジャズが生まれるずっと前、82年の夏に、アパートの一室でビール片手に ≪サイドワインダー≫を大音量で鳴らしながら、ひとり踊っていた僕には、「踊れるジャズ」というのは何となく分かる気がします。「ジャズの影響を受けたダンス・ミュージック」とはなんでしょうか。この表現だけではわかりません。いずれにしても踊れなくてはいけない音楽ではあるようです。

おもいっきり、明日につづく。

今日の歩数 : 6101歩 体重 : 69.6kg
昨日の歩数 : 9101歩 体重 : 69.7kg  マンション内のジムを1年ぶりに利用

Michiel Borstlap 『 Eldorado 』

2008年05月26日 22時29分07秒 | JAZZ
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オランダ人ピアニスト、Michiel Borstlap ミケル・ボルストラップは、日本では過小評価されているアーティストの一人だ。ハービー・ハンコックやウェイン・ショーターらから称賛される逸材であるにもかかわらず、話題になることは少ない。そんなミケルの最新作がひっそり発売させた。これがなんとクラブ・ジャズというから驚いた。

こういう音楽をクラブ・ジャズと言うのかどうかは、そっち系には全く疎い僕にはわからないのだが、CDのキャプションにそう書いてあるからそうなのだろう。今やアコースティックとエレクトリックを同時進行形で遂行していくアーティストは珍しくないが、エレクトリックがここまで飛躍しているとミケルのファンとしては戸惑いを隠せない。やはり近年のBill Brufordビル・ブラフォードとのデュオはこの新作への伏線だったのかもしれない。

ハンコック激似ぶりはここでも健在で、ヘッドハンターズ以降のハンコックを彷彿とさせる作風だ。楽器構成はピアノ・トリオ+ちょっとだけヴォーカル。ドラムは打ち込み。この時点でミケルのファンの10人中9人は逃げ出す。しかし実際に聴いてみたら何と心地よいことか。

特にmp3プレヤーに落として屋外に持ち出したときに妙にその良さが実感できる。東京メトロとの相性は抜群だ。彼にとっては≪ セロニアス・モンク・コンペティション作曲家部門優勝 ≫ という肩書はあまり意味を持たないのかもしれない。


2 songs upload by criss
1) Happy Mummy
2) My Old Piano

今日の歩数 : 7328歩 体重69.8kg 

Miles Davis 『 Four & More 』

2008年05月25日 20時21分00秒 | JAZZ
先々週の Blue Note Tokyo でのロベルト・ガットのライブのテーマは ≪ Tribute to Miles Davis 1964 – 1968 ≫。つまりはウェイン・ショーター加入で完成をみた第二期黄金クインテットに対するオマージュということ。

菊池成孔氏の言葉を借りれば、この時期の音楽は、「 いまだに現役の分析対象/謎/魔法でありつづけ、模倣や再現はあらゆるマイルス作品のなかでもっとも困難という状態に、現在もあり続けている音楽 」(『 M/D マイルス・デューイ・デイヴィスIII 世研究 』より)であり、軽々しく“ Tribute ”できない、あるいはしてはならない時期を、生来の楽天的で陽気なイタリア人気質で “ ヤッちゃった ” ところがなんとも微笑ましい。

勿論、彼らのマイルスに対する音楽的な焦点深度はあきらかに浅いのだが、それでも、マイルス・アコースティック・バンドの疑似体験的な楽しさは十分味わえる、満足のいくライブだった。

そして、ここが彼らの本音が表れていて面白いのだが、第二期黄金クインテットに対するオマージュと謳いながら、実際に演奏されたショーターの楽曲は≪ Footprints ≫だけで、ほとんどがショーター加入前のジョージ・コールマンとやった楽曲という構成であった。

実はマイルスの全作品中、このコールマン在籍時が最も好きだ。昔はショーター在籍期が好きだったが、今はコールマンだ。ショーターが加入してからというもの、マイルスはあまり吹かなくなった。ショーターが持ち込んだ楽曲を尊重するあまり、自分のソロは控えめになっていた時期。それに対してコールマン在籍期は彼に任せておけない、と言わんばかりに吹きまくった。マイルスのカウンター・バランスとしてみた場合、また、マイルスの陰画としてとらえた場合は、むしろショーターよりもコールマンが勝っていたように思える。

そんなわけで、日曜夜の憂鬱な気分を吹き飛ばすために、今、『 Four & More 』を引っ張り出して聴いている。いやー、いつ聴いても背筋がゾクゾクする。この狂気に満ち溢れた緊張感、スリルが心地よい。ハンコック・ロン・トニーら若造と、コールマンらにマイルスは睥睨する一方で、若造らはそれに臆せず、むしろボスを背後から殺傷するかのごとき鋭いフレーズで応酬する。そんな臨界点ギリギリで繰り広げられる格闘戦が記録されている。

奇しくも今日、5月25日はマイルスの誕生日(26日という説もある)。久し振りにマイルス漬けの夜を過ごそう。

今日の歩数 : 6688歩 体重70.1kg 食い過ぎた
昨日の歩数 : 3872歩 体重69.6kg 車で移動したため歩数減

長生きのための四つの習慣

2008年05月24日 10時30分53秒 | 健康・ダイエット
次の四つの習慣、

1)野菜と果物を毎日食べる
2)運動を日常的にする
3)アルコールは適度に摂取する
4)タバコは吸わない

これらを守ると、そうでない人に比べて、「14年間も長生きできる」ことを、英国ケンブリッジ大学の Kay-Tee Khaw らが、米医学誌 PloS Medicine の Vol.5 (1) January 2008 に発表しています。

この4つの生活習慣が体に良いことぐらい、今さら言われなくても誰でもわかっていることかもしれませんね。でも、このスタディーはそんな漠然としたイメージを、20,224人の男女を対象に、約10年にわたりプロスペクティブに調査したことに意義があります。結論として、この4つの生活習慣を継続した人とそう出なかった人(この4つの習慣が全てなかった人)との間には14年もの寿命差がついたと言っています。また、4つの習慣が全てなかった人(ポイント0)は、4つの習慣をもっている人(ポイント4)の人に比べて、死亡率は4倍であったとも結論づけています。

さて、ここでちょっと気になることがありました。この論文の<方法>に目を通すと、 1)の野菜と果物の摂取量については <intake of at least five servings a day >の人とそうでない人に群分けして比較しています。ここで言う「野菜と果物を毎日食べる」というグループは、なんと、毎日5皿!以上摂取している人々なのです。そんな人、まわりに居ます? 一般的な人からはかけ離れた、かなり自分の健康管理に敏感な人々を対象にした結論であるといえるでしょう。毎日野菜サラダを5皿も食べている人は、おそらくスポーツジムにかよったり、人間ドックで定期的にチェックをしているでしょうから、長生きして当然といえるのではないでしょうか。

ちなみに、3)の「適度のアルコール」とは、<moderate alcohol intake (1-14 units a week) >という定義です。ここで言う unit とはビールなら1/2杯、ワインならグラス1杯の量をさしています。

Title : Combined Impact of Health Behaviours and Mortality in Men and Women: The EPIC-Norfolk Prospective Population Study
原文は読めませんが、要旨はこちらで閲覧できます。

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Nicolas Folmer 『 Plays Michel Legrand 』

2008年05月23日 23時04分51秒 | JAZZ
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  フランスの新進気鋭のトランペッター、Nicolas Folmer ニコラ・フォルメルの最新作がやっと手元に届いた。VENTO AZUL RECORDS さんに注文してから待つこと2カ月。待った甲斐があった。深い余韻を残す実に素晴らしい作品に仕上がっている。ミシェル・ルグラン作品集というのもいっそう心惹かれる。

  ルグランの映画は恥ずかしながら一本も観たことがないが、その音楽は今までに数多くのジャズ・ミュージシャンに取り上げられてきたので、大部分は耳に馴染んだ楽曲ばかりだ。

  『華麗なる賭け』に使われた≪ The Windmills of My Mind ≫ (邦題:風のささやき)はフィル・ウッズの演奏が思い出される。 ≪ The Summer Knows ≫ (邦題:夏のおもいで)はアート・ファーマーのEast Wind 盤が心に残っている。 ≪ Watch What Happen ≫ はウェス・モンゴメリーの『 A Day in The Life 』のメロディーが蘇ってくる。 ≪ Once Upon a Summer Time ≫ はチェット・ベイカーの感傷的な名演があった。 ≪ What Are You Doing The Rest of Your Life ≫ はミルト・ジャクソンの『 Sun Flower 』のでフレディー・ハバードの演奏が懐かしい。そしてビル・エバンスの奏でる ≪ You Must Believe in Spring ≫ は、エバンスの世界そのものであった。

  ニコラは、これらの名曲を最新流儀のアレンジで料理し、深い愛をもって、ルグランへ捧げたのだ。無駄な装飾は一切ない。カルテット編成でシンプルに、自由奔放に吹き切っている。近年の米国人トランペッター達の作品にみる思索的、理知的な気難しいコンセプトなど一切ない。ただ単にルグランの物悲しい名曲を感情込めて歌いきる。それだけ。非常に明快な方向性をもった作品だけに、聴き手も音だけに集中できる。聴き終えた後の寂寥感がなんとも心地よい。メロディーの持つ求心力。やっぱり音楽の魅力はこれに尽きる。

  メンバーで注目したいのは、ピアノの Thierry Eliez ティエリー・エリエとドラムのBenjamin Henocq バンジャマン・エノクの2人。ティエリー・エリエはアンドレ・チェカレリやディー・ディー・ブリッジウォーターの作品などに参加している知る人ぞ知る技巧派ピアニスト。ディー・ディーのDVDでその姿を拝める。一見、軽薄ナンパ風だが、演奏は超絶技巧で凄い。バンジャミンは元プリズムのドラマーだった人。プリズムでの演奏は今や伝説的。ミシェル・ルグランもピアノでちょっとだけ参加している。≪ Summer 42 ≫ ではボーカルも披露して花を添えている。

Nicolas Folmer のデビュー作『 I Comme I Care  』 の記事はこちら


2 songs upload by criss
1) Once Upon A Summertime
2) You Must Believe In Spring

今日の歩数 : 6930歩 体重 : 69.5kg 

Roberto Gatto 『 Notes 』

2008年05月22日 21時25分08秒 | JAZZ

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先週、Blue Note Tokyo でRoberto Gatto ロベルト・ガットのライブを観たので、その余韻を感じながら、このところ彼の参加作品を引っ張り出して聴いている。そんなわけで今日は、彼の86年のデビュー作『 Notes 』( gala ) を取り出してきたところだ。

本作はなんといっても3曲でフューチャーされているマイケル・ブレッカーが一番の聴きどころ。そして本作は80年代を象徴するかのような典型的なフュージョン・サウンドであるのが興味深い。しかし、興味深いといはいうものの、実際に聴いてみると大した作品ではないのが悲しいところだが。マイケルの奮闘により辛うじて体裁を保っている感じだ。

本作はジャズ批評誌 No.104 『 マイケル・ブレッカー大全集 』に紹介されているが、そこには以下のようなメンバーが記されている。

Roberto Gatto  ( ds )
MIcheal Brecker  ( ts )
Danilo Rea  ( key )
Enzo Pietropaoli  ( b )
Flavio Boltro  ( tp )
& others

実は、僕の所有しているCDは86年発売当時の輸入盤で、そこにはメンバーが一切記されていない。そこで、いろいろ調べてみたところ、この作品にはジャズ批評誌に記されたメンバー以外にも以下のようなミュージシャンが参加していることがわかった。

Maurizio Giammarco - tenor sax
Antonio Faraò - piano , keyboards
Rita Marcotulli - piano , keyboards
Stefano Sabatini - piano , keyboards 
Francesco Puglisi - bass
Furio Di Castri - bass
Umberto Fiorentino - guitar
Danilo Terenzi - trombone
Gege Telesforo - vocals , percussion
アントニオ・ファラオのOfficial Web Site より)

おそらく本作は20歳そこそこのアントニオ・ファラオの初レコーディングだったのだろう。彼は1曲だけだが曲も提供している。
また、ステファノ・サバティーノ、フリオ・ディ・キャステリ、ダニーロ・テレンツィなど、錚々たるミュージシャンも名を連ねているのに驚かされるが、これだけ集まってもこの程度か、という落胆は隠せない。

本作ではウイル・リーを彷彿させるタイトなスラップ・ベーシストがなかなかカッコいいノリをだしているのだが、エンゾ・ピエトロパオリにしては上手すぎると思っていた。やっぱりエンゾではなく、フランチェスコ・プグリシだったのだ。それなら納得。

長々と書いてしまったが、要はやっと正式なメンバーがわかって、僕としては嬉しかった、というだけ。すみません。


2 songs upload by criss

今日の歩数 : 6748歩 今日の体重 : 69.9kg
昨日の歩数 : 10383歩 昨日の体重 : 70.4kg

脱メタボリック・シンドローム

2008年05月20日 17時59分28秒 | 健康・ダイエット

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僕は、45歳。妻は35歳で子供はまだ3歳。子供が4年生大学までストレートに進学しても20年近くはまだ働かなければなりません。そのためには、まずは自分自身が健康でなければならないし、極端に言えば、それが全てです。健康なら大概のことはどうにかなるものですから。ところで、僕が自身の健康に意識を向けるようになったのは、4年前に妻が妊娠したときからです。まずは煙草をやめました。ニコチンパッチであまり苦労することなく止められたのです。最近はお酒もほとんど飲まなくなりました。平均すると1週間に1合程度です。とりあえず酒と煙草の問題はクリアできたのです。しかし、ここ数年で体重が徐々に増えていき、この2年ほどは身長171cm、体重74kg、BMI 25.3 ( 正常は< 25 )と肥満度1 が続いていました。腹部超音波(エコー)やCTでも高度の脂肪肝を認めていました。今、手元に2006年2月の検査データーがありますが、それを見てみると、GOT = 42 ( 11-35 ) 、GPT = 96 ( 6-39 )、γ-GTP = 53 ( 4-70 )、LDL(悪玉)コレステロール = 158 ( <140 )、中性脂肪 = 293 空腹時血糖 = 94 ( 70-109 ) [ カッコ内は正常値 ] で、過栄養による肝機能障害と高脂血症(最近は高脂質異常症と呼びます)であったことがわかります。そんな状態が続いていたものの、なかなか食生活を改善することができず、かといって、仕事で遅く疲れて帰ってきてまで運動する気にもなれず(マンション内にジムがあるにもかかわらず)、だらだらと過ごしてしまいました。本当はブログなど更新する暇があったらジョギングでもすればよかったのですが。ところが、今年の4月からそれまでの車通勤から、生まれて初めての電車通勤にかわり、歩行距離が格段に増えたことで、なんと体重が2.5kg減ったのです。そんなときに偶然、書店で目にした『 医師がすすめるウオーキング 』( 集英社新書 泉嗣彦著 )を読み、「いつもより少しだけ多く歩く無理のないライフスタイル・ウオーキングが健康な体を作り上げるのだ」という単純明快な方法論に感銘をうけ、それなら僕も実践してみようかと一念奮起し、このところ歩数計をポケットに忍ばせ、頑張っているのです。いや、頑張ったのでは長続きしないので、無理せずに楽しくウオーキングを実践しています。

 
この腹部CTは昨日撮影した僕の画像です。ちょうど臍部での断面です。メタボリーック・シンドロームの診断基準である、ウエスト周囲径≧85cm ( 男性 )、≧90cm ( 女性 ) とは、この臍部での測定を意味します。ちなみにこのスライスで僕のウエスト周囲径を測定すると 80.8 cm でしたので、この時点でメタボリック・シンドロームではない、と診断されます。
さて、CTでは真っ黒の部分が脂肪です。腹腔内の黒い部分が内臓脂肪であり、腹腔外の黒い部分が皮下脂肪です。わかりやすく、色をつけると、

このようになります。赤が内臓脂肪。青が皮下脂肪です。そこで、これらの面積を測定してみると、内臓脂肪面積 89.5 cm2 、 皮下脂肪面積 102.9 cm2 となりました。
いままでの研究から、この内臓脂肪面積 100 cm2 がウエスト周囲径 85 cm に相当することがわかっています。この100 cm2 以上を「内臓脂肪型肥満」と呼んでいます。僕も場合は、なんとか免れていますが、このままではいずれメタボへ突入してしまいます......。

今日の歩数 : 9018歩


ダイエット~ メタボにならないために ~

2008年05月19日 22時09分03秒 | 健康・ダイエット
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 ライフスタイル・ウォーキングだけで、どれだけやせられるか。

 <ベースライン・データ> 
検査項目 単位 基準値 2008.05.19.
一般 身長 cm
170.9
体重 kg
71.1
ウエスト径(実測)
<85 83.0
ウエスト径(CT) cm <85 80.8
肥満度(BMI)
18.5~24.9 24.3
体脂肪率 % <20 20.6
内臓脂肪レベル
<10 9.5
体幹皮下脂肪率 %
13
内臓脂肪面積 cm2 <100 89.5
血圧 収縮期 mmHg <140 125
拡張期 mmHg <90 76
肝機能 GOP IU/ℓ <35 22
GPT IU/ℓ <35 31
γ-GTP IU/ℓ <73 30
脂質代謝 総コレステロール mg/dℓ <219 205
LDLコレステ mg/dℓ <140 147
HDLコレステ mg/dℓ > 40 42
中性脂肪 mg/dℓ >150 118
糖代謝 空腹時血糖 mg/dℓ >110 104
HbA1c % >5.6 5.3
尿酸 尿酸 mg/dℓ >7.0 6.1

体脂肪率、内臓脂肪レベル、体幹皮下脂肪率は、オムロン体重体組成計
KaradaScan HBF-361 で測定。

ウエスト周囲径(CT)、内臓脂肪面積(臍部断面)は、CTスキャン(日立ROBUSTO)で測定。

今日の歩数 : 7565歩


Roberto Gatto Quintet @ Blue Note Tokyo

2008年05月18日 09時37分52秒 | ライブ

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 5月12日、月曜日。ウンブリア・ジャズが提供する 『 Top Italian Jazz 』 の一環として催された Roberto Gatto ロベルト・ガットのライブを Blue Note Tokyo に観に行ってきました。

    正式には 『 Italian Cultural Institute and Umbria Jazz present Top Italian Jazz 』 という名称で、今回はItalian Cultural Institute(イタリア文化会館、九段にあるあの赤い建物ですね )も主催者に名を連ねています。イタリアのミュージシャンが来日すると、都内のライブハウスでの演奏以外に、この文化会館でもライブを行うことが多いのですが、今回はなかったようです。ただし、京都にあるイタリア文化会館ではロベルト・ガット、ロザリオ・ボナッコルソ、ダニエレ・スカナピエコのサックス・トリオでライブをやったようです。

    ウンブリア・ジャズ・フェスティバルは、ウンブリア州の州都ペルージャで、毎年7月上旬の10日間開かれているイタリア最大のジャズ・イベントです。40年以上もの歴史をもち、チケット売り上げ枚数45万枚! 10日間でのべ300回のライブが街中で繰り広げられます。メイン・ステージは、8,000人収容の野外ステージ、サンタ・ジュリアーナで、今年は、マリオ・ビオンディ、ハービー・ハンコック、ゲイリー・バートン・カルテット( with パット・メセニー)、ジェラルド・クレイトン、ソニー・ロリンズ、ステファノ・ボラーニ、その他大勢の国内外のトップ・ミュージシャンがそのステージを飾る予定です。ところが、ネットでプログラムを眺めていて気がついたのですが、ロベルト・ガット・クインテットの名前が何処にもない! これってちょっとおかしくない?

  僕が見たのは7時からのファースト・ステージ。Blue Note は来店順に好きな席に座れる自由席制なのですが、6時30分に到着したのにもかかわらず、何と16番目に案内されてしまうという客入りの悪さ。完全にガラガラです。これじゃ客もミュージシャンも盛り上がれないな~と心配しているうちに、徐々に客が入ってきて、結局70席ほどが埋まりました。それでもこんな寂しいBlue Note のライブは、初めての経験かもしれない。月曜日で、しかもロベルト・ガットですから、仕方ないか。

   今回のテーマは ≪ Tribute to Miles Davis 1964 – 1968 ≫ 。つまり、ウェイン・ショーターが加わったの黄金のクインテット時代へ捧げたステージということで、当日演奏された曲目は次の通り。

1.JOSHUA
2.THERE IS NO GREATER LOVE
3.FOOTPRINTS
4.STELLA BY STARLIGHT ~ The Theme
5.SEVEN STEPS TO HEAVEN ~ The Theme
<ENCORE>
6.SO WHAT

     どの曲もマイルスの代表曲で、選曲としては非常にわかりやすい。みんなが知っているし。でも、僕が観る前にイメージしていた、あるいは期待していた楽曲とはちょっと違っていました。60年代黄金のクインテットといえば、やっぱりショーターの≪ E.S.P. ≫ とか、 ≪ Nefertiti ≫ とか、≪ Masqualero ≫ とか、ハンコックの≪ Riot ≫ とかがまっさきに思い浮かぶんですけどね。そのあたりは完全にスルーされちゃっているのがちょっと物足りなかったです。≪ So What ≫ や≪ Footprints ≫ はもちろんイイです。でも≪ Joshua ≫ や ≪ Seven Steps to Heaven ≫ はいくらマイルスのレパートリーといえど、ビクター・フェルドマンの曲ですからね。≪ There is No Greater Love ≫ に至っては、おそらく、ショーター加入後は演奏していないんじゃないでしょうか。( 『 Four & More 』 での≪ There is No Greater Love ≫はジョージ・コールマンでした。)別の日の演奏曲目はわかりませんが、もう少し、ショーター色の強い楽曲が聴きたかったというのが、正直な感想です。

    曲が曲だけに、ジャム・セッション風のノリで各人、伸び伸びとソロをとっていました。やっぱりダト・モローニは巧かった。そして体もデカかった。頭を前後左右に揺さぶりながら鮮やかなフレーズを連発していました。ボルトロは、昨年に銀座プロムナードで観た時とは別人のように素晴しい吹きっぷりで、これぞ本当のボルトロなんだと惚れ直しました。ただ、やや手癖フレーズが多い感じもしましたが、ライブですから仕方ないでしょう。黄金のマイルス・クインテットの、奔放でミステリアスな雰囲気は皆無で、全曲、元気いっぱいのイタリアン・ハードバップ化されていて、どこがマイルス・トリビュートなんだと、突っ込みを入れたい気持ちもありましたけど。

     ≪ Stella by Starlight ≫ だけは、とってもマイルス・バンドっぽい、ダーク&クールな演奏で感動的でした。ダト・モローニのソロから、2ビートでまずボルトロが緩やかにテーマを奏で、次いでサビでダニエレが受け継ぎ、4ビートで盛り上がる、というマイルスの生み出した手法をそのまま踏襲した劇的な構成に、思わず身震いしてしまいました。

飲食: 白州ロック・ダブル、一番搾りスタウト、スウィンギン・ポテト


2008年5月11日(日)

2008年05月11日 12時25分31秒 | JAZZ

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昨夜は夜更かしをしてしまったので、九時すぎまで寝てしまいました。
東京の空は曇っていて、気温も低く、肌寒いくらいです。
今日は久しぶりののんびりした休日を過ごせそうです。

子供がリビングで昨日レンタルビデオ屋で借りてきた『 となりのトトロ 』を見ているので、子供を膝の上に乗せて、僕もいっしょに見ることにしました。実は『 となりのトトロ 』を見るのはこれが初めて。「ねこバスだ~」「トトロがでてきた~」などと子供は大歓び。一方の僕は、子供のころの懐かしい記憶とリンクした描写に、思わず涙がこぼれる始末。歳をとると涙もろくなって困ります。

それにしても最後のシーンはちょっと怖かった。→こちらでどうぞ。

さて、妻と子供は近くの神社のお祭りに出かけるというので、僕は家でゆっくり音楽でも聴きながら読書でもして過ごしましょうか。
 
まずは、昨日買ってきた Martial Solal マーシャル・ソラルの新譜 『 Longitude 』 から聴いてみよう。

 『 Longitude 』 2008 Cam Jazz

マーシャルは現代音楽家と共演したり、アヴァンギャルドな演奏をしたりと、頭でっがちの理屈ぽさが鼻につき、ほとんど聴いてこなかったピアニストです。手元にあるのはヴィレッジ・バンガードでのライブ盤 『 NY-1 』 だけです。この最新作はムタン兄弟が参加しているので買いましたが、それがなければ当然スルーしちゃう盤です。naryさんが白眉とおっしゃってたM-9 ≪ Monostome ≫ から聴いてみましたが、息つく暇を与えないハイ・テンションで、日曜の朝から聴く音楽ではなかったと後悔。とりあえず、後日ゆっくり聴き直すとしましょう。

気を取り直して、次のディスクをセットしました。E_L_B の2001年にリリースされたファーストです。

 『 E_L_B 』  2001 ACT

つい最近、第二弾が発売されていますが、まだ入手していません。naryさんも五つ星つけていたので、早く欲しいのですが、昨日覗いたDUにも置いてなかったです。普段はあまり利用しない通販でも使ってみるかな。この作品、凄くイイのですが、特にM-2 ≪ Autumn Rose ≫ というアースキンの曲が素晴らしく、透明感のある浮遊系バラードで、こんなのんびりした日曜の午前にはぴったり。リピートで聴きながら読書、なんてなんとも優雅であります。

子供たちが外出している間に、昨日借りてきた『 エイリアンVSプレデター2 』 を観ていました。今、観終わったところ。

 『 Aliens vs Predator 2 』 2007 20th century Fox

まず、面白い、面白くないと論じる前に、とにかく映像が暗い。暗すぎ。何が何を何しているのか、さっぱり分らん! どうもFOXは前作よりも予算を減らしたようで、チープな映像をごまかすために敢えて暗く画像処理したのだろうか。恐怖を演出するのに暗い映像を使用するのはもちろんアリだけど、暗すぎると興ざめして全然怖くない。ストーリーも単純で、たた増殖したエイリアン(正確にはプレデターの遺伝子を組み込んだエイドリアンということだが)がひたすら人間を虫けらのように殺していくというもの。お楽しみにしていたエイリアンとプレデターの格闘戦などほんの僅か。しかも最後はお決まりの爆弾でドカ~ンで、はいおしまい。なんだこれ?
完全にB級モンスター・パニック映画だね。
え? これ、続編作る気? せめて監督代えてね。
あ~、こんなの観るのなら『 エイリアン 』をもう一度見た方が何倍も有意義だ。
リドリー・スコットはやっぱり天才だったのね。

家に僕一人なので、大音量で聴きたいCDを摘まんできました。

『 Peek a Boo 』 1993  Label Bleu

拙ブログでは何度も言ってますが、ジェリー・バーガンジは何といっても90年代がいい。Label Bleu から93年にでた本盤も最高にスリリングで興奮しちゃいます。ダニエル・ユメール、ヨアヒム・キューン、そして何故かタイガー大越まで参加して、密度の高い硬質なサウンドで迫ってきます。久しぶりに聴いたけど、ユメールって凄いな~。最近のジェリーはアメリカ人ぽくなっちゃて、ちょっと残念。

続いて、デイヴ・ダグラスの中でも、スカっと爽やかなCDをつまんできて、聴いています。

『 Songs for Wandering Souls 』 1999 W & W

デイヴの Tiny Bell Trio 名義の第四作目で、これを最後に10年近く作品を出していないところをみると、このトリオは自然消滅してしまったのでしょう。
ブラッド・シェピック ( g ) 、ジム・ブラック ( ds )からなる変則トリオですが、一糸乱れず繰り広げられるインタープレイは気持ちイイです。他の誰にも真似できないデイヴの独特のスカした世界観って、中毒になります。

 『 Deep 』 2003 Cam Jazz

21時38分。日曜日のこの時間になるとサラリーマンのほとんどは憂鬱になってくるものですが、今日ばかりはそれほど憂鬱ではありません。なぜなら、明日はBlue Note にロベルト・ガトーを観に行く予定が入っているからです。月曜に楽しい予定をはじめから組んでおくと、けっこう日曜の夜に落ち込まずにすみますよね。
さて、お目当てはダド・モロニです! ダニエレ・スカナピエコもフラビオ・ボルトロも、もちろんロベルト・ガトーも過去に観ていますが、ダド・モロニは初体験。かなり興奮しそう。ということで、ロベルト・ガトーとダド・モロニの共演盤はなにかあったっけ?と思いながら、寝る前の一枚としてガトーの前々作を出してきて聴いています。前作『 Traps 』もなかなかでしたが、やっぱりこの『 Deep 』の方が心地よいかな。日本ではほとんど無名ですが、サックスの Javier Girotto (ヤヴィエル・ジロット?)がかなりの凄腕で、聴かせます。最近 Cam Jazz からでた彼のリーダー作はあまり面白くなかったけどね。

 Peggy Lee  ..... 今週も頑張ろう。では、おやすみなさい。


Roy Hargrove 『 Earfood 』

2008年05月10日 20時52分53秒 | JAZZ
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 Roy Hargrove ロイ・ハーグローヴの2年ぶりとなる最新作を聴く。最近のロイは、ジャズ・クインテットでの活動と並行して遂行されているもうひとつのR&B/Hip Hopプロジェクト、RH Factor の活動のほうにより多くの力を注いでいたようで、今世紀に入ってからのジャズ作品は06年の『 Nothing Serious 』 だけという、ちょっと寂しい状態が続いただけに、レギュラー・クインテットでの新作は非常に嬉しい。

  本作ではアルトのJustin Robinson ジャスティン・ロビンソン以外はメンバーが一新されている。

  注目はなんといってもピアノの Gerald Clayton ジェラルド・クレイトンだ。オランダ生まれ、南カリフォルニアア育ちの彼は、ベーシストのジョン・クレイトンのご子息であり、06年のセロニアス・モンク・コンペティションで2位を獲得したエリートである。今回の作品でもかなりセンスのよいソロを聴かせているので、今後とも要注意だ。

  エンジニアには音の魔術師、アル・シュミットを起用し、売れるアルバム作りの定石を打っている。

  プロデューサーはデビュー以来(というかデビュー前から)、ずっとロイをサポートしてきたブレインであり、マネージャーでもあるLarry Clothier ラリー・クロージェが今回も担当している。ラリー・クロージェはいわばロイの育ての親だ。ラリーのプロデュース能力、マネージメント能力があったからこそ、RCA~Verveと、今まで順調に業績を伸ばしてこられたのだ。 質の高い音楽を制作し、かつ収益も上げなければならないという2つの難題。場合によっては二反律ともいえれるこの課題を、巨大音楽産業界のなかで長期にわたりクリアし続けられたのも、ひとえにラリーの手腕に依るところが大きい。

   ラリーとロイの出会いは、さかのぼることロイのハイスクール時代。お忍びで彼の演奏を聴きに来たウイントン・マルサリスはその抜群の才能に惚れ込み、今後のプロとしての活動を保障すると同時に、有能なマネージャー兼プロデューサーのラリーを紹介したのだった。( source は JazzTrumpetsolos.com ) その3年後の90年に、ロイは巨額の契約金 でRCA ( Novus ) と契約した。実は新生ブルーノート(社長はブルース・ランドヴァル)もロイを狙っていたのだが、交渉が難航しているうちにRCAにロイを奪われてしまったのだ。このあたりの経緯は『 ブルーノート・レコード』( リチャード・クック著、前野律訳、朝日文庫 )の第11章第8節《 ロイ・ハーグローヴの問題 》に詳しく書かれているので是非参考にされたし。

   閑話休題。本作は一聴しただけではその良さがいま一つ伝わってこなかったが、数回聴き込むうちにその素晴らしさがじわじわと沁みてきた。とにかく、艶があり、抜けがよく、切れ味もある音色は心地よい。今まで以上にフリューゲル・ホーン( トーマス・インダービネン製 )を手にする曲が多いように感じたが、その蜜のごとく豊潤で甘美な音色、メロディーに思わず陶酔してしまう。ジャスティン・ロビンソンとのアンサンブルの溶け合い方なども絶品だ。彼自身の簡単なライナー・ノーツにも記されているように、作り込み過ぎないシンプルなメロディーに重点をおいた作品つくりは、完璧な成功を収めたと言えよう。

  そして最大の収穫は前述したピアノのジェラルド・クレイトンだ。モンク・コンペティションで受賞したものの、いまだリーダー作はなく、ダイアナ・クラールやロベルタ・ガンバリーニらの歌伴での控え目な演奏しか聴いていなかったので、とっても楽しみにしていた。彼は技巧に走るタイプではないが、軽快なスイング感に満ち溢れた正統派ピアニストだ。本作の中でも要所要所で印象的なソロを聴かせてくれている。早くリーダー作を聴いてみたくなった。

   辻仁成の小説ではないが、まさに冷静と情熱のあいだを絶妙なバランス感覚をもって行き来する演奏に、ロイの円熟の極みを垣間見たような思いがした。いまだ40歳。これから先、ロイとラリーは二人三脚でどんな道を切り開いていくのだろうか。ソウル系の有名アーティストとの共演、ジャズ系のサイドメンとしての活動、自己のRH Factor やクインテットでの活動など、こんなハード・スケジュールでは、いずれエレネギーが枯渇してしまうのではないかと、少々心配にもなってくる。がしかし、いつまでも燃えるような美しさで僕らを楽しませてくれ、ロイ・ハーグローヴ!

Nicholas Payton 『 Into The Blue 』

2008年05月07日 12時40分33秒 | JAZZ

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 Nicholas Payton ニコラス・ペイトンの新作『 Into The Blue 』を聴く。前作『 Sonic Trance 』( Warner Bros. ) が03年の作品だったから、実に5年ぶりのリーダー作になる。

  ニコラスはデビュー以来所属していたVerveを03年に辞め、 Warner Bros. Records に移籍した。そこで彼にとっては初となるエレクトリック作品『 Sonic Trance 』をリリースした。ところがその直後の04年になんとWarner Bros. Recordsのジャズ部門は閉鎖されてしまい、それに伴いにニコラスは解雇されたのだった。( 業績のあるアーティスト、たとえはブラッド・メルドー、ジョシュア・レッドマン、パット・メセニーらなどは子会社の Nonesuch Records に再雇用された。)

   それにしてもニコラスは不運だ。Warner Bros. Records に録音された唯一の作品となってしまった『 Sonic Trance 』にしても、なんだかよく分からない駄作であった(これはどの角度からみてもだめな失敗作であった)。おそらく彼は一生、Warner Bros. Records を恨み続けるだろう。その後は、ジョシュア・レッドマン率いるSF Jazz Collective のレギュラーとなる一方で、多方面でのゲスト・プレーヤーとして活躍していたが、このたびやっとNonesuch Records に再雇用されるはこびとなった。

  ニコラス・ペイトンは、ロイ・ハーグローヴと並び、最も好きなトランペッターだ。もちろん50年代、60年代のリー・モーガンやドナルド・バードも大好きだが、その次に惹かれるトランペッターといえば、(特に90年代の)ニコラスとロイの二人しかいない。ニコラスの『 Payton’s Place 』( 1998 Verve ) とロイの『 Pablic Eyes 』( 1991 Novus ) は永遠の愛聴盤だ。

 だから、僕にとっては『 Payton’s Place 』を超えられるかどうかが新作の評価基準になるのだが、今回はどうだろうか。

  全10曲でうち7曲がニコラスのオリジナル。2曲がベーシストとして活躍している彼の父親ウォルター・ペイトンのオリジナル。そしてもう1曲が映画『 チャイナタウン 』( 1974年 監督:ロマン・ポランスキー )のサントラ《 chinatown 》という構成。ひとまず誰かのトリビュート盤ではないことでほっとする。僕はあまりトリビュート作品が好きではないので。ニコラスは今までににもけっこうトリビュート作品を制作している。ボブ・ベルデンが中心となって制作されたウェイン・ショーター・トリビュート『 Mysterious Shorter 』、ルイ・アームストロング・トリビュートの『 Dear Louis 』、そしてハービー・ハンコック・トリビュートの『 Fingerpainting 』など。

   本作はマイルス・トリビュートではないが、60年代後半の電化マイルス期の影響を受けていると思われるモーダルでアコースティックなサウンドにフェンダー・ローズが怪しく絡む楽曲が多い。マイルスのリイシューの仕掛け人としても有名なボブ・ベルデンがプロデューサーを務めていることも少なからず関係しているのであろう。

  昔のニコラスは、何も考えずに豪快に吹きまくっていた。デビュー作は一応、94年の『 From This Moment 』( verve ) ということになってはいるが、その2年前に『 Carl Allen & Manhattan Projects introducing Nicholas Payton 』というカール・アレンの作品にフィーチャーされている。そこには一点の迷いもまく未来に向けて高らかに吹き鳴らすニコラスがいた。ヴィンセント・ハーリングの凄さと相俟って、胸のすく爽やかな作品であった。

   あるいは、98年の『 Payton’s Place 』では、Tim Warfield ティム・ウォーフィールド ( ts ) との2管編成で、極上の痛快ハード・バップを聴かせてくれた。あの頃は音圧が凄かった。音には質量があるのではないか、と考えたくなるほどの鼓膜直撃の快音だった。デビュー当時はニューオーリンズ出身ということもあり、ルイ・アームストロングにたとえられることも多かったニコラスだが、この頃はまさにリー・モーガンそのものであった。

  閑話休題。この新作では、時代の求めるトレンドにお行儀良く乗っかったコンテンポラリーなサウンドが聴かれる。ケビン・ヘイズのローズがいっそうその雰囲気を高めている。ちょっとブルックリン風でもあり、なんとも言えない浮遊感も漂う。意外にパーカッションの Daniel Sadownick ダイエル・サドウニックの叩くタンバリンが印象的だ。そして、ドラムの Marcus Gilmore マーカス・ギルモアはなんと、ロイ・ヘインズ翁のお孫さんとのこと。

  結局、往年の熱く豪快に吹きまくるニコラスに会うことはできなかった。でもなかなか面白い作品であると思う。この連休中、飽きずに繰り返し何度も聴けたし。今のジャズ・シーンでは、天真爛漫に弾いたり、吹いたり、叩いたりしているだけでは売れないのだろう。何かしらの仕掛けや捻り、ほどよい分かりにくさ、など、ちょっとばかりアーティスティックな作品に仕上げないと、売れないのではないか。ニコラスの新作を聴きながら、そんなことを考えてしまった。


2 songs upload by criss
最近、うまくリンクしてくれません。上のanywhere.FMのバナーから入って、
左側サイドバーの<Browse Community>のタグをクリックし、中央のサーチに
僕の名前<criss>を入力してください。白黒の手のアイコンが僕です。



名盤『 Payton's Place 』のオープニングを飾る ≪ Zigaboogaloo ≫。タイトル通り、ファンキーでダンサブルなブーガルー。


アルバム1曲目に収められていた≪ Drucilla ≫。ニコラスの父親 ウォルターが妻 Drucilla のために書いた曲。スロー・バラードで始まり、徐々に熱くなっていく。ケビンのソロも泣かせるし、ニコラスのソロも音数をしぼってよく歌っている。なかなかの名演です。


Ryan Kisor 『 Cool and Hot 』

2008年05月04日 21時21分24秒 | JAZZ
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 90年代初頭にジャズ・シーンに颯爽と登場し、絶大な人気を博したトランペッターといえば、Roy Hargrove ロイ・ハーグローブ( 1969年生まれ )、Nicholas Payton ニコラス・ペイトン( 1973年生まれ )、Ryan Kisor ライアン・カイザー ( 1973年生まれ )の三人が思い浮かぶ。あれから約20年、それそれが独自のスタイルを確立し、常に第一線で活躍してきた。そして、名実ともにトップ・アーティストに成長した現在、彼らは円熟期を迎えようとしている。そんな3人が偶然にもほぼ同時期に新作を発表した。しかも3人とも新レーベル移籍第一弾、というおまけ付で。

  まず、ロイ・ハーグローブは古巣 Verve Records から Emarcy Records ( 同じuniversal music group )に移籍し4月29日に『 Earfood 』をリリース。また、所属していた Warner Brothers が04年にジャズ部門を閉鎖して以来、路頭に迷うのではないかと心配されていたニコラス・ペイトンは、やっとNonesuch に拾われる形で、5年ぶりとなる新作『 Into The Blue 』を4月22日にリリースした。そして、ライアン・カイザーも Video Arts Records から平行移動的にBirds Records に移籍し、新作『 Cool and Hot 』を4月23日に発売した。

  そんな中から今日はライアン・カイザーの新作を聴いている。結論から言うと、近年の作品群と同等の平均的できばえ、と思う。「近年」というのは Video Arts に作品を残した時期ということ。個人的にはライアンの旬はColumbia から Criss Cross に吹き込んだ時期であったという思いが強い。そのころの作品に比べるとどうしても日本人主導で製作された企画っぽい作品は、力強さや瞬発力に欠ける。

  でも、まあ、それなりに聴きごたえはある。要は、聴く前からライアンに期待しすぎるために起きる失望がある分、評価が下がってしまうだけなのだ。ライアンは90年のモンク・コンペティションで優勝した経歴をもつ、いわば《 選ばれし者 》であったはず。当然、期待して聴くわけだが、近年の作品はそれに答えるだけのレベルに達していない、ように思える。ピーター・バーンスタイン~サム・ヤエルの変則トリオをバックに吹き込まれた作品群や、隠れた名手ピーター・ザックを擁した作品群など、どれも魅力的な音であったが、何処かよそよそしい響きが秘められていた。

  ライアンは巧い。めちゃくちゃ巧い。ロイのような器用さもないし、ニコラスのようなドライブ感もない。しかし、ライアンには端正で繊細な音と清清しく歌う美フレーズがあり、彼独特の音世界を持っている。

   彼はリンカーン・センター・ジャズ・オーケストラ( LCJO )をはじめ、いくつもの米国トップ・ビッグバンドで長年活躍してきた。ソロもアンサンブルも巧いからビッグバンドからの需要は非常に多かった。しかしそのビッグバンドでの長年の活動が彼をこじんまりしたミュージシャンに仕上げてしまったのかもしれない。

   全7曲中オリジナルは1曲のみ。ジェリー・マリガンの《 Line for Lyons 》 やジョージ・シアリングの《 Conception 》などがいかにもウエスト・コースト風の “ Cool ” な雰囲気を醸し出している。そのため、全体にエネルギー度数は低めで、決して “ Hot ” な感触はない。アルト・サックスを操る Sherman Irby シャーマン・アービーを意識して聴くのは初めてだが、なかなかイイ感じでライアンと絡んでいる。シャーマンもLCJO のメンバーだ。流石、LCJO のメンバーにはずれなしだ。LCJOの好き嫌いは別として。

Ryan Kisor  『 Cool and Hot 』 2008 Birds Records
Ryan Kisor  ( tp )
Sherman Irby  ( as )
Peter Zak  ( p )
John Webber  ( b )
Willie Jones III  ( ds )




『 Minor Munity 』  1992 Columbia
もっとも先鋭的て刺激的な作品が皮肉にもデビュー作なのね。