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雨の日にはJAZZを聴きながら

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田中啓文 / 落下する緑

2008年09月21日 12時37分45秒 | JAZZ書籍
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ジャズ入門書や指南書の類は、巷に佃煮にして売れるほど沢山存在ますが、ジャズを題材にした小説となるとぐっと少なくなります。ましてやミステリ小説となると皆無ですね。僕の知る限りでは、ジャズ関連のミステリ小説を書く作家は田中啓文しかいません。

自身もテナー・サックスを吹く現役のジャズ・プレーヤーであり、関西で活動をしている“ ザ・ユナイテッド・ジャズ・オーケストラ ”のバンドマスターでも田中啓文は、93年に本書にも収録されている表題作 『 落下する緑 』 で 「 鮎川哲也の本格推理 」 に入選し作家デビューを果たした作家です。

彼の著書の中で、この永見緋太郎の事件簿シリーズだけがジャズがらみのミステリです。本書  『 落下する緑 』  ( 東京創元社 ) が発売されたのは2005年で、今年になり文庫版が発売になっています。上にアップした表紙は文庫本のものです。実は8月に永見緋太郎シリーズの第二弾 『 辛い飴 永見緋太郎の事件簿 』 ( 東京創元社 )が発売になっています。こちらもただいま熱読中ですが、滅多にお目にかかれないジャズ・ミステリですので、ゆっくり味わいながら読んでいます。

さて、このジャズ連作ミステリ小説 『 落下する緑 』 には7編の短編が収録されています。ほとんどが東京創元社が発行しているミステリ専門誌『 ミステリーズ 』に連載されていた短編です。 ジャズしか頭にない世間知らずのフリー系の若きテナーサックス奏者、永見緋太郎が、身近に起きた事件、謎をその鋭い推理力で次々と解決していくミステリです。隋書に散りばめられたジャズ用語は、ややもすると、ジャズの知識のない読者には抵抗感があるかもしれませんが、逆にジャズ好きにはたまらないスパイスとなり、臨場感、リアリティー感を増幅させてくれます。

傲岸不遜な名ベーシストの所有する高価なベースが何者かに壊されてしまう話や、レコード会社の担当者を鼻で使う横行跋扈なジャズ評論家への復讐ミステリ、などなど、これは絶対モデルとなる人物がいるなぁ~、きっと( ̄∇ ̄; とニンマリしながら読める面白い話ばかりです。 あまり読むのが速くない僕でさえ、面白さのあまり一晩で読み終えてしまったほどです。

それそれの短編の終わりには、ストーリーに関連したCD, LPが3枚づつ紹介されており、ジャズ・ファンには嬉しいオマケとなっています。まずは文庫化されて読みやすくなった本書を手にいれ、気に入ったら新作の単行本『 辛い飴 永見緋太郎の事件簿 』を買われてはいかがでしょうか。

猫ジャケ 素晴らしき “ ネコード ” の世界

2008年08月22日 23時03分52秒 | JAZZ書籍

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今日、仕事帰りに近所の大型書店に寄って、スイングジャーナルの9月号を立ち読みしていたら、目の前にこんな新刊が平積みされてた。

『 猫ジャケ 素晴らしきネコードの世界 』

レコード・コレクターズの増刊号として発売されたようだ。ちょいとめくってみるとけっこう知らない猫ジャケがあって、それなりに目を楽しませてくれる。モンティー・アレキサンダーのMPS盤『 Love Strains 』や、フランク・ザッパが猫を抱いている『 London Symphony Orchestra Vol.II 』など、まったく見たことも聞いたこともない作品が載っていた。遠藤賢司のインタビュー記事もあって懐かしくなり、スイングジャーナルそちのっけで思わず見入ってしまった。しょうもないと言えばしょうもない本だが、猫好きの息子を喜ばせようと買ってきた。でも結局、息子はあまり興味を示さなかった。彼にとっては本物の猫しか興味の対象ではないらしい。

本書はジャズに限らずロック、和フォーク、シャンソンなど、あらゆるジャンルからチョイスしているので、ジャズの作品はあまり登場していない。ジャズに関して言えば、いくらでもほかにありそうだが。

そんなわけで、突発的になんだか猫ジャケ作品を聴きたくなり、棚から引っ張り出して先ほどから聴いている。最近の猫ジャケといえば拙ブログでも紹介したマイク・スターンの最新作『 Who Let The Cat Out ? 』やウルフ・ワケーニウスの『 In The Spirit of Oscar 』 などがすぐに思い浮かぶ。個人的には以下の3枚が猫ジャケ愛聴盤だ。


Tina Brooks  『 Minor Move 』  1958 Blue Note

幻のテナーマン、ティナ・ブルックスは、Blue Note に4枚のリーダー作を残したが、彼の存命中に発売されたのはご存じ『 True Blue 』 ( ST-84041 ) のみ。残りの3枚は発掘盤として後に日の目を見ることになるが、この黒猫の 『 Minor Move 』は、80年代にマイケル・カスクーナの尽力により発掘され、King Records が『 キング世界初登場シリーズ: GXFシリーズ 』 として発売したもの。アルフレッド・ライオンがなぜ 『 True Blue 』 以外の3枚をボツにしたのか、その真意は分からないが、今、4枚を並べて聴いてみると、確かに『 True Blue 』 の出来が一番イイ。ブルックスのオリジナル曲も哀愁味溢れていてイイ感じだし、フレディー・ハバードも乗りに乗っている。『 Minor Move 』 もリー・モーガン、ソニー・クラークと、役者揃いだが、いま一つ散漫とした印象を受ける。本作は King からTOSHIBA EMI に発売元が変わってもLPで再発され、さらに2000年には米Blue Note から ≪ Connoisseur cd series ≫ としてCD再発もされいる。



Shelly Manne & His Men  『 More Swinging Sounds 』 1956 Contemporary


Contemporary には、バーニー・ケッセルの “ うし” や、ハンプトン・ホーズの “ ワニ ” など、動物のイラストを用いた作品がいくつかあるが、本作もその一つ。よく見ると髭もないし、ニクキュウもないし、犬にも見えなくもない。でも、なんだかとっても楽しい音楽が詰まっていそうなことだけは伝わってくる。大学時代、必死にウエスト・コースト・ジャズを収集したが、現在はそのほとんどが倉庫の段ボールの中で眠っている。そんな中、本作は今でも愛聴し続けている数少ないWCJ の一枚だ。特にB面の組曲がイイ。


Gil Evans Steve Lacy  『 Paris Blues 』  1988 Owl

ギル・エバンスが1988年に亡くなる3か月前に吹き込んだ盟友スティーブ・レイシーとのデュオ作品。ギルはアコースティック・ピアノとエレクトリック・ピアノを弾き分けている。オーケストラを率いたときの壮大で幻想的な響きとは対極にあるような実にシンプルで音数の少ないピアノを弾く。スティーブ・レイシーは個人的にはあまり好きなタイプではないが、本作の彼はとっても聴きやすい。過激でアヴァンギャルドな彼の側面は影を潜め、やや内省的な静謐な音世界を繰り広げる。深夜の静まり返った空間によく似合う音だ。

小川隆夫著 『 ザ・ブルーノート、ジャケ裏の真実 』

2008年07月10日 19時17分01秒 | JAZZ書籍
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昨日、仕事帰りに買っておいた小川隆夫氏の『 ザ・ブルーノート、ジャケ裏の真実 』 (講談社)を読む。読むといっても、気になるページをランダムに拾い読みしているだけだが。本書は、ブルーノート1500番台のレコード一枚一枚に書かれていた当時のライナーノーツから、小川氏が興味深いと感じた記述を拾い出し、それに注釈をつけた、いわばライナー・ノーツ解説書だ。小川氏の文章には寺島氏のような文学的な面白みはないが、いつも「ふ~ん、そうなのね~。なるほどね~。」といった小さな発見に溢れていて、違った意味で面白い。 ≪1569番、ポール・チェンバースの『 Bass On Top 』で、彼が弾いていたベースは、たまたまスタジオにあったダグ・ワトキンスのベースだった。≫  ≪ 1580番、ジョニー・グリフィンの『 The Congregation 』は、アンディ・ウォーホールが描いたイラストのジャケットで有名だが、あのグリフィンが着ているアロハ・シャツは1533番のジャケット写真で彼が着ていたシャツだった。≫ などなど、トレビアの泉の宝庫だ。ただ、これらはもしかするとブルー・ノートのファンなら周知の事実なのかもしれないし、国内盤のライナーノーツにすでに書かれていることなのかもしれないが。その証拠に、1594番、ルイ・スミスの『 Smithville 』 の項では、 ≪ ルイ・スミスが2枚のリーダー作しか吹き込まず、シーンから姿を消したのは、本業の音楽教師に復帰するため地元アトランタに帰ってしまったためだ。≫ と書かれていて、これまた「へー、そーだったのね~。」と感心しながら、先ほど家にある本盤の岡崎正通氏のライナーノーツを読み返したら、同じことが書かれていた。単に、僕が勉強不足であっただけなのだ。 それにしても小川氏の執筆のペースは尋常ではない。本書以外にも『 ジャズマンが語る ジャズ・スタンダード120 』と『 JAZZ 黄金コンビはこれだ! 』を書いたばかりなのに、今月中には『 証言で綴るジャズの24の真実 』 も発売になるらしい。 整形外科医として臨床に従事し、原稿も書いて翻訳もして、さらには「ONGAKUゼミナール」をはじめ、多くのイベントを主催し、いったい一日をどのような時間配分で過ごしておられるのだろうか。1人で5人分くらいの仕事をこなしているように見える。臨床の仕事以外にブログの更新(それも時々)をするのがやっとの僕には想像もでいないことだ。