雨の日にはJAZZを聴きながら

FC2 に引越しました。http://jazzlab.blog67.fc2.com/

Eldar Djangirov 『 Daily Living 』

2006年05月28日 18時31分38秒 | JAZZ
エルダー・ジャンギロフ(Eldar Djangirov)の新譜『 Daily Living 』が発売されました。今回は2005年10月のBlue Noteでのライブ盤です。これ,正直なところ,僕には辛いジャズです。兎に角,うるさい。音の詰め込みすぎ。大人になったエルダーを期待していたけど,やはりまだ若い。有り余るパワーで全開で弾きまくりです。こんな煩いジャズは体調がすぐれない時には聴けたもんじゃありません。演奏はもちろん巧いんですよ。というより巧過ぎ。目にも留まらぬ速さで鍵盤を縦横無尽に叩きまくり,超絶技巧の数々を披露してくれます。でも歌がない。スイングするわけでもない。兎に角,多量のコード音を乱射,拡散させ聴き手を圧倒するんです。その後にはなにも残らない。<技術>と<感動>の間が,これ程までに乖離しているミュージシャンも少ないのではないでしょうか。巧ければ感動させられるわけではないということを,この人は非常に分かりやすく説明しているかのようです。

ライナー・ノーツ(だれが書いたか不明)で「だがその根底には,あくまで表現を支えるための技巧なのだということの理解が確固として存在しており,饒舌さが上品に響く。」とありますが,僕には「技術を見せびらかすための技術」であり,どう贔屓目に見ても上品とは思えない感性であります。ディスクのキャプションには参加ミュージシャンとして,クリス・ボッティとロイ・ハーグローヴの名前も載っていますが,彼らが参加しているのは1曲づつのみ。しかもクリス・ボッティは<You Don’t Know What Love Is>だし,ロイ・ハーグローヴは<Straight No Chaser>ですよ。軽音楽部の練習曲じゃないんだから,もうちょっとまじめに選曲してくださいね。前作『Eldar 』でもマイケル・ブレッカーが1曲参加してましたが,あれはちゃんとオリジナルの難しそうな楽曲をブレッカーが吹いていて,ちゃんとリハーサルしたんだろういことが想像できるので許せますけどね(あの曲は良かった)。ということで,前作には程遠い出来の悪さでがっくり。しかも録音も今ひとつで,★2つかな。

前作『Eldar 』については,当ブログのこちらで取り上げてますので,よろしければどうぞ。

Helge Lien 『 To The Little Radio 』

2006年05月28日 12時03分23秒 | JAZZ
待ちに待ったヘルゲ・リエン(Helge Lien)の最新作『 To The Little Radio 』がDIWから発売になったので,先週金曜日にお茶の水DUで早速購入してきました。「お茶の水ジャズ館」でもかなり以前から広告を張り出しプロモーションをかけていたアルバムです。2月頃にはDUの山本隆氏が絶賛していたこともあり,僕も期待を膨らませて発売の5月26日を待ってました。

2000年のcuring legsからデビュー作『What Are You Doing The Rest Of Your Life 』以来,通算5作目にあたる本作は,オリジナルを含まない全曲スタンダードあるいは他の人の楽曲を取り上げています。今まではどちらかというとアヴァンギャルドで,奇天烈な音列が並ぶ難解なイメージのオリジナル曲が多かったヘルゲですが,今回は何を思ったのか,完全にイメージチェンジしており,出来がイイのは今まで同様ながら,リスナーが何を期待しているかを汲み取り,リスナーに歩み寄る姿勢が見られるようです。ようは今回は非常に分かりやすいのです。平易な表現も散りばめ,それでいて非常に高水準でのインタープレイを維持し,より幅広いリスナーに聴いてもらおうとする思惑が見え隠れしています。決してそれは悪いことではないと僕は思うのですが。今までヘルゲに否定的であった寺島靖国氏も今回の新作には賛同してくれるのではないでしょうか。

スタンダード・ナンバーとはいっても,やや馴染みの薄い楽曲を多く取り上げています。たとえはジェローム・カーンでも<Smoke Gets In Your Eyes>や<All The Things You Are>ではなく,<Look For The Silver Linning>を取り上げたり,ビリー・ストレイホーンの<Chelsea bridge>(これは有名かな?)や,ショーターの<Penelope>などなど。<Chelsea bridge>って,管での演奏は結構あるけど,ピアノトリオでの演奏って珍しいんじゃないかな。記憶にありません。この曲,難しそうな楽曲ですよね。フレディー・ハバードの<Little Sunflower>も演奏してますが,原曲は太陽に向かって大輪を広げるまっ黄色のひまわりを思い浮かべる名曲ですが,ヘルゲのそれはシルバー・メタリックに輝く不気味意なひまわりを空想してしまいました。硬質で鋭角的な<Little Sunflower>のアレンジにはビックリです。余談ですが,僕が初めて買ったジャズのLPがCTIのミルトジャクソンのアルバム『 Sunflower 』なんです。1981年,夏。今の「お茶の水ジャズ館」1階が当時は「中古ジャズLPフロア」で,そこでジャケット買いしたのが『 Sunflower 』でした。そう言えば『 Sunflower 』のB-2は<What Are You Doing The Rest Of Your Life>でした。ヘルゲと『 Sunflower 』はなにやら因縁めいていますね。当時,僕は浪人生で<What Are You Doing The Rest Of Your Life>を聴きながら,これからの人生,どうなっちゃうんだろ~,と鬱になっていたのを覚えています。

話が逸れてしまいましたが,とにかくヘルゲの新作は絶対,<買い>です。今までのヘルゲの作品は万人に勧められる作品とは言い難い部分もありましたが,この新作は大丈夫。誰が聴いても感動できること間違いなし。Stressfulな現代社会の中で,日々の多忙な仕事に追われ,真の自分を見失いかけた時,深夜に彼の奏でる音に耳を傾けてみてください。じわじわとエネルギーと勇気が沸いてくるはずです。
【愛聴度★★★★★】

以前に当ブログで前作『 Live 』について書いています。よろしければこちらも。

Jimmy Greene 『 True Life Stories 』

2006年05月26日 20時54分34秒 | JAZZ

今年初めに新譜が出たばかりなのに,早くも店頭にはCriss Cross2006年春の新譜が並んでいます。今回はワイクリフ・ゴードンやスティーブ・デイヴィスら,計5枚ですが,とりあえずその中から,ジミー・グリーンJimmy Greene)とジョー・マグナレリ(Joe Magnarelli)の2枚だけ買ってきました。ジョー・マグナレリの方はまだ聴いていないので,今日はこのところ車の中でよくかけているジミー・グリーンの『 True Life Stories 』を取り上げてみたいと思います。ジミー・グリーンはリーダー・アルバムも少なく,サイドとしてもそれほど露出するほうではないので,今ひとつメジャーになれないでいるミュージシャンですね。国内盤がないのも人気薄の要因でしょうか。でも「あれ,このサックス,イイな~,誰だろ?」とクレジットを見るとジミーくんだったなんて経験,あるんじゃないでしょうか。僕が始めて意識して彼を聴いたのは,以前に当ブログでも紹介したラルフ・ピーターソンの『 The Art of War です。このアルバムは兎に角よく聴いたアルバムで,ジェレミー・ペルトの名前もこれで知った私的愛聴盤です。世代的にはエリック・アレクサンダー,ジョシュア・レッドマン,マーク・ターナーらと同じなんでしょうけど,彼らの中にあってはどうしても個性が見えてこないタイプかもしれません。十分ネオ・モダン的ではありますが,ちょっと地味目ですからね。でも<上手い>というより<旨い>吹き手と言ったら良いのでしょうか。とにかく渋いフレーズ,ザッラとした少々濁った音色が,ある程度長い期間ジャズを聴いてきた耳には心地よいのは確かです。エリック:上手い,グラント:ダサい,ジミー:旨い。かな。本作は『 The Art of War 』同様,ジェレミー・ペルトとの2管クインテットです。この2人のハーモニーはジェレミー・ペルトの『 Profile 』でも聴けますね。バックは御馴染みのザヴィア・デイヴィス(p),ルーベン・ロジャース(b),エリック・ハーランド(ds)ですから,悪いはずがありません。ザヴィア・デイヴィスって,本人のリーダーアルバムなんかじゃ,あまりパッとしないのに,バックに回るとツボにはまった実にいいバッキングをします。エリック・ハーランドのドタバタ系のうるさい叩き方も好みであります。これは完全に好みの問題ですが,僕はこんなハード・バップが今,一番カッコイイと感じてしまうんですね。<どれも3つ星の平均的アルバム>のCriss Cross盤にあって,久しぶりの5つ星アルバムです。

では,ちょっと棚からジミーくんの印象に残っているアルバムを一掴みしてきましょう。

          
Jimmy Greene 『 Brand New World 』2000 BMG
ジミーくんの単独リーダー・アルバムはたった4枚。3枚がCriss Crossからで,残りの1枚がBMG(RCA Victor)からの本作です。一時期BMGと契約していたんですね。その頃にはトム・ハレルと組んで数枚アルバムを出しています。この『 Brand New World 』ではつい先日「不良系ラッパ」で紹介したダーレン・バレット(tp)とスティーブ・デイヴィス(tb),それにアーロン・ゴールドバーグ(p)が参加しています。アーロンが参加しているせいか,Criss Cross盤よりも洗練された印象を受けます。アーロンのお得意のローズも実にお洒落。これも愛聴盤です。

          
Jimmy Greene 『 Forever 』2003 Criss Cross
Criss Crossの2作目,今回はワンホーンのカルテット編成です。ピアノはザヴィア・デイヴィスですが,ドラムがジェフ・ワッツに変わっているのがミソ。ジミーはここでは歓喜の叫びをあげたかと思うと,一転,啜り泣きを見せる。緊張と弛緩。自由自在にサックスを扱い,実に色彩豊かな作品に仕上げています。

          
Jim Rotondi 『 iron man 』2006 Criss Cross
今年の冬に出たジム・ロトンディのCriss Cross盤にも参加してました。陳腐な表現ばかりになってしまいますが,ホント,味わい深いソロを奏でます,この人は。でも本作の主役はやはりロトンディなので,ジミーくんはちょっと地味。ジミーだけに。
関係ないけど,ジム・ロトンディのアルバム・ジャケはどれもみんなカッコイイな~。つい買っちゃいます。

          
Tom Harrell 『 Live at the Village Vanguard 』2002 BMG
上記のように,一時期BMGと契約していた頃,トム・ハレルと活動していました。その頃のライブ盤です。正直なところ,トム・ハレルはあまり好みのラッパではないのですが,ジミー狙いで買ったアルバムです。出来はまあまあ。トムはいざ知らず,ジミーのソロはスピード感抜群で,音圧もあり,フレーズはいつもの如く多彩で飽きさせないし,トムがいなければもっと良かったんだけど。

          
Valerio Della Fonte 『 Per un Istante 』2005 Splasc(H)
最後にちょっと変った所で1枚紹介しておきます。リーダーのヴァレリオ・デラ・フォンテはイタリアのベーシスト。でも僕は知りません。当然ジミー狙いで買いです。イタリアの凄腕達にうまく同化し,哀愁感漂う素晴らしいイタリアン・ハード・バップに仕上がっています。パオロ・ビッロ(p),マッシモ・マンジ(ds)が参加しています。


Tierney Sutton 『 Unsung Heroes 』

2006年05月21日 20時24分07秒 | JAZZ

今日は仕事もなく久しぶりに日曜日らしい一日を過ごすことができました。午前中は荒れ果てた自室を掃除し,午後に歩けるようになった息子を連れて家族で近くの公園を散歩し,帰りにショッピングセンターで買い物を済ませ,ステーキ店でビールとステーキを食べ,最後に本屋に寄ってJAZZ LIFE 6月号を買って帰ってきました。

今,手に入れたばかりのJAZZ LIFE 6月号をパラパラめくっていたら「ジャズ・スタンダード・ウルトラ・ガイド」という新連載が始まっていて,第1回は<Donna Lee >のようです。恥ずかしながらベースを弾く僕としては,<Donna Lee >と言えばチャーリー・パーカーではなくジャコを真っ先に連想してしまうのですが,大学の頃は当然ジャコのスコアなどなく,カセットレコーダーで必死に音取りをしてコピーしたものです。フレットレスでは当然弾けず,フレッテッドでもテンポダウンしないと弾き切れなかった苦い思い出がある曲です。まあ,ベーシストにとっては実力試験のような楽曲で,涼しい顔して<Donna Lee >が弾ければ一目置かれるベーシストということになるのでしょう。僕はこの<Donna Lee >って,パーカーの作曲(とは言ってもディキシー・ジャズの<Indiana>のコード進行をパクった曲)だと漠然と思っていましたが,実はマイルス・ディヴィスが「俺が書いてパーカーに渡したんだ」と語っていたんだそうです。本当かな?

そんなわけで今日は<Donna Lee >を演奏している愛聴盤を紹介したいと思います。<Donna Lee >の元ネタの<Indiana>とくっ付けて,メドレーで歌っている面白いヴォーカル物なんですが,ティアニー・サットン(Tierney Sutton)の『 Unsung Heroes 』というテラークからのアルバムです。僕は彼女を知ったのは,以前にマイ・ブログでも紹介したピアニスト,クリスチャン・ジェイコブの『 Styne & Mine 』にゲストで彼女が参加していたのが始めてでした。Jule Styneの<Guess I’ll Hang My Tears Out To Dry>と<I Fall In Love Too Easily>の2曲だけ参加していたのですが,これがとっても素晴らしく,音程,リズム感はもちろん抜群で,しかも歌声は透明感があるけど厚みもあり,一聴して素晴らし才能のあるヴォーカルだと感じました。でも結局は透明感のある軽めの声質が単に好みだっただけかもしれませんが。それ以来,少しづつ買い集めています。

<Indiana><Donna Lee>が入ったこの『 Unsung Heroes 』は2000年の彼女の2nd Albumで,TELARC移籍後の最初のレコーディングです。バックはクリスチャン・ジェイコブのトリオに,曲によって管やギターが入るといったシンプルな構成です。クリスチャン・ジェイコブは彼女の6枚のアルバム全てでバックを務めていますが,単なる歌伴に留まらず,間奏のソロでは完全にジェイコブ・トリオの演奏になっていて,「Christian Jacob trio with Tierney Sutton 」として鑑賞することも可能なアーティスティックなボーカル物です。そもそも彼女の歌は楽器的な要素が強く,サラ・ヴォーンやエラのようなスキャットを織り交ぜ,最近よく見られる上辺だけの耳ざわりの良い女性ヴォーカルとは一線を帰します。ライナーノーツによると,サラやエラを最も尊敬していて,ボビー・マクファーリンやアル・ジャロウも敬愛しているそうです。そして影響を受けたミュージシャンとして,ヴォーカリストではなく,マイルスやコルトレーンの名を挙げています。“ instrumental-ish tunes ”を今まで数多く歌ってきたと言っているように,本作でも<Bernie's Tune>や<joy Spring>,<Speak No Evil>など,「え,これって歌詞があったの?」と驚くような楽曲を歌っています。歌も上手いし,バックも聴き応え十分だし,非常に出来の良い飽きないアルバムです。
【愛聴度 ★★★】

          
『 Something Cool 』2002 TELARC
第3作目。ジューン・クリスティーの<something Cool>は個人的には何だか熱いお茶でも飲んでいるような暑苦しい声質で,どうもみんなが言うほど涼しげでないように思いますが,このティアニーの歌う<something Cool>は,ひんやり涼しく,透明感があり,柔らかく,ホントにクールな感じです。え~アルバムですわ。
【愛聴度 ★★★★】

          
『 Dancing in The Dark 』2004 TELARC
彼女の第4作目のアルバム。彼女の一連のアルバムが全て高水準なのは,クリスチャン・ジェイコブ(p),トレイ・ハーニー(b)
,レイ・ブリンカー(ds)ら3人の意表をついた洗練されたアレンジ力に由る所が大きいと思う。本作はシナトラのレパートリーを取り上げているが,どれも独特のアレンジが施され,新鮮な表情を持った楽曲に生まれ変わっています。初のオーケストラとの競演盤でもあります。実に美しい曲の数々。酒が欲しくなりますね~。
【愛聴度 ★★★★★】

          
『 I'm With The Band 』2005 TELARC
彼女の最新盤。「バードランド」でのライブ盤なんですが,出来はなかなかイイのですが,静寂の中からふわーと浮き上がる繊細な彼女の声質はやっぱりスタジオ録音の方が合っているかも。だから僕は上記の『 Dancing in The Dark 』や『 Something Cool 』が今のところ愛聴盤です。
【愛聴度 ★★★】

これら以外に1999年の1st Album『 Introducing Tierney Sutton 』と2001年の『 Blue in Green 』もあります。


Russell Gunn 『Young Gunn』

2006年05月16日 22時23分39秒 | JAZZ

今日も仕事帰りにDUに寄ってcriss crossの新譜などを購入し,車の中で聴きながら帰ってきたのですが,ジミー・グリーン(Jimmy Greene)の『true life stories』(1279)がめちゃくちゃカッコイイです。ジェレミー・ペルトとの2管で,バックもザヴィア・デイヴィス(p),リューベン・ロジャーズ(b),エリック・ハーランド(ds)ですからよだれもんです。もしかすると,今,エリアレよりスキかもしれない。少なくともグラント・スチュアートよりはイイ。骨太だけどクリアーで,フレーズも非常に新しいし。たまりません。

で,今日は不良系トランペッターの4人目としてラッセル・ガン(Russell Gunn)を持ってきました。世代的にはマーロン・ジョーダン,ロイ・ハーグロープ,ニコラス・ペイトンらと同じになるんでしょうけど,今ひとつメジャーになりきれない,それこそ「なんでロイやニコラスばかり売れるんだ~,ぐれてやるゥ~」と本物の不良になってしまいそうなラッセルくんですが,本当はとっても上手くて,ロイやニコラスよりもずーと前にエスノミュージコロジー(Ethnomusicology)というHip-Hop系電気ユニットを立ち上げているし,マルサリスにも認められ,LCJOにも参加していたし…..。僕としてはロイやニコラスと同列に扱って欲しいトランペッターなんですけどね。でも,じゃあどのアルバムを紹介しようかと考えると,これが決定的名盤がないわけです。エスノミュージコロジーはこの際除いて考えるとすれば,やはりデビュー盤の『Young Gunn』の出来が一番イイのかなと思いまして,今日はまずそのジャケットをアップしました。このデビュー盤のジャケットのセンスの悪さは何でしょうかね。決して手が出ないジャケットではありますが,内容はいたってまじめ。デビュー盤とあって気合も十分で,バ,ビ,ブ,ベ,ボーっと,濁音系で熱く語ったかと思うと,<fly me to the moon><you don’t know what love is>などのバラードでは外見からは想像できない繊細な表現力で囁き,かと思うと1曲だけHip-Hopを挟み込んだりと,節操ないけど愉しいアルバムです。

          
1997年の第二作,『Gunn Fu』。カンフーに引っかけたタイトルでしょうか。そうそう,彼の右手の甲には感じで「道」と刺青があるんですよね。この『Gunn Fu』も『Young Gunn』と双璧をなす出来です。特にグレゴリー・ターディーやアリ・ジャクソンが参加していて,引き締まった演奏です。当時はあまり意識してなかったけど,今あらためて聴いてみると,アリ・ジャクソンのドラミングは凄まじいですわ。ゾク。

          
2002年の作品。『Blue on the D.L.』。クリフォード・ブラウンの<Minor Mood>,チャーリー・パーカーの<Cheryl>,ウイントン・ケリーの<Kelly Blue>などなど,プロなら譜面なし,リハなしで演奏できそうな平易な曲ばかり取り上げたアルバム。21世紀にもなって,しかも一流どころが集まって創るほどの内容ではないけれど,なんとなく落ち着き,深夜に聴きたくなるアルバムです。隠れ愛聴盤です。

          
2000年のエスノミュージコロジー名義,第一弾。なんの予備知識なく初めに聴いた時にはビックリ仰天しました。今なら結構この手の音に免疫が出来たので聴けますが,それでも一枚通して聴くと疲れます。特にベースの重低音が終始鳴り響いていて,体にも悪そう。この低音って,どうやって出しているんでしょうか。音程が曖昧になるほど低~く,沈む。キモ。

          
2004年のエスノミュージコロジー名義,第四弾。今のところ最新作。エスノミュージコロジーを第一作から聴いてきて,なんとなく「この音楽はライブの方が面白いんだろうな~」と思っていたら第四作目がライブ盤でした。予想は的中。これは凄くイイ。なんと言ってもM-2<Blue in Green>をドラムン・ベース風にアレンジしていて,カッコイイです。ドラムのロッキー・ブライアントのソロも凄まじく,身震いしたかと思ったその直後のラッセル・ガンの電気ペットのソロも凄いし。電気トランペットと一口に言ってもいろいろあるけど,ここでの音は丁度,パット・メセニーのギター・シンセに似た音色です。エスノミュージコロジーで一枚買うならこれかな。ロイ・ハーグロープの「RH Factor」よりは無骨な感じだけど,ニコラス・ペイトンの『sonic trance』(warner 2003)なんかよりははるかに面白いですよ。(ニコラスの『sonic trance』はほんとつまらなかった。なんであんなの作っちゃったんだろう。)


          


Avishai Cohen 『 Omer Avital Marlon Browden 』

2006年05月14日 18時37分53秒 | JAZZ
不良系トランペッターの3人目はアヴィシャイ・コーエンに登場してもらいましょう。とは言っても以前に当ブログで彼の初リーダーアルバム,『The Trumpet Player』は紹介済みなので,今日はアヴィシャイのリーダーではないのですが,最近FSWJからリリースされたオマー・アヴィタル(b)とマーロン・ブロウデン(ds)の双頭リーダーによる『The Omer Avital Marlon Browden Project 』にアヴィシャイが参加しているので,それを取り上げてみたいと思います。

『The Trumpet Player』ではベースとドラムだけのトリオ編成で,縦横無尽にかなり自由度の高いソロを聴かせてくれましたが,この新作では全編,オマーとマーロンの作り出すファンク・ジャズ・ビートのバック・トラックに乗せて,時折電化ラッパも織り交ぜ,想像力豊かなソロを奏でます。M-2<Third World Love Story>での歪み系エフェクターを左手で弄りながら,微妙にエフェクトを増減しながら昂揚していくドラマチックなソロにはただただ感動するのみです。かなり技術的にも高度で,豊富な語彙を持ちあわせた隠れた逸材だと感じます。

本作はFresh SoundのWorld Jazzからのリリースなのですが,全くWorld Jazzっぽくないので,安心して買えます。一方,アヴィシャイはオマーらとThird World Loveという別のユニットも結成していますが,こちらはアフリカ・中近東中心のワールド・ミュージック志向性の強いユニットです。

同姓同名のベーシストが既に有名になってしまっているのでちょっと不運な人ですが,これからもウォッチしていきたいトランペッターです。

Darren Barrett 『 First One Up 』

2006年05月14日 16時52分34秒 | JAZZ
昨日,一週間ぶりに帰宅したらなんと1歳になる長男,チサトが2足歩行しているではありませんか。僕にとっての一週間はあっという間ですが,子供にとっては大きな進歩の一週間なんですね。歩けるようになったことだし,今日は八景島シーパラダイスにでも行こうかと妻と話をしていたら,昨夜からチサトが39度もの熱を出しダウン。今日は朝から休日診療所に行って,その後は家でチサトとおとなしくテレビを見ていました。

さて,今日は不良系トランペッターの2人目として,ダーレン・バレット(Darren Barrett)を取り上げます。とは言っても僕はこの1999年のデビュー作『 First One Up 』しか聴いたことないんですけどね。でもこの1枚は絶対のお薦め盤です。彼はあのドナルド・バードの秘蔵っ子で,本作でもバードがプロデューサーとしてクレジットされています。ブックレットにも年老いたバードがメンバーと一緒に写っています。

ダーレンは1997年のモンク・コンペティションで優勝したほどのテクニシャンですが,とにかく勢いよくヴワーとオープンで吹き鳴らす気持ちのいいラッパ吹きです。フリューゲルホーンなんか柔なラッパなど初めから持っていません。ミュートも持ってません。ひたすらオープンでドヴァーっと迫ってきます。リー・モーガンやドナルド・バード,フレディー・ハバードらの魂を現代に受け継ぐネオバップ系の最右翼だと思っていました。当時は。でも,その後はパッとせず,2001年にやはりJ curveからドナルド・バードのプロデュースで第2作『Deelings』をリリースしますがあまり話題にならず,2004年のnagel heyerからの第3作『Attack Of Wren』ではヒップホップ~ポップ路線に針路変更してしまい,完全に真摯なジャズ・ファンからは黙殺される始末です。

1999年にはジャッキー・マクリーンや,エルビン・ジョーンズの「Jazz Machine」で来日しているようですが,その後の彼の来日はなさそうですし。本作はケニー・ギャレット,あるいはジミー・グリーンらとの2管フロントで,ピアノはアーロン・ゴールドバーグです。ケニーギャレットもなんだか凄く気持ち良さそうに豪快なソロを披露してくれてます。アーロンもOAMトリオやジョシュアのバックでの演奏より生き生きしていてスリリングです。ドラムはジョン・ラムキンという人で,僕は知らないのですが,ドタバタと手数の多い煽り系のドラマーで,ラルフ・ピーターソンを彷彿させるなかなかのテクニシャンです。

こんな素晴らしいメンバーに恵まれたこともあり,デビュー作にして比類なき完成度を持ったネオ・ハード・バップの傑作が誕生したわけです。とにかくかっこイイですよ。

Darren Barrett 『 First One Up 』1999 J Curve
Darren Barrett (tp)
Kenny Garrett (as)
Jimmy Greene (ts)
Aaron Goldberg (p)
Reuben Rogers (b)
John Lamkin (ds)

Marcus Printup 『 The New Boogaloo 』

2006年05月07日 21時30分00秒 | JAZZ

昨夜は病院の宿舎泊まりで,今日の夕方やっと仕事から解放されたので,その足で例のごとく御茶ノ水のDUに寄って,澤野のロバート・マンゲンベルグの『 Linnea 』やパトリック・ブーマンのpd7の第3弾,『 Deep City Blues 』などなど,全部で25枚程購入して帰ってきました。数日前にはステファノ・デ・バティスタが,今はブランフォード・マルサリスがBlue Noteに来ているというのに,GW中も仕事や待機番が入っていて,観に行けないのです。せめて好きなだけCDでも買って,ストレス発散しなければやってられません。

全然話は変わりますが,さっき,トイレに入って
Jazz Life4月号をパラパラめくっていたらマーカス・プリンタップのインタビュー記事が載っていたので読んでいました。1月の横浜でのLincoln Center Jazz Orchestra ( LCJO )で来日していましたからね。その時のインタビューですね。「実は,マルサリスのジャズはあまり好きではなかったんだ。当時の僕にはテクニカル過ぎてピンとこなかった。」などと,結構きわどい発言などもあって面白かったです。僕はプリンタップがお気に入りで,多分,criss crossのワイクリフ・ゴードンのアルバムで聴いたのが最初だったと思いますが,巧いんだけど凄く豪快で荒々しく,僕の好きな不良系のラッパ吹きです。で,突然思いついたのですが,今日から5回に渡って不良系のラッパ吹き特集を勝手に組んで記事を書いていこうかと思っております。

と,前置きが長くなりましたが,今日はそのプリンタップの
2002年,ドイツのnagel heyerに吹き込んだ彼のリーダー作『 The New Boogaloo 』を取り上げてみたいと思います。彼は1991年にマーカス・ロバーツに見出され,彼を通じてウイントン・マルサリスに出会ったのが運のつき。1993年にはLCJOに参加し,以来良くも悪くもマルサリス一派として今日まで活躍してきました。1994年からBlue Note3枚のリーダー作を出してきましたが,どれも不発だったようです。僕も持っていませんが,おそらく行儀が良すぎて上手いけどつまらなかったのでしょう。そんな状況を打破しようと思ったかは知りませんが,髪形も短髪からドレッドヘアーに変えて,心機一転 nagel heyerからリリースされた本作は,全員マルサリス一派のメンバーを集めているとはいえ,かなり豪快に吹ききった,爽快感のある作品です。

ロック・ジャズ・ビートに乗せて,マーカス,ウォルター・ブランディング(
ts),ワイクリフ・ゴードン(tb)の3管アンサンブルで豪快にテーマが提示されるm-1<the bullet train>。トニー・ウイリアムスの<シスターシェリル>にそっくりなドラムとベースが印象的なm-2<Sardinian princess>でも,マーカスは雄大な大陸系ペット・ソロを聴かせてくれます。ワイクリフのソロもたまりません。彼も非常に上手い吹き手です。

プリンタップは,近日発売予定の中村健吾のニュー・アルバムにもまた参加しているようですし,
6月にはそのメンバーで国内ツアーも予定されているようです。「不良系ラッパ」特集にしては,プリンタップの不良度は今一だったかもしれませんが,次回は,アヴィシャイ・コーエンかラッセル・ガンあたりで,一気に不良度アップさせますよ。


Burt Bacharach 『 At This Time 』

2006年05月05日 21時25分31秒 | Around JAZZ

今日は1歳になったばかりの息子と一日中遊んでいました。まだ歩けないので屋外での遊びは無理ですから,もっぱらリビングでおもちゃ遊びですけどね。子供って変なもので,高いお金を出して買ってきたオモチャでは遊ばず,100円ショップで買ってきたバケツや,ペットボトルの空などの方が好きみたいです。今夢中なテーマは「移動」であるようで,無印良品で買ってきた紙ボックスを押して歩いたり,中に入って引っぱってもらうのがお気に入りのようです。

話はちょっと変わりますが,この連休中に妻が毎日子供と一緒に観ているという
NHKの「おかあさんといっしょ」を僕も何度か観ていたのですが,その番組の中で「ぼよよん行進曲」という中西圭三さんが作詞作曲した歌が流れるのですね。この曲,初めに聴いた時はサビの部分が覚えやすくてイイ曲だなぁと思っただけだったのですが,2回目に聴いた時にジーンと来てしまい,目頭が熱くなっちゃったんでよ。40歳過ぎた大人が子供の歌で泣いちゃうのもお恥ずかしい話なんですけど,これがホント泣けるんですわ。子供の歌だからといって馬鹿にしちゃいけません。

「どんな大変な事が起きたって,君の足の下にはとっても丈夫なバネが付いてるんだぜ~」という曲なんですが,企業戦士たるサラリーマンへの応援歌のようでもあり,なんだかとっても元気がでる曲です。ついでにゆうぞうお兄さんとしょうこお姉さんの振り付けもよく出来ていて,特にサビの「ぼよよ~んと空へ,飛び上がってみよう」のところの振り付けがとっても可愛いくて,しょうこお姉さんの元気いっぱいの踊りを観ていると「よーし,明日からも頑張るぞー」ってな感じです。このしょうこお姉さんこと,拝田祥子さんは現在27歳で元タカラジェンヌだったのですね。どおりで激しい踊りでも息切れせず歌えるわけだ。

あなどるなかれNHK。さすが中西圭三。可愛いぞ祥子お姉さん(ちょっと化粧濃いけど)。

ちなみにこの曲,
4月の歌ですから,もしかすると来週から観られなくなるのかもしれません。


          

さて,もう息子も寝てしまったのでゆっくり音楽でも聴いて寝ましょうか。しっとりしたところでバート・バカラックの久々の新譜,『 At This Time 』なんぞを取り出して聴いております。今回は一曲目からループ物でびっくりしますが,やっぱりバカラック。随所にバカラック・メロディーを散りばめ,極上のAOR?作品に仕上げています。バックミュージシャンもAOR世代には涙物のリズム隊の定番ヴィニー・カリウタ&ニール・スチューベンハウス,それにクリス・ボッティーも美しいミュート・プレイを聴かせてくれます。お決まりの親友エルビス・コステロも参加。個人的には昔のバカラックの方が好きですが,なにしろ80才近いバカラックのことですから,これが最後のアルバムだと思いますので,バカラック・ファンは買わずにいられません。


Benjamin Herman 『 Get In 』

2006年05月03日 22時01分25秒 | JAZZ

昨日お話したハイン・ヴァン・デ・ゲイン(Hein Von de Geyn)がオーナーを務めるオランダのレーベル,Challenge Records は,1994年創立以来,着実に業績を伸ばし,この十数年の間に次々と傍系レーベルを立ち上げて拡大路線を打ち立てています。Challenge Records のHPを覗いてみますと,欧州のエスタブリッシュメントを主に扱うChallenge Jazz 以外に,クラシック部門のChallenge Classics 。オランダ国内の無名なアンダーレイテッドを扱うA-Records 。それからアヴァンギャルド・フリー・ジャズをカタログにもつBUZZ-Records などを立ち上げ,一方でDaybreakなどを傘下におさめるなど,その勢いはとどまりません。ドイツのDouble Moon Records の名前もありますが,これはChallenge Groupに入っているのか,あるいは単にChallenge がディストリビュータだけなのか,ちょっとはっきりしません。その他にも沢山のsub labelがあるようですのでHPを覗いてみてください。と言うことで,今日はそんな流れから,Challengeのsub labelの一つ,A-Recordsのアルバムを少し紹介したいと思います。

A-Records と言えば,例の「幻のCD廃盤・レア盤 掘り起こしコレクション」でも紹介されていたマニュエル・ロシュマンの『 Tropic City 』が有名ですが,他にも最近は杉田宏樹氏が監修を務めるP.J.Lの「EuroJazz Piano Collection 」でも再発されて国内でも徐々に知名度を上げているイヴァン・パドゥア(Ivan Paduart )も数枚出しています。個人的に凄く好きで愛聴しているディスクで,ベヴァン・マンソン(Bevan Manson)の『 Mystic Mainstream 』(1999 A-Records)というのもありますが,今日はもうちょとマイナーなところで,ベンジャミン・ハーマンの『 Get In 』を取り上げます。メンバーは,ラリー・ゴールディングス(org),ジェシ・ヴァン・ルーラー(g),アイドリース・ムハマッド(dr)です。ちょうどBlue Note の4300番台,ルー・ドナのグルーブ・ファンキー路線をそのまま再現したような音で,その手の好きな人にはたまりません。なにしろムハマッドをそのまま連れてきてしまっているのですがらベンジャミンの思い入れは凄いです。そういう耳で聴くと,ラリー・ゴールディングスはロニー・スミスかチャールス・アーランド,ジェシ・ヴァン・ルーラーはまるでグラント・グリーンかメルヴィン・スパークスのようにムハマドに呼応し,ご機嫌なファンカーに変身したかのようです。この手の音楽は今では,ハウス,ヒップホップとか呼ばれてるんでしょうか。僕はよくわかりませんが,どう聴いても1970年ごろの音に聴こえますけどね。ムハマッドなど,DJ達に絶大な人気を誇っているんでしょう。ミュージシャンも何処で受けるか分かりませんね。

ジェシ・ヴァン・ルーラーもこんなところで小銭を稼いでいたのね,と感心していたら,もっと凄いアムステルダンの本物のHip-Hop Unit, ピート・フィーリー&パークイジットにもベンジャミンと一緒に参加していることが分かりました。まじめな顔して結構節操無いのかもしれません。以前に「ルーラーのフュージョン・アルバムを聴いてみたい。」などと書いたことがありましたが,そのうち本当に実現するかもしれませんね。

てなわけで,本当はイヴァン・パドゥアのアルバムについても触れたかったのですが,明日早いのでこの当たりでおしまいです。ちなみにイヴァン・パドゥアのA-Recordsの中では『 Clair Obscur 』が愛聴盤です。そのうちまとめてDigします。

          
Ivan Paduart 『 Clair Obscur 』1997 A-Records
『 Trio Live 』も良かった。『 A Night in Tokyo 』も素晴らしかった。『 Still 』でのマーギッツァのサポートも美しかった。でも『 Clair Obscur 』M-8<and now there's you>が築き上げる静謐な世界観には素直に感動した。


Hein Van de Geyn 『 Why Really 』

2006年05月02日 22時45分27秒 | JAZZ

昨年12月にカレル・ボエリーの『 Blue Prelude を取り上げた際にも書きましたが,オランダのベーシスト,ハイン・ヴァン・デ・ゲインが好きで,派手さはないものの,ピアノに絡んでいく美しいメロディーを持ったラインが魅力的で,音色もアンプで増幅しすぎない,程よく木の香りを残したアンプラグな質感が良くて,好んで聴いています。この『 Why Really 』は,1994年にハインがジョン・アーバンクロンビー,ジョー・ラバーバラと結成したユニット,BASE LINE1st アルバムで,その後,1995年に『 Standards 』,1996年に『 Returns 』,そして2000年にメンバー・チェンジして『 Déjà vu 』の,計4枚のアルバムを制作しています。僕が所有しているのは最初の3枚ですが,その中でもこの『 Why Really 』は全曲ハインのオリジナルで彼の美旋律がたっぷり堪能できる秀作です。

もともとハインの作曲能力は素晴らしく,前述したカレル・ボエリーの近年のアルバムには必ず
1, 2曲,ハインのオリジナルが取り上げられています。オリジナルのメロディーは,ちょうとニールス・ペデルセンのオリジナル曲に似たような雰囲気を持っていて,ジャズというより,クラシックや欧州民謡に通じる作風です。ハインは日本ではあまり馴染みがなく,表立って取り上げられる事も少ないと思いますが,本国オランダではかなり有名で,ベーシストというだけでなく,プロデューサー,アレンジャー,そしてChallenge Recordsのオーナーとして,音楽家と経営者の両面で成功を修めている人物です。彼のバイオグラフィーを見ますと,1994年に同じオランダの名門レーベルTimelessのプロデューサーであったアン・デ・ヨングら数人とジャズのインデペンデント・レーベル,Challengeを創立したようですが,2004年にハインが単独オーナーになっています。

最近印象に残っている彼の参加作品では,エンリコ・ピエラヌンツィーの『
Live in Paris 』(2005 Challenge )があります。そこでは普段あまり観られないハイポジションでの超絶テクが披露されていてぶっ飛びました。ほんと凄かった。

ところで彼の名前の発音ですが,杉田宏樹氏はハイン・ファン・デ・ゲインと表記していますが,カレル・ボエリーの作品でノーツを書いている藤本史昭氏や中山智広氏はヘイン・ヴァン・ダヘインと表記しています。ちなみにエンリコの『
Live in Paris 』の最後にチェカレリがエンリコとハインを紹介しているのですが,そこでは<ハインヴァンダゲイン!>と叫んでいるように聞こえるんですけどね。

彼の参加作品はかなり多くでとっても全部は紹介できませんが,個人的に気に入っているものをちょっと棚から一掴みしてきましたので紹介致します。

          
BASE LINE 『 Standards 』(1995 Challenge)
ジョン・アーバンクロンビーの涼しげなギターの音色をハインの暖かくふっくらとしたベースが包み込み,何とも言えない落ち着いた雰囲気を醸し出しています。

          
BASE LINE 『 Returns 』(1996 Challenge)
BASE LINEとしての3作目。再びハインの全曲オリジナル。今回はオランダのクラリネット奏者,John Ruoccoが参加しています。繊細な音色,フレーズを奏でる人で,クラリネット嫌いの僕もこれなら聴けます。

          
Jack Van Poll, Hein Van de Geyn, Joe Labarbera 『 Live in Capetown 』(2002 Challenge)
オランダ生まれ,ケープタウン在住のベテラン・ピアニスト,ジャック・ヴァン・ポールのトリオ。よく歌う洒脱なジャックのピアノもイイけど,やはりハインのズシーンと腰に来る低音に惹かれます。ベースソロからイン・テンポで奏でられるテーマがこの上なく美しいM-1<Lakutshon' ilanga>。あ~,幸せな気分になっちゃうね~。そういえば,ディー・ダニエルズ(vo),ジャック,ハインのライブDVDが近々リリースされるみたいです。これは絶対逃せません。

          
Enrico Pieranunzi 『 Alone Together 』(2001 Challenge)
エンリコ,フィリップ,ハイン,ジョーと,仲の良い4人で楽しみながら作った感じのアルバム。当然出来は最高。エンリコもここではリラックスして優しいピアノを弾いています。ジャケット見てるだけでその良さが伝わってくる名盤です。