待ちに待ったヘルゲ・リエン(Helge Lien)の最新作『 To The Little Radio 』がDIWから発売になったので,先週金曜日にお茶の水DUで早速購入してきました。「お茶の水ジャズ館」でもかなり以前から広告を張り出しプロモーションをかけていたアルバムです。2月頃にはDUの山本隆氏が絶賛していたこともあり,僕も期待を膨らませて発売の5月26日を待ってました。
2000年のcuring legsからデビュー作『What Are You Doing The Rest Of Your Life 』以来,通算5作目にあたる本作は,オリジナルを含まない全曲スタンダードあるいは他の人の楽曲を取り上げています。今まではどちらかというとアヴァンギャルドで,奇天烈な音列が並ぶ難解なイメージのオリジナル曲が多かったヘルゲですが,今回は何を思ったのか,完全にイメージチェンジしており,出来がイイのは今まで同様ながら,リスナーが何を期待しているかを汲み取り,リスナーに歩み寄る姿勢が見られるようです。ようは今回は非常に分かりやすいのです。平易な表現も散りばめ,それでいて非常に高水準でのインタープレイを維持し,より幅広いリスナーに聴いてもらおうとする思惑が見え隠れしています。決してそれは悪いことではないと僕は思うのですが。今までヘルゲに否定的であった寺島靖国氏も今回の新作には賛同してくれるのではないでしょうか。
スタンダード・ナンバーとはいっても,やや馴染みの薄い楽曲を多く取り上げています。たとえはジェローム・カーンでも<Smoke Gets In Your Eyes>や<All The Things You Are>ではなく,<Look For The Silver Linning>を取り上げたり,ビリー・ストレイホーンの<Chelsea bridge>(これは有名かな?)や,ショーターの<Penelope>などなど。<Chelsea bridge>って,管での演奏は結構あるけど,ピアノトリオでの演奏って珍しいんじゃないかな。記憶にありません。この曲,難しそうな楽曲ですよね。フレディー・ハバードの<Little Sunflower>も演奏してますが,原曲は太陽に向かって大輪を広げるまっ黄色のひまわりを思い浮かべる名曲ですが,ヘルゲのそれはシルバー・メタリックに輝く不気味意なひまわりを空想してしまいました。硬質で鋭角的な<Little Sunflower>のアレンジにはビックリです。余談ですが,僕が初めて買ったジャズのLPがCTIのミルトジャクソンのアルバム『 Sunflower 』なんです。1981年,夏。今の「お茶の水ジャズ館」1階が当時は「中古ジャズLPフロア」で,そこでジャケット買いしたのが『 Sunflower 』でした。そう言えば『 Sunflower 』のB-2は<What Are You Doing The Rest Of Your Life>でした。ヘルゲと『 Sunflower 』はなにやら因縁めいていますね。当時,僕は浪人生で<What Are You Doing The Rest Of Your Life>を聴きながら,これからの人生,どうなっちゃうんだろ~,と鬱になっていたのを覚えています。
話が逸れてしまいましたが,とにかくヘルゲの新作は絶対,<買い>です。今までのヘルゲの作品は万人に勧められる作品とは言い難い部分もありましたが,この新作は大丈夫。誰が聴いても感動できること間違いなし。Stressfulな現代社会の中で,日々の多忙な仕事に追われ,真の自分を見失いかけた時,深夜に彼の奏でる音に耳を傾けてみてください。じわじわとエネルギーと勇気が沸いてくるはずです。
【愛聴度★★★★★】
以前に当ブログで前作『 Live 』について書いています。よろしければ
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