雨の日にはJAZZを聴きながら

FC2 に引越しました。http://jazzlab.blog67.fc2.com/

Till Bronner 『 My Secret Love 』

2008年01月17日 23時03分10秒 | JAZZ

ブログもご覧ください。

ドイツ人トランペッター、ティル・ブレナーのメジャー・デビュー前にMinor Musicに吹き込まれた1995年の作品 『 My Secret Love 』 が今年初めより輸入盤店で入手できるようになりました。クレジットを見る限り再プレスではなくデッドストックの放出のようです。本作はご存じ 『 幻のCD廃盤レア盤~ 』 で紹介され、既に廃盤となっていた作品であり、長らく入手困難でありました。

2005年にこの本が出版された当時は掲載されたレア盤が店頭やオークションで目の飛び出るような高額で取引されていましたが、最近はこれらのレア盤もかなりの割合で再発されるようになったため、市場価格はだいぶ落ち着いてきて入手しやすくなりましたね。非常にいいことです。

1999年にメジャー・レーベル、Verveに移籍し、自身のヴォーカルを大々的に披露した『 love 』がヒットしたのを契機に、彼の音楽はトランペットよりもヴォーカルに軸足を置いた作品作りに変化してきました。時にドラムン・ベースやヒップ・ホップ調のデジタル・リズムを大胆に取り入れたり、豪華ヴォーカリストを招いたりと、セールスを意識したポップな作品を送り出し、確実にファンを増やしてきました。

しかし、メジャー・レーベルに所属することで、音楽産業の巨大な渦の中に飲み込まれ、彼自身の音楽的意匠とはかけ離れたところで、レコード会社主導の作品作りを強いられてきたことも事実です。彼は本来、滅茶苦茶巧いハード・バッパーなのです。近年の作品群にみられるようなミュートやフリューゲルホーンでウィスパーリングするのではなく、オープン・トランペットで威勢よく高らかに吹きまくる根っからのバッパーなのです。

本作は全10曲で、オリジナル曲の中に、≪ My Secret Love ≫、≪ For All We Know ≫、≪ This Can't Be Love ≫などのスタンダードを適度に挟み込んだ構成です。メンバーは同郷のミュージシャンであるウォルター・ガウヘル(ts)、フューベルト・ナス(p)らから成るクインテットを基本にして、アメリカ人女性ヴォーカリストであるアネッテ・ローマンが2曲で参加するといった編成です。High Five Quintetを彷彿とさせるハードでファンキーな曲もあり、なかなか惹かれる要素を持った作品です。

ちょっと大袈裟な言い方をすれば、ティル・ブレナーはファブリツィオ・ボッソと同列で語られるべき存在と言ってよいかも知れません(やっぱり大袈裟さ)。なにしろ彼は若くしてドイツ交響楽団の首席トランペッターを務めた実績を持つ吹き手ですから、その技術力は相当なものです。

そんなわけで、購入以来、かなり気に入ってかけまくっています。こうなると、メジャー・デビュー前の残りの4作品(Minor Musicから3枚、Sonny BMGから1枚)も聴いてみたくなってきました。

誰しも霞を食べて生きてはいけませんから、ミュージシャンであっても食うためには売れなければなりません。でも、このあたりで、セールス度外視でジャズ・ファンを唸らせるアコースティックな作品を制作してもらいたいものです。歌は上手くて気持ちよいけど、、、もう聴き飽きた。