雨の日にはJAZZを聴きながら

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Joey Calderazzo 『 Our Standards 』

2005年11月29日 21時25分28秒 | JAZZ
巷では,歌の手帳別冊の「幻のCD 廃盤/レア盤 掘り起こしコレクション」が人気で,これに掲載されてCDは軒並み高額商品に格上げされているようです。先日もオークションを見ていたら,アラン・ブロートベントの『 Another Time 』が15500円の値をつけてました。ホントびっくり。以前は2000円台で中古コーナーに置いてあったのに。買っておけばよかったと後悔してます。

まあ,あまり僕もレア盤などといった如何わしいブツには興味がないのですが,それでもこの本を見ていると,数枚欲しくてしかたないレア盤が掲載されています。スティーブ・キューンの『 The Vanguard Date 』(Owl),テテ・モントリューの『 En La Trompetilla 』(SRP discos),マルコ・デ・マルコの『 Suite Parisienne 』(Fonit Cetra)などは,多少高額でも欲しいCDではあります。

最近はNORMAが,この本に掲載されているCDを十数枚,再発していますが,個人的にはあまり触手がのびない作品ばかりです。安ければ買ってもいいかなという作品もありますが,なにしろ2880円という,輸入盤にしてはかなり高い値段設定にも,ちょっと閉口してしまいます。再発とはいっても,どこかの倉庫に眠っていたデッドストック品みたいですし。そんな中,1枚だけ,以前から欲しかったアルバムがこのNORMAの再発品の中にあったんですね。それがジョーイ・カルデラッツォの『 Our Standards 』なんです。

カルデラッツォのReader Albumは現在までに6枚あり,全部所有していたのですが,本作だけ持ってませんでした。厳密には3人の共同名義なので,カルデラッツォのCo-reader albumということになるわけですが。さて,このアルバムですが,ベースがダニエルソン,ドラムがヤツック・コハンですから,メンバーからも想像がつくように,叙情性豊かなEuropean Piano Trio に仕上がっています。カルデラッツォは米国東海岸を代表する凄腕のメインストリーム系の若手(とはいっても40歳になるんですね)ですが,ハンコックやマッコイを彷彿させる,モード・ラインを多用するタイプです。ドラムのジェフ・ワッツやディジョネットに煽られながら,超音速で鍵盤を昇降するパッセージは,かなり刺激的で攻撃的です。

彼のReader作で見てみると,91年の『 In The Door 』(Blue Note)から92年『 To Know One 』(Blue Note),93年『 The Traveler 』(Blue Note)がNY メインストリーム系のストレート・アヘッド な演奏ですが,95年の『 Secrets 』では,ボブ・ベルデンのアレンジがちょっとカルデラッツォらしいスピード感のある奔放なプレイに合わず,欲求不満の残るアルバムでした。本作『 Our Standards 』(1996 Gowi)はそんな時期に録音されたアルバムで,『 Secrets 』同様,それまでのカルデラッツォのBlue Noteの諸作品から比べると異色作であったわけです。内容はというと,M1からFree Styleの曲で,面食らいますが,M2のダニエルソンの短いベース・ソロからM3の<Footprints>の流れはカッコイイし,なにしろダニエルソンの木の香り漂う,暖かい音色がすばらしい。M5の<There Is No Greater Love>,M7の<My Shinning Hour>,M9の<Stella By Starlight>などは,まさに欧州叙情派のスタイルなんです。ブラインド・ホールド・テストやったら,絶対当たらないじゃないかな。やはりイタリア人の熱い血がカルデラッツォには流れているということでしょうか。マイ・ベストは美しいメロディーの<My Shinning Hour>で,この1曲で“買い”です。このアルバムはカルデラッツォ・ファンにはウケが悪いかもしれませんが,そのかわり,ユーロ・ジャズ好きには結構ウケるかもしれません。

この作品を発表後,しばらくReader作はなく,2000年にブランフォード・マルサリスのプロデュースによる傑作『 Joey Calderazzo 』(columbia)をリリース。昨年にはピアノ・ソロ・アルバム『 Haiku 』(marsalis)を出したりと,更に幅広い活躍を行っているカルデラッツォです。