雨の日にはJAZZを聴きながら

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Curtis Fuller 『 Blues ette 』 (2)

2005年11月26日 19時11分02秒 | JAZZ
   

Blues ette 』の続きですが,このアルバムには僕の知っているかぎり2つのバリエーションが存在します。ひとつは『 Blues ette Vol.2 』で,もうひとつは『 Blues ette Part 』です。まったくまぎらわしタイトルを付けたものです。『 Blues ette Vol.2 』は『 Blues ette 』の別テイク集です。『 Blues ette Part 』は1993年のほぼオリジナルメンバーで新たに吹き込んだサボイの企画物です。

別テイク集の『 Blues ette Vol.2 』は,オリジナルと全く曲目,曲順が同じです。そして面白いことにオリジナルとテンポ,構成,アレンジがほとんど同じ。しかもソロまでオリジナルと酷似しているのです。こんな別テイク集ははじめてみました。普通,ボツテイクはソロがつまらなかったり,途中でミスったり,ミストーンがあったりと,何かしらボツになる理由があるものですが,この別テイク集の演奏はオリジナルと同質なんです。中にはオリジナルより出来の良いソロもあって驚きです。

Blues ette Part 』の方は10曲収められているのですが,『 Blues ette 』からの<Five Spot After Dark>,<Blues-ette>,<Love Your Spell Is Everywhere >を再演奏していて,その他は,カーティス・フラーとベニー・ゴルソンの新曲,それからゴルソンのJMでの演奏で有名な<Along Came Betty>,スタンダードの<Autumn In New York>などです。<Along Came Betty>は,『 Blues ette 』の空気感にマッチしますが,フラーのオリジナル<Capt’ Kid>はラテン調で,彼の美意識に疑問が残ります。はっきり言ってアルバムのイメージを台無しにしています。

フラーの最近の演奏はリズム感も悪くなり,かなり老いを感じます。悲しいかぎりです。


Curtis Fuller 『 Blues ette 』 (1)

2005年11月26日 18時50分50秒 | JAZZ
一昨日,ブログ「Jazzを聴きながら」のバブさんが,ベニー・ゴルソンの『 Gone With Golson 』を紹介されていて,<ゴルソン・ハーモニー>という懐かしい言葉が出てきたものだから,急にカーティス・フラーの『 Blues ette 』が聴きたくなり,レコード棚から取り出してきたところです。この寒い季節には聴きたくなるアルバムなんですよね~。冬限定名盤ですかね。

このカーティス・フラーとベニー・ゴルソンのハーモニーはご存知<クロースズ・ハーモニー:密集和音>といって,音階の近い音を重ねるハーモニーですが,長3度や短3度の和音に比べて,正確なピッチを要求され,聴いているとわかりませんが,結構難しいんでしょうね。このクローズド・ハーモニーのおかげでこのアルバムは,とってもJazzyでFunkyな香りを放っているんですね。1958年から59年にかけて,二人はNYのJazz Spot「 Five Spot 」に1年契約でハウス・バンドとしての出演していた際,試行錯誤の結果,このクローズド・ハーモニーを手に入れたと,のちにゴルソンが語っていました。はじめは普通のオープン・ハーモニーで演奏していたようです。 今更,本作の素晴らしさを書いても仕方ないですが,世間的に有名なA1の<Five Spot After Dark>や,A3の<Blues-ette>よりも,個人的にはB2の物悲しいスタンダード<Love Your Spell Is Everywhere >の方が好きです。10人Jazz fanがいたら1人ぐらいそう思っている人いるんじゃないでしょうか。だいたい<Five Spot After Dark>なんてブルースですし。

<Five Spot After Dark>といえば平成元年頃,武田製薬のアリナミンVドリンクのCFで使用されていましたね。夕暮れか明け方にオフィスで働く白人のCFです。それから村上春樹の「アフターダーク」もこの曲からとったタイトルですね。主人公の男の子がJazz Bandでトロンボーンを吹いているのですが,彼がトロンボーンを持つようになった理由というのが,何気なしに中古レコード店で『 Blues ette 』を買っったら,その中の<Five Spot After Dark>が気に入って,よしトロンボーンをやろうと決めたという話です。ストーリー的には別にトロンボーンである必然性はないし,テレキャスターをしょったロック少年でもよいのですが,いちJazz Fanとしてはやっぱりトロンボーンの方が感情移入できます。