部活日誌

部活動(ひとり文楽部)の記録など

花形出番です(3)(4)

2014-06-28 | 文楽
【花形出番です】
 文楽三味線・鶴澤清丈(39)



 


(3)三味線の音が「感情」になる 

(4)ゴルフと同じ無の境地




4回連載が終わりました。

奇しくも4回目掲載の日は、東京若手会の千穐楽。
いろは送りでは希さんを支え、励ましながら弾いておられる様子、とても頼もしく感じました。



「僕は三味線として目立ちたいという気持ちは、毛頭ないんです」

「お客さまには、『三味線よかった』より『芝居がよかった』と言われたい」

本質ですね。

これから50年かけてその真髄を追いかけて行ってください。
陰ながら応援していきます。
あ。50年はちょっと生きてないと思うので、40年にしてください。

2014年4月公演◆菅原伝授手習鑑 (三段目-2)

2014-06-18 | 文楽
【茶筅酒の段】

どんどんお話が暗~くなっていく中、唯一ほのぼのとした明るい景色の中での場面。
團七さんの三味線の音も軽やか華やかな賀の祝です。私の好きな場。

ここ、白太夫を千歳さんが語られましたが、千歳さんの白太夫、やり過ぎってくらいの白太夫で。
白太夫の俗っぽさ、普通の爺さんぽさが強く出ていて最初はなんかむずむずしたんですけども、それがいつの間にか自然に思えてきまして。
今ではここのことを思い出す時は千歳さんの声が脳内で鳴り響くまでになってしまいました。
おぢやらしまするぢやなんよへ~~♪ とか。心はべちべち(別々)とか。

そして何回見てもよくわかんないのは、八重がなんで春を誘う約束をしたのにそれも忘れてさっさと自分ひとり来ちゃったのかってこと。
そこ、必ず、「なんでよ!」て思うよね。「お千代様とはよい出会い」とはどの口が言う、って。
「おっちょこちょいの八重」を強調するため?
それとも、八重だけ連れ合いが死んでしまうので特別扱い?
振袖着た娘みたいなのがひとりで出てきた方が舞台がぱぁああっと明るくなるからかな。
なんにしても、私が春だったらもっと嫌味言いますけどね。

服装の乱れは心の乱れ!ちゃらちゃらいつまでも小娘気取りしてるから、いつまでたってもそんなんなんですよ!ちょっとちょっと、なにそのすりこ木の使い方!ああ、ああ、その大根の切り方!
ほんっとに、あなたって人はまったく。洗い物はあなたがぜんぶひとりでやりなさい、そんくらいしてもバチ当たんないわよほんとにもー

…最低でもそのくらいのことは言いたいですね。

玉也さんの白太夫がまた白太夫らしくってとってもよかったです。
私の中ではなんかちょっとイラっとするとこあるんですけど白太夫って。その辺も思った通りの白太夫像で私的にはとても満足でした。
春さん、千代さん、八重さんの3人の嫁女たちも可愛らしく、キャラにぴったりで。

それはそうと、
「なまぬるこい桜丸が顔付き」
「理屈めいた梅王が人相」
「見るからどうやら根性わるそうな松王が面構え」
って父親白太夫はうまい事三つ子の息子たちを評していますが、そこでも松王が気の毒になってねぇ。
兄弟だけでなく父親までも、松王が時平に好んで奉公しているかのような言いぐさ。
そんなわけあるかいな、ですよね。
ああ、孤独な松王よ…

さあ、そんな鬱屈は次の『喧嘩の段』で思いっきりやっちゃって、松王!










花形出番です(2)

2014-06-15 | 文楽
【花形出番です】音は嘘がつけない 文楽三味線・鶴澤清丈(39)(2) - MSN産経ニュース

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連載第二回です。
「花形」です。
異論反論は受け付けません。


『ほぼ全員の先輩方からしかられ続けました。
師匠(鶴澤清介)は初弟子の僕に、
同じ注意を何度も 何度も してくださいました。』


清介さん… じーーーん。

そんな師匠を安心させるためにも、寺子屋、いろは送り!
期待しています。

わたしも暗記して行きます。
なんだったら口三味線で援護したいと思います。




2014年4月公演◆菅原伝授手習鑑 (三段目-1)

2014-06-10 | 文楽
ようやく三段目に参りました。

ここからは色々と暑苦しい想いが溢れてきて、何を省いたらいいかわからないくらいです。
もう2ヶ月も経って舞台自体を忘れてるのはむしろ幸いかもしんない。
そうでなかったら超大型連載なってたわー花形出番ですどころじゃないわー


【車曳の段】

車を止めて喧嘩ふっかけたけど睨まれて大笑いされてすごすご引き下がりました。

って早い話、それだけなんですけども。


「鳥の子の巣に放れ、魚陸(くが)に上がるとは、浪人の身のたとへぐさ」

いきなり、これだ。
加茂堤でのんきに寝っ転がっていた梅王と、調子のって恋の取り持ちなんてしてた桜丸があれよあれよという間に浪人になっていたという。
初っ端から無職宣言ですね。

そんなふたりが偶然バッタリと道で行き合い、お互いの身の上を話し合います。
梅王は「築地の段」の最後で菅秀才の「館の父君母君を、頼むぞ梅王」と頼まれてたってのに、なんでか
「御台様の御行方知れず」
って、梅王、あなた…  
そんなんでいいのか。
で、御台様の行方を探そうか、それとも筑紫の国に流された菅丞相の元に向かおうか、迷っています。

そして桜丸は己のしでかしたことを 
「賤しい身にて恋の取り持ち」 「つひには御身の仇となり」
「宮御謀叛と讒言の種拵へ、御恩受けたる菅丞相様、
 流罪にならせ給ひしも皆この桜丸がなす業と 思へば胸も張り裂くごとく」

…そのまんま書き写しました、すんません。
だってこのとおりなんだもん。これ以上にうまくまとめる言葉は見当たらない。
それほど、自分のしてしまったことを悔やんでるのですよ。
 「拳を握り歯を喰ひ締め、」
ですよ!

そんな桜丸も「今日や切腹、明日や命を捨てうかと、思ひ詰めたは詰めたれど」
と既に自害することを決意してるわけですが。

しかし。
ふたりとも、佐太村の父親・白太夫の70のお誕生日会にはどうしても行かなくてはいけない。
その前にどっか行ったり、死んだりしては親に顔向けできないと、そこに引っかかってるんですねー
今だったら三角帽被ってクラッカー鳴らすとこです。
松王も加茂堤で言ってましたけど、この賀の祝いはなんとしてでも家族が揃わなくちゃいけない。
…って、そのくせ遅刻したり喧嘩したりするからこの兄弟はまったく。

そんなふたりの沈み込んでる最中に左大臣時平公の牛車が通りかかります。
偶然。
なんでこうも偶然が続くのかわかりませんが、ってそれは、お話だからです。
フィクションだからですね。
ま、とにかく、まんまる目・まんまる顔の杉王がまず「邪魔邪魔!」って登場。

無駄にイキって
「車遣らぬ!」「車遣らぬ!」「車遣らぬ!」
とかすっ飛んで出る梅王・桜丸の兄弟。
時平の尻こぶらを二つ、三つ、五六百喰らはさねば、かかかか勘忍ならぬ!!
とかって、イキってるわりには数字に関してはめっちゃアバウトな兄弟。

ここで立ち回りですが、梅王・文司さんも桜丸・清十郎さんもキビキビとして爽快でしたねー
決めポーズもびしっと、拍手拍手。
何年か前に東京でかかった時は、桜丸は車曳から簑助師匠が遣ってらっしゃったことを思い出しました。
さすが簑助師匠の和事っていうんでしょうかね、しかもキリッとした型をびしびし繰り出す様子にもうっとりしましたねー

 「待てらふ待てらふ待てらふやい!」
と英さん、もとい、勘十郎・松王(=時平に仕えてる)が登場して、三兄弟揃ってすったもんだしてますけど、時平がバリバリバリと車をぶっ壊しながらじゃーーんと登場するなり、梅・桜は 
 たじたじたじ~ へなへなへ~
「五体すくんで働かず」ってどんな眼ヂカラなんだ、時平。
しまいにゃ兄弟を青蠅さらには蛆虫よばわりして大笑いしたあげく、さっさと歩いて帰って行きました。
さっき自分で車壊したからね。歩いて帰るしかないんですけども。

玉輝さんの時平はでっかかったです。金巾子がバナナに見えたのはわたしの目の錯覚です。
玉輝=バナナ、の連想はもうやめれ。
松香さんの時平、憎ったらしかったですねー 大笑いも豪快に。
梅王・津駒さんと桜丸・呂勢さんの掛け合いも勢いがあって楽しかった。
ていうか、桜丸って絶対梅・松より子供に見えるよね。
梅王の膝にすがってるところとか、なにこの甘ったれさん!て。
ロセさんの桜もまためっちゃかわいくって。

松王:「桜も!」  桜丸:「ナアニィ!」

この、なあにぃ、が! 

ぶはははははは!

笑うところじゃないのに可愛くて、可愛い死ぬかと思いました。
もう一回聞きたいです、あの、なあに。
本人に、桜も!て後ろから声掛けてみたいです。「なぁにぃ!」て振り返ってくれないかな。


最終的には、梅と桜の中で、時平憎しから、「兄弟と一つでない忠義の働き」と宣言する松王に敵が変わってしまい、
 松王 VS 梅・桜

の図式となってしまうわけですね。

松の気も知らんと。
松っちゃんもねー、もうちっと兄弟に本音を漏らしてもよさそうなもんだけど。
そんなことしたら時平の手前具合悪いし、何より後々の「寺子屋」が成り立たないので、悟られてはいけないところですが。

勘十郎さんの松王はそこらへん、ところどころ、松王の心底が見え隠れする松王であるような気がしました。
さすが細かいなぁ表現が。と思いました。

そして兄弟は互いに残す意趣遺恨、と別れ行く~



花形出番です

2014-06-08 | 文楽
【花形出番です】
「稽古するしかなかった」 
文楽三味線・鶴澤清丈(1) - MSN産経ニュース
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産経新聞で4回連載です。
花形です。
出番です。

『でも僕には逃げ道がない。
辞めろという先輩に「やらせてください」と
泣いて懇願しました』

じーーーん・・・

「僕」てほんとに言うたのかどうかは置いといて。
なんだかいつも飄々として見える清丈’さんにもこういう苦悩の時期があったんだなあ、
なんて今更ですが当たり前のことに思い至り、目頭を押さえざるを得ないわたくしでありました。

今度の若手会では寺子屋ですもんね。
よくぞ辞めずにいてくれたと、その時の先輩の方にも感謝、感謝です。