部活日誌

部活動(ひとり文楽部)の記録など

地方公演(2011年10月)

2011-10-09 | 文楽
地方公演、府中の昼・夜と横浜の昼、行ってきました。

横浜は幽霊部員(=オット)同伴で。
思えば思えばこの部活。 創部以来、あいかわらず部長のみ。
ロンリネス。
こんなに楽しいよアピールをしているのに、さっぱり積極的入部希望がないのは、世界七不思議のひとつと言っていいでしょう。

そんなロンリー部長、東府中には、何度行っても途中乗り換えを反対方向に間違えてしまいます。
あそこら辺には何か怪しい時空の歪みでもあるのでしょうか。
それも世界七不思議のひとつです。

不思議といえば観劇中、寝てるつもりもないのに、ちゃんと観てるつもりなのに、
「んをっ」
と気付くと、脚気の検査をされたかのように足がぴんと上がって
「はっ」
と目が覚める。

寝てないのに目が覚めるとは、どういうことなのでしょう。
これまた世界七不思議のひとつです。


さて、肝心の舞台ですが。



●昼の部

 【双蝶々曲輪日記】
   八幡里引窓の段

 【新版歌祭文】
   野崎村の段

●夜の部

 【団子売】

 【摂州合邦辻】
   合邦住家の段

 <配役表>




『引窓』


配役がまるっきり頭に入っていなかったので、濡髪長五郎はてっきり玉也さんと思い込んでいましたらば、いきなり婆役での登場にびっくり。

「引窓」「野崎村」と爺婆連続技の玉也さんでしたが、いずれもしみじみとした泣かせるじじばばでした。ホロリ。

長五郎の前髪を剃る場面だけは、(玉也さんに剃られるのはちょっとこわい…) などと思いましたが。(失礼)

どうせ人相変えるなら、高頬のホクロも、剃り落すとか路銀を投げつけて落とすなどという、万に一つの確率に頼るようなやり方をせずとも、用意していた墨を使って顔に5、6個ばかり描き足しちゃえばいいんじゃ?
と思ったり。

簑助さんのおはや・勘十郎さんの与兵衛と贅沢な配役。
簑助さんのおはやは、しっとりしたお色気が隠してもにじみ出ちゃうわいなう、ってな感じで、そりゃあもう色っぽい。
世話女房でありながら元遊女というおはやの人となりがよっく伝わってきました。
おはやが芋の皮を剥いているのを見たせいか、翌日、気づけば私も里芋を煮っころがしてました。どうせなら芋じゃなく、美しさにあやかりたかったところです。

床は清治さん・呂勢さん、いつも通り渾身の語りでしたねー
ROSEさんの気迫にうまい具合に巻き込まれると気持ちいい涙が出るところですが、私は今回、ちょっと勢いに負けてしまいました。 からだ弱ってんのかしら?






『野崎村』


清十郎さんのおみつの悋気ぶりのかわいらしさや諦めたあとの健気さと、一輔さんの久松、簑二郎さんのお染ともにフレッシュで素敵でした。
咲甫さん、幸助さん(今回は小助顔)の小助もコミカルさがよく出ていましたね。

しかし、やはり三輪さんの声はこれから悲劇が始まるよー、という不穏な響きが感じられてぞくぞくするね。あの声で
「おとーさん おとーさん それそこに~ 魔王の娘がぁ~~ 」
と唄われたら、子供ならおねしょしちゃうよ。

最後は燕三さんの段切りの三味線が聴けてお得な気分に。
しかしまたちょっとお疲れのご様子なのでは?というのが気になるところではありました。





『団子売』







・・・・・・







何も言うまい。





『合邦住家』


勘十郎さんの玉手御前、う、美し~~! 
頭巾をかぶって登場しただけで目が釘付け。
あの頭巾ってやつは女っぷりを3割は上げるで、しかし。
私も今後、黒頭巾をファッションに取り入れようと固く決意・・・しませんよ、いくらなんでも。

しかし、私は夜の部、1回しか見られなかったのが返す返すも残念です。
それ程、あの玉手の美しさと蒼くゆらゆらと燃え立つ情念の炎に圧倒されました。
勘十郎さんというと、「蒼くゆらゆら」というより「赤くメラメラと燃えさかる炎」に見えるかと思いきや、これがあなた。

ああ、この美しさ、和生さんだったら? と、和生さんの玉手も見てみたくなりましたね。

清介さんの三味線にあおられる様に英大夫の語りも合邦の無念さや、玉手の情愛、哀れさが床下にいた私には溢れて聞こえました。

玉志さんの合邦も、勘市さんの俊徳丸もこれまた素敵だったんですよー、奥さん!




というわけで、今回の公演も楽しませてもらいました。

楽しくて面白くて、全然眠くなんてないのに
「また寝てたね」
と目撃されるという、世界七不思議のひとつの芸能。それが人形浄瑠璃!(ちがう)