【錦秋文楽公演】
◆第1部
碁太平記白石噺
田植の段
浅草雷門の段
新吉原揚屋の段
桜鍔恨鮫鞘(さくらつばうらみのさめざや)
鰻谷の段
団子売
◆第2部
玉藻前曦袂(たまものまえあさひのたもと)
清水寺の段
道春館の段
神泉苑の段
廊下の段
訴訟の段
祈りの段
化粧殺生石
【配役表】
久しぶりに大阪までいて参じました。今回は見た事ないところが多くそれを楽しみに。
【白石噺】
「田植の段」は初めて観ました。後におのぶちゃん達姉妹が敵討ちを誓うお父さん殺しの場面がやっと見られて、なるほどなーと。
なるほどなーとは思ったけど、殺す動機、ちっさ!とも思った。
それと、私が今までイメージしていたお父さんより年寄りだったのも驚きました。
「え。こんな(沼津の)平作だったの、お父さん…」
て。
百姓たちが桶からどぼどぼと茶碗に水を注いでいましたが、柄杓は使わないの柄杓!と相変わらずどうでもいいところにちまちました主婦目線がむいてしまうのでした。
「雷門」は津駒さん病気休演につき咲甫さんが代演。
咲甫・寛治ペアという誠にレアなことでありましたが、寛治師匠は寛治師匠、いつもながらに艶のある音色で情景と心情に寄り添う演奏でありました。
どじょうと観九郎のくだりは器用な咲甫さんらしく楽しく聞かせましたが、こういうところこそ津駒さんで聞いてみたかったという気持ち。どうか早いご本復をお祈りします。
「新吉原」でもですが、大抜擢・一輔さんのおのぶちゃん、かわいらしく丁寧に遣ってらして。
でも、ここは文雀・簑助という大師匠様のおのぶちゃんに見た無邪気さ、勝気さがもひとつ欲しいかなーと思いました。
というか、人形というよりも、語りか?
嶋さんでしか聞いたことがないので、なんかえらい登場人物の平均年齢が上がってんなーという印象。
惣六さんも粋というよりもお父さんぽくて。オブラートに包みましたが、平たく言えばじじくさかった。
いけね。このいらん口が
【桜鍔恨鮫鞘】
ほんとこれ、悲惨な話で滅入りますね。娘お半が気の毒で気の毒で。そして
「言いたいことも得書かぬ 無筆は何の因果ぞや」
で無筆であったお妻の決死の覚悟にも心打たれるのでした。
咲さんの娘のかわいらしさがいつも意外というと怒られるでしょうけど、愛らしんでびっくりします。
短気な八郎兵衛より、最後に出てくる銀八の方が気持ちの大きい男前なのがまたなんとも。
そして、簑助師匠のお妻があんまり色っぽいので、なんだか弥兵衛に無理強いされて床を共にするというよりも、もっと深~~い大人の事情があるのでは、このお妻には!
みたいな妄想を掻き立てられてしまうのは、私だけではないはず。
後半の簑次さんのお半ちゃんも見たかったなー
【団子売】
初日・二日目はご出演の紋壽さんが休演となり、玉男杵造、勘十郎お臼というペアも拝見。
紋壽さんの辛そうなお姿と哀愁ボイスの三輪さんとが相まって、ご陽気なめでたさのない団子売を見てしまった…
そして玉男杵造の立派さよ。何を遣っても芯がしっかりブレない安定感で、あなた様、本当はお武家さまでは!?という杵造。
若い人たちはよーーく見ておくといいですよね。腰ですよ、腰。
【玉藻前曦袂】
「道春館」、よかったですー
玉男・金藤次、和生・萩の方、玉也・薄雲皇子の安定感。
そして千歳さんがフルスロットル!
金藤次が「父じゃわやい 父じゃわやい」て娘の首に口説くところでは思わずぐっと涙をこらえましたねー
そこで力使い果たしてか、そっから先苦しそうなのが辛いところでしたが、それでも今回の公演の中でわたしはここが一番聞くことに力が入りました。
そして、この後はすべて九尾の狐の妖力を見せつけるためにあるって感じ?
いくつもの段を経てたどり着いたラストの「殺生石」では、これでもかってくらいの勘十郎オンステージ!
うわーー、なにこれ、ええ!?
て勘十郎さんのこれでもかのテクを見てるうちに終わって、しまいには、
「え。これまで長々観てきた話の結末にこれ…??」
と、ぽかーん、で笑ってしまうという。
物語としては正直大して面白くはなかったけども(オイ)、目には楽しかったのでまあよしとしよう、というところかな
それに、今はこういう人形の面白さでお客さんを呼んで行かなくちゃいけない時期なのかなーという気もします。
嶋さんも引退を発表され、今後太夫陣のますますの奮闘が求められると思います。
もう誰も倒れてはならぬ。
そして、若い人たちには急いで欲しい。
他のことは取りあえず封印して、師匠方の芸を盗むことだけに時間をつかって欲しいです。
入門した時から、芸を受け継いで伝えていくという使命を背負ったわけですから、いらんことしてるヒマないと思うわー
と くそばばあ節が炸裂したところで、今回の三泊四日文楽強化合宿日誌を終わります。