そして三部『曽根崎心中』。
正直、これがなんで大人気なのかわからなかった私。
録画で何度も見たり聞いたりしても、単純な話だし、一緒になれないなら死んじゃえ、ってどうなの?いくら時代が時代だとは言え、その話になぜ皆涙する?
と思ってました。
そして、今もそれは思ってます。
が。
今回、私は文楽を見て初めて、「人形しか目に入らない」という経験をしました。
大体が落ち着きないし、床見たり人形見たり人形遣いさんを見たり字幕を見たり、といつも忙しないわけです。
しかし、簑助さんのお初から「徳兵衛愛しい、恋しい」が溢れ出ていて、人形だという事を忘れるくらいの「気」を感じたらもう、気付けばふたりの世界にまんまと引き込まれていました。
録画じゃさすがにこの「気」は見えないもんね。
そして、なんで?とか、どうして?じゃなくて、ここはもう心中するしかないんだ。
と、「心中反対!」と書いて掲げていた私の心の中のプラカードをあっさり下ろしたね。
(それは舞台が終わって余韻が冷めればまた元に戻るんだけど)
また、天神森の道行きの曲がこれまた物哀しくてねー
この曲を作曲したという野澤松之輔という人は凄いね。あんた天才だよ。あたしゃ、しゃっぽを脱ぐよ。
が。
やっぱり落ち着きのない私は、
「 『はすめし』か・・・ はすめし、食べたいなぁ。ああ、はすめし、お腹減った」
と、「はすめし」の文字を見る度に毎回考えることを、今回ももれなく考えてましたけど。
あと、天満屋の亭主は「なんぞ、お吸い物でも~ あーげましょ~」って奥に入ってったくせに、お吸い物持たずに手ぶらで戻って来てるのが気になるところ。
そして一緒に見に行った友達は
「徳兵衛、そんな大事な金をなぜ貸す! 金貸すからだよーもう!」
と最後まで怒っていました。
それには私も同感です。