部活日誌

部活動(ひとり文楽部)の記録など

2016年2月公演

2016-02-22 | 文楽
【第一部】

 靱猿

 信州川中島合戦
    輝虎配膳の段
    直江屋敷の段


【第二部】

 桜鍔恨鮫鞘
    鰻谷の段

  (八代豊竹嶋大夫引退披露狂言)
 関取千両幟
    猪名川内より相撲場の段

【第三部】

 義経千本桜
    渡海屋・大物浦の段
    道行初音旅




 【配役表】 



【第一部】

靭猿、簑次さんの猿に和んだ~ 
足がお行儀よかったからかな、猿というよりか子供みたいだったけどかわいらしかったデス

そして、越路!
和生さんの越路、カッコいいです。婆の中の婆ですね~
「この婆はこの年まで人の古着貰うて着た事がない。ノウ嫌や、忌々しい!」
とか捨て台詞の口の悪さよ。
このズケズケ、娘婿の直江も似たとこありますよね。
主人に向かって「短慮高慢」とか言ってのけるあたり。
そして直江屋敷を見て初めて、なぜ越路が「三婆」のひとりなのか合点がいきました。
勘介よりよほど策を練りに練ってるんじゃないですかね。
あと輝虎ね。玉也さんまたこんな横暴なエリマキトカゲ着た役か、と思ってましたけど、直江屋敷の最後には越路の覚悟の自害に元結を切り落として手向けるなどただの暴れん坊なだけじゃなかったのね、という。

この舞台、玉男・簑二郎、幸助・一輔それぞれが人物像を丁寧に表していたので、勘介・お勝夫婦と直江・唐衣夫婦の対比がくっきりと浮かび上がり、玉也輝虎ももちろんだけど、安定感たるや半端なかったですねー
なんか唯一色々と雑念なしに見られてほっとしたのがこの舞台でありました。


【第二部】

鰻谷は去年に続いて2度目、今回はお妻を勘十郎さんで。
簑助さんの時のお妻は八郎兵衛に斬られたあと袖に手を隠して片かいな斬り落とされた体でやってましたよね。
ろせさんの「こびっちょめ」と咲さんの「あつつ」はしっかりチェックした。
最後に弥兵衛の悪事の露見部分が割愛されたまま「四ツ橋さして 遁れ行く」で終わるんで、八郎兵衛がサイテーな短気の考えなしみたいなんよね。井戸で型決めてる場合か!って。
まあどっちにしろ娘の前で嫁を殺めるんだからとんだお父さんにはかわりないけども。


そして嶋大夫引退狂言である関取千両幟。
掛け合いで寛太郎さんの曲弾き付きという、引退狂言としては異例の演目で。
帯屋から久しぶりに出演されたと思ったらこの短時間の語りでは、ファンにはどうにも納得のいくものではなかったでしょう。
そもそも引退も含め、その前にどうにかなんとかならんかったのか。

私が嶋さんを一番最初に聞いたのはたしか巡業で熊谷陣屋が掛かっていた時じゃなかったかな。
まだ新宿で巡業やってましたよね。
正直、「このおじいちゃん、何言ってるか全然分かんない…」が第一印象でした(すみせんすみません!)
だけど誰にも増して緩急とメリハリが大きくて、気が付けば舞台の上の人形も平面からいきなり3Dで飛び出してきているように見えました。
重の井子別れとか帯屋とか宿屋とか封印切りとか、あと岡崎!岡崎は本当に嶋さんで聞かれてよかった。
あ、橋本もだ!
それからそれから、2014年の初春に聞いた新口村。ちょうど私の両親の死と時が重なってしまって、あの時の孫右衛門は心底胸にずしんと響き、一生忘れらないものとなりました。

この千秋楽も伺いましたが、まだまだ現役でいられるほどの余力を残しての引退はやはり残念ではあります。
ただただ、今までたくさんいい浄瑠璃を聞かせてもらってありがとうございました、という気持ちです。


【三部】

勘十郎さんが初役の知盛に挑戦、まさにチャレンジャーでしたね。
最後の入水の型が玉男さんとガラリと変えてきていて、おおー!と驚きました。
私は知盛(銀平)は玉男さんしか知らないししかも好きな役なので、どうしても比較して見てしまうんですが、勘十郎型は若々しくてキビッキビしてた。そして型の決まり方が気持ちよくてエッジが効いてるところはさすがとしか言いようがないですね~
幽霊の知盛の部分を睦さんが語られていましたが、うぉーー!と思いましたね。
錦糸さんが隣でめっちゃ怖い顔してて、わたしなら間違いなくお腹痛くなるとこです。
それをよくよくお稽古されたのでしょう、錦糸さんに引っ張られ抑えられしつつ勘十郎さんの知盛に負けないよう精一杯の語りをされていたように思えて、ちょと感動してしまいましたねー
それから、清十郎さんの典侍局。楽のメリヤスのなか帝の頭上に扇をかざして歩む姿はとても透き通っていて美しかったです。気高さというよりも優しさの勝った典侍の局に思えました。

最後は道行初音旅。
狐忠信を勘彌さん、静を文昇さん。
なんていうか、なかなか見られないものと見たというか
・・・・


というわけで。

なんだか2月公演が終わって疲れてしまいました。
怒ってる人、泣いてる人、ハイテンションな人、静かに悲しんでる人、
色んな人に当てられたみたいになるんで、もうこういうお別れの機会は当分なしでお願いしたいもんです。





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2 コメント

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ありがとうございます (くらな)
2016-02-25 20:50:42
さむこさま

詳細レポありがとうございます。
楽にいらしてたのですね。私も楽屋口"お見送り隊"やっておりましたが気づかなくてすみません。
今回公演が始まってから奇跡的に楽日2部の戻りチケをゲットできたのですが、もうなみだなみだでございました、ハイ。

さむこさまの「平面からいきなり3Dで」ってまさに!!!そのとおりですっ!!!!
千両幟はまた特に簑助師のおとわと一緒になって情感極まっていましたね。これぞ文楽、これぞ人形浄瑠璃といえるのでは。最後の御舞台で切り場たっぷりを聴かせていただけなかったのはやはりまことに残念なことでしたが…。

これからの文楽に一抹の不安もありますが、今後をになう芸人さんたちをファンとして見守り、声援をおくりたいと思います。

さむこさまもよろしくお願いいたしますm( _ _ )m


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終わってしまいましたね (さむこ)
2016-02-26 11:17:29
◎くらな様

千秋楽、楽屋口にいらっしゃるくらなさんのことは遠くからちらりと拝見しましたよ~
あと、私の席からHさんも近くに見えて、あの大きな目からぽろぽろ涙をこぼしてずっと嶋さんを見つめていらしたのに胸が締め付けられました… 
そうだ、駒之助師匠も近くにいらして、おとわとの別れの場面では涙を拭っておられ、なんだかもうほんとに切ない一日でしたね

お弟子さん達がしっかり奮闘しておられるので、これからはそちらを楽しみにしていきましょう!
また劇場でお目にかかれますように~
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