部活日誌

部活動(ひとり文楽部)の記録など

曾根崎心中付り観音廻り

2014-03-23 | 文楽
『杉本文楽 曽根崎心中付り観音廻り』

  プロローグ

  観音廻り

  生玉社の段

  天満屋の段

  道行




今回はヨーロッパ公演で好評を博したバージョンでの凱旋公演ということで、世田谷パブリックシアターで行われました。

ま、前回見てるしどっちでもいいけどぉ、一応文楽ファンとしては行っとくかな~、
程度の気持ちで行ってきました。
どんな偉いのブンラクのファン様ってやつは!これだから嫌われるんだよ!
という態度でふんぞり返って。
…うそ。 お洒落な方々のなかでちっさくなって。


観たところ、前回とはだいぶ違うという印象。

全体的にコンパクトになったのは会場が狭くなったからでしょうか。
まず「プロローグ」、清治さんは前回せり上がりでじゃーーーん!と登場しましたが、今回せり上がはナシ。

「つけたりくわんのん廻り」では、杉本氏の写真作品を映していた部分に今回束芋さんのアニメーションを使っていました。
私は束芋さんのイラストは好きなんですけども、あそこであれを持ってくるのはやっぱり欧州の観客を意識してのことなのかなー、あの前でただでさえ小さい一人遣いの人形を舞わせても相乗効果はイマイチなんじゃないかなー、なんて思いました。


そうだ、今回は杉本氏秘蔵の仏像は登場せず。
そのかわり、氏の作品  「SEA OF BUDDHA~仏の海~」 の千手観音の画像がgifっぽくちかちか使われてましたね。


くわんのん廻り(←気に入ってる)のジャパニーズラップを担当するは呂勢さんだったYO
前回の咲甫さんはなにかのインタビューで、杉本氏に「早く、もっと早くできるだけ早口で」と依頼され難儀した、と仰ってましたが、呂勢さんはその点だいぶゆっくりでしたけども大丈夫だったんでしょうか。
三味線に遅れがちでしたよね。義太夫節らしいというか。


「生玉社の段」

ここでようやく口上が入り、人形浄瑠璃っぽくなりました。
九平次のかしらが男前なのにあわせて、着物もオシャレなのになっていたし津駒さんの語りでもいい男になってました。
顔がよくてお洒落でモテるけどめっちゃワル、っていう設定なのかな。
なんでそんなんと仲良くしてたの、とくびょうえ。利用されてたんちゃうの、このお人好しめが。

ここで、初めて近松の原文と現行上演しているものの詞章が全然ちがうってことに気が付きましたよわたしは。
いつも とくびょうえ(←気に入ってる)が連れの丁稚にあれこれ言った後「恋がいわせる付けことば」て補足するじゃないですか。いつものクセでそれをなんとなく待ってたら
あ、あら? ないねその台詞?
て。
ずっとなんとなくリズムが違って違和感があったのも、よくよく聞いていると詞章が全然違ってるんですねー

「押し付け祝言、嫌でござる!(だんっ)」ってのも、いつもそこで「徳兵衛、アホだなー」って思えて好きなんですけど、押し付け祝言なんて言うてなかった。

なーるほーどねー、と思って何とはなしに聞く方に一所懸命になってしまったよ。

「天満屋の段」は嶋さん・清治さん。
ここもフシも違うし「いつもの」感がなくて変わらないのは嶋さんの全身全霊の語りだけ。
清治さんは眼鏡かけて弾かれてましたしね。ありなんだ、それ。

あと、違うと言えば女中・お玉のおっぱい!
なんなの、前はもっと垂れてたのに、今回ずいぶんと若々しいおっぱいなってたじゃないの!
誰が気付かなくてもこの私の眼はごまかせないよっ


「道行」
ここはですねー、現行上演されてるのと一番違っていて好き嫌いのあらわれるところですよね。
私は今回、くどくどしく嘆いている二人がためらいながらようやく死んで行く様こそが、近松の描きたかったことなのかな、となんとなく思いました。

いつもの道行の曲の美しさも好きですけれども、「死」それも「心中」というものの及ぼす不幸、生々しさ、痛々しさ、憐れさ、そんなものを見せつけられた挙句に「恋の手本となりりけり」と来た。
曲調も華やかさは抑えられ、淡々と物語を浮き上がらせるものになっていて。
見終わった後のカタルシスのなさは私にとって格段に上のような気がしました。


結局、図らずも2回観ることになったわけですが、結果、2回観てよかった。
珍しく色々と考えたもん。
近松の考えてたこととか。
舞台をお客に喜んでもらおう面白く見せようとすることと、自分の考えの発表の場とすることの違い、とか。
靖さんと清志郎さんの役割は面白いな、靖さん、こういうのもいいな(はぁと)、とか。
清治さんの作る曲はなんとなく西洋風だな、とか。それを清介さんが弾くと和風になるな、とか。
なんで今回清志郎さんは立って弾かされずにすんだのかな、とか。
てかなんで前回あんな隅っこでスポットライト浴びて罰ゲームみたいに弾かされたのかな、とか。
内儀ってどこにいるのかな、とか。


そうだ、出演者のインタビューってのがあって、(コチラ)

勘介君は何を言うとる… 
100年早いわ!と全国民からツッコミが入ってるところでしょう。


ま、ここには書けない色々な悪口は友だちと喋り散らかしつつ、これはこれで私にとってはかなり意義のある公演でした。


あーー、それにしても早く4月にならないかな~~

和生さん

2014-03-14 | 文楽
吉田和生さんが
「平成25年度(第64回)芸術選奨文部科学大臣賞」
を受賞されたそうです。
おめでとうございます。

文化庁によるその贈賞理由を以下に転記しておきます。
リンクは(こちら)

「本年、吉田和生氏が遣った人形は極めて卓抜しており、その精髄は東京と大阪で上演された通し狂言「伊賀越道中双六」お谷において端的に示された。
殊に、内なる激情を秘め雪中に堪え、苦悩する「岡崎雪降(おかざきゆきふり)」の場は、胴串(どぐし)をしかと支えたまま余計な動きを封ずる至難の方法に徹し、熾烈 (しれつ)なまでに大夫・三味線の演奏と対峙(たいじ)した。
同演目の立役・十兵衛で見せた腹芸の深さ。
復曲「大塔宮曦鎧(おおとうのみやあさひのよろい)」花園で見せた格調と複雑な心理。
いずれも派手な外面性を拒み、作品を読み込んだ深い内部観照に基づく。
現代最高峰の人形遣いの一人として心からの称賛に値する成果である。」



これ!まさに私が今まで言いたかったこと!
端的にまとめて下さってどうもありがとうという気持ちです。
いや別に私のためにまとめちゃいない。
私関係ない。いっさい。

でも嬉しいですね。
よくよくお好きで読み込んで聞き込んでご覧になっている方の言葉に思えます。

本当にありがとうございます。

いやだから、私のために言ってないです。全然無関係。








2014年3月 地方公演

2014-03-04 | 文楽
◆昼の部

 【生写朝顔話】

  明石船別れの段
  笑い薬の段
  宿屋の段
  大井川の段

◆夜の部

 【花競四季寿】

  万歳
  鷺娘

 【ひらかな盛衰記】

  松右衛門内の段
  逆櫓の段

  【配役表】


大田の昼の部だけ行ってきました。

10月の公演と床の配役がちょっとだけ変わっていて、宿屋は嶋さん!
贅沢ですねー 
なんか嶋さんの上下運動UP & DOWNを久々に間近で拝見したような気がしたな。
わたしも席でつられて上下してしまいました。わたしの隣のご婦人もつられてました。
どんなロックなライブですか。
さすがの
「知らなんだ 知らなんだ、知らなんだわいなああああ」

「イヤイヤ、放して、放してぇえっ」
で、ぐわああっと来ましたねー
朝顔はこうでなくちゃ。
りょーじさんのお琴も久々に聞かれてあーうまいなぁと思いましたことよ。
笑い薬の靖さん、秋よりずっと聞かせてくれたように思いました。
汗ぼたぼたとしたたること津駒大夫のごとし。いずれが横綱か大関か。
隣で涼しい顔をして弾いている清丈'さんと好対照でした。
ちなみに西の横綱は幸助さん。三人の汗を溜めたらバケツいっぱいなるね。
そんな液体は見たくないけども。

人形は秋とまったく同じ配役かな?
あ、今回、萩の祐仙が紋壽さんでした。秋は休演されてらっしゃいましたね。
これこれ、祐仙といえばこれですよ。袱紗さばきひとつで客席に広がる笑いの波。
あと、和生さんの朝顔が嶋さんのパワーでもって
 知らなんだわいなぁあああ やいやいぎゃんぎゃんじたばたじたばたぬぉおおぐごーーっ
って感じ(雰囲気で察してください)に見えてまんまと引き込まれました。


3月は他にも若手素浄瑠璃とか杉本文楽とか文楽劇場30周年記念なんとかとか細々したイベントとかあって
いよいよ4月、菅原ですね。
わたくしは4月は楽前と千穐楽を通しで取りました。
どうか無事行かれますように~
どなたも休演などされませんように~
私の腹が痛くなりませんように~