部活日誌

部活動(ひとり文楽部)の記録など

9月公演第二部・桂川連理柵

2010-09-21 | 文楽
 【桂川連理柵(かつらがわれんりのしがらみ)】
    
    石部宿屋の段  
    六角堂の段   
    帯屋の段  
    道行朧の桂川  




・・・・ショック。

「おれの名は、長右衛門。 もうじき四十に手が届く。」

で始まる、“なぜ、長右衛門が14歳のお半と深い仲になってしまったのか” をテーマに長右衛門が独白する、という妄想ストーリーを長々書いたのに。
UPしたら全部消えた・・・

すごく面白かったのに!

・・・いや。失ったものの魅力は5割増し。
たいしたことはなかった。


なぜお半と、という理由も、消えた妄想劇場の中では、結局
『魔がさしたから』
って当たり前の結論で、長々書く意味もなかったと言えばなかった。

そして、私が長右衛門のことをどうしても心から嫌いになれない、いやむしろ好きかも、
どうしようもないおやじとは思うけど、なに、この惹かれ方!?

と、悶々としていたのも、


首が検非違使だから



という、単純な理由だったことに気付いてしまいました。

あの首は眉間に深いシワを寄せてるように見えるので、いかにも思慮深い、実のある男に感じますよね。
渋いいぶし銀の男らしさ、私が14歳でも憧れちゃうわ。夜中に一緒に寝てくれって押しかけちゃうかも。そんでもって○×△ で ※$■ なことに・・・
また、勘十郎さんの長右衛門はうまいこと大人の男の色気もあったしねー




どうしても気になるのは、千歳さんが長右衛門の独白を大熱演で
「だーーいあくにんっ!!(大悪人)」
と心の叫びを表した直後、長右衛門、よっこらせっと布団を掛けて寝るところ。

え? 
今、たった今、あんなに熱く懺悔の独白をしといて、
寝るんすか?? 

と、見るたびに「ぶっ。」と笑ってしまうんですよね。
あそこのあまりの間のなさ、長右衛門をダメ人間に見せる一因でもあるのではないでしょうか。

ちがう? そんなのどーでもいい?
あ、そう。



そんなわけで、今は地方公演の真っ最中。
いつまでも長様のお話でもないですね。

学習しました。

「blogは観たらすぐ書け。間をおくと全部忘れるヨ☆」

ということを。

9月公演第二部・勢州阿漕浦

2010-09-20 | 文楽
 【勢州阿漕浦(せいしゅうあこぎがうら)】 

   阿漕浦の段    
   平治住家の段 


玉也さんの「でゑす男・治郎蔵」は、いつもながらのはまり役でありました。

なんたって、平治の家に現れての第一声が

「阿漕の平治殿といふは ここでゑすか」

だから。
出た、「でゑす」。待ってました!

それを 
「と、聞き馴れぬ えす声に」
と語る住大夫の「えす声」の渋いことといったら。
「えす声」ってのは要するに「でゑす男」=ガラの悪い声、という理解でOK?

そんな渋い「えす声」でしびれさせるかと思えば、病気の平治の母親の弱弱しさ、平治女房のお春の貞女ぶり・よき母ぶり、そして、主役・平治(妹背山の芝六そっくりさん)の生真面目さも自在に語り分けるのは、さすが。圧巻でしたねー
そして、忘れちゃいけないのが、庄屋。
「腹立てまいぞや、腹立てまい、あははははは~」
で、悪人じゃないけど軽薄なお調子者っぷりもさすがの師匠、笑わせてもらいました。

しかし、一番可哀想なのも、この庄屋。

玉也さん、じゃなくて治郎蔵にあっさり首をころんとはねられて殺されて、いたって割に合わないお役目。
まあ、そんな玉也さん、じゃなくて治郎蔵も平治の罪を自ら被ってお縄になるわけだけど。

平治の犯行現場より採取した証拠の品の菅笠に「平 治」と書かれていたのは、平治の名前じゃなく、わたくし平瓦治郎蔵の頭文字をとって「平 治」です、と。

「平(へい)と平(ひら)との読み違い、
 音に読む字を訓に読み、
 冥途(よみじ)へ急ぐ一文字~」

ってうまいこというね~、と感心させて終わろうって魂胆?

が、ちょっと待て。
身代わりでお縄になった後、「すぐいる?」の人みたいに懲役2年6ヶ月で出てこられるってもんでもなかろうぞ。

結局、この話も忠義のために命を犠牲にする物語なわけだ。
しかも「(菅笠の)不思議に文字の合うたるも、これ孝行のしるしかや」て。
あくまで主人公目線のいいぐさに、犠牲になる玉也さん、じゃなくて平瓦治郎蔵も浮かばれねえってもんでゑすなぁ・・・





9月公演第一部・鰯売恋曳網

2010-09-19 | 文楽
 【鰯売恋曳網(いわしうりこいのひきあみ】
    五条橋の段
    五条東洞院の段


 い~わしぃ~ 売りぃなーああら♪


・・・いや、それは「ち~らしぃ~」。 すし太郎だしサブちゃんだ。


正しくは、「鰯こぅえい~」


鰯売、かわいいお話でした。
一部は良弁も鰯売もハッピーエンド、清々しい気持ちで席を立てます。

そして、二部の「勢州阿漕浦」とも「阿漕浦」つながり&身分を超えた結婚つながり?


1回目拝見した時より2度目の方がずいぶんと語りも人形もパワーアップして、初演とは思えない程に十分楽しい舞台になっていました。
これは今後も再演して欲しいです。

猿源氏(勘十郎さん)の首はほんと当代勘三郎さんに見えて来るねー
蛍火(清十郎さん)は遠目からみるとボブってかおかっぱに見える髷。
おかっぱ、私と一緒だね。  (一緒じゃないから)
可愛いなー、おかっぱ蛍火。 (おかっばじゃないってば)
可憐で気品があって、傾城にしてはちょっいとあだっぽさ不足?とも思ったけど、大名高家のみを相手にするお高い遊女、しかもそもそもは丹鶴城の御姫様なんだからさもありなん、です。


燕三さんのサロンで伺ったお話では、より芝居に集中できるようにということと、咲さんの希望もあって全編黒衣で遣ったそう。
再演の時も黒衣なのかなぁ?

また、この「鰯売」は1回限りの上演で終わってしまうような「挑戦としての新作」ではなく、これからも繰り返し上演される演目に育つことを目標に、あくまで古典様式に則った作曲という部分に強くこだわったそうで、あちらこちらに既存の節回しが使われているので、お客さまも
「お、ここはあの・・・?」
と発見する楽しみもあるでしょう、ということでした。

ま、残念ながら私にゃまったくわかりませんでしたけれども。

どっかで聞いたことあるような、ないような。
言われてみれば、そうかも・・・

ってな程度しか感じられないくせに、お腹はぐぅぐぅ・きゅるるる鳴らしっ放し、
そんな、違った意味でやかましいお客で、誠に申し訳もございませぬ。

オホホホホホ わっけもない。 (←使ってみたかった。でも今ここが使うところでないことは確か)







9月公演第一部・良弁杉由来

2010-09-18 | 文楽
痛む腹を抱え(ええ、またです。いつものPP)今日、2回目の一部を鑑賞してきました。
「桜宮物狂いの段」での、 
 きゅるきゅるきゅる~っ(腹三味線もしくは腹胡弓) 
あああ、やばいっ!お、お腹がーーーっ!
という危機的状況をなんとか乗り越え、最後まで無事だった己を褒めてやりたいと思います。


 【良弁杉由来(ろうべんすぎのゆらい)】
    志賀の里の段
    桜宮物狂いの段
    東大寺の段
    二月堂の段


まず、ワシは驚いた!


ワシ(儂)とわし(鷲)を掛けてみました。

・・・と、羞恥プレイの2乗を披露したところで、本日のご挨拶とかえさせていただきます。 







いや、終わりませんよ。

しかし、あの生態系を狂わせるに違いない鷲の大きさは予想を超えていましたね。
今まさに哀しい出来事の真っ最中というのに、ちょっと半笑いで舞台を見ている己に気付き、
「いかんいかん、ここは渚の方の悲劇の始まりなんだから」
と、慌てて鷲を脳裏から消すことに務めました。



『桜宮物狂いの段』でも、ええ、ご想像の通り、わたくしは吹玉屋の
 「さがり玉とはなんぢゃいな」
のくだり、さらっと聞き流すことはできませんでした。
さ、さがり玉って。くすっ。
こういうところでいちいち喜んでるから、いくつになっても「脳みそ中学生男子並み」と言われるのであった。

しかし、下品なことばっかり考えてるわけじゃあありませんよ!

息子を大鷲に連れ去られて狂人となってしまった渚の方が、里の子供たちに
「あの光丸は なんとした。
 なぜ誘ふてはおぢゃらぬぞ 」
と泣き訊ねるところで、思いがけずポロリ涙。

文雀師匠の渚の方はまったくもって素晴らしく、物狂いの様子から一転正気に戻った時、目に見えないスイッチが入ったかのような変貌ぶりに感じ入ることしきり。

『東大寺の段』は英大夫が勘壽さんのお人のよい雲弥坊と渚の方のやり取りを上手に聞かせ、二月堂での感動につなげてくれました。

しかし、和生さんの良弁はもちろんのこと、弟子の僧侶(玉勢・簑紫郎さん)やお供達、皆があんなにも じぃ~~ っと動かずにいるってすごいな。
タケコプターみたいな芸が終わってからは、ずっとじーっとしてるんだもん。

辛抱、辛抱、また辛抱。
徳を積んだ僧侶を上品に演ずるのは、生半の苦労ではなかろうぞ。
見ている私の方が息苦しくなってきて、席でもぞもぞ、ごそごそ・・・

そして、綱大夫の語りにはこのところやられっぱなしの私、どうやら綱さんの声は自動的に私の涙腺を緩める作用があるようです。
以前は眠くなる声No.2の位置にあったのに、妹背山といい、夏休み公演の和生・綱大夫の源蔵といい、今日の良弁親子の抱き合っての再会のシーンといい、よもやの涙ポロリ。
鬼のさむ子(別名・クソばばあ)を泣かすとは。

綱大夫=玉ねぎ?

我侭を言わせてもらいますれば、これからも、いついつまでもお元気で、私を泣かせて欲しいものです。

ずっと「玉ねぎ大夫」でいて欲しいです。



・・・ものすんごく、失礼なこと言ってますか、私?




9月公演・第二部

2010-09-13 | 文楽
無事、二部に行ってきました。

もう1回見る予定なので、感想はその後にしますが、今回、「桂川連理柵」の長右衛門について、なんだか色々と考えされられています。
好きでもないのに!

「子供といっていいくらいの娘に手を出したことで最終的に身を滅ぼすおやじ」
ということには違いないんでしょうが、長右衛門にしてはもうちょい年若の男子の苦悩っぽい?千歳さんの大熱演のくどきを聞いているうちに、長右衛門のことが頭から離れなくなってしまいました。

「 『千万年も連れ添ふて、礼が伝ひたい、堪能させたい』 の「堪能」ってナニを!?
  なにを堪能させるつもりなの、長様!」

とか。


おかげで、その夜はアロハシャツを着た千歳さんに「大悪人!」と怒鳴られる、という恐ろしい夢まで見てしまいました。

長様の何がいったい私を惹きつけているのか、もう一回見に行って確かめたいと思います。