部活日誌

部活動(ひとり文楽部)の記録など

樋口、すまぬ。

2011-09-20 | 文楽
わかった!合点がいった!


何にかというと、「ひらかな盛衰記」の逆櫓、私は、権四郎とおよし一家の哀れさ、不憫さがいかに表現されているかを一所懸命見ていました。

しかし、

「いや、ここは権四郎達の哀れさが主眼ではなく、実は、義理の息子を失ったことの哀しさと忠義の板挟みになって苦悩する樋口、が一番の見るべきところ」

なんだと聞きました。

なるほどねー、と思いながらも、お筆同様に樋口も血はつながっていないとはいえ自分の息子を若君と取り違えられて殺されたにしては、
「御身代りに立ったるは二心なき某が忠臣の存念」
とか言っちゃって、自分の(義理の)息子の命を持って主君に忠義を立てられたことを、ただ喜んでる風にしか取れないけど?

板挟みの苦悩、って、どの辺にそんなセリフが・・・??

と、何回見てもわかりませんでした。
うち、2回目はただでさえ腹弱活動が活発で、ココロここにあらず腹にあり、といううつろな時間が多かった、という私的事情もあるにはあったけれども、だ。


しかし。
浄瑠璃にとても詳しい某えるさんが教えてくれました。

権四郎に向かって、忠義と板挟みで苦しむ心情を打ち明ける樋口の長セリフがカットされている、ということを。

ははーーー。なるほど! 
なーんだ。
ただでさえ読解力も聞き取り能力もないワタクシですが、そんな大事なところカットされちゃあ、余計にわかんないのも致しかたあるまい。

調べてみたら、松右衛門内で

「その夜一所に泊り合はせ、取換へられて助かり給ふ若君は御運強く、
 殺されし槌松は樋口が仮の子と呼ばれ、御身代りに立ったるは二心なき某が忠臣の存念。
 ハヽヽア天の冥慮に相叶ひ、血を分けぬ子が子となって、
 忠義を立てしその嬉しさ、なにに類のあるべきぞ、」

の後にすぐ、

「御立腹の数々御嘆きの段々、申し上げやうはなけれども、親となり子となり夫婦となるその縁に、・・・」

と続いてるんだけど、そこの間に本来ある樋口の苦悩を表す台詞がカットされていました。



まあ、だからと言って私は今回の舞台が、そこがないばっかりに台無しだった、とも思ってないし、十分楽しませてもらいましたから、特に文句もありませんけど。

でも、知ったことでスッキリ。 教えてくれてありがとう。

そして、樋口。
貴様のことを
「ひとのあたまの皿を踏み砕くとか、どんだけ強いかは充分わかったけれどもさ。
 忠義優先で権四郎やおよしに対してあんまりにも心配りなさ過ぎなんじゃないの?」
などと思ったりして、まっことすまぬ。
不勉強なわしが悪かった。許してたべ。



9月公演・第2部

2011-09-11 | 文楽
【ひらかな盛衰記】

 大津宿屋の段
 笹引の段
 松右衛門内より逆櫓の段


【紅葉狩】


以上が2部の演目です。



まず、【ひらかな盛衰記】

・大津宿屋
・笹引

のふたつをみたことで、今回私の中のお筆(腰元)の魅力が5割増しくらいになりましたね。

松右衛門内で、駒若君と取り違えによって犠牲になった槌松の祖父・権四郎と母・およしに

「まあまあ、そこらへん、かわいそうとは思うけど
 いくら嘆いたところで槌松が帰ってくるわけでなし。
 さっぱりと諦めて、この家でやっかいになってる若君、ちゃっちゃと返してくんない?」

・・・あ、いや、いくらなんでもそこまでひどくはないけども、まあ、概ねそんなようなことを言ってくるお筆には、権四郎でなくても

「おなご、黙れ!恥を知れ、恥を!」とムカっ腹が立つところ。

しかし、上記二つ、とくに笹引でのお筆の奮闘・絶望・嘆きっぷりを見ることによって、私のキモチは

「しょうがないよ、だってお筆だって精一杯で・・・」

と同情票1票、にコロッと寝返りましたもん。

まあ、その5割増しになったお筆の魅力のうちの8割は和生さんの力かもしれません。
和生さんのお筆、強くて美しくて哀しくて、目が離せませんでした。

しかしながら。
笹引きの最後、山吹御前の亡骸を笹に括り付けて引いて行こうとするところ。
ものすごく哀しいシーンなのに、最後にツメ人形の敵がお筆に切られ、山吹御前のご遺体の上に・・・というくだり。
ちょ、ちょっと! ぷーっ。
今、私の目から涙がこぼれそうだったのに、すぅっと引っ込んだよ。
そこ、笑わせてもいいとこなの!?
と若干思わないでもないのでありました。

そして、いよいよ「逆櫓」へと進みます。

三味線の燕三さんから気迫がもわ~っと立ち上ってます。

「権四郎、頭が高い!」
あたりから、玉女さんの大きな樋口に目が釘付け。
だけど、私は燕三さんをどうしても見てしまって、
せっかくの木登りでもまたよそ見して。
と、どうも私は「三味線を見る」という弱点があって困る。
それ以前から 咲さんの権四郎にちょっと感情移入できなくて、ぼんやりと考えながら見てるってこともある。

も一回見に行きますんで、その時こそはちゃんと舞台に集中したい。しなければ。しろ。


そして、

【紅葉狩】


これ、最初の登場シーンからちょっと私はツボに入りまして。
腰元に手を引かれて更科姫が登場するところはバレエの群舞の登場みたい。ふふふ。
ふふふふふ。
とニヤニヤしている内、

「…ん? なんで4人? 腰元二人と姫の 3人のおなごのはずでは?」

と思ってよく見たら、ひとりはなんと、清十郎さんでした。

あんまり衣装がキラキラなもんで、つい・・・


そして山神の部分でもこれまたよそ見をしてしまう、ダメなオレ。
いや、紅葉狩は半分はよそ見していたといって過言ではありませんでしょう。


もう一回行った暁には、必ずや舞台に集中を・・・



行くべし 

2011-09-08 | 文楽

9月は2部に空席が多いって聞きました。

えーー、演目としたら2部の方が面白いのに。

1部が完売で2部に空席があるってことは、1部しか見ない人もいるってこと?

もったいない!

わたしは逆櫓の燕三さんの三味線聴くだけでもモト取れた、くらいに思ったってのにねぇ。

 

私はあと何回か行きますよ。

まだ空席ありみたいだから周囲にも鋭意営業中です。

 

今のところ、誰からもはかばかしい返事はないですけど・・・

 


9月公演スタート

2011-09-06 | 文楽

あ~、5月から長かった。

大阪に行かないと、こんなに間が空くものか。
あんまり長いこと見てないので、

 「文楽?なんだっけそれ。どこが面白かったんだっけ?」

なキモチになりそうでしたね。

が、東京公演が始まっちゃあ、そんなツンデレ気取り言ってる場合じゃない。


初日1部と翌日2部、まずはスタートダッシュで行ってみました。


第一部

【寿式三番叟】

【伽羅先代萩】
  御殿の段

【近頃河原の達引】
  堀川猿廻しの段

(配役表)


まず、【寿式三番叟】

これにはねー、やはり胸に堪えるものがありましたね。

国立劇場45周年記念と共に、震災後の国土復興祈念としてこの演目を 今、上演することで、
「天下泰平・国土安穏」という祈りの意味が一層の重みを増して迫ってきます。

住大夫はじめ床の面々から伝わる緊張と、客席から膨れ上がってくる期待感の中、
舞台に千歳・勘十郎さんが登場して儀式が始まります。
重々しい住さんの語りのうち、簑助さんの翁が表れ、一礼。

それだけで、もう、私の目からぶわっと涙が湧いてきましてですね。
それには自分でもビックリ。
私の中にも、澄んだ小川のような清らかなココロがまだあったようです。

文字久さんの緊張度も半端なかったですね。つられて私の背筋もチカラ入りました。
私が一緒になって緊張しても屁のツッパリにもなりませんけど。

三番叟の幸助・一輔さん、すけ&すけコンビのお二人も若々しくも清々しい舞でよかったです。
足もキビキビしてましたね。
初日故か、若干堅めの幸助さんでしたが、これから毎日遣っていくうちに、もっと茶目っ気が自然に出ていくことでしょう。
そして更なる飛躍が訪れるでしょう、と冥王星の角度が告げています。
 (占い:ルネ・ぱんだーる・さむこ)




【伽羅先代萩】
 御殿の段

私はこれ、文楽では初めて拝見。だと思った。
簑助さんの八汐、すごいねー!
嶋さんも初日っから熱い語りで、若君と千松の哀れさをこれでもかと。

千松が泣きながら歌うところなんて、もう、あーた。

話全然違いますが、ここでも「にぎにぎ」したおにぎり、次の「猿廻し」でも与次郎が白いご飯をあむあむ食べているので、見ている私のお腹も ぐーきゅるるる~ とやかましく鳴ってたまりませんでした。
でも、「おなかが 空いても ひもじうない!」
と健気に耐えまちた。(40代女・やや肥満)

 

 


【近頃河原の達引】
  堀川猿廻しの段


これは、私的に源さんの語りにやられましたねー。
娘・おしゅんを想う母と兄の情愛と、軽妙なおかしさの塩梅がまことによく、しみじみ聞き入りました。
笑いの中にはいつも哀しみがひそんでいるもんだ、という感じが伝わってくるのはさすがです。
「目は見えねども 見送る母」なんつって、もうたまらん。
また源さんで聞きたいです。

舞台でも、勘十郎さんの与次郎はちょっとしっかりし過ぎの気がしましたがもちろん素晴らしく、勘壽さんの母も簑二郎さんのおしゅんも、玉誉さんのおつるも、私のツボにびたーっときましたね。

中でも文司さんの伝兵衛のカッコイイことといったら!
色気があって、そらおしゅんじゃなくても惚れるというもんだ。

って、文司さんというと最近これ、ずっと言ってる気がする。年取るとねぇ、何度でも同じこと言うもんですよ。

 

そうそう、年取るって言えば、初日の前日のメトロ文楽、初めて見に行ってみました。

普段は仕事があるので間に合わないんですが、ちょうど台風が来ていて早く帰宅するよう言われたので、お!ちょうどいい、それじゃあ、とちょっくら寄ってみました。

しかし、開始時間ぎりぎりの到着で、半蔵門線の永田町駅ホームから改札までのながーーーい階段を走って上がるはめに… 

台風だから早く帰れ、つってんのに寄り道した罰が当たったのでしょう。

いまもって足腰が筋肉痛でございます。階段を降りる時、ガニマタです。