部活日誌

部活動(ひとり文楽部)の記録など

2014年5月公演

2014-05-27 | 文楽
 

思い切り中途半端ですが、まずは5月の日誌を書いとかないと。


国立文楽劇場開場30周年記念
七世竹本住大夫引退公演


【第一部】

 増補忠臣蔵    
    本蔵下屋敷の段
    
 恋女房染分手綱 (引退狂言)
    沓掛村の段
    坂の下の段

 卅三間堂棟由来
    平太郎住家より木遣り音頭の段

 
【第二部】

 女殺油地獄
    徳庵堤の段
    河内屋内の段
    豊島屋油店の段
  
 鳴響安宅新関
    勧進帳の段


【配役表】


とうとう住大夫引退公演の最後も最後ということで、チケット争奪戦からにわかに熱狂していた感の今回の公演。

かくいう私も千穐楽、その勇退を拍手でもって見送って参りました。

最後の沓掛村を語り終えた後、4月大阪の千穐楽と同じく休憩時間に住さんからのご挨拶があり、簑助さんからの花束贈呈がありました。
おふたりが手を固く握り合ってしばらく涙をこらえている時間、客席はそりゃもう泣くしかないでしょ、ってくらいのすすり泣きの嵐でした。

その前に、小住さんが沓掛村で白湯汲みに入っておられたんですが、住さんの八蔵母の泣きくどきの部分を聞いた小住さん、思わず涙してましてね。
そんなの見たらまたほら、泣けるのがおばちゃんで。
やめれ! 泣かせるの反則!
と思いましたよー 

しかし、舞台自体は淡々と進み、いつもの住さんの沓掛村でした。
最後の最後まで休むことなくおつとめになられたこと、本当にお疲れ様でした。
89歳まで現役の太夫を全うされたことは、なんと言っても素晴らしいことだと思います。
おしあわせなことです。
しかも最後にファンがこうして盛り上がることができる舞台も用意して頂き、心からありがとうございました、という気持ちです。

まあ私達ファンにとっての本当の「住ロス」は、次の公演に
「あ。住さんがいない…」
て思った時にやってくるのではと思いますけども。



さ、そんな住さん引退のセレモニー以外の舞台ですが。

「本蔵下屋敷」

実は私はこれでうっかり泣いてしまいましてねー 
うっかりってこともないけども。
忠臣蔵のスピンオフ、桃井若狭之助と加古川本蔵主従のお話で、単純っちゃ単純、うまいこと説明してんなー、なんて思ってたんですが。
若狭之助の

「へつらうても苦しうない、へつらうても苦しうない」

で、思わず、つーーん(T_T) と来ちゃって。

本蔵が賄賂によって主人若狭之助を助けたことで若狭之助は「へつらい武士」「卑怯者」と噂になってる。
でもそれがなんだってえの?
俺はそのおかげで短慮もとどまりこうして命もある、お前という忠臣のおかげだ、
って認めてくれるんですよね。
なんなの、血気さかんで気短な殿と思わせといて、その分別!
「義を見てせざるは勇みなし。ただこの上の頼みといふは三世の縁。未来で忠義を尽してくれ」
ですってよ、もうもう、このサラリーマン泣かせが!

思いがけず、と言ったらめっちゃ失礼ですけど、紋壽さんの若狭之助が若々しくてまさに若狭之助でした。
そしてまた、こういった忠義に縛られている男たちの苦悩が、津駒さんてほんと似合うんですよねー
それと寛治師匠の三味線ね。 後半は華麗な手のついた曲でしたねぇ
寛治師匠の襲名披露公演で選んだのがこの増補忠臣蔵だったという。
それがここで聞かれたのは誠にラッキーなことでございました。


「沓掛村」

なんといっても、簑助さんの与之助!
子供らしい可愛らしい仕草と落ち着きのなさといったら。
アホ一歩手前みたいなところがほんとリアルですよね。
アホ一歩手前、て。すごい失礼な言いぐさですけども、じゃあなんて言ったらいいんだろ。
子供ってああだよなーって思ったよ。
このこのー、あたっぽこしもないほてっぱらめ!←気に入ってる
勘十郎さんの八蔵もあったかくって血の通った感じがとっても好ましかったです。
そして文雀さんの八蔵母。
八蔵が火鉢の灰を ふっ て吹くたびに見せるあの煙たそうな自然な仕草には目が釘付け。

簑助さんと文雀さんが住さんの語りで舞台に上がっているのには、しみじみ贅沢な事だなあと思いましたね。
紋壽さん、玉女さんも悪党熊造・寅吉という端役で、にぎにぎしく引退に花を添えたかたちの舞台でございました。



「木遣音頭」

簑助さんのお柳は初めて拝見。まったくもって美しいお柳でしたねー
柳の木が打たれる時の苦痛の表情には見惚れました。
嶋さんの木遣音頭にもうるっと。というか、私は木遣り音頭は
「むざんなるかな幼き者は 母の柳を都へ送る~♪」
で100%泣くんですけども。ツボなんですよね、子供の健気な様は。三吉とか太郎吉とかさ。

そして今回の柳の葉っぱはどうも頭に刺さりがちな葉っぱでありました。
大師匠さまの頭にささる柳の葉っぱ… 足遣いの頭巾のてっぺんに真っ直ぐ刺さる葉っぱ…
笑うところじゃないので辛かったです。



「女殺油地獄」

色んな意味で鉄板でしたね。
勘十郎さんの与兵衛はますますワルだし、滑りもツルツルっと。
実はこの話、すごく好きで。
突き放した不条理さはぞくぞくします。
小心者のワルががーーっと転落して行く様って、普通、もっときっかけとか生い立ちとか、どっかしらを強調して見る者を納得させる部分があるかと思うんですが、文楽の与兵衛にはそれがあんまりなくて、私はそこが好きです。もっと与兵衛が非情でもいいくらい。
三味線泣かせの曲だって燕三さんが仰ってましたけど、ほんと、変なとこに(変、て)テーンとか来て不穏な空気が醸し出されるんですよね。
咲さんは7月公演を最後に油はおしまいにするって仰ってるそうですが、じゃあ今度からどたなが?
勘十郎さん以外の人が与兵衛をするとしたらどなた?


「勧進帳」

弁慶は左遣いも足遣いも出遣いで、ほんと、足遣いには惚れ惚れしましたでー
「ワシの勧進帳の弁慶の足で今の嫁さん惚れよったんや」
とはどなたのおことばでしょうか。
しかし、それもわかるわーと思いましたね
玉勢さんの汗だくでしかもポーカーフェイスで遣っておられるところは穴があくほど見たね。
女性ファン急増だったのでは。
後半の簑次さんもいつもながらのいい音立てて足拍子踏んでましたし、ほんと、あんたどこ見てたんだ、って言われるくらい足遣い(時々三味線)に目を奪われたのでした。
英さんの弁慶は、うーーーん・・・・・





さ、5月もおしまい。しばらくは文楽の公演ともおさらばです。

その隙に、もはやライフワーク化している「菅原」の日誌の続きをば…
日誌なのにリアルタイム感ないことこの上ナシ。