部活日誌

部活動(ひとり文楽部)の記録など

10月地方公演(再)

2010-10-12 | 文楽
宣言通り、横浜の地方公演も行ってきました。
えっちらおっちら。
蚊に4個も足首を食われながら。

ええ、会場に蚊がいたんですよ、蚊が! 
ポリポリポリ・・・ボリボリボリ・・・

ガシガシガシガシガシ!!(発狂)

と、痒くて痒くて、掻きむしる手を止められず、おかげで集中できなかったではないか、蚊め!
なんだったら私じゃなく、となりでいびきかいて寝てるおじさんを餌食にして欲しかったね。


●昼の部

【仮名手本忠臣蔵】

人形
 与市兵衛     桐竹亀次
 斧定九郎     吉田勘緑
 早野勘平     吉田玉女
 女房おかる    吉田簑二郎
 与市兵衛女房   桐竹勘壽
 一文字屋才兵衛 吉田玉佳
 めっぽう弥八   吉田一輔
 種子島の六    吉田簑紫郎
 狸の角兵衛    桐竹紋吉
 原郷右衛門    吉田玉輝
 千崎弥五郎    吉田幸助

「二つ玉の段」(津国大夫・清丈 胡弓・清公)

ここでの定九郎は結構ぺらぺら喋るのが歌舞伎との違いですが、セリフがあるせいか「クールなワル」というより、暴れん坊の悪者、って感じ? あんまり真の極悪人風情でもなさそうな。

と思ってたけど、与市兵衛が
「ほんに、ほんに親子三人が血の涙の流れる金。
 それをお前に取られて娘はなんとなりませう、娘はなんとなりませうぞいのぉ」
と、この金は苦労して拵えた大事な大事な金、どうか見逃してくれと必死で口説くのを、勘禄さんの定九郎ときたら、

すぱ~~

煙草を一服しながらてんで聞いちゃあいない風で、心が無い!
あの心の無さ、いいですねー。定九郎はそうでなくちゃ。

この段、清丈さんのソロ(?)を久々に聞けたのも嬉しかったし嬉しかったし嬉しかったです。たたみ掛けてみました。



「身売りの段」(千歳大夫・清志郎)


ここは、私より先に見た友達が、

「一文字屋才兵衛に注目してみて!」

というので、注目していました。
が、?? ナニに? どこかに大事な隠し技でもあったっけ・・・?

と思っていましたらば、



「体育座りするから! 途中で体育座り。ね、したでしょう、体育座り!」


・・・・・


そんなこと?? そ、それだけ?

それだけのために私は脇役・才兵衛ばっかりを見ているはめになったではありませんか。
まったく。したけどさ、体育座り。確かにしたけども!
そこはどうでもいいところではないでしょうか・・・ 



「早野勘平腹切の段」 (呂勢大夫・清治)


今日も床に大輪の薔薇が咲いていました。
その薔薇からは色んなものがほとばしっていました。
それは母の怒りだったり哀しみだったり、勘平の無念だったり後悔だったり、
郷右衛門の常識だったり、汗だったり唾だったり唾だったり・・・

玉女さんの勘平は、だいぶ武士っぽさに傾いた勘平だったような気がします。
そもそも、主君の大事に女といちゃいちゃしてたような男なんだけど、ここでは忠義者でカッコいいヤツ。

それにしても、勘平さん。
あんた、ひとんちに居候してる身のくせに、郷右衛門・弥五郎が訪れると

「これはこれは 御両所共に 見苦しきあばら家へ御出で、」

って言い草はないんじゃないの? 
あんたの為に身を売って金を用立てようという「あばら家」住まいの親娘の身にもなったほうがいいと思うよ。

まあ、切腹した人に説教しても始まらないけど。 




【釣女】
 太郎冠者   英大夫  清二郎
 大名     芳穂大夫 清馗
 美女     靖大夫   清丈
 醜女     三輪大夫

 人形
 太郎冠者   豊松清十郎
 大名     吉田幸助
 美女     吉田一輔
 醜女     桐竹勘十郎


釣女はみな適役という感じで破たんなく、よかったです。
府中で見たときより横浜での方が笑いもたくさん取れて、より盛り上がっていたような。

大名の時の芳穂さんの声が菊之助さんの声に似ているような気がして、そう思ったら大名の顔も菊之助さんに見えてきて、
ついでに太郎冠者の顔が英さんに見えてきて、色々な意味で困りました。

実は休憩時間に三輪さんが主役のくだらない妄想をしてしまったことから、三輪さんの醜女も余計におかしくて。
ああ困った困った。
これから私は呂勢さん、三輪さんの舞台の時、妄想内の
「ROSEちゃん、MIWA姐さんキャラ」が勝手に活躍してしまいそうで恐い。
以後、慎まねば・・・ 
 



●夜の部

【曽根崎心中】

 生玉社前の段  三輪大夫 清馗
 天満屋の段   嶋大夫  清友
 天神森の段   お初   千歳大夫 清介
           徳兵衛  睦大夫 清志郎
           ツレ    希大夫 清公

人形
 徳兵衛    吉田簑助
 丁稚長蔵   桐竹紋秀
 お初      桐竹勘十郎
 九平次    吉田玉志
 遊女      吉田簑一郎
          吉田玉佳
 女中お玉   桐竹勘壽


横浜でも、こってり激しいお初徳兵衛でした。
そして、毎回毎回、天満屋の亭主はお吸い物をあげる、あげると言っては持って来やしません。

最後の道行の三味線を聴いていると、無常感がつのりますねえ。
しーーーんと胸に響いて、観客うっとり・・・

しかし、幕が降りるや否やの撤収作業。
さすが地方公演、撤収も間髪おかずで、余韻も何もあったもんじゃありません。

でもそのくらいでちょうどいいのかも。
あのお初徳兵衛にアテられたまま会場を後にしたら、たぶん紅葉坂を転がり落ちる客多数、でしたでしょう。
現実に戻してくれてありがとう、○大夫さん(私服)。


ああ、でもやっぱり曽根崎はもう当分はいいや。
あの様式美にただ酔いしれるには、どうも私の中に「ロマンチック成分」が足りないようです。
下ネタは好きだけど、エロスは照れる。 







やはり生涯初心者

2010-10-05 | 文楽
そう言えば、現在転勤で金沢在住の友人に、
「巡業で金沢も行くみたい」
ということを、前にちらっと言っておいたのですが、友人は文楽未体験。
特に興味もなさそうに、
「へ~。そうなんだー」
程度の返答で、まぁ、私も特に強くは勧めませんでした。
趣味のことって、興味ない人に熱く語ってもねぇ。鬱陶しいだけだし。


それが、金沢公演の当日昼に

「ちょっとちょっと、今、文楽の公演の会場に来てるんだけど、
 席ってどの辺を取ったらいいの??
 真ん中?右寄り? あと、2階席からじゃ見えない??」

と慌てた様子で電話がありました。

なんでも、私がなんだかずいぶんハマってるみたいだし、そんなに面白いのか?
だったらちょいと観てみようか。
と当日に思い立って出向いたそうで。


そんな調子で、まったくなんの事前学習もなく観た友達が、終わるなり

「すっごくおもしろかった!」

とメールをくれて、ふぅ~~・・・ 

心底ほっとしました。


「清丈さんという若者はカッコいいな」

「千歳さんという人は、熱いね!」

「清治さん、すごい・・・」

「呂勢大夫という人の勢いには初めての私も引き込まれた!」

などなど、お愛想ではなくほんとに楽しかった模様。



なんかねー、あたしゃほんとに嬉しかったんですよ。
わざわざ、遠いところに住んでいる友達がひとりで観に行ってくれた、ということが。



それにしても、

「勘平はさぁ、あんた、腹切る前に舅の亡骸くらい検めなさいよ、っての!
  『やっべ。今ものすごいオレヤバい状況じゃね?』
 つって固まってるから、刀傷だか鉄砲痕だかもわかんないのよ。
 縞の財布も金盗ったらとっとと捨てる、とかねぇ」

とぶーぶー言ってるところが、さすがわたしの友。 

ああやだやだ。 やっぱり同じようなこと考えてるよ、この人。


そして、初めて見に行った人と言ってることほぼ一緒、
(「かっこいい」とか「よかった」、「おもしろかった」・・・)
いまだそんな程度の感想しか出てこない己のバカっぽさにも、改めて気付いたのでありました。

いつの日か!私もかっこいいレビューを書いてみたいもんです。(ムリ)








10月地方公演

2010-10-04 | 文楽
昼の部

【仮名手本忠臣蔵】
  二つ玉の段
  身売りの段
  早野勘平腹切の段

【釣女】


夜の部

【曽根崎心中】
  生玉社前の段
  天満屋の段
  天神森の段



ちょいと奥さん。今回の巡業公演、3000円台とかじゃもったいない位充実してるではないですか!
なんだか昼も夜もゾクゾクした。 
・・・悪寒じゃないよ、興奮で。

横浜もチケット取っておいてよかったー。
「どーしよっかなー、府中か横浜、どっちかは友達に譲っちゃおー」
なんて思ってたけど、やめた。
もう一回、自分で行こう。 

もう一回、ROSE大夫…じゃなくって、呂勢大夫の勘平腹切りを聞きたい。
簑助師匠の徳兵衛がみたい。


しかし、なんなの、呂勢さん。
なんだか凄いところにどんどん行こうとしていますね。
まさに薔薇大夫。ステキ☆

「仏果とはけがらわし。死なぬ死なぬ。
 魂魄この土にとまって敵討ちの御供す」

がストレートに胸に堪え、しびれました。



簑助師匠の徳兵衛は、私の中での徳兵衛観(うじうじぐずぐずしてお初に「死ぬる覚悟が聞きたい」と言わせた男、というイメージ)とは違っていて、
なにこの男らしさ?
徳さま、ずいぶん大人の男じゃあないの? と。
その分、お初の気丈さも薄まって、お初と徳兵衛の力関係が均衡した、とでもいいましょうか。
なんだかふたりの間に流れる空気が濃厚でこってりとした曽根崎心中だったなあと、ぼーーっと当てられてフラフラの帰り道でありました。