部活日誌

部活動(ひとり文楽部)の記録など

2014年4月公演◆菅原伝授手習鑑 (三段目-1)

2014-06-10 | 文楽
ようやく三段目に参りました。

ここからは色々と暑苦しい想いが溢れてきて、何を省いたらいいかわからないくらいです。
もう2ヶ月も経って舞台自体を忘れてるのはむしろ幸いかもしんない。
そうでなかったら超大型連載なってたわー花形出番ですどころじゃないわー


【車曳の段】

車を止めて喧嘩ふっかけたけど睨まれて大笑いされてすごすご引き下がりました。

って早い話、それだけなんですけども。


「鳥の子の巣に放れ、魚陸(くが)に上がるとは、浪人の身のたとへぐさ」

いきなり、これだ。
加茂堤でのんきに寝っ転がっていた梅王と、調子のって恋の取り持ちなんてしてた桜丸があれよあれよという間に浪人になっていたという。
初っ端から無職宣言ですね。

そんなふたりが偶然バッタリと道で行き合い、お互いの身の上を話し合います。
梅王は「築地の段」の最後で菅秀才の「館の父君母君を、頼むぞ梅王」と頼まれてたってのに、なんでか
「御台様の御行方知れず」
って、梅王、あなた…  
そんなんでいいのか。
で、御台様の行方を探そうか、それとも筑紫の国に流された菅丞相の元に向かおうか、迷っています。

そして桜丸は己のしでかしたことを 
「賤しい身にて恋の取り持ち」 「つひには御身の仇となり」
「宮御謀叛と讒言の種拵へ、御恩受けたる菅丞相様、
 流罪にならせ給ひしも皆この桜丸がなす業と 思へば胸も張り裂くごとく」

…そのまんま書き写しました、すんません。
だってこのとおりなんだもん。これ以上にうまくまとめる言葉は見当たらない。
それほど、自分のしてしまったことを悔やんでるのですよ。
 「拳を握り歯を喰ひ締め、」
ですよ!

そんな桜丸も「今日や切腹、明日や命を捨てうかと、思ひ詰めたは詰めたれど」
と既に自害することを決意してるわけですが。

しかし。
ふたりとも、佐太村の父親・白太夫の70のお誕生日会にはどうしても行かなくてはいけない。
その前にどっか行ったり、死んだりしては親に顔向けできないと、そこに引っかかってるんですねー
今だったら三角帽被ってクラッカー鳴らすとこです。
松王も加茂堤で言ってましたけど、この賀の祝いはなんとしてでも家族が揃わなくちゃいけない。
…って、そのくせ遅刻したり喧嘩したりするからこの兄弟はまったく。

そんなふたりの沈み込んでる最中に左大臣時平公の牛車が通りかかります。
偶然。
なんでこうも偶然が続くのかわかりませんが、ってそれは、お話だからです。
フィクションだからですね。
ま、とにかく、まんまる目・まんまる顔の杉王がまず「邪魔邪魔!」って登場。

無駄にイキって
「車遣らぬ!」「車遣らぬ!」「車遣らぬ!」
とかすっ飛んで出る梅王・桜丸の兄弟。
時平の尻こぶらを二つ、三つ、五六百喰らはさねば、かかかか勘忍ならぬ!!
とかって、イキってるわりには数字に関してはめっちゃアバウトな兄弟。

ここで立ち回りですが、梅王・文司さんも桜丸・清十郎さんもキビキビとして爽快でしたねー
決めポーズもびしっと、拍手拍手。
何年か前に東京でかかった時は、桜丸は車曳から簑助師匠が遣ってらっしゃったことを思い出しました。
さすが簑助師匠の和事っていうんでしょうかね、しかもキリッとした型をびしびし繰り出す様子にもうっとりしましたねー

 「待てらふ待てらふ待てらふやい!」
と英さん、もとい、勘十郎・松王(=時平に仕えてる)が登場して、三兄弟揃ってすったもんだしてますけど、時平がバリバリバリと車をぶっ壊しながらじゃーーんと登場するなり、梅・桜は 
 たじたじたじ~ へなへなへ~
「五体すくんで働かず」ってどんな眼ヂカラなんだ、時平。
しまいにゃ兄弟を青蠅さらには蛆虫よばわりして大笑いしたあげく、さっさと歩いて帰って行きました。
さっき自分で車壊したからね。歩いて帰るしかないんですけども。

玉輝さんの時平はでっかかったです。金巾子がバナナに見えたのはわたしの目の錯覚です。
玉輝=バナナ、の連想はもうやめれ。
松香さんの時平、憎ったらしかったですねー 大笑いも豪快に。
梅王・津駒さんと桜丸・呂勢さんの掛け合いも勢いがあって楽しかった。
ていうか、桜丸って絶対梅・松より子供に見えるよね。
梅王の膝にすがってるところとか、なにこの甘ったれさん!て。
ロセさんの桜もまためっちゃかわいくって。

松王:「桜も!」  桜丸:「ナアニィ!」

この、なあにぃ、が! 

ぶはははははは!

笑うところじゃないのに可愛くて、可愛い死ぬかと思いました。
もう一回聞きたいです、あの、なあに。
本人に、桜も!て後ろから声掛けてみたいです。「なぁにぃ!」て振り返ってくれないかな。


最終的には、梅と桜の中で、時平憎しから、「兄弟と一つでない忠義の働き」と宣言する松王に敵が変わってしまい、
 松王 VS 梅・桜

の図式となってしまうわけですね。

松の気も知らんと。
松っちゃんもねー、もうちっと兄弟に本音を漏らしてもよさそうなもんだけど。
そんなことしたら時平の手前具合悪いし、何より後々の「寺子屋」が成り立たないので、悟られてはいけないところですが。

勘十郎さんの松王はそこらへん、ところどころ、松王の心底が見え隠れする松王であるような気がしました。
さすが細かいなぁ表現が。と思いました。

そして兄弟は互いに残す意趣遺恨、と別れ行く~