部活日誌

部活動(ひとり文楽部)の記録など

其礼成心中

2012-08-13 | 文楽
作・演出:三谷幸喜 『其礼成心中』を観て来ました。




舞台は元禄十六年。
近松門左衛門の『曽根崎心中』が大ヒットしたため、天神の森で心中しようというカップルが後を絶たない。
その森の入り口にある饅頭屋「鶴屋」の夫婦が、そのカップルを当てこんだ商売を始めるとそれが大当り。
ところが、大近松が今度は『心中天網島』を書き上げ、網島にライバル店出現…
さあ、どうなる鶴屋夫婦!


というわけで、三谷舞台が好き、しかも文楽が好きという私にとって、ダブルで美味しい企画ではありませんか。

三谷氏が文楽のファンであるという事は常々仰っていたことですので、いつか三谷脚本×文楽という企画が実現するのでは、と期待はしていましたが、正直その日がこんなに早く来るとは思っていませんでした。
色々と制約のある中、企画実現に向けて情熱を持ってあたって下さった方々がいるということにまず感激、なのでした。


とは言っても。
実のところ、私はこの舞台を「新作文楽」という風にはあんまり捉えていなくて。
三谷氏がいつものように優れた役者さん(今回の場合は文楽の太夫三味線人形遣いの方々)を想定して脚本をあて書きした、三谷幸喜の新作舞台を観るのだ、という気持ちでいました。

実際に観たればその通り、いつもの三谷風小ネタを散りばめた、時々小さい毒の挿入もある人情コメディに演者が好演で応える、といった感じで、楽しい舞台が完成していました。
普段の文楽にはない、「あ、これは目からウロコ」という演出や、太夫三味線の位置とその移動など、
「こう来たか」
が次々にあって、2時間あっという間。

その上、三谷氏の文楽への愛+清介師の力+技芸員さんの技量のおかげで、現代の言葉で語られていながらも文楽的な世界をうまいこと醸し出していたことはちょっと嬉しかったのでした。


まぁ、私はどうしても三谷ファンであり文楽ファンであるというバイアスがかかるので、例えば三谷さんのファンだけど文楽は未体験、とか、その逆の方々がどういう感想を持つのかは、正直よくわからない。
うちのオットは「若干悪ノリが過ぎるが、概ねまぁまぁ」と何様オレ様発言をかましていましたけども。


パンフレットに


 「まずは劇場に足を運んで下さる皆さんに、喜んでもらうこと。
  新作を作る意味は、そこにあるのですから。

  もちろん、新作で冒険ができるのは、素晴らしい古典があるからこそ。
  そのことを忘れてはいけません。」


という三谷氏の言葉がありました。

思ったより楽しい時間を過ごしたにも関わらず、カーテンコールで皆さんの清々しい笑顔に盛大な拍手をおくったにも関わらず、劇場を出る時には

 「ああ、早く(いつもの公演の)文楽がみたい」

と思ってしまったというのは、やはり行きつくところはそこなんだな。

改めて「文楽の魅力とは」ということを考えるきっかけとなったのでした。





とかなんとかごじゃごじゃ言ってみましたけどね。

本音言っていいですか。

 「あの、右から2番目の三味線の人、カッコよかったねー♪」
「よかったー♪東京の文楽も行ってみよっか」

って言い合ってるお嬢さん達がいたんで、


なにっ。

メラメラメラ~~~!!

あんた達、 ¥○×■%#▼□「”<●ーーーーーっ!(※)


と思いましたね。


(※)とても全世界に向けて発信できません