<中国ブログ>中国サイコウ 元/上海駐在日本人が綴る日中経済の状況など

中国駐在時代の経験・知識をもとに、
最高(サイコウ)の日中関係の再構築を目指し、
日本と中国を再考(サイコウ)する

上海 地下鉄にみる社会変化の足音

2012-04-18 | 中国社会学

今回は、上海の地下鉄をテーマに。



以前取り上げたとおり、上海の地下鉄は既に世界一の総延長距離を有する。

しかも、今後もドンドン建設する予定で、最終的には現在の倍近くに当たる900km超になるらしい。
こうなると、他の追随を許すこともないでしょうね。。。

筆者が赴任した3年ほど前は、地下鉄のラッシュも東京のような酷さはなかった。
これを自分なりに推測すると、当時は以下2つの要因があったと考えられる。

ひとつは、タクシーの値上げ。
3年前に初乗り11元(約140円)だった運賃は、いまや14元(約180円)。
料金が上がるメーターのペースも値上げされているから、結構な値上げ幅。
「たかが40円程度の値上げじゃないか」と思うかも知れないが、手取り月収が5,000元前後の層にとっては相当痛いことが容易に推測できる。
直近の値上げ直後は、タクシー運転手の嘆きがしばしば聞かれたものだ。

こうした状況は、今に至っても大きく変わっておらず、朝夕の通勤時間帯や雨の日を除けば比較的容易にタクシーを拾える日々が続いている。
万博開催時は、ホントに大変な状況でしたから。。。

庶民のタクシー離れは、必然的に代替手段の確保へと繋がる。
そこで時を同じくして発達したのが地下鉄網というワケ。


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もうひとつの要因として考えられるのは、市民のバス離れ。
ここはもう少し正確に言うと、徐々に変化しつつあるというコト。
上海市内で縦横無尽に張り巡らされているバス網、数年前までは基本:1元が主流で、「空調」と書いたエアコン付きのバスに限って、倍の2元となっていた。
これが時代の流れと共に全車が空調付きとなり、自然な形で2元の運賃が定着することに。
こうなると、初乗り3元の地下鉄は強力なライバルと化す。

元来、バスは身近なバス停から乗降できるというのがメリットだが、渋滞に弱く定時性が確保できないという弱点を有する。

これに対して、地下鉄は駅間の距離が長いという弱点はあるものの、渋滞知らずで快適に時間を読みながら移動できるのが最大の武器。
以前は路線が整備されておらず、地下鉄に乗っても降車駅から再びタクシーやバスに乗り継ぐなんてことも必要だったが、いまは発達した地下鉄網のおかげで、奥まったところ以外は地下鉄だけで移動可能となった。
これで料金も「差不多」であれば、地下鉄利用が増えるのも当然の道理か。。。


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もっとも、最近ホントに困っているのは、朝夕のラッシュの激しさ。
日増しに乗客が増えているような@@@
筆者、通算6年間東京に在住した経験があるが、いまや東京を凌ぐほどの痛勤ラッシュと言ってもよさそうだ。
しかも、毎日風呂に入らない輩も多い中国だけに、夏の車内は色んな臭いで充満しており、キレイ好きな日本人にとっては厄介以外の何物でもない。
ま、だいぶ慣れましたケド。。。

こうした現状を書くと、さぞや列に並ばず無法地帯化しているのでは・・・と思う方も多そうだが、意外なほどキチンと列に並んでいる(どこの世界でも一部守れない人間もいますが、そういった人間に対しても堂々と注意する光景も)。
上海万博前には、市政府が「列に並ぼう!市民全体で文明生活!」というキャンペーンを打っていたが、人間は必要に迫られる(いや仕方ないと諦める)と自然にマナーが身につくものだなぁ・・・と。

そういえば、以前は地下鉄車内でも大声で携帯で喋る輩が多く見受けられたが、特にラッシュ時などはほとんど見かけなくなった。
これをマナーの向上と言ってよいかは分からないが、少なくとも文明生活の第一歩を踏み出していると言ってもよさそうだ。

もっとも、自然にこのような流れが出来たかと言えば、必ずしもそうでもないようで、運営者側もそれなりの努力をしている。
その典型的な例がコレ。



各駅に設置してあるモニターですね。
このモニター、次の列車があと何分で到着するか、始発や終電が何時か等をオンタイムで教えてくれる。
これは、日本の地下鉄では見ないシステムだが、利用者にとっては大変便利。

まあ、気の短い中国人気質を抑えるという意味合いのほうが強いかも知れません。でも、次の列車が到着する時間が分かるだけで、人間の行動は自然と落ち着いたものになるから不思議ですね。

同じようなことは、交差点にある信号にも当てはまる。





信号が「青」や「赤」に変わるまでの時間が表示されます。
コレ、ホントにいいと思うんですよね。
だって、交通事故が起こる原因のひとつが「信号の変わり時」。
事前に分かれば、ドライバーもイライラせずに済むというものです。
ただ、日本は財政難に喘いでいるので、「良い」と思っても整備はできないでしょうが。。。

しかも、地下鉄網の整備に従って、乗換えの機会も増えたワケだが、その表示もドンドン改良が加えられている。ここでも運賃収入が多いと何でも出来るなぁ・・・と関心しつつ。

ふり返ってみれば、高度成長期の日本でも現在ほどのモラルは見受けられなかったはず。
物質的に豊かににあれば、自然と心も豊かになる。
コレ、ある種の自然の摂理かと。。。

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