<中国ブログ>中国サイコウ 元/上海駐在日本人が綴る日中経済の状況など

中国駐在時代の経験・知識をもとに、
最高(サイコウ)の日中関係の再構築を目指し、
日本と中国を再考(サイコウ)する

エルピーダの倒産が意味するところ

2012-04-06 | 中国ビジネス



今回はエルピーダの会社更生法適用申請について取り上げたい。
今さら・・・と思う読者は多いでしょうね。
ま、時間がなかったという事情もありつつ、これくらい落ち着いてから取り上げるのも趣があってよいかと。

既に報道されてきたとおり、同社は経営的な迷走を辿ったあと、公的資金の投入まで受けてまで存続を図ろうとしたワケだが、残念ながら事実上の倒産という憂き目に遭った。
負債総額は約4480億円で過去最大級ですね。
投資顧問業を営む方から送られてくるメルマガでは「プロでも寝耳に水の行動」だったようで、あんなにいきなり会社更生法適用申請を行うとは誰も思っていなかったというのが正直なところかな・・・。

いずれにせよ、その後の興味はスポンサー探しの結果という形となっている。
これまでの報道では、東芝、米国マイクロン社、韓国ハイニックス社などが入札したとのことだったが、4月5日の報道で東芝は落選したとのこと。
ただ、皮肉にも同社の株価はこの報道を受けて反発しており、市場は同社のエルピーだ支援を不安視していたことが窺われる。
まあ、負債額も相当大きいですし、DRAM市場は価格の上下動が激しいですからね。本業への影響を懸念する気持ち、よく分かります。。。


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ただ、同社の撤退を受けて、エルピーダ支援候補企業から日本企業の名前が消えることが決定的となった。
つまり、エルピーダは外資企業の傘下入りすることが確実になったのだ。

これは、日本の産業界にとって、将来的に大きな損失となる可能性が高い。
DRAM製造は値崩れが激しく、継続的に儲けを出し続けていくことが厳しい業態であることは十分承知しているものの、この分野で勝負する日本企業がなくなるということは、日本がコンピュータ製造における基幹分野におけるプレイヤーを失うということを意味する。
これまで経済産業省が何とかエルピーダを誕生させ、幾多の危機を迎えても延命させようとしてきた理由がここにある。

しかし、現在の市場はこうした国内的な事情を許すような環境にない。
安くて優れたモノを生産し続ける企業体力を持った企業しか勝ち残っていけないのだ。
考えてみれば、エルピーダはまさに国内的事情から誕生した企業だった。
日本の企業が同業界で優位性を発揮していた時代にもっと積極的な経営を続けていれば・・・と指摘する向きもあるが、資金力や貪欲さで勝る台湾・韓国を中心とする新興国勢に立ち向かうのも容易ではなかっただろう。
「何とか現状を維持できれば・・・」と考える日本企業と、「1円でも多く稼ぎ、将来的にはその業界でトップに立つんだ!」と考える新興国企業。
どちらに軍配が上がるか、そのスタート地点で勝敗はついているようなものだ。

加えて、複数の企業が統合する形で誕生したことが、同社の行く末を運命づけていたとも言える。
たすき掛け人事が横行し、リスクよりも安定を求めようとする経営スタイルでは、競争が激化する同業界を勝ち抜くことは出来なかったのだろう。
また、本来メインバンクはひとつであり、有事に当たっては密接な連携を発揮するものだが、合併によって下支えすべき金融部門の責任が曖昧になったことも不幸な要因のひとつだったかも知れない。


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繰り返しになるが、同社が外資の傘下に入るというのは大きな意味を持つ。
日本は半導体製造装置の面でも高い技術力を誇っているが、半導体製造のプレイヤーが減るたびに、その技術開発のシーンを失っているとも考えられるからだ。
これは単純に考えれば分かることだが、企業というものは出来るだけ自国の技術者を雇用しようとする。これは、経営者にとっても都合がいいからで、日本企業も他国の企業を買収したときに同様のことをやってきた。
この次に起こるのは、現場サイドでの自国化であろう。いくら日本の技術が優れていると言っても、現場の開発者たちが自国優先であったならば、その声が届くはずもない。
翻って、日本企業側にこうした厳しい環境に立ち向かっていくだけの体制が構築されているか?と考えると、なかなか覚束ないというのが現状。。。

日本人には「日本は世界一、技術力のある国だ」と思っている人が多いようだが、それは過去もしくはこれまでの幻想に過ぎない。
いや、たとえ現時点でそうだったとしても、資金を投入し続けない限り技術は陳腐化してしまう。
日本の製造業のみならず、金融や行政も一体となって、日本のあるべき姿を再考すべきときが到来していると強く感じているのは、筆者だけではないだろう。

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