<中国ブログ>中国サイコウ 元/上海駐在日本人が綴る日中経済の状況など

中国駐在時代の経験・知識をもとに、
最高(サイコウ)の日中関係の再構築を目指し、
日本と中国を再考(サイコウ)する

SHARPとSONYの不振はどこまで続くのか・・・

2012-04-16 | 中国ビジネス

シャープとソニー、この2社が光り輝いていた頃、いまのような状況に陥るとは誰が予想しただろうか・・・。

両社とも以前このブログでも取り上げたことがあるが、2012年3月期決算見通しでは、更に深刻な経営状態が浮かび上がってきた。
シャープは3800億円、ソニーは5200億円という巨額の赤字見通し。
特にソニーに至っては、4期連続の赤字、しかも過去最大の赤字額という記録ずくめだ。

とはいえ、この決算見通し発表にあわせ、両社とも重要な発表を行っている。

まずシャープ。



既報のとおり、台湾の電子機器受託製造/鴻海(ホンハイ)精密工業と資本業務提携を行うという発表がなされた。「資本業務提携」と言うと聞こえはいいが、鴻海は10%近くの株式を有する筆頭株主になったわけで、しかも液晶パネルを最大で50%買い取ることも約束する大口顧客でもある。
シャープがどんなに高い技術力を有すると主張しても、商売は「売り買い」である。売主と買主、どちらの力が強いか?など論じるまでも無いこと。
その上、出資比率は低いとはいえ、筆頭株主であれば、今後予想される様々な「技術交流」という名目に名を借りた「技術流出」に抵抗することはほとんど不可能に近いだろう。

高い液晶技術を有しているが、供給能力過多に苦しむシャープ。
アップルをはじめとする優良顧客を抱えながら、技術力不足に悩む鴻海。
両社が当面の敵としている韓国サムソン電子に対抗するには、まさに最適な提携だったとも言えるが、この提携、表面上は「対等」でも内実は「親子関係」。
遂にシャープほどの大企業の領域でも中国系企業が「親」の役割を果たす時代が到来したと考えることができる。

同時に、日本では「中国企業による外国企業の買収」を対岸の火事のように考えている人も多いようだが、これは本当に危険。
今後、人民元が上昇すればするほど、日本企業の買収リスクは高まってくるという単純な理屈を理解しておく必要があるだろう。


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次に、ソニー。



ソニーの赤字計上については、「またか・・・」という域に達している。
しかも、想像を絶するほどの巨額赤字。

報道などであまり取り上げられていないが、同社はこのところ、決算期の赤字発表時に公表する収支見通しでは1千億単位の黒字見込みを発表し、時間の経過とともに黒字見込み額が減少していき、最終的には赤字に転落するという道程を繰り返してきている。
筆者は同社に投資していないが、こんなことを続けていたら、そもそも収支見通し自体がおかしいのではないか・・・と疑われても仕方がない。

今回、同社は巨額の赤字見通しの発表にあわせ、いくつかの重要な発表を行っている。
まずは、8期連続の赤字となっているTV事業の立て直し。
モデル数の4割削減、オペレーションコストの3割削減、他社との協業も含めた構造改革・・・と、リストラを想起させる言葉が並ぶ。
とりわけ新しい技術開発については、他社との協業の可能性を強くにじませている。
本当にこのようなやり方で、この事業が再起できるのか。。。

筆者は中国にいて、旺盛な中国消費市場の現状を目の当たりにしてきた。
しかし、そこでの利益追求モデルは「薄利多売」。
42型で3,000~4,000元(約38,000~51,000円)という市場価格での凌ぎ合いである。
もっとも、日本市場の値崩れによって、価格的には大差がなくなってきたとの見方も出来る。このボリューム層でしっかりと顧客を掴めれば、その上の層を取り込むことも決して不可能ではない。

筆者が最も恐れるのは、ソニー自身が自信をなくすことだ。
正直なところ、中国市場で絶好調な韓国サムソンではあるが、中国の消費者が同社の商品に心の底から満足しているか?というと、そこは怪しいものだと筆者は感じている。
その一方で、日本製品に対する好印象が現時点では残っているというのも事実。
つまり、今回の発表を見ていると、あまりにも国内的な状況への対応ばかりで、グローバル市場でどのように戦っていくのか?という視点が語られていないことに大いなる危惧を感じる。
ブランドイメージというものは一朝一夕に形成できるものではない。
その意味で、ソニーはまだまだ目に見えない財産を有している。
グローバル戦略さえ整えれば、もっとソニーは戦えるはずだ。


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あわせて、同社は2014年度に売上高6兆円、営業利益率5%以上、グループ全体で売上高8.5兆円以上などの数値目標を掲げているが、このやり方にも疑問を抱かざるを得ない。

いま、ソニーが問われているのは、現状への早急な対応である。
例えて言うならば、火事の真っ只中。
そんなときに、3年後の話をしても、聞いてくれる人はほとんどいない。
裏返して意地悪な見方をすると、現状から目をそらすための手段と捉えることもできる。

加えて、売上高と営業利益率の向上という2つの課題を同時に達成することが容易ではなくなってきたことぐらい、消費者でも理解している。
これまでの売上げ至上主義を貫くのか、それとも利益至上主義への舵を切るのか、それを明確にしたほうが各方面からの反応はよかったのではないだろうか。
そして、売上げ至上主義を貫くのであれば、中国をはじめとするアジア新興市場でのシェア確保が最重要課題となる。ここで待ち受けているのは、熾烈なまでの価格競争だ。

今回の会見では「奇策はないが、時間もない」との言葉が聞かれた。
同時に「ソニーを変える、ソニーは変わる」との悲壮感にも似た言葉も・・・。
ソニーの改革は、もはや待ったなしのところまで来ている。。。

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