愛をさがす毎日

ADHD・アスペルガー・離人症・うつ病な私の自己満足ブログ

十月廿日

2008-06-08 17:23:11 | 
 この詩は、宮沢賢治の残した「雨ニモマケズ手帳」の中に入っていた詩だそうですが、
 とてもじ~んとくる詩で、涙ながらに読んだ記憶があります。

    十月廿日 (この夜半おどろきさめ)

  この夜半おどろきさめ
  耳をすまして西の階下を聴けば
  あゝまたあの児が
  咳しては泣き
  また咳しては泣いて居ります
  その母のしづかに教えへなだめる声は
  合間合間に絶えずきこえます
  
  あの室は寒い室でございます
  昼は日が射さず
  夜は風は床下から床板のすき間をくぐり
  昭和三年の十二月
   私があの室で急性肺炎になりましたとき
  新婚のあの子の父母は
  私にこの日照る広いじぶんらの室を与へ
  じぶんらはその暗い
  私の四月病んだ室へ入って行ったのです
  
  そしてその二月
  あの子はあすこで生れました
  あの子は女の子にしては心強く
  凡そ倒れたり落ちたりそんなことでは泣きませんでした
  私が去年から病やうやく癒え
  朝顔を作り菊を作れば
  あの子もいっしょに水をやり
  時には蕾ある枝もきったりいたしました
  この九月末私はふたゝび
  東京で病み
  向ふで骨にならうと覚悟してゐましたが
  こたびも父母の情けに帰って来れば
  あの子は門に立って笑って迎へ
  また梯子から
   お久しぶりでござあんすと
  声をたえだえ叫びました
  あゝいま熱とあえぎのために
  心をとゝのへるすべをしらず
  それでもいつかの晩は
   わがなぃもやと云って
  ねむってゐましたが
  今夜はただただ咳き泣くばかりでございます
 
  あゝ大梵天王
  こよひはしたなくもこゝろみだれて
  あなたに訴へ奉ります
  あの子は三つではございますが
  直立して合掌し
  法華の首題も唱へました
  如何なる前世の非にもあれ
  たゞかの病かの痛苦をば
  私にうつし賜はらんことを

  *・*・*・*・*・*・*・*

 この詩に出てくる、夜中に咳をして苦しんでる女の子は

 宮沢賢治の妹の子で、

 ふじという3歳の姪っ子だそうですが、

 「あゝ大梵天王・・・・
  如何なる前世の非にもあれ
  たゞかの病かの痛苦をば
  私にうつし賜わらんことを」

 ・・・というくだりが胸を打ちます。子を持つ親として胸に突き刺さります。
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