M.シュナウザー・チェルト君のパパ、「てつんどの独り言」 

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突如、思い出すシエナ

2020-02-16 | エッセイ

 僕には、必ず見る数少ないTV番組がある。その一つが「小さな村の物語、イタリア」だ。企画も、ロケーションハンティングも、被写体のイタリアの村の人たちとのラポート関係もしっかりしていて、見ていると、まるでその村に自分が入り込んだような気がする。よくある単なるビジターとしての通り過ぎるヨーロッパの旅番組とは違い、取材者と村の住民たちとの間が、非常に濃密に、よくコーディネートされている。非常に質の高い番組だと思っている。

<小さな村の物語 イタリア:モンティエーリ:番組案内よりお借りしました>

 先日も、トスカーナの小さなモンティエーリという山村を訪れて、上質な栗の粉を作って生計を立てている親父さんの物語を見ていた。

 栗は日本の蕎麦と同じで、小麦が作れないイタリアの山里で、代わりに栗の粉を常食としている地方があったなあと思い出した。トスカーナ、ピエモンテ、カンパーニャなどが思い出された。ニョッキを作ったり、クレープに焼く地方もあったと思う。

 そんな時、僕の頭は突如、明確なシエナの栗のイメージを描き出した。どこに思い出の引き出しの取っ手が有るのか分からないが、突如、スイッチングが起きた。

 

<シエナ砦の城壁>

 それはかなり昔、シエナのサンタ・バーバラともよばれるメディチ要塞の上でのことだった。散歩でこの城壁の上を歩いていると、足元に大きな栗がたくさん転がっていた。数もあって、実も大きいなと手に取って見ていたら、通りすがりの女の人が、そのクリは食べられませんよと、笑いながら教えてくれた。番組で取り上げていた良質の栗の粉の話が、食べられない栗の記憶と、ふっと結びついて出てきたのだろう。不思議だった。

 

 僕の頭は、もうシエナのことに飛んで、その時のことを、思い出し始めていた。

 

<コントラーダ・フクロウの宴会あと>

 そうそう、メディチ要塞の中の広場には、前の夜に大きな宴会があったらしく、沢山のテーブルが並べられて、テーブルクロスもかけられたままであり、残飯や食べ物の箱などが、そのまま片付けられていなかった。臨時の簡易トイレが何台も、広場を見おろす城壁の上に作られていた。まあ日本的に言うと沢山の人が、どんちゃん騒ぎをしたとしか思えない。そして、広場には、印象的なコントラーダの旗が、掲げられたままになっていた。後で調べてみたら、「フクロウ:チヴェッタ」の旗だった。

 あれは、シエナ城内に宿が取れた時だった。シエナは、フィレンツェとの戦いのために、丘の上に強固な城塞都市として作られた歴史がある。シエナの城内の市街地では、車は走れない。平地からのアクセスも当然悪くて、バスでさえ、町の北西にあるターミナルまでしか入れない。一般車両は、ほんの一部しか走れない規制もかかっていた。幸い、僕の予約したホテルは、城壁に面していて、細い城壁の道をたどってやっと辿りつける、シエナ城内の端っこだった。車を止めたら、街では、歩くしか交通手段はない。

 

<ホテル アテネ>

 ホテルは古くて、お世辞にも住みが良いとはいかなかったが、シエナのチェントロ(中心)へのアクセスはよくて、カンポ広場までも、ゆっくり歩いて10分とかからない。

 あの時は、シエナには3泊していたから、カンポ広場には何度も通った。カンポ広場といえば、パリオで有名だ。僕たちが行った9月には、もうその年のパリオは終わっていたが、カンポ広場に行くには、テーブルが並べられ、黄色と水色のコントラーダの旗が架かる小道を歩くことになる。そこは、「亀:タルトゥーカ」の地域だった。

 カンポ広場のパリオは、シエナの17のコントラーダ(地域、その共同体)から、抽選で毎年10のコントラーダが選ばれて、起伏のあるカンポ広場の外周300mを裸馬を操って3周して決着する競技だ。

 

<カンポ広場 右>

<カンポ広場 左>

 カンポ広場は世界一美しい広場とも言われているが、一番高い入り口の噴水付近から、市庁舎のある一番低いところまで、標高差約3mの傾斜になっている。その外周の石畳に、凝灰岩の砂を撒いて一周、300mの走路を作り、そこを各コントラーダの騎手が命懸けで、3周して優勝を狙うのだ。8月と7月に、年二回行われる。当然、地域の結束は強く、負けてはいられない。時々、馬が転倒したり、騎手が落馬して、酷いことになったりするようだが、誰にも止められない競争がパリオなのだ。

 

<コントラーダ地図 & 二つの地域の旗 :トッカ・アコントラーダのデータより>

 ちなみに、昨年(2019年)のパリオは、二人の騎手の落馬もあり、優勝は騎手の乗っていない裸馬だったようだ。騎手が振り落とされても、その馬を持っているコントラーダが優勝ということになる。

<空から見たカンポ広場 Google Earth>

 

 

 我に返って「小さな村の物語」の話に戻ると、村の純朴な年寄りが、素晴らしく哲学的なことをしゃべっている。いつも、深いなあと思いながら、この番組を見ている。

<小さな村の物語 タイトル>

 一時、この番組のスポンサーのダイワハウスが、何かの不祥事でCMから外れ、今や頼りない東芝メモリだけの提供になったことがある。東芝の状況を見ると、もしかしたら、この番組も終わりになるかもしれないと心配したが、ダイワハウスが戻ってきて、いいコマーシャルを打っているので、当分は、この番組は楽しめるだろうとホッとしている。

 それにしても、東芝さん、頑張ってよ!

P.S.

借用情報:

・日テレの「小さな村の物語、イタリア」の紹介ページ https://www.bs4.jp/italy/

・シエナ・パリオの紹介ページ コントラーダの詳細がわかります。

 : https://emporiomediterraneo.jimdo.com/%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%83%80/



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