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街の散歩…ひとりあるき

18-19 悉逹太子入学 阿私陀仙三十二相を示 Ⅴ…『釋迦尊御一代記圖會』巻之2

2024年08月26日 | 宗教

香山に住する阿私陀仙人は神通広大の賢仙なれば、渠(かれ)を招き太子の師範たらしめば、決定(けつじ
ょう)太子の出家の望みあるを知って大王に申すべく。然らば淨飯王、其の言を信じ太子を宮中より
出したまわず、皇子も歓楽につながれて自然(おのずから)成道の望を断ちたまうべしと思惟(しゆい)し、偖
(さて)、王に對かいて曰く、太子の師範たるべき者、人間中には有まじくそうろう。兹に維那里国香
山と申す深山に阿私陀仙という賢仙のそうろう。神通広大にて通ぜざる道もそうらわず。大王、是
を召し太子の師となしたまえと奏す。淨飯王悦びたまい、覧弗には暇たまわり、先ず千人の官人に
輦車(れんしゃ)を舁(かく)くしめて、太子を宮中へ迎い還させたまい、偖(さて)、誰をか香山へ勅使に遣わ
しむべきと群臣を集えて詮議あるに、其の道数千里にして、其の間、大河剣山にして往きやすから
ざれば、誰有って参らんという者なく、空しく時日を送りけり。此の時、かの阿私陀仙人は香山に
在(いまし)ながら天眼通をもて淨飯王の意を識り、雲に駕して一瞬の間に迦毘羅城へ飛び来たり。王
宮の門に立ち、門番の官卒、是を恠(あやし)みてその名を問うに、我は香山の阿私陀なり。淨飯王、
我を招きたまうの意を知って来たれりと答う。監卒、なお疑いながら執奏の公卿に就いて斯くと奏
逹しければ、淨飯王、且(かつ)驚き且悦びたまい、百官に命じて出(いで)て仙人を迎え、殿上に請して
對面したまうに、面(おもて)は熟せる棗(なつめ)の如く、両眼、星よりもひかり、髭髪(しはつ)悉く紫にて

殆ど塵俗の類にあらず。大王深く尊敬し、其の来意を謝したまう。阿私陀が曰く、我、前(さき)に大
王の太子、羅毘尼苑無、憂樹下に出誕したまい、三十四の瑞應現じ、七歩にて法語を発したまいを
聞きそうらいぬ。然るに、鬱頭覧弗(うづらんふつ)、我を召して太子の師とせよと奏せしは渠(かれ)が一
時の方便にて、我に太子を相させ大王に告げる所ならしめんとす。我また神通力にて大王の意を識
り王宮へきたれり。願わくば一度太子に見(まみえ)しめたまえと告ぐ。淨飯王、歓喜に勝たまわず、
阿私陀仙と俱に宝輦(ほうれん)を促して月景城へ行幸あり、憍曇弥夫人に対し仙翁の来意を示し、悉逹
太子を召して仙人を礼拝せしめんとたまう。阿私陀忙(いそがわ)しく押し留め、太子は是三界中の至尊、
何ぞ我を拝せしめたまうの理あらんとて、自ら起(た)て合掌し、太子の足を拝すること三度す。
憍曇弥、仙翁に對かい、願わくば神仙、太子を観相して将来の禍福を示したまえと仰せければ阿
私陀、諾(うけ)て熟然(つらつら)太子の相貌および手足を見て、一賞三嘆し、この君実に三十二相を具足
したまえりとし、王位を践みたまはば十九にて轉輪王となりたまわん。もし出塵したまいて一切種
智をなして天人を済度したふべしある。尊やとて亦三拝す。淨飯王、問いたまわく。三十二相とは
如何なることをいうや。阿私陀、太子を指して曰く、一には項髻(うなじもとどり)肉成、二には眉間百毫
(みけんひゃくろう)白く軟らかに、三には眼睫(がんしょう)牛王の如く、四には眼色金精(こがねのせい)の如く、五
には音声迦陵頻伽(かりょうびんが)の
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