ほれたまねじやうづにするではやるなり
惚れた真似上手にするで流行るなり
はやりおやまおきて居るよなひまハなし
流行り女形起きて居るよな暇はなし
つりばりのやうなかしくできやくをつり
釣針のやうなかしくで客を釣り
かしく:かしこ(女性が手紙の最期に書く)
縦書き「かしこ」が釣針のかたちに似ている、と
けいせいハなミだおきやくハよだれなり
傾城は涙お客は涎なり
あどけないやうでむしんにぬけめなし
あどけないようで無心に抜け目無し
あいつ、いくらとってやろうか
のたくつたミゝづをゑばにきやくをつり
のたくった蚯蚓を餌ばに客を釣り
のたくった蚯蚓のような文字で客を釣り
はながミを口にあづけて手をあらひ
鼻紙を口にあづけて手をあらひ
なまめかしい、と
おやの爪その火をむすこ茶屋でけし
親の爪その火をむすこ茶屋でけし
四季をりをりのたはむれに母こまり
四季折々の戯れに母困り
春は花見、秋に月見や紅葉狩り、冬は雪見
と称しては吉原通い
まる山のけいせいふねをかたむける
丸山の傾城船を傾ける
丸山:長崎丸山の傾城
丸山の傾城は、城主まではいかなくとも
湊出入りの船くらいは傾ける
城でさへいはんやくらにおいてをや
城でさえ况んや蔵においておや
ばひやつてかふろほたるをつかみけし
奪い合って禿(かむろ)螢を摑み消し
禿は、螢を奪い合い、ついには殺してしまった
禿:下働きの女の子
すゑぜんをきらひむすこはかひぐひし
据え膳を嫌い息子は買い食いし
四ツ切をやぶりはじめハわかだんな
四つ限(ぎ)りを破り始めは若旦那
四つ:午後十時、午後十時の門限破り
夜遊びで四つ限破り始めは若旦那
仲の町さくらにまけぬやなぎごし
仲の町桜に負けぬ柳腰
吉原仲の町の夜桜にまけぬ、花魁たちの柳腰…
松はつれなしさくらにハつれがあり
松は連れなし桜には連れがあり
松見物では連れができないが、
吉原の夜桜見物なら連れができる