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matta

街の散歩…ひとりあるき

36鄭簡道餉酒 曽幾(1084〜1166)……詩仙堂・詩仙の間

2024年07月06日 | 詩・小説
Leica M8.2/ summicron 35mm ƒ/2.0 first 修学院離宮

36鄭簡道餉酒 曽幾(1084〜1166)
烟雨昬昬二月梅  烟(けぶる)雨 昬昬(こんこん)たり二月の梅
全家避冦寄城隈  全家 冦(こう)を避けて城隈(じょうわい)に寄る
欲尋碧落侍郎去  碧落侍郎を尋ね去らんと欲して
遽沐青州従事来  遽(にわか)青州従事に沐(もく)し来る
令我妻拏争洗盞  我が妻拏(だ)をして争うて盞(さかずき)を洗は令(しめ)て
想公伯仲正伝杯  公の伯仲正に杯を伝ふるを想ひ
安能鬱鬱久居此  安(いずくん)ぞ能く鬱鬱として久しく此(ここ)に居(お)らんや
旦傍茶山松逕回  且(まさ)に茶山松逕(けい)に傍(そ)うて回(まわ)らんと

餉:おく(る)、昬昬たり:ぼんやりしている、くらい、沐:あらう、めぐみを受ける、拏:とらえる、逕:みち
曽幾■北宋末から南宋初期にかけての詩人

鄭簡道に贈る酒

煙る雨に あたりはぼんやりとし 二月の梅が見える
すべての家が敵をさけ 都市の隅に寄っている
碧落侍郎を尋ね 去ろうとし
急に青州従事に会ったところ はなむけに酒をもらったので
酒宴を開いて妻たちに杯を洗わせた
鄭簡道公もまた 兄たちと酒宴を催して杯をまわしているさまを想像する
自分もいつまでも心を傷めてこの地にいようか
茶山に引っ込んで松の小路にそって悠々と散歩しよう
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35黒梅 陳与義(1090〜1138)……詩仙堂・詩仙の間

2024年07月05日 | 詩・小説
Leica SL/Valio-Elmarit-SL ƒ/2.8-4/24-90mm 白梅

35黒梅 陳与義(1090〜1138)
粲粲江南萬玉妃  粲粲たり江南萬玉妃
別来幾度見春帰  別来 幾度か春の帰るを見る
相逢京洛渾依旧  逢へば京洛に相 渾(すべ)て旧に依る
唯恨緇塵染素衣  逢唯恨む緇塵(しじん)素衣を染むるを

黒梅:水墨画の梅、粲粲:光り輝くさま、妃:楊貴妃、緇塵:黒い塵、素衣:白衣
陳与義■晩年参政知事にのぼり高宗を補佐した。詩は衰退した南宋に一人気を得た。

江南には萬玉の妃のごとき梅が美しく咲く
自分はその梅と別れて幾年か経た
都の梅を見ると すべて昔と変わらない
しかし黒い塵が 私の白衣を黒く染めるのが恨めしい
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34妾薄命 陳師道(1053〜1201)……詩仙堂・詩仙の間

2024年07月04日 | 詩・小説
Leica MP/ summilux 75mm ƒ/1.5 ヒナゲシ(虞美人草)

34妾薄命 陳師道(1053〜1201)
主家十二楼  主家は十二楼
一身当三千  一身三千に当る
古来妾薄命  古来 妾薄命
事主不尽年  主に事えて年を尽さず
起舞為主寿  起舞して主の寿を為す
相送南陽阡  相送る南陽の阡(みち)
忍着主衣裳  主が衣裳を着けて忍んや
為人作春研  人の為に春研を作すを
有声当徹天  声有り当(まさ)に天に徹すべし
有涙当徹泉  涙有り当(まさ)に泉に徹すべし
死者恐無知  死者恐らくは知る無からん
妾身長自憐  妾(わらわ)が身長(ながら)へに自ら憐む

主家十二楼:仙人の居所、一身当三千:「後宮美女三千人」に擬し、自分が最も愛された、
阡:墓道、春研を作す:化粧をする
陳師道■蘇軾の知遇を得て、徐州の教授となるも、生涯、貧困で過ごす。

主家は十二の立派な楼閣があり
自分は後宮の美女3000人相当の美貌だった
古来 美女薄命といわれる
主に仕えて年も経ていない
主の長寿を祈って舞ったこともある
いまや主人は南陽の墓に葬られている
主の衣裳を着て春のごときあでやかな姿をしたこともある
自分の声は天に届き
自分の涙は泉下に届くだろう
死者は自分の涙を知ることはなかろう
主を失った自分の運命を憐れむのみ
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33次韻揚明叔 黄庭堅(1045〜1105)……詩仙堂・詩仙の間

2024年07月03日 | 詩・小説
Leica M8.2/ summicron 35mm ƒ/2.0 first ユリカモメ

33次韻揚明叔 黄庭堅(1045〜1105)
老作同安守  老いて同安の守(かみ)と作(な)り
蹇足信所便  蹇足(あしなえ) 所便に信(たよ)る
胸中無水鏡  胸中 水鏡無し
敢当更部詮  敢て当らんや吏部の詮に
恨此虚名在  恨(うらむ)らくは此の虚名の在りて
未脱世絆纒  未だ 世の絆纒を脱せず
夢作白鷗去  夢に白鷗と作りて去る
江南水如天  江南 水 天の如し

同安:同安州、所便:通信か、水鏡:明鏡、詮:銓衡・選考(官吏の選考)、絆纒(はんてん):まつわる絆、
黄庭堅■蘇軾の門下、党争に一生を過ごした。蘇軾は「超逸絶塵、万物の表に独立し、世久しくこの作なし」と。

老いて同安州の長官となるも
足もなえて通信にたよっている
胸中に人物を判断する明鏡もなく
官吏の選考に当たりたくない
怨むらくは虚名「同安守」のため
いまだ俗務もしなければならぬ
いっそ夢に白鴎となってどこか飛んでいきたい
江南の水は天のごとく青い
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32雪後 蘇軾(1036〜1101)……詩仙堂・詩仙の間

2024年07月02日 | 詩・小説
Leica MP/ summilux 175mm ƒ/1.5 皇居前

32雪後 蘇軾(1036〜1101)
城頭初日始飜鴉  城頭の初日 始めて鴉を飜(ひるがえ)し
陌上清泥巳没車  陌(みち)上の清泥巳(すで)に車を没す
凍合玉楼寒起粟  凍は玉楼に合し 寒さは粟を起す
光揺銀海眩生花  光は銀海を揺がし眩しく花を生ず
遺蝗入地応千尺  遺蝗(いなごの子)は地に入る応に千尺なるべし
宿麦連雲有幾家  宿麦 雲に連り 幾家有る
老病自嗟詩力退  老病自ら嗟(さ)す 詩力の退(しりぞ)くを
空吟氷柱憶劉叉  空しく氷柱を吟じて劉叉を憶(おも)ふ

清泥:晴れた日のぬかるみ、銀海花を生ず:チカチカする、銀海:目のこと、遺蝗:いなごの子、
雪がつもると深く地中に入る、宿麦:春、秋まき、翌年に実る、氷柱:劉叉の作品
蘇軾■散文に赤壁賦、詩ははば広く作詞し、経学、史学にも通じ、書、画にも優れる。

市街のほとりに初日がさし 鴉が飛び交っている
路上には晴れた日のぬかるみがすでに車を没するばかりに深く
玉楼は凍てつき 寒さが粟を生じしめる
まぶしい光は目にキラキラして花を生ずるようだ
蝗の子は千尺の地にもぐり
麦は雲の彼方に連なりのび 家が数軒あり
自分は年老い病気がち 詩をつくる力の衰えを歎くばかり
むなしく詩「氷柱」を吟じて劉叉を忍ぶのみ
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