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街の散歩…ひとりあるき

13-14提婆逹多 世尊に冦(あだ)す 并(ならびに)卒都婆の功徳『釋迦尊御一代記圖會』巻之4

2024年11月03日 | 宗教

提婆 世尊に冦(あだ)す 并(ならびに)卒都婆の功徳
世尊、已に慈母と二世の向顔なし給い、説法残る所なく終り給い、今は下界へ下
らんと帝釈天后妃に別れを告げ給えば、ともに余波(なごり)を惜み給いながら、留め果つべきに
あらざれば、帝釈天、天將に命じて如来還幸の路に三つの宝楷を造らしめらる。中
央は閻浮檀金、左は瑠璃、右は瑪瑙、其の雕镂(ほりもの)細密にして人工の及ぶ所にあらず。
世尊、師弟、是を躡(ふん)で降り給うに、梵天葢を犱(く)り、四天王左右を守護し、二十五菩
薩前後を囲繞して花を散らし伎楽を奏し其の他無数の諸菩薩恭
敬礼拝して送り奉り給う。実に尊き御事なりけり。然るに、不測の魔障あり。
世尊の叔父、斛飯王(こくほんおう)御子、提婆逹多は往年(そのかみ)小弓始の勝負、相撲の勝劣
なんどに敗せしより、深く遺恨を含み如何にしても仇を復(かえさ)んものと思いけるに、悉
逹太子、宮中を潜び出行方しらず成り給いしかば、少時(しばし)其の嗔怒を忘れさるに、
学道成就して再び世に出給いてより万人其の法徳を仰ぎ、尊信せざる者
なければ、提婆逹多亦嗔恚(しんい)の炎胸に充ち、世尊を害し佛法を破滅せんと
大悪念を発して摩偈国の北冥山に住む沙性妙顕とて神通広大にて能く魔

神を役使する道士を師として邪道を学び、神変奇特の術を習い究め雨をよ
び風を招く事を得けるが、今、如来の忉利天より降り給うを知り、是ぞ究竟(くっきょう)の時
節よとて十六魔王、百種外道、七種速疾鬼等を招き集め波羅那国の
鉄囲山の半腹に屯し世尊の還幸を妨げ害し奉らんとぞ謀りける。世尊、早や
是を知り給いながらける。悪魔外道をも遂には佛果を得せしめんと却って大慈悲
を生じ給い、些(いささか)も怕れず諸羅漢を引き連れ、雲上より降り給うに、待ち設けし天魔
波旬百千の悪相を現じ、毒霧を振らし、黒雲を発して世尊、師弟を千
重万囲にとり籠め、利(するどき)箭を射くる事雨の如し。世尊、微笑し給い摩迦薩如
意を揮(ふるい)給えば数万の箭さき忽ち五色の妙花と成り、毒霧は却って香風と
成り、いとヾ膚を涼しからしむ。魔軍、この体(てい)を見て大いに怒り、鋼刀を揮(ふり)、長戟
を回して斬り近づく。世尊、亦、如意を以て虚空を拂い給えば数万の刀戟魔
軍の手を離れ、空中に遍満して却って魔神に向かって降り下ること雨の如くなれ
ば、魔軍狼狽(うろた)え周章(あわて)踵(きびす)を返して逃げんとするに、四天王十六善神其の他無数
の天将四方八面に充満して大悲の弓箭を張り、あるいは降魔の利𠝏を閃かし
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12-13世尊 忉利天(とうりてん)にて二世の母君に謁(えつ)す『釋迦尊御一代記圖會』巻之4

2024年11月02日 | 宗教

神力の天童数百人に囲繞せられ帝釈天出現し給い、世尊を恭敬礼拝して曰く、
妙覚無為の如来はるばる来臨を辱(かたじけ)のうし給う事、天上の幸福(さいわい)何の幸かこれに過ぎ
候べきと拝謝ある。世尊も荅礼(とうらい)して曰く。予、此の忉利天に来たる事三箇條の専用
あり。第一は五十六億七千万歳賢劫三會の暁、弥勒菩薩出現し末燈(みしょう)の
衆生を済度有るべき時の為、前佛後佛の血脈を授け奉らん為。二には、大集月蔵
経(きょう)を付属し奉らん為。三には、喜見城に住しめ給う后妃の前身は予が乳味(にゅうみ)の大
恩を蒙りたる母にて在(いま)せば、報恩のため説法し奉らん爲也。と、仰せけるに、帝釈
天、不審(いぶかし)く思い給い、如来の金言疑い奉るにあらねども后妃の年八十八才な
り。然るに生む所の母と仰するは、如何なる證跡(しょうせき)の候やと問い給う。世尊曰く、后妃の因
位の昔、摩迦陀国の主淨飯王の宮妃に備わりし摩耶夫人にて、予が出生後
七日の後逝去し給い、愛執の闇に迷い給う。予、其の苦患を救い奉らん為、発心
修行し難行苦行の功力に因って、無明の闇を出で上界に生を受け君の后
妃に備わり給えり。猶も疑い給わば、兼ねて二世の對面なさん時の證跡に予(わが)、胎内
に在りし時乳汁(にゅうじゅう)を残し封じたり。今、喜見城の帳内にて乳房を絞り給わば乳

汁迸(ほとばし)りて予が口内に通じ候わんと示し給う。帝釈天、奇異の思いをなし給い天
童を以て后妃の御許へ如来の金言をつたう。后妃は法ゝましき殊に思し召しながら如来
の金言といい、帝釈天の勅なれば已む事を得ず九重の翠廉(すいれん)の内三重の
錦帳を隔て素雪(そせつ)の御胸を開き乳房を絞り給うに、乳汁糸を曳くが如く錦
帳を超え翠廉を漏れて、世尊の口内に通じけるぞ不測(ふしぎ)なる。帝釈天も阿羅漢も
此の奇特を見てあっと感じ思わず首を低(たれ)て偈仰(かつごう)ある。后妃は歓喜に勝(たえ)給わず、
喜見城を立出(たていで)て世尊を礼拝し給い、二世の對面なし給うにぞ世尊も后妃を拝
し給い、其の後、学益胎に入り給いて帝釈天に前佛後佛の血脈(けちみゃく)並びに月蔵経を授
与し、次に后妃の為に般若を説き給う。是によって后妃宿命を識り善根純熟して永く
生老病死苦をはなれ給う。其の御歓びの余り后妃、乖々(うざうざ)の花を手折りて如来に捧げ
給い、願わくは一佛浄土の引接(いんしょう)を違え給う事なかれと固く結縁して拝し給いけり。
摩迦曼荼羅華是なり。今も佛前に花を献る人は、葉慚愧懺悔万徳圓満
摩迦曼荼羅華と此の文を唱えて捧ぐべきなり。然(され)ば、諸天、諸菩薩納受あ
りて一佛浄土の臺にいたらんこと疑いなし。
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11-12世尊 忉利天(とうりてん)にて二世の母君に謁(えつ)す『釋迦尊御一代記圖會』巻之4

2024年11月01日 | 宗教

其の旨を世尊に申す。佛勅を受けて戒師となり、遂に妃の飾りを落とし比丘尼となす。
耶偷陀羅女此の時三十七歳、盛りは少し過ぎぬれども尚散り残る花の面㒵(かんばせ)端麗な
るに、丈に余る緑の黒髪を薙ぎはらい、羅綾の袂を墨染めの袖にかえ給うは殊勝にも
亦有り難かりし発心なり。世尊、此をご覧じ善哉比丘尼と賞し給いて、御名を
妙恵と号賜う。此の時、年来、姫に奉公せし婇女五十余人も悉く剃髪して女僧
となりぬ。斯くて耶偷陀羅女得道の事、月景城へ聞こえければ憍曇弥夫人悲しく
も亦殊勝に思し召し、夕陽山の麓に庵室を造営(つくりいとなみ)て進らせるゝにぞ、妙恵尼歓びにたえず、
深く恩を謝し庵室に移住して、菩提恵中と四字を題せし額をたち三摩
那行に入り、行いすましてぞ御坐(おわし)ける。然れば女人の出家して佛弟子となるは妙
恵尼よりはじまれり、。是、しかしながら阿難尊者の法情による所なれば、末世と
ても女僧(あま)とならん者は如来の御事はいえば更なり。阿難尊者を供養し法恩を謝し
し奉るべきなり。

世尊 忉利天(とうりてん)にて二世の母君に謁(えつ)す
一時(あるとき)世尊、諸羅漢に仰せけるは、予(われ)往年、檀特の難行終し時、法(のり)の師阿羅々仙が曰く、

汝が信力に依って実母摩耶夫人上天に生を受け、忉(とう)利天王の后妃に具われりと。予(われ)其の
時はいまだ六通を得ざれば信ぜざりしが、今已に三明六通を得て三千世界を観
通するに、阿羅々仙の言、果たして虚ならず。故に予(われ) 忉利天に昇り帝釈天に説
法せんて思えり。三加葉、舎利弗、目連、阿難、伽難、富楼那、優波離等は予(われ)に
従いて昇天し候へと仰せければ、羅漢達大いに歓喜し其の日遅しとぞ待たれける。世
尊は四月一日より七日が間終法ありて満ずる日天門に向かい、虽(すい)應不生現神力
不変真如妙覚圓満今現在當来同示摩訶敷衍漐と唱え、摩迦薩如意を
以て虚空を麾(さしまね)き給えば、奇なるかな忽ち金色の雲たまびき降り、雲中に八葉
の蓮華坐数多あり。五十二菩薩来迎ありて如来師弟を引接して蓮華
坐に請じ、忉利天へぞ昇り給いける。誠に如来の神通力不思議と申すも疎かなり
けり。斯くて世尊は諸羅漢とともに忉利天にいたり給い法臺の内院を御覧ある
に、金剛妙色の雲中に三宇の臺あらわれたり。東の殿は善現殿と額うち
西の臺は喜見城、南の耬は額益胎禅現とあり。釈尊、阿羅漢を顧(かえりみ)給い、予が
法を説くべきは南殿なりとて、少時(しばし)佇みて在(おい)けるに東の臺の玉扉を開き飛行
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10-11阿難、迦難、優婆離、耶偷陀羅女 得道す『釋迦尊御一代記圖會』巻之4

2024年10月31日 | 宗教

近づく、発心善道は夜々に遠し。厭いてもいとうべきは生老病死苦なり。慕い
てもしたうべきは甘露の法味(ほうみ)なり。唯、願わくは如来、我をも法弟となし発心修行
なさしめ給えと願わるゝにぞ、世尊、善来比丘と曰い、即時に剃髪させ法衣を着せ
させ給う。是を阿難尊者と申す。多聞通を得て十大弟子の一人たり。是を見て
白露飯王の御子、㫋陀(せんだ)太子(伽難学者)、烏陀夷(優婆離学者)も同じく佛弟となる。是十
大弟子の中(うち)たり。其の他動じに比丘となる者百五十余人にぞ及びける。兹に
耶偷陀羅女は人々の多く出家得道のあるを見て、心中に思い給いけるは、世尊再び
宮中へ回り給いしより大王はじめ人々の疑い説け、胸裡の闇腫れわたりた
れば、現世の思い出是に過ぎず。若君さえ得道し給えば、女ながら戒律を授かり
菩提の路に入らばやとて、舎利弗に就いて出家の望あるよしを願い給うに、世
尊、敢えて許し給わず。耶偷陀羅女大いに歎き、なお再三再四願いて止み給
わず。目連、其の志を憐れみ、如来に免許あらん事を乞うと云えども、世尊、猶も
肯んじ給わずして曰わく。夫れ、女人をして予(わが)法門に入らしめば仏道清浄
の路悠久なる事能わじ。例えば稲に莠(はぐさ)の雑(ま)じり生じて遂に稲の秀で

たるが如し。只菩提の念を止むべしと固く許し給わざれば、目連も理に伏して耶偷陀羅女にその
旨を告げ、唯、発心の念を思い止まり給えと諌む。姫大いに望を失い深き歎きに沈み給いける
が、一時、阿難、法用に就き殿門を出る時、妃(ひめ)は破れ衣を着し、徒跣(すあし)になりて路上
(みちのべ)に跪(ひざまず)き号泣して地に倒る。阿難、愕き其の故を問う。妃(、答えて曰く、吾が儕(み)、菩
提の道に入らん事を願うと云えども、如来敢えて許し給わず。此の故悲しみに堪えずける姿となり
て候といいも敢えず。亦、雨(さめ)然と泣き給う。阿難其の志の切なるを感じ扶け起こし慰めて曰く。
深く歎き給うことなかれ、我、如来に謁し懇(ねんご)ろに願い御望を達せしめ進らすべしとて諫
め諭し、宮中へ回らしめ、偖(さて)、世尊に謁(えつ)し問うて曰く。曽て如来に承る、過去の諸佛
皆、(比丘)、比丘尼、優婆塞、優婆夷の四部の衆を具し給えりと説き給えり。此の事、実に候
や否や。世尊曰く、許より過去の諸佛に四部の衆あり。阿難が曰く、然らば何故、耶
偷陀羅女は出家得道を許し給わざるや。世尊曰く、女人は物に感じ安く亦変
じ安し。此故に軽忽(けいこつ)に許さず。彼もし八敬を守り、大精進をなして変せずんば
得道を恕べし。阿難悦び退いて耶偷陀羅女を招いて世尊の仰せを告げければ、妃
は歓喜にたえず、天地い誓い八敬を守り大精進すべしと申さるにより阿難
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09-10阿難、迦難、優婆離、耶偷陀羅女 得道す『釋迦尊御一代記圖會』巻之4 

2024年10月30日 | 宗教

候べき。朕が事を念とし給わず法坐にのぼり説法し給えと倫言あれども、
世尊、尚推しかえし給い、説法と申しも別の義に候わばこそ、衆生の邪を誡め悪を退
け、自然の善道にいたらしむる階梯に候なれ。人に七恩あり。是を知るを以て人倫
とし、知らざる鬼畜木石にも劣り候。先ず第一は天地の恩、人の胎内に宿るより
生育するを天地の恵み非(あらざ)ることなし。此の恩を知らざる者は死して無明の闇に迷い
昼夜を辨(わきま)えること能わず。第二に国王の恩。人、生して天地の恵みを得るとも国
王聖明ならざれば父母も養うこと能わず。然れば其の恩を知らざれば地獄に堕落し
て猛火のために身を焼るゝの苦患あり。第三には父母の恩。母体十月の深恩
はじめ出生後父は終日外に出て世業(せぎょう)の為に身を労し、母は終夜養育の
為に睡らず。此の恩を知らざれば畜生道に生を得、或いは五躰不具の者となる。第四
に師の恩。人、成長するとも教え導く人なくんば鬼畜と異ならず。此の恩を
知らざる後身、愚痴無知の者と生まれて終に悪趣に堕落す。第五に朋友
の恩。仮令(たとえ)師ありて教導すとも、良友の補(たすけ)なくんば発達することを得ず。
此の恩を知らざる者は、慳貪無慚(けんどんむざん)の者と生まれて天罰を蒙る。第六には従累

眷族の恩。良友ありて過ちを正し非を諫め、善道を導くとも眷族の助力(たすけ)な
くては銭財竭(つき)て長久を得ず。この恩を知らざれば後身人非人となりて終に餓鬼
堂に堕落す。第七に衆生の恩、身に良友眷族の助力ありとも衆生其の能
を愛し才を賞せずんば世に交わる事能わず。此の恩を知らざれば、後身孤独の者とな
り、刀剣の地獄へ落つ。慎みても慎むべきは此の七恩なり。就中(なかんずく)予(われ)第二第三の高
恩を蒙りたること。須弥山猶低く、滄冥海(そうめいかい)も尚浅し。然るに父王を下に□(おき)
奉り、予(わが)身高坐の上にありて説法するならば、諸天の悪を請け、十二年の難行
も水上の泡と消え候べし。と、仰せければ淨飯王、龍顔に感涙を浮かめ給い、実に有り
がたき御事かな。是に増したる説法はあらじ。かほどに理をつくし給う佛意に悖(もと)ら
んも憚りあり。然れば朕は簾内(きんない)に入るべし。如来は高坐に上りて御法(みのり)を説き給えとて
已むことを得ず玉座に入らせ給いけり。是によって世尊法坐に上らせ給い四諦十二行
法倫を縛(てん)じ般若の功徳を説き給うにぞ、淨飯王はいえば更なり、后宮新宮及
び月卿雲客、随喜の涙をととめかね給う。其の中にも甘露飯王のの御子廣耶(こうや)太
子、分きて世尊の説法を聴聞ありて感服あり。実(げに)や世路の悪道は日々に
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