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街の散歩…ひとりあるき

40 ぶちまけるやうに千鳥ハおりるなり『畫本柳樽』初編

2024年03月23日 | 川柳

■ぶちまけるやうに千鳥ハおりるなり
※千鳥の群が、いっせい方向転換で舞い降りる

■匕でもるものとは見えぬくすりふね
 匕で盛る物とは見えぬ薬船
※匕:匙:こんな大きな船に、小匙でもる小さな薬だけ満載か…

■この花としん中しろと札をたて
 この花と心中しろと札を立て
※「(桜の)一枝を切らば、一指をきるべし」
 桜が満開の須磨寺の境内に、義経は弁慶に命じて上の高札を立てさせた。
 義経は、かつて兄弟とともに母の常磐に連れられ、吉野の山で凍死寸前の
 ところを平家方に囚われた。が、幼い命と救われた。その武士の情けを身
 をもて知った。で、平家の若い公達を桜に見たて、敵といえども幼い命を
 散らすな、と。その意を解した熊谷次郞は十五歳の平敦盛を討たなかった。
                     (狂言『一谷嫩(ふたば)軍記』

■紙ひゝなこけるときにも女夫つれ
 紙雛(ひびな)こけるときにも夫婦づれ
※折った紙雛は倒れやすい。飾るときに少し重ねるので倒れるときも一緒。

■紙びなをとなりの米やつきたふし
 紙雛を隣の米屋つき倒し
※米屋が杵を下ろす振動で…紙雛つき倒され

■福寿草あにきのそバに居さうらふ
 福寿草兄貴のそばに居候
 福寿草も梅の時期に咲くが、少し梅が早いのか

以上で『畫本柳樽』初編を終了です。
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39 その手代その下女ひるはものいはず『畫本柳樽』初編 

2024年03月22日 | 川柳
■その手代その下女ひるはものいはず
 その手代その下女ひるは物言わず

■わがすかぬをとこのふミハはゝに見せ
 我が好かぬ男の文は母に見せ

■口に手をあてるがくどきしまひなり
 口に手を当てるが口説き仕舞いなり
※口に手をあてる…いまは何もいわないで、か。

■できぬやつおよしなさいとかたくいひ
 出来ぬ奴およしなさいと堅く言い
※お門違い、きっぱりお断り

■くどかれて娘は猫にものをいひ
 「あれま、どうしようネ」と猫に言い

■いひ出して大事の娘よりつかず
※告白したとたん、大事の娘よりつかず …警戒か?
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38 もらひ乳にかハるきぬたのちからすぎ『畫本柳樽』初編

2024年03月21日 | 川柳

■もらひ乳にかハるきぬたのちからすぎ
 もらい乳に代わる砧の力過ぎ
※砧打ち:洗濯した布を生乾きのまま台にのせ、棒や槌でたたいて柔らかくし、
皺をのばした

■ぶちまけて二タあしにげる炭たわら
 ぶちまけて二足逃げる炭俵
※炭ぶちまけて粉塵がもうもう、二足逃げる

■うちハうりすこしあふいで出して見せ
 団扇売り少し扇いで出して見せ

■かハきりハをんなに見せるかほでなし
皮切りは女に見せる顔で無し
※かわきり(皮切り):最初、最初のお灸

■ふろしきをとくとかけ出すまくハうり
 風呂敷を解くと駈け出す真桑瓜

■てならひ子かへると鍋のふたをとり
 手習い子帰ると鍋の蓋をとり
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37 蟻ほどに千畳じきのたゝミさし『畫本柳樽』初編

2024年03月20日 | 川柳

■蟻ほどに千畳じきのたゝミさし
 蟻ほどに千畳敷の畳刺し
※江戸城最大の大広間で500畳だったというが...

■まな板をたばこの間にけづらせる
 まな板を煙草の間に削らせる
※まな板を、大工の休憩中に、削ってもらう

■あんどうでくふハ大工もしまひの日
 行灯で喰うは大工の仕舞いの日
※ふだんは明るいうちに仕事を終えて夕飯を食べる
 仕舞いの日は何かと手間取り、またご馳走にあづかったか

■子を持た大工ひとあしおそくなる
 子を持った大工一足遅くなる
※子をもつと何かと手間がかかり、現場に一足遅くなる

■土こねは手水をつかひ幣をたて
 土こねは手水を使い弊を立て
※地鎮祭か、祭壇の横に盛り砂をし御神酒をかけ、鍬をいれ、玉串をささげる
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36 ごふく店ひとりか二人ねぶたがり『畫本柳樽』初編

2024年03月19日 | 川柳

■ごふく店ひとりか二人ねぶたがり
 呉服店一人か二人眠たがり
※眠たがり:夜遊びがすぎたんだネ

■はやり風三井の店に小はん年
 流行り風邪三井の店に小半年
※大店は店員が多く、次から次へと流行り風邪。抜けるのに半年だ

■するが町畳のうへの人通り
 駿河町畳の上の人通り
※三井越後屋呉服店は旧駿河町(現室町1,2丁目)全域を占めていた。
棟が延々と連なって屋内は畳敷き。それは壮大な「畳の上の人通り」か。

■ぬひはくや五しきに壁へふきつける
縫箔屋五色に壁へ吹き付ける
※縫箔屋:絹布に刺繍や箔を用いて模様を描く職人
※五色に壁へ吹き付ける:まずは糸くずを口に含んでおき
 溜まると壁に吹き付ける

■ぬひはくやのびをしてからめしをくひ
 縫箔屋のびをしてから飯を食い
※座って根を詰める仕事だけに、大きくのびをして一息入れ

■手一本なくしてかゝるぬひはくや
 手一本なくしてかかる縫箔屋
※片手は絹布の上で、もう片手は絹布の下で見えない
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