前回、正常性バイアスについてお話をさせていただきました。
次回、正常性バイアスの権化のごとき爺様のお話をさせていただきますと申しましたが、現在進行形であることもあって、上手く話しをまとめる事が出来ません。勝手に予告したのですが、勝手に延期しちゃいます。今回は正常性バイアスに関する余計な話です。
前回は、正常性バイアスについての説明と、正常性バイアスが「災害時に避難が遅れて災害被害を拡大する原因」として悪者扱いされることが多いけれど、ヒトには必要不可欠なものではないかという私見を述べさせていただきました。
今回も似たような話です。正常化バイアスは、心の免疫機能ではないかと、思いつきました。調べてみてもそんなたとえ話は見つかりませんでしたので、つたない自分なりの解釈を展開させていただきます。
免疫機能の重要さは、広く認識されていると思います。
正常に働いていた免疫機能が破壊される病気が 後天性免疫不全症候群(acquired immunodeficiency syndrome, AIDS, エイズ)です。
ヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus;HIV)感染によって生じます。以前は手立てなく死に至る病というイメージがありました。が、近年飲みやすく、副作用も少なく、治療効果が高いART(antiretroviral therapy、抗レトロウイルス治療)の普及 などにより、治りはしませんが、感染してもAIDS発症に至らない様に治療を継続しながら日常生活を維持できる時代となりました。
逆に言うと、破壊されてしまうとAIDSを発症してしまう、無くてはならない免疫機能。風邪をひいたり、新型コロナに掛かったりした時も、治癒に向かって働く主役は薬ではなく、感染者ご本人の免疫力です。今話題になることの多いワクチンですが、当該ウィルス等の病原体に対する個人の免疫力を上げるためのものであって、特効薬ではありません。
話を正常性バイアスに戻しましょう。正常性バイアスとは、予期しない異常事態が発生した時、または、そうなりそうな時、殆ど根拠なく「自分は多分大丈夫だ」と思ってしまう心の方向性を言います。
これが、外敵と思われる異常物質(ウィルスなど)が体内に侵入してきたときに無毒化しようと働く免疫機能と相似だと、私は感じました。
免疫機能が必要以上に働いてしまう現象の一つにアレルギー反応や自己免疫疾患と呼ばれる疾患群があります。正常性バイアスも、必要以上に働いてしまうと災害時、非常時に逃げ遅れる原因になってしまいます。
いい面もあれば悪い面もあるという事です。
逆に、免疫機能が低下すると、普通ではかからないような感染症に罹患したり(日和見感染症)します。基礎になる免疫力が弱いので、薬で病原体を退治しても、次から次へと異なる病原体が出現する「連続もぐらたたき状態」になって、体力が低下して死に至ることが多いです。
正常性バイアスが低下すると・・・・すべての変化に対して心理的に対応困難となります。不安障害、パニック障害、強迫性障害などが起こりやすくなるでしょう。
ワクチン接種は、特定の病原体に対する免疫機能を強化します。これは、災害に対する避難訓練、防災訓練が相当するのでしょう。災害時の対応能力を向上させ、心理的にも「体力」が生じます。
ヒトは、免疫機能無くして生き続けていけないのと同様に、正常性バイアスで外界からの刺激・変化から心を守らなければ、生き続けていけないと思います。災害時に逃げ遅れないよう、かつまた不安で心をさいなまれる事の無いように、良い加減に?心配しましょう。それが病の予防につながるとも感じています。すべてにさじ加減が肝要です。重要なのは 良い加減さ???の様に思えます。