小難しい講義は前回までとしまして、今回からは機器の具体的設定、その効果などを書いていきます。
今回はPS3の設定を見ていきましょう。 ホームシアター用にPS3を導入・検討している方は少なそうですけどね…。 (実はものすごーく多いようで…)
■ 現時点のPS3の種類と仕様
2009.10までに発売された、または現在販売中のPS3には、仕様別に大きく分けて3種類が存在します。
1. 初期のいわゆる”60GBモデル(CECHA00)”と”20GBモデル(CECHB00)”。
2. 2007年11月から発売の”40GBモデル(CECHH00)”。
3. 省スペース機、2009年発売の”120GBモデル(CECH-2000A~)
* 読み込めるメディアの違い、大幅な仕様違いごとの分類です。 色違い、ソフトウェアとのコラボ、HDD容量だけの違いは含みません。
ご承知のことと思いますが、すべての機種でCD/DVD/BD/DSDディスクの読み込み・再生ができます。 そのほか、市販SACDの再生は1のみ。 HD系圧縮音声のビットストリーム出力が可能なのは3のみです。
■ HDMIの出力設定 [ファームウェアVer 3.00の表示]
PS3が装備する端子のなかでHDMIは最新ホームシアター再生の生命線です。 1080/60pの高画質映像デジタル出力に必須であること以外にも、マルチPCM出力やHD系のビットストリーム出力もHDMIでなければ出来ません。 音声に限って言えば、光端子があれば一見十分そうな気もしますが、PS3に限らずすべての機器の光端子では2ch PCM出力が上限で(ロッシー圧縮音声では6.1chまで)、著作権保護機能のため、市販BD/DVDではサンプリングレートが48kHzに落とされてしまいます。
* [著作権保護機能解説] 機器、ソフトの組み合わせによっては、光でもサンプリングレートが落とされない場合もあります。 これは著作権保護対応品か否かで決定されます。 ソフト、再生機器、アンプがすべて対応している場合、光でも96kHz以上の信号が再生できます。
実際の設定です。 PS3は音声と映像を一本のHDMIケーブルでまとめて送ります。 このことで留意する点が、「映像を高解像度に設定しないと高音質の音声も出力されない」ことです。(※1) これは、映像と音声を高いレベルで同期させて送る必要があるために起こるようで、映像信号が音信号に干渉しそうだからといって低解像度にすると、高ビットレートの音声もその伝送速度に合わせてダウンコンバート、または出力制限されてしまいます。
なので、先ずはディスプレイの設定から行います。
● ディスプレイ設定
XMB (電源投入後のメニュー画面)
↓
設定
↓
ディスプレイ設定
↓
映像出力設定
↓
HDMI
↓
自動
* 通常は自動で構いませんが、接続したテレビ、ディスプレイの仕様によっては自動認識が働かず、カスタムで設定する必要があります。
"自動"、または、認識しなければお使いのテレビの仕様を見て決定。 最近の40v型以上の薄型テレビでしたら、ほとんどのもので最高設定の1080pが使用可能。
また、音楽再生特化のウラ技ですが、映像をPS専用端子のコンポーネント/コンポジットケーブルに振り分けることで、HDMI映像の干渉を受けず更なる高音質化が図れます。 設定を変更すると音声設定も初期化される可能性があるため、この後必ず音声設定も確認しておきます。
XMB (PSボタン)
↓
設定
↓
ディスプレイ設定
↓
映像出力設定
↓
コンポーネント/D端子(またはコンポジット/S端子)
● サウンド設定
XMB (PSボタン)
↓
設定
↓
サウンド設定
↓
音声出力設定
↓
HDMI
↓
自動
* ここも書く必要が無いくらい「自動」でも良いかと思いますが…、PS3のファームウェアバージョンや接続した機器(AVアンプ)によっては再生可能な音声もはじかれてしまう為、カスタムを選んで手動で確認をしたほうがよさそうです。
PS3の出力可能なPCM最大値は、192kHz / 24bit / 7.1chです。 上記機種1,2はリニアPCM(デコードしたHD系音声含む)とロッシー音声のビットストリーム出力のみに対応、3はHD系圧縮音声のビットストリーム出力も対応。
■ BD/DVDの再生設定
機種の項目の1、2に該当する機種をお使いで、HD系の圧縮音声を聴きたい場合は下のように設定します。
XMB (PSボタン)
↓
設定
↓
ビデオ設定
↓
BD/DVD出力音声フォーマット(HDMI)
↓
LinearPCM
逆に、3の機種をお使いで、HD系音声をAVアンプでデコード(解凍)して聞く場合は、ここを『ビットストリーム』にします。
* このほか、3の機種をお使いでも、HD系圧縮音声に対応していないアンプ、テレビに繋いでいる場合にもLinearPCMへの設定が必要です。 また、いずれの機種をお使いでも、デコードとサラウンド音声のダウンミックス(※2)に対応していない2chアンプ、テレビに繋いだ場合は、更にソフト側の音声を2chに設定する事も必要となります。
■ CD(SACD)の再生設定
PS3で音楽を再生するメリットは、なんといってもその演算能力を活用した”アップコンバート(アップサンプリング)”です。 しか無いとも言えますが… これはサンプリングレート44.1kHzのCDデータを4倍の176.4kHzにまで細かくし、独自のプログラム(後述のビットマッピング)による補完信号を挿入するものです。
XMB (PSボタン)
↓
設定
↓
ミュージック設定
↓
出力周波数
↓
44.1/88.2/176.4kHz
* 88.2kHz以上の音声に対応していない(設定しても音が出ない)アンプを使用している場合は、少しでも高音質にするためにもう一つの候補[48kHz]にしておくのがいいでしょう。 SACDのPCM変換出力もこの設定に準拠します。
XMB (PSボタン)
↓
設定
↓
ミュージック設定
↓
ビットマッピング
↓
切、タイプ1、 タイプ2、タイプ3
ここは、ビットマッピングによる架空の補完信号をどのような傾向を持ったモノにするかの設定です。 タイプによる違いは公式には発表されていませんが、ある雑誌の解説ですと、タイプ1=ダイナミックになる、タイプ2=S/N比の向上、タイプ3=スピード感向上、と書かれています。 ですが、私には"切"との違いは判りましたが(音色が豊かになったように聴こえましたが…)、タイプの違いについては判らなかったです 60GBモデルのSACD再生も若干影響を受けます。
■ BD/DVD視聴時の確認
DVDソフトの大半は、旧来の(アナログ2ch入力のみの)テレビと繋いだ際に、サラウンド、特にセリフ担当のセンターの音が欠けてしまうという設定トラブルを避けるため、ディスク挿入時の初期設定が『2ch出力』になっているものがあります。 AVアンプ、デコードやダウンミックス付きのテレビを使用しているときは、先ずこれをソフト側でマルチチャンネル収録トラックへ変更します。
希望通りの音声が出力されているかは、再生時にセレクトボタン(コントローラー使用時)を押して確認します。 セレクトを押すと画面の上下に帯が出て現在の状態が出てきますね。 音声フォーマットは映像情報と共に画面上部帯右半分に記されています。 表示されているアイコンや数字を見てみましょう。
[Dolby Digital] [DTS] [Linear PCM] などと書かれたアイコンがあります。 これが現在再生されている音声の種類です。(Linear PCM以外はすべて圧縮音声です) が、この部分を見ただけでは、単にディスクに収録されているどの音声を読み取っているかしか判りません。
その右隣、[5.1ch] [Multi ch]などと表示されています。 この部分が現在出力されているチャンネル数です。 ここが"数字"ならば、読み取った圧縮音声をその種類に関わらず、リニアPCMに変換して( [Linera PCM]ならそのまま)、AVアンプ、またはテレビに送っています(※3)。 [Multi ch]になっていたら、ビットストリーム出力されているということ。 つまり1、2の機種で[Multi ch]と表記されている場合は、強制的に下位互換の[Dolby Digital] [DTS]の5.1ch、または5.0chの音声が送られていることになります。 "HD"が付く圧縮音声を聴きたいときは注意する部分です。
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大分駆け足での紹介でした 他のプレイヤーも大なり小なり設定が必要ではありますが、PS3はそれ固有の設定も多く、完全な把握は難しいですよね…。 皆さんも、この記事のアラを探すつもりで、実機を確認していただければと思います。 …このほかの設定項目についても確認次第逐次報告いたしますので気長に待っていてください(汗)
次回はAVアンプ、TA-DA5400ESの設定の解説です。
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※1 HDMIの転送方法は映像側が優先されており、入出力機器同士の同期にも必要なためにこのようなことがおこります。 HDMIでの音声伝送は、映像データが空いた隙間に入れ込むという原理上不安定になりやすいものとなっています。
そして、実は映像をコンポジット/コンポーネントへ振り分けてもHDMI内の映像信号が全く無くなるわけではありません。 これはPS3に限らずどんなプレイヤーのHDMIであっても、仕様上どうしても避けられません。 ただ、流れているダミー映像はPS3の画面とは関係が無い、変化の少ない安定した映像信号(おそらく1080iのブラックバック)なので、音声信号へ対しての影響が少なく、高音質になりやすいのだと考えられています。
※2 『ダウンミックス』 : 多チャンネル音声を2chに合成すること。 通常、サラウンドとセンターの音成分をフロントLRに合成して出力することを指します。 機器によっては擬似サラウンド感を生成させるものもあります。 が、カタログには明記されていないことも多く、使用してみなければ判らないのが現状です。
※3 2chの音声を読み取っている時は、音声の種類に関わらず[2ch]と表示されます。 どの音声トラックが再生されているか心配なときは、改めてビデオ設定を確認する必要があります。
※4 これらの規格名は6.1ch収録を示すだけの表記。 (1ch分の音質・データ量は素のDDやDTSと変らず) 逆に、HD系音声の"HD"はロスレスの高再現性音声のみをあらわすもので、具体的なチャンネル数を示すものではありません。 メーカー、業界で細かい取り決めがあるかも知れませんが、ユーザーとしてはこの解釈でOKです。