七月の豪雨災害のあたりから体調が思わしくなくて、不本意ながら医者にかかることにした。近所の内科は9年前の胆のう炎の時はエコーで胆石を見つけてもらったのだけど、それ以降はどうもコミュニケーションがうまくいかない。どこを治療したいのかと聞かれる始末で、きっと相性が悪いのだろう。そこで9月中旬のこと、ジュニアユースOB選手のお母さんに教えてもらった、中島の職安の筋にある漢方医を訪ねた。ひととおり症状を説明したら、医者は「冷えだわ」と言った。冷え性というと女性だけかと思っていて、これは意外だった。言われてみれば、同じ部屋にいて私だけ寒いと感じたり、夏でも寒気がしたり、大好物の冷たい蕎麦をたらふく食ったあとに鼻水が止まらなかったり、思い当たることもある。処方してもらった漢方薬を飲みながら、二週間に一度通院して電気マッサージの治療を続けてみた。食事についても脂っこいものや冷えの原因となるような寿司やパン食などを避けるように言われた。揚げ物は衣を外して中だけ食べるように言われて、そういう食べ方をする人がいるのは聞いていたけれど、医者推奨とは知らなかった。南国の果物は体を冷やす、リンゴなら良い、というのはちょっとうさんくさいと感じた。しかしこの医者にかかる以上はとりあえずやってみようと思った。帰って調べたら冷えそのものは西洋医学では病気ではなく、一方東洋医学では治療の対象と書いてあった。
その医者はいつも混んでいて、一時間は待たされる。しかし、通院は嫌ではない。電気マッサージはうつぶせから裏表10分ずつ、リラックスできる。食生活も寿司や天ぷらが食べられなくても、そんなに残念なことではなかった。制限することで、時にうっかり食べてしまってこれが良くなかったんだなと気付くこともあった。症状は少し改善してきた。しかし、焼肉や冷たい果物食ったり暖房つけるの忘れて作業したりすると逆戻りということも二度三度あった。
12月に入って、そういうことを医者に説明したら。医者はまず、仕事が出来て、食欲があって、夜寝られて、それで良しとしないといけないと言った。私もそういう年なんだろう。その上で、前回までの漢方薬はストレス半分、冷え半分だったけど、寒くなってきたからお腹を温めることに重点を置いた薬に替えると言われた。これまで、私からストレスを言ったことはなかったし、医者もストレスという言葉は使わなかった。ストレスをやわらげる薬が入っているとは知らなかった(薬局でもらった説明に痛みを緩和するとあるのが多分それだろう)。しかしもちろんストレスはあるから腹は立たない。逆にストレスの薬を外して大丈夫かと不安になった。考えてみると、今日も反抗期の中学生男子とそれに悩むお母さんが来て一緒に治療を受けていた。薬局でそう説明していた。この医者が流行っているのは現代人のストレスとも向き合っているからかもしれないと思った。
帰って新しい薬を飲んだら、舌がしびれた。これはいけないと調べたら、成分に山椒が入っていた。もうひとつの薬には附子というからトリカブトだろうか。しかし、前の薬より断然調子が良かった。二週間たって今年最後の通院でそう言ったら、寒い間は飲み続けた方が良いと言われた。ずっと続けて飲むには強い薬なんだろう。東洋医学の治療が本当に私に合っているのかどうか、まだわからない。しかし、年末で一ヶ月分の薬をもらって残念な感じがしたということは、少しはまっているのかもしれない。
食間にリラックスして湯で飲めばすでに効きたる心地こそすれ