阿武山(あぶさん)と栗本軒貞国の狂歌とサンフレ昔話

コロナ禍は去りぬいやまだ言ひ合ふを
ホッホッ笑ふアオバズクかも

by小林じゃ

短歌 その18(2019年7月~2020年1月)

2020-02-01 09:50:27 | 短歌(まとめ)


      長文後悔

  ただひとこと「あの時幸せだったよ」と書けば良かった未練殺して


      男子校の同級生からFBにメッセージ来て

  説明のつかぬ生き方長くあればお久しぶりはいつも困るんよ

  前回は十九の夏よ広島に当時無かったチョコミントの味

  なぜなのかフェイスブックに来る奴は六十前のオヤジばっかり


      退院支援

  いつもいつも患者目線の君なればテーブル越しでも目と鼻の見ゆ

  今日明日急な休みの君のメモ代理の方の棒読みぞ憂き


      寄水溜恋

  泥水の干てひからびてひゞわれし浅き幸せそれが幸せ



      其一切重要也

  スーパーのタタキの試食くえるようにお出かけ十分前ののど飴


      寄漬物恋

  あをによし奈良漬よりも川内の村の名高き広島菜召せ


      芸備線全線復旧

  昼下がり欠伸鳴らして電車でも列車でもない一両がゆく

  下深川志和口方面三次行きと聞くは一年三ヶ月ぶり


      出平鰈

  安物のでびらなれども香ばしさだけは変わらぬストーブの上


      海外逃亡

  煩悩をひとつ減らすも無理なれや除夜を聞かずにゴーン with the wind


      令和二庚子年 歳旦

  子丑寅 寅年くれば還暦のカウントダウン聞きたくもなし

  まず願う夏の平穏 阿武山の南無観世音あろりきゃそわか


      悪夢

  はっきりと言ってください目が覚めて夢の中でも言えず終りぬ


      寒気到来

  左手の指のつめたさ左手で米とぎゐるとこの年で知る


      漢方医曰

  牛乳は仔牛のためぞ人間が横取りしたら下痢するよそりゃ

  ひきこもりマスクしなさい春霞たなびく雲はありゃ毒ですから

  門松は冥土の旅の一里塚こりゃあほんまよ食っちゃ寝食っちゃ寝



      古今和歌集春歌下

  たれこめて春の行方を知らぬのは よるかの朝臣花粉症じゃろ


      本屋

  文学書よむ少年の手は細く本は分厚く倒れるな君

  本は数多くあれども入門書ばかり並んだフランス語の棚


      記録的暖冬

  初雪もいまだ降らぬに菜種梅雨春の長雨と予報士の言う

  昔はのう雪が空から降ったんじゃと令和生まれに語り伝えん


  

  


 

短歌 その17(2019年3月~6月)

2019-03-06 13:10:20 | 短歌(まとめ)

 

 

     豪雨災害から八ヶ月といへる日に

  春雨や捜索ヘリの尾も低く月命日の三篠川ゆく

     さらにひと月後

  九ヶ月前の夏の夜忘るなと月命日に聞くヘリの音

 

     大頭社鳥喰祭の歌について書き終えて

  誰ひとりほめてくれぬが貞国のとぐひの歌を記しおはりぬ

             

      吉田サッカー公園の人工芝の隣、
      サポ捨て山はタイコの人の命名にて、
      老いて頑迷なるサポーターはその
      屈折したる幕や門旗と共にこの山に
      捨てられ、いつまでも休む事なく
      門旗を掲げてバモバモ呟きゐると
      なむ語り伝へたる

  とこしへにうたひつゞけよ吉田なるサポ捨て山に照る月を見て

 

      夜桜追憶

  夜桜も遠き昔となりにけり君の写真のやや霞みたる

 

      木芽和歯痛

  梓弓木の芽も春の筍を噛めば今年も歯ぐきぐらぐら

 

      読書乱心

  図書館のレファレンスなる窓口の清少納言首傾けり

 

      男子生涯成一事耳

  煮えてくる間に一品つくるのは苦手なりけり鍋が気になる

 

      旧三月十八日奉拝人丸神社

  宮島の姫神様に背を向けて人丸さんの森に分け入る

  鴨山の岩根し巻けるさにあらで木漏れ日やさし森の御やしろ

  貞国が願主となりて奉りし歌聞きたまへ春の筆柿

  二百二十九年ぶりに貞国の歌響かさん春の筆柿

  正一位にして歌聖の神様を人丸さんと里人は呼ぶ

  筆柿は碑のみ残りて祭壇の中に幹てふ里人の歌

 

       思病院父

  外泊のもらえぬ父やバラ肉とアナゴの残るチルド悲しも

 

       思慕平成元年

  平成の始まりし日の我といえば除籍間近の七回生なりき

  平成の始まりし日は六畳の炬燵二人でテレビ見居りき

  家賃のみ上がりて時給そのままに家賃のために働きし日々

  頼まれて表紙をみればララはまだ平気なれども少コミはいや

  ただ単に経済的な理由にて二人でシャワー浴びしあの頃

 

       目不合恋

  カウンターに座れば気持ち背が見える君の悲しみいかでとくべき

 

       御譲位改元

  たひらかになれる御代からうるはしくおさまる御代へ悲しみもなく

  

       奉祝令和元年残春

  うるはしくおさまる御代のはじめとて五日かぎりの春を祝はむ

 

       祈夏平穏

  うるはしくおさまるはじめの年なれば水損暴風無き夏をこそ

 

       父入院二ヶ月

  もう一度手術と聞けばはつ夏のあぜ道ふさぐすいば恨めし

  病室で顔を見るなり退院は今日ではないと海ながめ居る

 

       正明院明光寺薬師堂縁日

  はつなつの三篠の土手をひむがしへ歩むおやくっさんの縁日

  新緑の下におはするお大師の杖指すところ薬師堂見ゆ

  五百年前の享禄天文の大蛇退治を知る仏さま

  父の病しばし忘れて御仏の四角き顔をながめ居りけり

  楠若葉光る迷彩頭巾着て阿武山飲むや亀崎の森

 

       五月真夏日

  三十度ぐらいで暑い言うなかれ去年思えば爽やかな春よ

 

       陳腐夢

  ありがちな悪夢真暗き君の背の消えゆく先を追う三篠橋

 

       詰所隣病室

  鬼悪魔痛いやめろは平気でも暇人言われ怒る看護師

  数日で慣れるだろうがその前に声出てほしい父の筆談

  胃ろうてふ言葉を聞けば父も母も強く否みて下を向きけり

 

       親子生別

  バス来たよ道の向かいに声かける我は通院母は看病



       バス待

  夕陽映す君のナンバー過ぎゆきて十分待てどまだバスは来ず

 

 

    


短歌 その16(2018年11月~2019年2月)

2018-11-08 01:01:38 | 短歌(まとめ)

 

 

       人生不可急

  まだ少し時間あるはず落ち着いてサイド攻めたい 図書館行きたい 

 

       手打うどん妹尾

  ぶっかけは熱いぬるいともうひとつ 冷やしと言わぬ店主のこだわり

 

       徐行運転

  ギギギギとふるへつゝゆく瀬野八と本郷あたりよつきたてども

 

        思袢纏君

  霜月やはんてん着れば君のこと思い出さぬ夜はなかりき

 

       思今年夏

  苦しいと言わせてしまった暑き日はまだふた月前 さらぬ過去もある

  川内の広島菜漬つけそむる写真や夏の遠ざかりゆく

  この街を流るゝ川の純情に君触るゝことなつの夜の夢

 

        冷え性
 
  南国の果実は体を冷やすなりリンゴなら良いそりゃかばちじゃろ
  
  クリスマスケーキはいかん饅頭を食えという医者悪魔なりけり
 
  冷え性と言はれて思ふ真夏でもホットたのみし君のおもかげ

 

       手動泡立

  作るのも経済的な理由なれば手でシャカシャカと聖夜うるさき

 

       漢方心得

  食間にリラックスして湯で飲めばすでに効きたる心地こそすれ

 

       窓拭心得

  年の瀬もいい加減こそめでたけれピカピカはいやツグミぶつかる 

 

      平成三十一己亥年 歳旦
 
  平成のみそひともじの正月を歌えや但し字余りはなし
 
 
 
       辞世候補
 
  村雨やなゝつの川を思ひつゝ阿武山越えて西へ向はむ
 
 
 
      栗本軒貞国歌碑

  雪月花おしむ人さへ残らぬと青空を背に辞世の碑は立つ
  
  我もまた君を惜しまん広島の化政期負ひし貞国の歌碑
 
  貞国の二文字なつかし尾長なる瑞川霊苑入口の歌碑
 
  人の字の強く浮かびて寛政を化政を生きし狂歌師思ふ
 
  貞国の辞世うたえば子供らが戯れて打つ鐘の音ふたつ
 
 
 
      キリシタン殉教碑
 
  四百年前の河原にくれなゐの椿の花の散れば悲しも
 
 
 
      旧正月は何時かと聞かれて
 
  最近の暦に旧正月は無しちよこれいとの日は載りたるに
 
 
 
                芳香
 
  やきさんまさめたにほひはひたりてのかうよりいつるわかゝれいしふ
 
  家を出る前に納豆食うなかれマスクの中で菌の増えゆく
 
 
 
        暖冬思去年夏
 
  あたゝかな冬もおそろし水損と酷暑無縁の夏をこそ願へ
 
 
 
 
 
  
 
  
 
  
 
  

 

 

  


短歌 その15(2018年8月~10月)

2018-08-08 09:48:55 | 短歌(まとめ)

 

 

       月命日     

  不明者を捜索中の写真見れば こぶし効かせてミンミンゼミなく


       寄団扇悔恋 

  頭ではわかっていると言っておいて うちわであおぐペタペタあおぐ


       壊冷房

  暑い死ぬも一度君に会いたいと言うのはちょっとインチキくさいか


        不消恋

  いや今も好きよ恨んでないけえね幽霊なったらすぐ会いに行くよ


       食後珈琲

  一線でバリバリ働く君は強い議論はしない同じホットで


       断恋

  幸せを願い続けた真心を貫くならば Fade away!

  まごゝろを全部吐き出したのだからこれでおしまいすべておしまい


       酷暑漸終

  30℃なれども涼し我が部屋も暑くはあらず秋立つらしも


       寄夏水仙

  秋晴れや淡き黄色の遠けれどさやかに見ゆるリコリスの花

  あぜ道の緋色の波と競ふでもなしに咲きゐる黄花リコリス

  昨日はたち今日は十九の差があれば手折らんとしたことはなかりき

  さよならもおめでとうとも言えなくて花の名前を風に託せり

  秋風の吹けども君は凛と立ち我の影のみ長く揺れたり

  君は背を向けず別れも言わずありて立ち去る勇気我に与えず


       恨恋

  龍一のツイートほめて私にはいいねくれない人ぞ恋しき


       風呂敷心

  ふろしきの文化と君はゆうたけどつゝむこゝろはリスペクトなんよ


       胃腸不順

  原因は「冷え」だわと言う漢方医 確かに心は冷えきっている


       阿武山夕景

  夕闇やこのまま君を好きなうちに消えてみようか 火星かがやく


  


短歌 その14(2016年11月~2018年7月)

2018-07-26 20:43:02 | 短歌(まとめ)

 

 

        松江道

  あの赤がジョナゴールドと指させばバスにぎやかに県境を越ゆ

 

        横顔

  君にとって私はツールでしかないとわかっていても横顔を見る

  1ミリも縮まらずとも幸せな車窓流れる横顔を見る

  反論は目を見て一秒向きなおりハンドル握る君の横顔

 

       寄星王子様恋

  unique au monde は間違いなけれども難儀なりけりかの薔薇のごと


       立春日会君於安佐大橋上

  阿武山(あぶさん)を眺め歩けばゆきあひし君の白き歯春立つらしも


       思阿武山山頂

  近頃は観音様に願い事三つ四つもあり山を見上げる


       寄写真機恋

  おてふきはあるよと言えばプチっとあけてレンズ拭いてた君をしぞ思ふ


       恨恋

  恨み言君には言はじそのかはり ぶつぶつぶつとここに書きおく


     広島青少年文化センターの坂を登る時に

  ゆっくりと遠きを歩め坂道で息切らさぬも年の功なり


      破封印恋

  念入りにこころ封じし壁の中の黒猫なれや君の声ひびく


      国会

  信長は死亡確認されてない今も生きてるそんな答弁


      止冷房

  虫の音は二つ三つあれど風は少し二十八度の我が部屋の秋


      嫌題詠

  写真見て詠みたくはなし君の声と姿よみたい背中なりとも


     胡麻豆腐かと問へばタピオカと答へたるに

  ねとねとのタピオカ入りの胡麻豆腐もいちど君と食べたいねとねと


      時雨車窓

  窓に映る少女は内にほゝゑみてひとり時雨の瀬野八ながむ


      不揃恋

  ステップとターンで置き去りスピードも差があるけれど背中おいかける


      ユウマの母上を悼みて 

  私まだ花ざかりよと言い切って跳ねて歌った人 早すぎるよ

  

       一本傘

  坂道の駅借景に君の顔見てたら濡れる一本の傘 

  まっすぐになぜ歩けないメンタルもスキルも足りぬ一本の傘

  連絡の頻度もそうだが距離感が難しすぎる一本の傘 

  水たまり二十メートル先なのにもう顔見れぬ一本の傘 

  ダッチロール十歩で「私持ちます」と奪い取られた一本の傘

  水しぶき君半歩前階段をトントン降りる一本の傘


       不眠

  人生で最後のデートと設定して楽しんだのになぜ眠れない

  十四年前の手紙を取り出して読み返しても寝れる訳もなし 

  ひとつだけあなたにお願いするとしたら言ってくださいおやすみなさいと


       芸備線一部復旧

  芸備線二十三日再開も心は晴れず会うすべを無み 

  十七日ぶりにうるさく踏切の鳴れども君に会えるともなし 

  豪雨から二十日と聞けば七日足して最後のデート遠ざかりゆく


       歩高陽地区 

  穂の先に土は着けども立ち残るトウモロコシの幸運祝う

  三篠川 流木積もり阿武山もまだ傷癒えず土手道かなしも

  豪雨一転日照り続けばサトイモのだらりと垂れた矢口駅前


      寄風恋

  暑き部屋を風一秒で吹き去りて君と歩いた雨の日思う 

 



  


短歌 その13(2015年1月~2016年10月)

2016-10-07 19:31:14 | 短歌(まとめ)

 

       夜更聞雨音

  ひと昔前のラジオの雑音のように降る雨午前二時過ぎて

 

      冷恋 

  それにしてもなぜ好きだったのか 春の夜の雨の街灯笑い声かすむ

 

       明日会えますねとメールをもらって     

  スタジアムへ行けば会えると思ってる君のメールに何と返さん

 

       思末期友

  ゆつたりと流るゝ時を信じつゝ午前三時の君をしぞ思ふ

 

       醒夢 

  三十年つかえた言葉今やっと言えていたでも悪夢は悪夢

 

       六月にみまかりし友をしのびて

  なますの酢つよきを噛めば半夏生までと願ひし友の顔うかぶ 

 

       恨恋

  アドレスは消したのだろうmixiで一年ぶりのメッセージよむ

  核心を聞き出すメール書けぬままに布団一枚はがす雨の夜

 

      春の日の広島文教女子高 

  春霞淡い日差しの逆光を裂いて青色ユニ駆け抜ける

  背に向けて「みんなに出会えてよかった」と歌うピッチに春の風吹く

 

       爺様形見の松

  悪さして松にくくられ泣き居れば月夜にほうとふくろうの鳴く

 

       アオバズク初音

  ホッホッと聞こえて窓を見上げれば旧の卯月の十六夜の月

 

       車窓見合歓花

  クラブユース予選彩るねむの花 去年大島今日は瀬野八

 

       落栗 

  ぬばたまの夜の更けゆけば 車庫の上に栗の実落つる音三度聞く

 

        逢君於白神社

  夕闇の白神さんに待ちあひし二十歳の君の黒髪なつかし

 

       不持携帯 

  「大丈夫きっと出会える」君は言えど時間と場所を決めたい我は

 

       寄弓張月恋 

  内側に君のくちびる描き足しても向きが合わないゆみはりの月

 

      五十年前南観音に住みし頃の景色を

  夕凪や観音ネギの辛き香の留まる屋根にコウモリの飛ぶ

 

 

 


短歌 その12 (2014年9月~2015年1月)

2015-01-19 19:44:53 | 短歌(まとめ)

 

 

       円安かデフレマインドか

  小麦粉と蕎麦粉とエビと醤油さへ 天ぷら蕎麦よ円安に泣く

  うどんそばスパゲッティーは知らぬ間に一束90グラムとなりぬ

 

       情報不足

  好位置のFKユウタが置いてるのに壁3枚は少な過ぎるわ

 

       登二百八十余段

  足下のサインコサイン読みながら可部高校の階段登る

 

      クラブユースU-14 

  厳島の寝たる女の鼻かすめパスが飛び交う晴海公園

  夕日浴びて光る背中の宮島に負けず輝け啓太君走る

 

      アドバンスリーグ最終戦

  来季から2部昇格と胸を張り笑顔で去った可部高3年

 

       畑残雪

  寒ければ鍋でもせむと思へども 水菜白菜みな雪の中

 

      清水桜が丘高校の御大にケンさんが話すを聞きて 

  参入戦を延期にしたのはあの雲と呉娑々宇山(ごさそうやま)をケンさんが指す

 

      平成二十七乙未年 元日

  あらたまの年の明くれば爺様の形見の松に雪は降りつつ

 

      藤枝順心高校杉田妃和キャプテン

  あと二回きっと聞きたいキャプテンの「絶対勝ちましょう」という声

 

      洋次郎移籍

  洋次郎はどこへ行っても洋次郎 ユニは赤でも青でもおんなじ

  十三年一夜のごとく戸をあけて行ってきますと去ってゆく君

 

       不逢恋

  会えなかった恨みかすかに阿武山の霧をながめる月曜の朝

 

 

 

  


短歌 その11 (2014年8月)

2014-08-27 11:18:45 | 短歌(まとめ)

 

 

        傷土砂災害

 

  我が目指す姿なりしを安佐の子を見守る山ぞ傷付きて立つ

 

  阿武山の内に住みたる蛇落つと古き伝えを聞けば悲しも 

 

  復旧はあわてるなかれ阿武山の四つの傷の癒えるときまで 

 

  中腹に土砂があるのに麓から片づけてゆく生活があるから

 

  土石流言葉は知れど目の先の八木緑井の事とは思はず

 

  緑井の10番君の名を聞いておけばよかった避難者名簿 

 

  可部東 桐原(とげ)の帰りか夕闇に蛍火ひとつやかましく飛ぶ

 

  阿武山の四つの傷跡さすように まだ降る雨を恨めしくみる

 

  


短歌 その10 (2014年7月)

2014-07-31 08:33:23 | 短歌(まとめ)

 

 

       野分後月

  台風のなごりの低き雲の上に少し涼ある夏の夜の月

 

     遅れてきたメール

  PCを買って十日が過ぎた頃に迷惑フォルダにごめんの文字入る

  言い訳はいけんといつも言ってるが取り繕ってほしい時もある

  いやいいよ気にしないでとメールしたあと扇風機カタカタまわる

 

       太鼓下手

  ガチガチの本命なれど指のまめはすぐにはじけたクラブユース予選

 

      南岩国駅前蓮根畑 

  お互いにそっぽ向く葉を諭すようにレンコンの花静かに白き

 

      若者言葉 

  会話にしか登場しない「あね!」「あーね」用例だけじゃ意味とりにくい

 

      朝ラーメン 

  ラーメンの湯気を潮風ふきとばす尾道といえばしみず食堂

 

      俊足もえ君 

  給食の黒糖パンと呼ばれてる少女が全国2試合3点

 

      宮本杯(高陽クラブチームカップ)

  妥協しない10番君の速いパスをファーストタッチで抜け出してゆく

  やわらかく小さなボール拾い上げコーナーめがけ返す幸せ

  このゴール高いと不安な目をしつつ楽々上にはじき出す君

  目の前の個性楽しめ どの個性プロになるかは知らずともよし

 

      寄酷暑大雨拓夢背中

  陽炎に7の背ゆれる灼熱を少しさました今朝の大雨

 

     15歳のツイート 

  中学生女子のツイート厳しくて男子は甘いまあそんなもんか

 

 


短歌 その9 (2014年6月)

2014-06-02 08:31:13 | 短歌(まとめ)

 

 

 

        鮎解禁

  六月や編み笠かぶり瀬に立ちて鮎引っ掛ける川面まぶしき

  鮎釣れず移動する人川を見て思案する人まだ粘る人

  鵜が食わぬように張られた金銀のテープが邪魔と嘆く釣り人

  真っ黒な群れを土手より眺めしは四十年前祖父逝きし頃

 

        近所大騒 

  二軒先の仏間に猿と聞こえ来る「わしゃあほんまにたまげたんじゃけえ」

  

        失言

  失言のあとの「見守る」逃げている言葉ぶつけてわかることもある

  失言で我の評価は下がったが君の長所はふたつ見つけた

 

        一瞬驚

  「脱いだ」って君のツイートハッとしたがゴールの槙野が脱いだだけだった

 

        占夏  

  猛暑二日過ぎて川風涼しけれど空梅雨冷夏と長老の言ふ

 

        五月雨夜酒 

  雨だれも蛙の声も弱ければスルメ噛む音憂き独り酒

  噛みながら物思ふ夜のあまたあらむスルメの減るは酒よりも疾き

 

        ゆか君の憂鬱 

  切るか編むか梅雨を耐えろとつぶやいた少女の練習曇り空であれ

 

        一年生ママたち 

  13歳いや12かもしれんのにイケメン認定してるママたち

  練習の帰りに駅からSOS サコさんの試練始まっている

  ダイヤ君はどうやら味方ではなくて相手のGK ママたちが呼ぶ

 

         三年生

  とうかさんで「いまからお化け屋敷」という心が騒ぐカンジのツイート

  銭湯にお化け屋敷にコストコに冒険心もて駆け抜けてゆく

 

        鬱金春

  葉一枚ウコンの夏は先なれどエアコンに手を伸ばす夕凪

 

        憎悪ツイート

  罵詈雑言浴びせぬかぎり一日を終われぬ人の増えつつやある

  憎しみに満ちたる世とは思はねどその種の言葉たしかに多き

 

     帯状疱疹の治療のついでに顔のできものを問ひし時

  すぐわかる説明だけど加齢によるイボはないじゃろアヤコ先生

 

        勇者ゆきの君

  前で守れ劣勢きっと跳ね返す文教5番君の奮闘

 

       涼風刹那 

  涼しさは雨後のまぼろし たまかぎる夕さりくれば暑さぶりかえす

 

       Windows8

  ディティルが気になる我の欠点を浮き上がらせるWindows8

  久方のアメリカ人の作りにしウインドウズはアバウトすぎるかも

 

       法事

  方便で涅槃に入ると説く経をさもありなんと思ふこの頃