著者は75歳の緩和ケア医で、約30年間にわたり自信と誇りを持って活動してきました。
その著者がある日突然ステージ4の大腸がんを宣告され、当事者になってしまいます。
ステージ4大腸がんの標準治療である抗がん剤治療を受けるがそこで日常が壊れるほどの副作用を体験した著者は発想を転換し、なるべく日常生活を維持しながらがんとの共存を図る「がん共存療法」を、自身の身体を実験台にして開発することを決断します。
つまり「がんが存在していても、増殖しなければすぐに命に係わることはない。ゆえに、がんの増殖を抑制できれば、がんとの共存は可能である」と価値観の転換を図るのです。
本書はその実験の過程をまとめた書籍ですが、玉石混交の既存の代替療法の中から、科学的、細胞学的に腫瘍細胞を縮小させうる根拠になりうるものを組み合わせて次々と自身の身体で試し、肺の転移がんの縮小増大に一喜一憂しながらも、使命感に燃えながら前に進む様子は感動的で一気に読了してしまいました。
最終的にたどりついた「がん共存療法」の基本形とは
◆ベース療法:「クロノテラピー(時間療法)」(注1)
(注1) がん細胞が分裂・増殖するといわれる真夜中に効くように抗がん剤を服用する。
◆中核療法:「MDE糖質制限ケトン食」(注2)
(注2)がん細胞が増殖のために必要としている主な栄養源はブドウ糖なので糖質制限によりその供給量を減らす。糖質は身体のエネルギー源なので代わりのエネルギー源であるケトン体を補うべく必須脂肪酸のEPA、MCTオイルの摂取。それらを強化するためにビタミンD、食後血糖値の上昇を抑制するためのメトホルミンを同時に摂取する。
◆支持療法:「クエン酸療法」と「少量抗がん剤治療」
の治療法を組み合わせたものとする。
自身の人体実験により上記の基本形が有効であることが確認できたので、これ以降は治験者を募って臨床試験を行うことを計画しているようです。
75歳にしてその治療法を確立しようとする情熱に頭が下がります。
(おまけ)昨年患者さんにいただいたアジサイの「ミスサオリ」が開花し始めました。素敵な名前と赤い縁取りの花がマッチしています(^^♪