SENTIMENTAL JAZZ DIARY

感傷的ジャズ日記 ~私のアルバムコレクションから~

MICHEL PETRUCCIANI 「MUSIC」

2010年03月05日 | Piano/keyboard

季節を感じたくて取り出すピアノトリオがある。
夏はニューヨークトリオの「過ぎし夏の想い出」、秋はユージン・マスロフの「オータム・イン・ニューイングランド」、冬はデューク・ジョーダンの「キス・オブ・スペイン」、そして春は何といってもミシェル・ペトルチアーニの「ミュージック」だ。
このアルバムは、私に春の喜びを伝えてくれる貴重な盤なのである。
スタートボタンを押して最初に聞こえてくる「Looking Up」の優しくも清々しいピアノ。
まるで春風が吹き抜けていく感じだ。
この曲はもう何度も何度も聴いているが、メロディラインの美しさ、アドリヴラインの優雅さに毎回心奪われる。
ペトルチアーニの良さは、何といってもそうした爽快感にあるのだと思う。

話は変わるが、3月に入ると何となくうきうきした気分になるのは私だけだろうか。
若い頃は夏を中心に一年が廻っていた。
照りつける太陽と紺碧の海が若さの象徴だった。
しかしその反面、春を楽しむということができなかった。
春は、単純に冬から夏に至るまでの通過点のような存在だった。
野に咲く花にも特段興味がなかったし、新年度の始まりにもさしたる感動がなかった。
しかし今は全く逆だ。
春が一年の中心なのである。
単純に歳をとっただけかもしれないが、空の青さにしても木々の芽吹きにしても、全て新しいのが春だと思えるようになってきた。
特に里山に顔を出した可憐な雪割草を観ていると本当に心が癒される。
こうした感情は他の季節からは得られない貴重なものだ。
だから私は春を感じに山へ登る。
春山はもう感動の連続である。
私にとって「Looking Up」は、そんな季節の主題歌なのだ。