SENTIMENTAL JAZZ DIARY

感傷的ジャズ日記 ~私のアルバムコレクションから~

TONU NAISSOO TRIO 「With A Song In My Heart」

2007年09月22日 | Piano/keyboard

エストニアと聞いて何を連想するか。
何も浮かばない。ソビエトから独立した国だったような気がする以外何も知らないのだ。
場所もよくわからないし、エストニアへ旅行したという人にも会ったことがない。
それなのに私はこのトヌー・ナイソーというエストニア人の演奏を聴いている。何か不思議な気分だ。
この感覚がヨーロッパジャズの隠し味なのだと思う。
もちろんアメリカのことをよく知っているわけではない。ただアメリカにはヨーロッパのような神秘性がないだけなのだ。
コンテンポラリーなジャズにはこういった神秘性が必要だ。それを感じるようになったのはECMレーベルが設立されて以後のことではなかったかと思う。見知らぬ国への憧れやジャンルを超えた音の広がりの中に、それまでのジャズにはなかった快感を得ることができるようになったのだ。

それにしても澤野工房はこういった隠れた才能を発掘するのがうまい。次から次へと見つけてきてはアルバムを発表していく。
しかし知らないジャズメンだからこそ、購入するにはそれなりの勇気がいる。
私がこのアルバムを購入したのは、1曲目の「ISN'T IT ROMANTIC」の出だし部分が気に入ったからだ。
この曲はビル・エヴァンスなどの演奏でよく知っていたが、ここでのイントロはこの曲のベストだと思っている。曲が持つ優しさやロマンチックな雰囲気をうまく表現しているように感じるのだ。
曲全体の出来でいえば2曲目の「MY FAVORITE THINGS」や4曲目の「WITH A SONG IN MY HEART」、ラストの「IN THE WEE SMALL HOURS OF THE MORNING」あたりが秀逸だが、個人的にこの作品は「ISN'T IT ROMANTIC」のテーマ導入部が私にとっての全てなのである。
出だしよければ全てよし、それを絵に描いたような一品である。


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