カクテル・ピアニストという人たちがいる。
もともと「カクテルバーのピアニストのように安っぽい」という軽蔑する言葉として使われた。使われた本人は誰かというと、エロール・ガーナーであり、レッド・ガーランドだった。
耳障りの良い軽めのピアノをそう呼ぶことが多いのだが、一方でこの称号こそ隠れ人気のバロメーターだったから皮肉なものだ。
ここで取り上げるクロード・ウィリアムソンをカクテル・ピアニストと呼ぶ人は少ないかもしれない。
しかしガーランド以上に高音域での転がるシングルトーンは、正に極上のカクテルピアノといっていい。もちろん私は最大の賛辞を送っているつもりだから誤解しないでほしい。
こんなに軽快にスイングされると誰だって振り向いてしまう、これはそんなアルバムなのだ。
クロード・ウィリアムソンといえば、ベツレヘムに残した「ROUND MIDNIGHT」が有名だ。
この「ROUND MIDNIGHT」を聴く限りあまりカクテル・ピアニストという形容詞は相応しくない。
もともと彼はバド・パウエルの影響が最も色濃く出る人の代表格だったから、力強くスインギーなタッチが売り物のジャズピアニストであり、聴いていて心地いいというよりは、ダイナミックな迫力が売り物であった。
それがこの「THE FABULOUS CLAUDE WILLIAMSON TRIO」ではこれが同じピアニストかと思えるくらいに軽快だ。
この演奏を聴いてはっきりすることがある。
ピアノは高音域がきれいに出ないと魅力がないということだ。
考えてみればこれはアート・テイタムに始まる跳ねるようなジャズピアノの最も美味しいところである。これが聴きたいがために様々なピアニストを聴きあさるのである。そうして見つけたこのようなアルバム、その嬉しさは例えようがない。
「あった、あった」「これだ、これだ」と子どものように喜ぶ自分がいることに気づく。
全ピアノトリオファンに捧げたい。これこそ隠れ名盤だ。
〈明日からしばらく留守にします....〉