SENTIMENTAL JAZZ DIARY

感傷的ジャズ日記 ~私のアルバムコレクションから~

RICHARD WHITEMAN 「GROOVEYARD」

2009年08月16日 | Piano/keyboard

最近のピアノトリオブームのきっかけをつくった一枚だ。
一頃は市場でずいぶん高値を付けていたアルバムだが、今は一段落ついてきており比較的入手しやすくなってきた。
リチャード・ホワイトマンは、これ以降アルバムを順調にリリースし続け、その実力が高く評価されるようになったピアニストである。
私も久しぶりにCD棚から引っ張り出して聴いてみたが、やはりいいものはいつ聴いてもいい。
とにかくオーソドックスで、妙な味付けやクセがないので安心して聴いていられるところが魅力なのだ。

古今東西、ジャンルを問わず、私たちは「いかに自分の個性を出せるか」が成功のポイントだと思いこんできた。
しかしよくよく考えてみると、個性などというものは意識してつくり出せるものではない。
いくつもの仕事や活動を行っている内に、その人ならではの味が生まれてきて、それがいつしか個性を形成するようになるのだと思う。
もちろん意識的に創り上げて、それがそのままその人に定着する場合もあるだろうが、それって本質的な個性とは呼べないのではないだろうか。
所詮、でっち上げられたものはいつしか消えてなくなる運命にあるのだ。
その点、このリチャード・ホワイトマンという人は類い希な個性の持ち主である。
いつでもどんなときでも、そつなく演奏を行い、聴く者を納得させることができるということがこの人の個性なのだ。
事実、彼のどのアルバムを聴いてみても安定感たっぷりで、全くの初心者からベテランに至るまで、自信を持って推薦できる数少ないジャズメンの一人なのである。
とにかく奇を衒わないで、淡々と弾く。あまり感情を込めすぎたりもしない。
かといって冷たい感じもしない。
弾いている人の顔が見えるというより、曲そのもの、ジャズそのものの本来の形を見せてくれるといった方がいいかもしれない。
だからこの人の場合、作品の中のこの曲がいいとか悪いとかいうような次元では話せないのだ。

ジャズピアノには普遍的な良さがある。
リチャード・ホワイトマンを知って、このことがよくわかった。
ただただ自然体でスイングすること、これが大事なんだ。


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