SENTIMENTAL JAZZ DIARY

感傷的ジャズ日記 ~私のアルバムコレクションから~

OLIVER NELSON 「THE BLUES AND THE ABSTRACT TRUTH」

2007年10月20日 | Tenor Saxophone

一気に冬になってしまったような天気だ。
まだ10月だというのに窓を叩く雨音を聞くだけで寒さを感じる。
しかし考えてみればこれからが本当のジャズ・シーズンかもしれない。
今日は降りしきる雨が似合うジャズが聴きたいと思いこのアルバムを取り出した。ハードボイルドな映像を見ているような「Stolen Moments」。そう、この曲が聴きたかったのだ。
この曲では参加メンバー全員がベストなプレイをしているように思う。そういう意味でも実に希有な作品だ。
闇夜に突き刺すようなフレディ・ハバードのトランペット、力強く線の太いエリック・ドルフィーのフルート、サスティンの効いたオリバー・ネルソンのテナー、いつになくドラマチックなビル・エヴァンスのピアノ、そして地面の下から突き上げるようなポール・チェンバースのベースとブラシで全体を引き締めるロイ・ヘインズが堅実なリズムを作り出している。ぶ厚いアンサンブルも圧巻だ。
またルディ・ヴァン・ゲルダーの録音により各楽器が生き生きとした音色を響かせていることも、このアルバムの大きな魅力である。

リーダーのオリバー・ネルソンはサックス奏者でありながら、作・編曲家としての名声が高い。
この作品がコンセプトアルバムに聞こえてしまうのは、そうした彼の資質によるものだ。タイトルからして直訳すると「ブルースと抽象的な真実」だから、それだけでも何となく難しそうな音楽に思えてしまう。
しかし音を聴けば実に明快。ジャズそのものがいかにブルースを土台にして発展した音楽ジャンルであるかを思い知らされる。
オリバー・ネルソン本人が書いたライナーノーツを見ても、彼の自らの音楽に対する真摯な姿勢が伺える。ブルースというスタイルが彼の想いを一番的確に表現できる音楽様式だったのだ。


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