SENTIMENTAL JAZZ DIARY

感傷的ジャズ日記 ~私のアルバムコレクションから~

FRANCESCO MACCIANTI 「Crystals」

2010年01月18日 | Piano/keyboard

家のすぐ近くに比較的大きな川が流れている。
私はその土手から見上げる里山の風景が好きだし、小さな橋を渡って、ずっと広がる田圃のあぜ道をひたすらまっすぐに歩くのが好きだ。
但し今はこのジャケットのように一面真っ白な世界が広がっており、長靴を履かないととても行けそうもない。
早く春になってもらいたいのだが、このところの寒波で、冬ごもりはもうしばらく続きそうだ。

今、私の部屋ではこのアルバムの5曲目「Nazca」がかかっている。
エジィエット・エジィエットという面白い名前のベーシストが奏でる長く沈んだソロパートの後に、フランチェスコ・マッチアンティの湿り気あるピアノと、ジョー・チェンバースの叩くシンバルが寂しそうに響いてくる。
まるで楽器同士が静かに語り合っているような趣がある。
このあたりのコンビネーションが実にいい。
こういう耽美な曲にはブラシが一番かと思っていたが、どうしてどうして、スティックによるシンバルの響きもなかなか心地いいものである。

曲は6曲目のミディアムバラード「Distant Call」を経て、7曲目のスタンダード、「I Fall In Love Too Easily」に代わった。
この哀愁感を絵に描いたようなメロディに、思わず胸が締めつけられそうになる。
ここはさすがにブラシの登場である。
シュクシュクと雪道を踏み固めながら歩くようにブラシが跳ねる。
マッチアンティは、その上で噛みしめるようにピアノの鍵盤を丁寧に叩いていく。
この繊細なタッチが彼の特徴であり魅力だと思う。とてもいいピアニストだ。

そしてラストのタイトルチューン、「Crystals」が流れてきた。
全編をゆっくり振り返るような心休まるソロ・ピアノが続く。
本当に透き通るような調べである。
なんと消えていく最後の一音まで美しい。
こんなピアノを間近で聴いてみたい、とつくづく感じてしまった。

これは琴線に触れる素敵なピアノトリオをお捜しの方に大推薦できるアルバムである。
こういう優れた作品が出るから、新しいジャズも目が離せないのである。