SENTIMENTAL JAZZ DIARY

感傷的ジャズ日記 ~私のアルバムコレクションから~

ANTHONY WILSON 「Adult Themes」

2010年01月10日 | Guiter

寒い季節になると聴きたくなる人がいる。
ダイアナ・クラールもその一人だ。
彼女のピアノの弾き語りによるバラードは、じわっと心に響いてくる。
そうしたサウンドを生み出している要因の一つとして、バックにギターを効果的に絡ませていることが挙げられる。
彼女が起用する主なギタリストは、ラッセル・マローンであり、このアンソニー・ウィルソンだ(もちろん旦那のエルビス・コステロは別)。
私はこの二人の大ファンであるが、タイプはちょっと違う。
ラッセル・マローンはどちらかというと短音フレーズを多用するのに比べて、アンソニー・ウィルソンはウェス・モンゴメリーが得意としたオクターブ奏法を中心とした弾き方をする。
だからラッセル・マローンは明確なソロパートで最大限の効果を上げるのに対し、アンソニー・ウィルソンの場合はバッキングのうまさが光るという感じではないだろうか。

この「Adult Themes」は、そんな彼の資質がよく表現されたアルバムである。
全体的にアレンジを重視していて、前に前に出ようとするギタリストとは正反対に、奥へ奥へと入りこむ姿勢が実にスマートであり、品格を感じるのである。
アルバムタイトルにもあるように、これこそ大人の音楽である。
それは選曲にも如実に表れており、トラディショナルな「Danny Boy」をうまく配置するなど、実に味わい深い内容になっている。
この「Danny Boy」では、バリトンサックスが主役になっていて、彼の弾くギターソロの部分は意外と短い。
要するに彼はギタリストとしての才能よりも、アレンジャーとしての手腕を評価してもらいたいのではないだろうか。

ラストは「Adult Themes」という組曲になっており、5つの曲がゴージャスな雰囲気で並んでいる。
このへんの構成は現代版マーティ・ペイチここにあり、といった感じだ。
私はこのアルバムが気に入って、彼のCDを何枚か買い込んだ。
ダイアナ・クラールが彼のアルバムにもゲストとして参加しているものがある。
出来はやっぱり、いい。
ぜひこの2人が組んだステージを生で見てみたいものだ。