SENTIMENTAL JAZZ DIARY

感傷的ジャズ日記 ~私のアルバムコレクションから~

ELVIN JONES & RICHARD DAVIS 「HEAVY SOUNDS」

2009年12月24日 | Drums/Percussion

これぞ重量級ジャズといえる迫力満点の作品だ。
だからクリスマスだね~なんて、ほんわか気分で聴いてはいけない。
ぼんやりしていると、いきなりボディと顔面にカウンターパンチを食らってしまう。
特にB面(4曲目)には気をつけてもらいたい。
いきなり出てくる「Summertime」は世界最強のハードパンチャーだ。
エルビン・ジョーンズが叩き出す太鼓の音と、リチャード・デイヴィスのアルコ(弓)によるベースは、まるで島の奥からキングコングを呼び出すための儀式のようにも聞こえる。
好むと好まざるに関わらず、これも60年代後半を象徴する音なのだ。
それはプログレッシヴロックやハードロックなどが台頭する前夜の出来事だ。
私はこのアルバムが、そんなサイケデリック・ムーヴメントの火付け役の一枚だったと信じて疑わないのである。

考えてみれば、ジャズはいつの時代も最先端を走っていた。
ロジックも、テクニックも、パッションもである。
その典型がマイルスと、彼が率いるメンバーたちだった。ロック界は常に彼らの後追いだったのだ。
もちろんロックがジャズより劣っているなどといっているわけではない。
常に時代を切り開いてきたのはジャズであったし、ジャズはそういう運命を抱えた音楽だということなのだ。
事実、この「Summertime」のようなベースとドラムスのデュオなんて、当時のロック界ではあり得ないスタイルだったと思う。
何とかして新しい時代を作りたいと思っていたロック少年も、みんなこの自由さ、奇抜さに憧れたのである。

でもこんな風に書くと、初めての人はこの作品を前衛的だと勘違いして敬遠してしまいそうだが、これはマイルスの「ビッチェズ・ブリュー」などと違って決して聴きにくい?盤ではない。
フランク・フォスターも朗々と男らしいテナーを歌い上げているし、エルビンがつま弾くブルージーなギターも、なかなか味があって悪くない。録音も抜群に優秀だ。
ただ一番の魅力は何かと聞かれれば、黒人のかっこよさがフルに発揮された一枚だと答える。
とにかく全編通して真っ黒。何といってもこれがいい。
しかも私はその中に差し込む一筋の光を感じるのである。
その光こそ、全く新しい時代の息吹なのではないかと思っている。