男気を感じるテナーだ。
このアルバムは、背中の辺りがぞくぞくしてくるブルージーなバラード「Bolo Blues」で始まる。
これはジミー・フォレスト、彼自身のオリジナル曲である。
彼のテナーは闇夜の中にくっきりと浮かぶ街灯のような存在だ。
孤独だが、どこか暖かい。安心感のある音だ。
所謂これがジャズの本道!といえるような図太さが、たまらない魅力を醸し出している。
2曲目「I Cried For You (Now It's Your Turn To Cry Over Me)」に入りアップテンポになるが、この曲はトミー・ポッター(b)とクラレンス・ジョンストン(ds)の繰り出すリズムに乗って、ジミー・フォレストも気持ちよくブロウしているのがわかる。
ジョー・ザビヌル(p)もなかなかの出来だ。
3曲目「I've Got A Right To Cry」でまたスローなバラードになる。
同じスローなバラードでも、6曲目(B面2曲目)に出てくる泣きの「Yesterdays」とはちょっと違う。
もっとドライな優しさが滲み出ている演奏だ。
私はこの3曲目の出だしの雰囲気が大好きで、ジャズが好きな友人が来るとよくかけていた。
大音量でこの曲さえかけていれば、私の部屋はいつでもジャズ喫茶に変身できた。
4曲目「This Can't Be Love」と5曲目(B面1曲目)「By The River Sainte Marie」は楽しい曲だ。
これぞエリントンにもベイシーにも愛された男の真骨頂である。
流れるようなテナーは、飛び跳ねるようなベースとドラムスの間を縫うように響き渡る。
7曲目(B面3曲目)「Crash Program」の疾走感もまた魅力だ。
そしてラストの「That's All」。何とも感動的なバラードだ。
すべてを終えた安らぎの時間が訪れる。
アルバムを通して聴いた満足感がじわっとこみ上げてくる。
これこそ男の優しさである。
数あるワンホーンの中から一枚を選べといわれれば、私はこの作品を差し出すかもしれない。
これは、そんな気にさせる愛すべきアルバムである。