SENTIMENTAL JAZZ DIARY

感傷的ジャズ日記 ~私のアルバムコレクションから~

GEORG RUBY TRIO 「Sepia Days with You」

2009年07月20日 | Piano/keyboard

ガッツプロの作品は音にメリハリがある。
目一杯ボリュームを上げて、まず2曲目を聴いてもらいたい。
この強烈な音の塊に思わずのけぞってしまうはずだ。
特に、まるで金属製のスティックを叩いているかのような、冒頭の迫力あるドラムには参ってしまうだろう。
私もクリスティアン・トーメというドラマーのことは全く知らなかったが、これがなかなかのテクニシャンである。名前をしっかり覚えておかねばと思っている。
ディター・マンデルシャイドというベーシストが奏でるベースもものすごい重量感がある。これもかなり攻撃的だ。
そして満を持して登場するゲオルグ・ルビーのピアノがやけに現実的に響いてくる。アグレッシヴなドラムとベースの間にあって、このピアノの音は安らぎだ。
しかし曲が進むにつれ、そのピアノも少しずつドラムとベースのリズムにかき消されていく。
何とも劇的な構成だが、それもそのはず、このアルバムは1917年から1950年代半ばまで存在していたドイツのウーファという映画会社が制作した映画の主題曲を、ドイツスタンダードとして彼らが演じた作品集なのだ。
この2曲目は「Frauen sind keine Engel(天使なんかじゃない女たち)」というタイトルになっているが、これはどうやら古いSF映画「メトロポリス」の主題曲らしい。
ライナーノーツを読むと、この映画は恐るべき機械支配の未来を描いた作品なのだそうだ。それで全てが納得だ。

この映画会社ができた1917年といえば、ドイツにバウハウス(BAUHAUS)ができる2年前だ。
バウハウスといえば、知る人ぞ知る世界の最先端を行った建築&工芸美術学校である。
学生の頃、私はこのバウハウスに心底のめり込んだ。
この学校には様々な工房があり、どの分野の授業も刺激的であったが、中でもオスカー・シュレンマーが行ったトリアディック・バレエには度肝を抜かれた。
それは立方体、円錐、球体という幾何学形態のコスチュームを着た3名のダンサーが、まるでロボットのように動き回るという、ユーモラスでいながら恐ろしいくらいに未来を感じさせるパフォーマンスだったのだが、私はこのダンスで当時(日本はまだ大正時代)のドイツの底力を感じたものだ。
このゲオルグ・ルビー・トリオのアルバムを聴いていると、ジャケットにもあるような懐かしさと同時に、なぜかそれとよく似た近未来的な感情が沸き上がる。
表面はセピア色をしていても、中身はぴかぴかに磨き上げられたシルバーに近い印象なのだ。