SENTIMENTAL JAZZ DIARY

感傷的ジャズ日記 ~私のアルバムコレクションから~

KENNY CLARKE 「Bohemia After Dark」

2009年07月01日 | Drums/Percussion

頻繁に鼻歌交じりで出てくるメロディだ。
もちろんオスカー・ペティフォードの名曲「ボヘミア・アフター・ダーク」である。
ファンキーなナンバーの中では一番好きな曲かもしれない。
この曲に刺激を受けたベニー・ゴルソンが、カーティス・フラーの人気作「ブルース・エット」に収録されている「ファイブスポット・アフター・ダーク」を作ったのは有名な話だ。
「ファイブスポット・アフター・ダーク」も悪くないが、私はやっぱり「ボヘミア・アフター・ダーク」が好きなのである。
あの徐々にせり上がってくるテーマ部分が、緊張感たっぷりでたまらない。
正に名曲中の名曲である。

この録音は、本家本元オスカー・ペティフォードのアルバム(オスカー・ペティフォードの神髄)よりも2ヶ月早い録音だ。
私はどちらも好きだが、このアルバムのハイライトは、何といってもキャノンボール・アダレイの鮮烈なデビューが記録されていることである。
ちょうどチャーリー・パーカーが亡くなったと同時に、入れ替わるような形でキャノンボールが登場する。
カフェ・ボヘミアを拠点に演奏活動していたオスカー・ペティフォードは、すかさず彼の才能を見抜き、自分のグループに引き入れると共に、このケニー・クラークのアルバムに参加させたのだという。
つまり、このアルバムこそ、ビ・バップからハード・バップに移行した瞬間を捉えた記念すべき作品なのだ。

見渡せばメンバーだって蒼々たるものだ。
ホレス・シルバー(p)、ハンク・ジョーンズ(p)、ジュリアン・キャノンボール・アダレイ(as)、ナット・アダレイ(cor)、ジェローム・リチャードソン(ts,fl)、ドナルド・バード(tp)、ポール・チェンバース(b)、そしてリーダーのケニー・クラーク(ds)。
彼らの生み出す音から、当時の息吹が手に取るように感じられる。
やっぱりハードバップは、モダンジャズの花形なのである。